【改稿版】リボーンの世界に呼ばれてしまいました   作:ちびっこ

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救難信号

 今から雲雀のアジトへ移動するというところで、振動に気付きケイタイを取り出したのは優だった。優はジッと画面を見つめ、雲雀に目配せをした後に通話ボタンを押した。

 

“……誰だ?”

 

 優がそう発した理由は、ヴェントのケイタイに知らぬ番号からの着信だったからだ。ちなみにツナ達とは昨日のうちに連絡している。ヴェントのケイタイは神が作ったこともあり、盗聴の心配がなく通信妨害もないからだ。群れることが嫌いな雲雀ならともなく、この状況で優がしないという選択はない。今日中にツナ達のアジトへ向かうと伝えていて、ツナのアジトからの電話ではないのはわかっていた。

 

『黒川花っていえば、わかるのかしら?』

 

 一瞬、驚いた優だがこの時代の優がもしもの時のためにヴェントのケイタイ番号を教えていたと判断した。実はこの時点で原作の流れを知っている優は、雲雀ではなく優にかかってきたのだろうとしか思っていない。ツナとは連絡をとっていたが、「京子ちゃん達もこの時代にきちゃった」としか言わなかったため、先入観もあり黒川もこの時代にきていることに気付いていないのだ。もっとも雲雀は部下からの報告で知っているが。誤差の範囲と考え、いっぱいいっぱいの優のためを思って伝えていなかった。ちなみに彼はこの誤差で最も苦労するであろう入江に対して何の感情も浮かばなかった。優との差が酷い。

 

 しばらく黒川の話を聞いていた優だが、徐々に返事が遅くなっていく。話の流れで黒川が飛ばされていることに気付き、更に京子と一緒に外へ出てしまっていると知ったからだ。

 

 一方、黒川は返事の遅さに怒っていると感じ、電話をしたことに後悔し始めていた。

 

“……話はわかった。君達の目的は、笹川了平の行方と子ども達へのお菓子だな”

『そ、そうよ』

“雲雀恭弥、お菓子は君ならなんとかなるだろ?”

「君の頼みなら、いいかな」

 

 ホームである並盛なら、雲雀の力で食材の手配ぐらいなんとかなる。問題は了平についてだ。原作を知っている優は了平がヴァリアーのところを出向いていると知っているが、それは今言えない。雲雀も了平の件には何も言わなかったので、正確な情報は知らないようだ。

 

“……笹川了平は僕の方で探る。君達が動くよりも速く、正確に掴めるだろう”

 

 ウソはついていない。ヴェントのケイタイにはヴァリアーの連絡先が入っている。ズレがなければ、優はただ電話するだけでいい。情報をつかんでいれば、優は話せるのだから。

 

“君達は今すぐ沢田綱吉のアジトへ戻るんだ”

 

 危険な行動と自覚していることや雲雀の名前を出したこともあり、黒川は京子を説得し始める。その間に、念のために優は外へと向おうとしたところで雲雀に腕を掴まれる。思わず優は睨んだ。

 

「行くなら、こっち」

 

 雲雀は優の行動を止めるつもりはなかった。どうやら雲雀はいくら言っても聞かない事柄と判断したようだ。大正解である。

 

『あんたの言うとおり、今から戻ることにするわ。戻れれば、だけど……』

“今、どこにいる?”

『並盛神社……』

 

 僅かに眉間があがる。嫌な場所だ。街中も問題だが、並盛神社もかなり危険な場所だ。恐らく黒川が人目を避けて移動した結果なのだろう。

 

“電話は繋げたままで戻るんだ。僕もそっちに向かうから、無理に戻ろうとしなくてもいい”

 

 雲雀の後ろについていきながら、優はケイタイにイヤホンを繋げる。ケイタイで片手が使えない事態は避けたい。

 

「僕の言ったこと、忘れてないよね?」

 

 雲雀の目を見ながら、優は頷いた。本音を言うなら、雲雀は行かせたくはない。が、優が暴走すると目に見えている。それなら協力した方がずっとましだ。

 

 軽く溜息を吐いた後、雲雀は自身の肩に目を向ける。意図を察したのか、雲雀の肩の上にのっていたヒバードが優の周りを旋回する。

 

「屋上まで繋がってるから」

“……これは助かるな”

 

 ビルの地下に優のアジトはあったようで、一人分しか幅はないが屋上まで吹き抜けの構造になっているようだ。リングの力を使わずに空を飛べる優に有利なルートで、雲雀自身がついて行かずにヒバードをつけた理由がわかる。

 

 フードをかぶり、優は振り返ることもなく飛び上がったのだった。

 

 

 

 

 空を飛びながら、優はもう一つのケイタイでツナ達へ連絡を入れるか悩んでいた。チラッと胸元にに視線を向ける。優が見つからないように上空で飛ぶとわかっていたのか、屋上についた途端にヒバードが懐に潜り込んでいたのだ。

 

 過去の世界でも優がヒバードの面倒をみていることを考えると、この時代でも優がみている可能性が高い。バッテリー切れのようなトラブルは起こさないだろう。問題はツナ達にも発信機の信号が届けられているのか。

 

 相談する時間はなかったが、雲雀は優の後を必ず追ってくるのはわかっている。この時代の雲雀は優をとても大事にしている。そうでなければ、あんなにも細かく雲雀は説明しない。雲雀は長々話して説明するタイプではないのだから。

