【改稿版】リボーンの世界に呼ばれてしまいました 作:ちびっこ
原作に絡むことなく8月になった。
「……おかしい」
たとえツナが隠していたとしても、優は京子のように巻き込まれる嵌めになると考えていたのだ。
もちろん夏休みに入ってからも、ツナと遊びに行ったりもしている。が、リボーンとは会わない。未だに家に連れて行ってもらえないのが関係しているのかもしれない。
そして優の最大の悩みは、原作に絡まない癖に雲雀と絡んでいることだ。授業中や夏休みも関係なく呼び出され、優は雲雀の枕になっている。授業を抜け出す時は教師に注意されることもない。通達されているのだろう。
まだツナが優に聞いてこないのが、優の心の平穏だった。ちなみにツナは教師が黙認しているので、家の事情と思っている。友達でも家族の事情まで簡単に踏み込めない。ツナは優が話してくれた時は出来るかはわからないが力になろうと考えていた。
それを知らない優は雲雀の行動がわからないと悩む。相性がいいというレベルが超えている。最近では、当たり前のように雲雀が晩ご飯を食べていく。ついに優は家をなぜ知ってるのかと聞く気力も失せた。
雲雀に絡まれているが、毎日というわけではない。今日はもう18時を過ぎたので枕の呼び出しはないだろう。晩ご飯を食べに来るかもしれないが。
優は溜息を吐く。雲雀が来なければ、料理に手が抜けるのだ。雲雀が来る前はご飯と吸い物だけで優は良かった。神にちゃんと食べろと言われるが、優の本音はカップ麺を選ばないだけましと考えていた。今は雲雀がいつ来るかわからないので、毎日栄養バランスを考えて作らなければならない。来なければ少し味を変えて昼に食べることになる。さすがに捨てるのはもったいない。
他にも家に来るので、掃除しなければならない。雲雀の行動が予想できず、どこを見られるかわからない。いつでも綺麗な状態を保っていた。
優は不満に思っているが、実は雲雀のおかげで清潔で健康的な生活を送っているのである。
来るかわからない雲雀のために晩ご飯の準備をするため、優は腰をあげるとケイタイが鳴った。
時計と空の色を見て、眉間に皺がよる。今まで遅い時間に呼び出しがなかったが、これからは増えるのかもしれない。
はぁと溜息をし、ケイタイに手を伸ばす。
「あれ? ツナ君から?」
画面にある名前を見て、テンションが急上昇である。すぐさま通話に出る。
「もしもーし」
『あ! もしもし? 優?』
「そうだよー。どうしたのー?」
優の中で、余程のことがない限りツナが遅い時間に電話をかけてこないという信頼があった。……雲雀と違って。
「その、補習のプリントがわからなくて……全問解けないと落第なんだ……」
成績がよく、難しい本を読んでることを知っているツナは優に助けを求めたのだ。もちろん、優の中で手伝わないという選択はない。
家の場所を聞き、優は急いで向かったのだった。
(マンガと一緒!)
ツナの家を見上げ、優のテンションは上がりっぱなしである。ドキドキしながら呼び鈴を鳴らせば、ドタバタとツナが下りてくるだろう音が聞こえる。
「優、ごめん! ありがとう! あがって!!」
「お邪魔しまーす」
家に入ってからずっとキョロキョロと見渡す優に、ツナは照れくさくなる。
「優、階段だから気をつけてね」
「うん」
返事をしているが優は落ち着ていない。そんな優の子どもっぽい一面を知り、ツナは笑いを抑えるので必死だ。
「ここがオレの部屋。散らかってるけど、入って入って」
「うん!」
ツナがドアを開けると、机の囲むかたちで山本、ハルが座っている。ベッドの上で寝込んでいるのは獄寺だ。そして視線を少し下に向ければ、正面にリボーンがいた。
「げっ、リボーン!? 眠ったんじゃなかったのかよっ!」
眠ったから優に連絡したツナは起きていることに驚き、声をあげた。
「ちゃおッス」
優は瞬きを繰り返した後、膝を折って腰を下ろす。
「か、かわいい……! 抱いちゃダメかな?」
ツナに確認するように優は目を向ける。何度もいうが優の容姿はいい。友達と思っていても、ツナは顔が赤くなりすぐに返事が出来なかった。
一方、優は本気でリボーンを抱っこしたいと思っていた。リボーンの危険性を知っているが、それとこれとは話が別だと思っている。優は可愛いものに弱いのだ。
「さわんじゃねーぞ。オレは殺し屋だからな」
「っ!? リボーン!!」
照れている間に、物騒なことを教えたリボーンにツナは怒鳴る。それを見て、ツナのために聞き流すことにした。
「ゴメンね、知らなかったの。殺し屋かぁ……カッコイイね!」
「まぁな」
残念と思いながらも優は立ち上がり、視線を他へうつす。
「山本君、こんばんは。獄寺君は……大丈夫なの……? 可愛い女の子も、こんばんは」
「ははっ! わりぃな来てもらって!」
ツナを通して山本とは気兼ねなく話せるようになっていた。逆に獄寺とはさっぱりで、優は気にしないようにしているが、ツナと話しているとよく睨まれる。
「はひ! 可愛いなんて照れちゃいますぅ! ……はっ! もしかしてツナさんの彼女さんですか!? そんなぁ……」
(ええ!? 決め付けちゃって落ち込んじゃった!?)
