【改稿版】リボーンの世界に呼ばれてしまいました   作:ちびっこ

88 / 95
ごまかし

 安全を優先した結果、優達はツナのアジトの出入口を利用した。雲雀が先導したので、群れることは嫌いでも一応場所は知っていたようだ。

 

「ちゃおッス」

 

 なぜリボーンが出迎えることが出来たのか一瞬疑問を浮かべたが、ぽふっと優の頭の上にヒバードが乗ったことで理解する。発信機をつけていた。

 

「悪かったな、ヒバリ」

「今回は特別だから」

「ああ」

 

 雲雀とリボーンが普通に会話をはじめたので、その前に話すことがあるだろうと口を開く。

 

“……リボーン、その格好はなんだ?”

 

 なぜ雲雀はツッコミしないのだろうか。原因を知っている優ですら、本人の口から説明してほしいと思うぐらい、リボーンの姿は怪しいのに。

 

「これを着ねーと体調が最悪なんだ。おめーは大丈夫なのか?」

“これのおかげらしい”

「そうか」

 

 袋に入ったおしゃぶりを見せれば、リボーンは納得した。問い詰めないことに優は心の中で感謝する。

 

「ツナ達が待ってるぞ」

“わかった。君はどうする?”

 

 興味なしといわんばかりにスタスタと去っていく後ろ姿を見て、優は軽く溜息を吐いた。

 

「変わってねぇな」

“彼らに対してはそのようだな”

 

 遠まわしに優に対しては変わったとリボーンには伝わる。そしてつい先程、情報を持ち帰ってきたビアンキの熱烈な抱擁を受け止めたリボーンはどのように変わったのかを察した。もっとも他人のイチャイチャはうぜーと思うリボーンは優の悩みを解決する気はなく、あっさりと話題をかえ、ツナ達が集まっている部屋へと案内し始めた。

 

「良かった、無事で!」

“まったく君はどれだけ心配性なんだ……”

 

 似たような言葉をまたかけられたので、思わず優はツッコミした。もっとも、ツナが心配しなければそれはそれで変だと思うが。

 

「ヒバリさんは?」

“群れたくないってさ”

「そっか……」

 

 話をしたかったんだろうなと察した優だが、優が頼んでも素直に話すかは怪しかったので、話題を変える。

 

“君達がつかんでいる情報を詳しく知りたい。教えてくれないか?”

「あ、うん。わかった」

 

 優が声をかけなくてもそのつもりだったようで、すぐに話し合う体制に入る。優はその中に獄寺と山本が居ることに思わず口角があがる。

 

「ん?」

「なんだよ」

“誰も怪我しなくて良かったと思って”

 

 その言葉に山本は賛同し、獄寺は視線を逸らした。そのせいで獄寺は思いっきりビアンキの顔を見てしまい、お腹を痛める。

 

「隼人!?」

“……リボーン”

 

 獄寺の不遇さに、また話が進まないという理由でリボーンにビアンキの対応を任せた。リボーンは変わった格好をしていても、懐にサングラスを入れているようだ。

 

 出だしからこの調子で大丈夫なのかと優が遠い目をしたところで、草壁が顔を出す。

 

“彼の指示か?”

「はい。それに……この時代に来たばかりのあなたでは、説明できないことも多いでしょう」

 

 それもそうだと優は頷く。この時代のことはある程度聞いたが、最近の雲雀の行動を詳しく話せるほどではない。

 

「えっと、どこから話そうかな……」

“あー、悪い。先に確認したいことがあった”

 

 優から説明してほしいと声をかけたにも関わらず、1度止めることになったので優は謝った。ツナは気にした風もなく、どうしたの?と優に顔を向ける。

 

“この中で、僕の正体を知らない者は?”

 

 手をあげたのは、ラルだけだった。優はビアンキとフゥ太、そしてジャンニーニに視線を向ける。

 

「私は7年ほど前からよ」

「僕は数年前にツナ兄が口をすべらせて知ったよ」

 

 ゴンっとリボーンの鉄拳制裁が入る。

 

「僕はツナ兄に感謝してるよ。僕には絶対に話してくれなかったと思うから」

 

 フゥ太が優の顔を見て言ったので、優はガシガシと頭をかく。成長したフゥ太を見ても、優は子ども扱いしようとしたのだ。10年後の自身ならば、尚更話そうとしなかっただろう。

 

「それにツナ兄はわざと口をすべらせた気もするんだ」

「そうなのー!?」

 

 ツナは驚いた声をあげたが、獄寺達は納得したように頷いた。ツナは自ら進んで間に入ったのだろうと。

 

“……それで、君は?”