 

 保険をかけているか、いないか。

 

 ラルがついているなら、街中に探しに行っても無茶はしないだろう。ただ雲雀がもし保険をかけていて、ツナ達が二手にわかれて行動していれば、獄寺と山本が危ない目にあうかもしれない。だが、もう一つのケイタイはそこまでセキュリティが高くない。ヴェントの正体の手がかりを残してしまうかもしれない。かといって、黒川との通話を切るという選択肢は優の中ではない。切っている間に何かあるかもしれない。聞こえていれば、情報は掴める。発信機を壊すのは論外だ。そんなことをすれば雲雀が怖すぎる。

 

 少し悩んだ結果、優はこのまま何もせずに移動することを選んだ。獄寺と山本に京子と黒川に任せて、優が戦えばいいだけの話だ、と。

 

 

 

 

 優が悩んでいたころ、ツナのアジトに緊急信号が届いた。

 

「この信号の種類は……ヴェントからの救難信号です!」

「え!? なんで!? ヒバリさんと一緒にいるって……!」

「ジャンニーニ。ヴェントと連絡はとれるか?」

「……通話中で繋がりません!」

 

 真っ青になるツナ。雲雀がいながら救難信号を発する時点でかなり危険な状況だ。ジャンニーニが場所を特定している間に、アラームの音で山本達が集まりはじめる。

 

「場所特定しました。カメラにうつします!」

「何もねーじゃねーか!」

 

 ジャンニーニがうつした画面にはそれらしき姿がない。優はその上空にいるのだから当然である。

 

「ジャンニーニ、他の角度から見れないの!?」

「見れないこともないのですが、なにぶん相手が移動中なもので……」

 

 移動中という言葉にリボーンは反応する。そしてジャンニーニに確認したところ、リングの反応はない。

 

「空を飛んでるなら、ヒバリとは別行動なのか?」

 

 よく許可を出したなとリボーンは思う。優の暴走の可能性もあるが、勝手がわからない状態でこの時代の雲雀を出し抜けるとは思えない。余程のことがあったのだろう。

 

「それならヒバリさんと連絡はとれないの!?」

「ヒバリがオレ達に教えていると思うか?」

「ヒバリらしいっちゃ、らしいけどよ……」

 

 ガーンとツナ達はショックを受けた。

 

「とっ、とにかく、ヴェントのところに行かなきゃ!」

「待て。罠の可能性もある」

 

 このままヴェントからの救難信号と素直に受け取りそうな流れだったので、ラルは焦っているツナの行動を一度止める。

 

「どっちにしろ、ヴェントからの救難信号だ。ヒバリが無事ならあいつは向かうぞ」

 

 リボーンの言葉にツナ達はすぐさま納得し頷いた。たとえ罠の可能性があったとしても、雲雀がいかないわけがない、と。

 

「それにヒバリがヴェントにつけた発信機かもしれねぇしな」

「あのヴェントにつけれるのか?」

 

 あのヴェントというラルの言葉に引っかかりながらも、ツナ達は動く準備をしていた。

 

「大変です! 京子ちゃんと花ちゃんがいなんです!」

 

 そこにハルが置き手紙を握りしめながら、2人がいなくなった情報を持ってきた。

 

「なるほど。別行動はそれが理由か。おそらくヴェントは2人の元へと向かってる」

 

 風を使った移動は、リングの力を使わなくても車よりも速い。雲雀が仕方なく許可を出すほどの余程のことが起きている。

 

「どうして場所がわかってるの?」

「さぁな。だが、迷わず進んでることから見て、ヴェントは知っている可能性が高い」

 

 はっとモニターに視線をうつす。確かにリボーンが言ったとおり、真っ直ぐ進んでいる。そんな中、とある疑問をラルが口にした。

 

「ヴェントがあの2人を助けに行くことがあるのか?」

「ああ!? どういう意味だ!?」

「ヴェントは自ら動かないことで有名だ。集まりにも来ないと聞く。大々的に挑発をしても、一切反応を示さない。その代わり挑発したところはボンゴレ・キャバッローネ、ヴァリアー、雲雀恭弥が単独で、または六道骸達の手で潰されたがな」

「ははは……」

 

 ツナは乾いた声で笑った。ボンゴレとキャバッローネはまだしも、他の者は一筋縄ではいかないメンバーばかりである。優が動かないのは自分のことに対しての挑発だったのだろう。それでは優は動かない。……骸が優のために動いた理由はよくわらないが。

 

「どうなんだ、ツナ?」

 

 リボーンはツナに問いかけた。わかっていながら、聞いたのだ。

 

「ヴェントはあの2人を助けにいくよ。絶対に」

 

 死ぬ気にならなければ、滅多に自信をもてないツナが確信をもって言った。正体を知っている山本と獄寺もその言葉に異論はない。

 

「ツナ、お前はどうするんだ?」

 

 この時代に詳しいラルは当然として、獄寺と山本もついて行くだろう。だが、ツナは昨日の戦いで腕を負傷している。足手まといになる可能性が高い。

 

「オレも行くよ。ヴェントはすぐ無茶するから」

 

 獄寺と山本は頷いた。優は人の話を聞いているようで、聞いていない。ツナは優を止めれる数少ない人物である。

 

 こうしてラルの先導でツナ達はヴェントのもとへ向かったのだった。

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