優は驚いているが、傍から見えば恋人と勘違いされるのは無理もない。それほど優が隣に立っていてもツナは自然体なのだ。
「違うよー。私達はただの友達だよ。ね、ツナ君」
「うん。そうだね」
ハルはしばらくジッと2人を見ていたが、女の勘が働いたようで勘違いに気付く。
「はひ! そうでしたか! ハル、勘違いしました! 三浦ハルって言います! 将来の夢はツナさんの妻になることです!」
「ハ、ハル! 何言ってんだよ!?」
慌てるツナに、優は軽くイジる。
「ツナ君も隅におけないなー」
「冗談だからっ」
ツナは怒ったわけではない。笑いながらツッコミをしている。ツナは優がからかってるだけとわかっていたのだ。そしてツナが嫌がるまで言わないこともわかっている。だからツナは笑っているのだ。
「ごめんごめん」
案の定、優はすぐにツナに謝った。
「私は風早優だよ。よろしくね、ハルちゃん!」
「はひ! よろしくお願いします、優ちゃん!」
仲良くなった2人を見て、ツナはホッとする。最近は京子や黒川、山本と話すようになったが、優は周りに関心が無さすぎる。密かに心配だったのだ。
「さて……ツナ君、どの問題がわからないの?」
「あ、これだよ!」
優は目を見開く。ツナに見せてもらった問題はあまりにもレベルが高すぎる。
(……これ、答えまでは覚えていないけど、原作にあった話だ。今気付いたよ!)
原作に絡んだことで驚き、優は黙り込む。
「優でもわからないんだ……」
はぁと落ち込むツナに慌てて優は声をかける。
「大丈夫。解き方はわかったよ」
「え!? 本当!?」
「うん。ただ……説明してもわからないと思う。まだ習ってない公式をいっぱい使うんだ。私が解いたのをそのまま写す?」
「それでいいよ!」
見知らぬ記号を使いながら、スラスラと解いていく優に、ツナは驚く。助けを求めたが、ここまで頭がいいとは思っていなかったのだ。
「……あってると思う」
「あってるぞ」
「リボーン君がそういうならあってるかな?」
笑ってリボーンに話しかけながらも、優は心の中でホッとした。リボーンが言えば、間違ってないと知っているからだ。
「わからない問題ってこれだけ?」
「う、うん」
「じゃ今日はもう帰るよ。ご飯作らないといけないし……」
「え? 優がご飯作ってるの?」
ツナの言葉に優は首をひねる。
「言ってなかった? 1人暮らししてるって」
「聞いてないよ!」
そうだったかなぁと優は笑う。ツナもつられて笑うが、優の家庭環境が心配になった。
「優! ここでご飯食べていけ」
「リボーン! おまえ何勝手に決めてんだよ! でも、優がいいならオレん家でご飯食べない?」
「え!? いいの?」
遠慮せず嬉しそうにする優を見て、やっぱり寂しかったのかなとツナは思う。幸いにもツナの母は大人数で食べることが好きだ。今度から誘ってみようと思った。
その時、優のケイタイが鳴る。画面を開けば、優は困ったように眉を寄せた。
「優?」
「……ツナ君、ごめん。ちょっと電話に出るね」
「う、うん」
「もしもし? ……すみません、友達の家に出かけてました。えっと、どこにいるんですか? ……リビング? え、鍵は?」
聞こえてくる優の言葉から、深く聞いちゃいけない内容だと判断する。そして、帰らないといけないことが起きていることも、何となくわかる。
電話を切った優は、ケイタイとツナの顔を見比べる。
「また今度誘うよ」
「……ごめん」
肩を落とした優に、気にしないでとツナは声をかける。
「ありがとう……。今日は帰るね、バイバイ!」
見送りする間もなく、優が出て行ったのでツナは窓から顔を出して叫ぶ。
「優、ありがとう! 今日は助かったよ!」
「うん!」
振り返った優を見て、困ってはいたが嫌な相手ではないとツナは思った。そして、空の色を見て送っていく時間だったなぁとツナは反省する。
「山本、ハル、ご飯食べていく?」
「今日は止めとくぜ」
「はい。優ちゃんに悪いです」
獄寺は体調が悪そうなので声をかけてから、ツナはもう1人の女子のハルを送っていくのだった。
通話の全容
「もしもし?」
『君、どこにいるの?』
「……すみません、友達の家に出てかけてました」
『僕、お腹すいたんだけど』
「えっと、どこにいるんですか?」
『君の家のリビング』
「……リビング? え、鍵は?」
『僕が持ってないと思ってたの?』
「…………」
『はやく帰って作ってね(ブチッ)』
「…………」