「ヴェントさん、私ボンゴレファミリー御用達武器チューナーにして発明家のジャンニーニでございます。このアジトのシステム全般を管理しています。ヴェントさんとは情報管理の件で父と一緒に何度か顔を合わせています」

“指紋認証システムで君達にはバレるからか”

「その通りです」

 

 恐らくヴェントとしても、風早優としても登録しているはずだ。神の力を使えば、誤魔化せることは出来るが、このアジトに深く関わる人物までに誤魔化すのはやめたのだろう。

 

“……彼女だけ、か”

「かまわん。オレはお前の正体に興味がない」

「ヴェント、ラルは大丈夫だよ」

 

 ラルの言葉にかぶせるように発したツナに優は目を向ける。しばらく視線を合わせていたが、我慢できなくなった優は地声でクスクスと笑い出す。

 

「どうしたの?」

「だってさ、苦手なのに、私のために間に入ろうとしてくれるんだもん」

「そ、そんな大それたことは思ってないってば」

「ツナ君、いつもありがとう」

 

 優の言葉にツナは照れたように頬をかく。その様子をニコニコと見た後、優はフードを外してラルへと向き直す。

 

「はじめまして、風早優です。これからよろしくお願いしますねー」

「あ、ああ……」

 

 さっきまで気の張っていた態度はなんだったのかというぐらい、ヘラヘラと笑っている優にラルは呆気にとられているようだ。

 

「風早さん、どうぞ」

「え!? 大丈夫です。草壁さんが座ってください!」

「いいえ、それは出来ません」

 

 正体をバラしたことで、草壁はヴェントではなく優として接すると決めたらしく、気迫で優をソファーに座らせる。ツナが気をつかって場所を空けようとしたが、草壁は優の後ろから動く気はないようだ。

 

「とっとと、話を始めるぞ」

 

 いつまでも優が後ろにいる草壁を気にしそうだったので、リボーンは切り替えるようにと声をかけたのだった。

 

 昨日の電話である程度は話をしていたので、細かい確認が終われば今日の出来事についてに話がうつる。

 

「え? 黒川から電話があったの?」

「そうなの。なんでヴェントの電話番号を知ってるかわからないけど、状況を教えてもらってね。2人の希望は叶えるから迂闊に動かないようにって言って、私が迎えにいったの」

「すみません、風早さん。ヴェントの連絡先は我々が教えました」

 

 そうなんですか?とツナと優の声が重なる。

 

「はい。ボンゴレ狩りが始まったことで、雲雀はヴェントの正体がバレた場合に用意していた策で保護をし始めました。当然、風早さんと友好関係の黒川花も保護の対象になっていました。その際に黒川に幼くなってしまったので、ボンゴレ狩りの対象ではありませんでしたが、現場の判断でこちらに保護し、緊急連絡先として雲雀ではなく、ヴェントの連絡先を渡したと報告を受けていました」

「雲雀先輩は動くかわかんないもんね」

「……はい」

 

 優の言葉に草壁は申し訳なさそうに肯定した。しかしこれは仕方ないことだ。個人のために雲雀が腰をあげるかはわからない。雲雀は全体の風紀の乱れを直したいのだから。優のために黒川の手助けはすることはあるだろうが、黒川個人を助けて全体の風紀の乱れが直せなくなる可能性があれば、すぐに動かないだろう。

 

「……そうか、風早優か」

 

 ラルの呟きに優は不思議そうに首を傾げる。

 

「お前の名前をどこかで聞いたのを思い出しただけだ」

「へ?」

「この時代の優姉は裏の世界でもちょっと有名だよ。ヒバリさんの代行でボンゴレの会議に出たりするし」

「……なんだろう、素直に喜べないね。嫌な役な気がする」

 

 ヴェントで行動しなくても会議の内容を聞けるという点ではいいが、雲雀の代行で出ているのであれば、雲雀の意向を優先しなければならない。ボンゴレ会議でツナ達を困らせていそうと優は想像したのだ。

 

 実際、この時代の優はボンゴレの頼みをバッサバッサと切って捨てていた。それでも優はまだ代替案や雲雀が譲れるラインを教えるので、雲雀本人が出席するよりは何十倍もマシなのだが。

 

「……うん、まぁそれはいいや」

 

 あまり良くはないのだが、これは優の心の問題なので話を戻す。

 

「えーと、それで雲雀先輩がヒバードを連れて行くならいいって言ったの。発信機をつけてるんですよね?」

「はい、そうです」

「ヒバリがオレらにも届けたってことだな」

 

 全員が流れを理解したようなので、リボーンが再び口を開く。

 

「で、お前らの組織は何なんだ?」

 

 優もそこまで詳しく聞いていなかったので、振り向いて草壁の顔を見上げる。

 

「ひらたく言えば、並盛中学風紀委員を母体にした秘密地下財団です」

「まだ風紀委員関係してんのー!?」

「……私もそのメンバーなんですよね?」

「当然です。風早さんはこの組織のナンバー2です」

「えっ、そこは草壁さんじゃないんですか!?」

 

 十中八九メンバーに入っていると考えていたので、草壁の肯定にはほんの少ししか思うところはなかったが、草壁よりも偉いというのは想定外である。

 

「そのようなことは誰も認めません」

 

 どうしてこうなったんだろうと優は首を傾げる。過去の世界では優が風紀委員に所属していることに不満を持つメンバーが居たはずだ。草壁が断言することから、この時代は本当に誰も反対していないのだろう。信頼されることは別に悪いことではないのだが、ナンバー2になってしまえば雲雀の元から去りにくくなる。ある程度不満が残っている状態がベストのはずだ。

