【改稿版】リボーンの世界に呼ばれてしまいました   作:ちびっこ

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トレーニングルーム

 部屋に入った優は僅かに首を傾げる。優は一人の修行を希望していた。この部屋の奥にさらに扉があるのかと思ったが、先程入った扉以外、見当たらない。

 

「ツナ君達の修行場所かな」

 

 自分は関係ないと思った優は、さっさと出ようとする。

 

「待て。沢田達にお前の現状を説明する必要がある」

 

 確かに京子達の前では話せないだろう。そしてツナ達にはさらに気をつけてもらう必要があるのだから。

 

「それもそうですね。よろしくお願いしまーす」

 

 ラルに任せたのは、説明を受けただけの優よりも把握しているだろうという考えからである。決して、面倒だと思ったからではない。……多分。

 

「優の現状……?」

 

 不吉な雰囲気を感じ取ったのか、ツナが不安そうに優を見た。そのツナの目は知ってるなら優の口から話してほしいと物語っていた。

 

「ヴェントは人気者になっちゃったっていう話なだけだよ」

 

 そんな軽い話ではないのだが、自ら話すなら上手く誤魔化そうとしようとしたのだ。当然、ラルが怒鳴る。リボーンも優が全面的に悪いとわかっているので、フォローするつもりはない。結局、優に任せられないという流れでラルが全てを説明した。

 

「優……」

 

 ツナ達も昨日の流れで、少し違和感を覚える内容があったのはわかっていたが、こんな状況になっているとは思ってもいなかった。

 

「深刻に聞こえるけど、10年前より正体を知りたがってる人が増えただけってことだよ。だから名前の呼び間違えは出来るだけ気をつけてほしいっていう私からのお願い。面倒でごめんね?」

「面倒だなんて……誰も思わないよ!!」

「ありがとう」

 

 えへへと嬉しそうに笑う優に、ツナと山本はその空気に流されていく。しかしマフィアのことをよく知っている獄寺は誤魔化されてもいい内容ではないとはっきりとわかっていた。

 

「バッ……!」

 

 獄寺の声にツナと山本は何事かと振り返る。目に入った獄寺は無理矢理怒りを抑えようとしていた。優はバカだが、本物のバカではないということを獄寺は知っていた。自分の心の状態を自覚してるかは別だが、ちゃんと状況は理解している。そして恐らく自分の心の平穏のために、優は今ツナ達に気を遣われたくなかったのだ。ツナと山本にもっと状況を理解させるのは優がここを去ってからでも出来る。この後、優は別の修行場へと向かうのだから。

 

 そもそも優の性格から考えても、再びツナ達にお願いと口にしただけで十分進歩している。以前なら、勝手に判断しツナ達から遠ざかろうとしていただろう。本当は不安で仕方がないはずだ。だから怒鳴るのは逆効果でしかない。笑って謝罪の言葉を口にし迷惑でしかないと勘違いし遠ざかっていくだろう。だから獄寺は自分を抑えたのだ。

 

 余談だが、ディーノはこの展開を読めていた。だから雲雀が入れ替わっていないと聞き、電話越しの優にもわかるほどの安堵の息を吐いた。もちろん日本の戦力という問題もあるが、優の不安定さも心配していたのだ。もし雲雀も入れ替わっていたなら、日本に向かうことを前提で動いただろう。

 

 ディーノには若干及ばなかったが、優の性格を理解し必死に抑えた獄寺。だが、残念なことに彼はわかりやすかった。初対面の人でも彼が我慢していると気付くだろう。好意の感情に疎い優だが、この場合は普通に気付く。

 

「えっと、ごめんね」

「バカ! 謝るんじゃねー!」

 

 優は理不尽だと思った。だが、謝る以外の言葉を思いつかない。

 

「……えーっと」

「仲間だろうが……」

 

 ボソッと獄寺の呟いた言葉に優は何度も瞬きを繰り返す。やっと意味を理解したのか優は手で顔を隠した。フードをかぶっている状態なので隠す必要がないのだが、それがスッポリと抜けるぐらい嬉しかったようだ。それも当然だろう。ツナ以外に心を開こうとしなかった獄寺の言葉である。嬉しいに決まっている。