 

「ちょっと、想像つかないや……」

「そうだね。優がヒバリさんの次に偉いってなんか変だよね」

「だよねー」

 

 ツナの言葉に優は笑う。先程の優の呟きの意味を正しく理解したのは、リボーンと間近でずっと見てきた草壁だけだった。

 

「ツナ兄に聞いたことがあるよ。その財団でヒバリさんは匣の研究や調査をして世界を飛び回っているって」

「匣の……?」

「うん。この時代の優姉に聞いてみたけど、詳しくは教えてくれなかったけどね」

「ここから先は直接雲雀に聞いてください」

 

 草壁の言葉から、フゥ太に教えなかったのは雲雀の許可がいったのだろうと優は察した。

 

「優……」

「んー私は軽く聞いただけだし……。雲雀先輩にそれとなく伝えとくよ。気が向いたら教えてくれると思う」

 

 気が向いたらという言葉でツナはガーンとショックを受ける。しかしそれしか答えようがないのだ。恐らく優が頼めば、優には教えてくれるだろう。だが、それを優の判断でツナに教えることは出来ない。雲雀が月日をかけて調べあげたことなのだから。

 

「まっ、風紀が乱れてるし、私が元の世界に戻れなくなったのを調べるって言ったから、雲雀先輩にしては協力してくれると思うよ」

 

 雲雀にしてはという言葉に引っかかるものがあるが、ツナ達は一先ずホッと息を吐いた。

 

 その後、ビアンキとフゥ太からの情報で日本支部にはAランクの隊長はγと入江正一のみ、また敵アジトの入り口を突き止めたという教えてもらった。特に優の知識と違和感がなさそうだ。

 

「ただ、γがヴェントの姿を見たから、これからどうなるかはわからないけど……」

「あ、それは大丈夫。こっちで対策したから。γって言う人、私のことは綺麗サッパリ忘れてるんじゃないかなぁ」

 

 リボーンと草壁以外、優の発言にギョッとする。

 

「なに驚いてんだ。優があのままにするわけねぇだろ」

「なんでお前は冷静なんだよ!?」

「オレもその能力で何度も誤魔化されたからな」

「リボーン君にはそんな酷いことしてないって。ただヴェントの痕跡をちょっと誤魔化しただけだしー。フゥ太君の場合はランキング星との通信をちょっと妨害しただけだもん」

 

 優は完全に開き直っていた。実際、指紋や抜け落ちた髪の毛を調べればすぐに正体がバレていただろう。この時代でヴェントの正体がバレればまずいことから、神が過保護なぐらいでちょうど良かったのだ。

 

「……リボーン、こいつは本当に信用できるのか?」

 

 重々しく口を開いたラルの言葉に、思わずツナ達も頷きそうになった。

 

「誤魔化せるのも、いろいろと条件がありそうだからな」

「やっぱりバレてた?」

「オレが拾った手掛かりは消えなかったからな」

 

 リボーンの言葉に優は頷く。物自体を誤魔化すことは出来るが、物を消すことは出来ないのだ。

 

「それに私のことについてしか、誤魔化せないんだよね。違和感のないように修正されているけど、γっていう人は京子ちゃんと花のことは覚えているの。まぁヴェントと知り合いというのを誤魔化せただけマシだと思うけど……」

 

 出来ないのは出来ないと優は諦めたように首を振る。そもそもこれは優の力ではない。これ以上高望みするべきではないのだ。

 

「おい、オレらには絶対使うんじゃねぇぞ」

「わかってるってー」

 

 獄寺の言葉に優は笑いながら返事をする。それを聞いて、適当に返事をしたなと獄寺達は長い付き合いでわかった。獄寺の説教が始まろうとしたその時、ツナが優の手を握った。

 

「使わないってば」

「オレは優のことを信じてるよ」

「じゃぁ、どうしたの?」

 

 優の視線で、ツナは優の手を握っていることに驚き、謝りながら慌てて手を離す。

 

「変な、ツナ君」

「ご、ごめん」

 

 説教をする空気ではなくなったので、話はそこで流れた。が、リボーンは草壁に向かって視線を送っていた。草壁はもちろん雲雀に報告すると頷いていた。

 

 優はあっさりと話していたが、実は条件を聞き出せたのはかなり大きなことだった。

 

 ツナの信じたとおり、優は記憶を消さないだろう。消すことがツナ達のためになると判断しない限り。

 

 だから無意識にツナは気付き、優の手を握ったのだろう。

 

 優はツナ達に贈り物をしていないから。

 

 優が物を送ることはあるが、消えてしまう食べ物なのだ。過去にランボとイーピンにマフラーと手袋を贈ったことはあったが、このまま成長すれば使わなくなるだろう。また2人は優からのプレゼントだと知らない。今のところ優が残しているのは、風紀委員関係の書類と雲雀に贈ったコースターぐらいである。書類から優のことを思い出せるかは正直微妙なところだ。コースターにいたっては余り物で作った毛糸である。無意識に優が気付いてほしいと思って残したものではない。

 

 すぐに実行できそうな写真は撮るべきだなとリボーンは頭の中で計画を立てていた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。