 

 獄寺にとって優はツナが大切にしている存在だから気にかけていたといえるものだった。自分のことに対して抜けているぐらいで、基本獄寺の言動に理解して笑って流す心の持ち主。気にかけるといっても、山本やランボよりもかなり楽な相手だった。それがフタを開けてみれば、かなりの問題児。目を離したスキに何をするかわかったものではない。そして考えがひねくれていた。……獄寺から心を開き歩み寄らなければならないほど。

 

「だな!」

 

 獄寺の言葉に賛同し、山本は獄寺と無理矢理肩を組んで獄寺が「やめろ! 野球バカ!」と怒鳴るという流れが起きる。いつもと同じように見えるが、今までとははっきりと違うものだった。ツナは獄寺を感動した目で見つめながらも、いつものように優の隣に立った。

 

「……まいったなぁ。獄寺君達にも勝てなくなりそう」

 

 ポツリと呟いた優の言葉に、ツナは嬉しそうに笑った。

 

 

 このとき、成り行きを黙ってみていたラルにリボーンが声をかけていた。

 

「上手くまわってんだろ?」

「甘っちょろいガキだがな」

 

 風の属性を持つ唯一のヴェントを狙うマフィアの恐ろしさを10分の1も理解していないだろう。だが、ラルはリボーンの言葉を否定しなかった。

 

 そして、リボーンがわざわざラルに声をかけた意味にも。

 

 ツナ達の様子を見て、ラルは部屋に入る前に言ったリボーンの付き合いが短いものには無理だという意味にも納得していたのだった。

 

 

 

 長い時間、ラルの隣でホロリとしていたジャンニーニは、優の視線を感じて自分の役割を思い出し頷く。

 

「じゃ、ちょっと頑張ってくるね。ツナ君達も頑張ってね」

 

 ツナ達に見送られ部屋から出ると、リボーンも出てきた。

 

「オレも行くぞ」

「ツナ君達のことはいいの?」

「問題ねーだろ」

 

 それだけラルを信頼しているということなのだろう。優はリボーンがそう判断したのなら、何も言わない。

 

「ヴェントさんのトレーニングルームは特殊なので、私も楽しみです」

 

 特殊という言葉に優は引っかかったが行けばわかる話なので、ツッコミはしなかった。そしてついにジャンニーニの足がとある部屋の前で止まる。

 

「こちらがヴェントさんのトレーニングルームです」

 

 開いたドアから部屋の様子を見て、僅かに優は眉間の皺を寄せた。

 

「ツナ達が使ってる部屋と変わらねぇじゃねーのか?」

「……パッと見はね。これ、作ったのお師匠様ですよね?」

「はい。我々が気付かない内に作り上げました」

 

 つまり不法侵入である。自重しなかったのは未来の自分なのか、神なのか、あるいは両方か。とりあえず頭が痛い。

 

「すみません……」

 

 迷惑をかけたのは間違いない。優は頭を下げた。自分のアジトに作ればいいのにと思わなくはないのだが、過去から来る優のためにここに作ったのだろう。

 

「いえ、今度は負けません!」

 

 侵入されたことでジャンニーニはセキュリティの強化に燃えてるようだ。神に挑戦しようと意気込んでいるので、優はそのままソッとしておいた。神に勝つことは不可能だとわかっているが、セキュリティは強化してほしい。

 

「で、どうなってるんだ?」

「見た方がわかりやすいかな」

 

 そう声をかけた後、優は部屋へと入る。すると、優の足元から広がっていくように景色が変わっていく。

 

「幻覚か……」

「部屋ごとカモフラージュしたみたいだねー」

「わわわっ」

 

 転げそうなジャンニーニを優は風で浮かす。ここでは立つことも難しい。優が一歩踏み出した途端、この部屋は波打つように動き出した。まるで地面が生きているように。そんな中でも自力で立てている優とリボーンは流石と言っていいだろう。

 

「生半可じゃねーバランス感覚が必要になるぞ」

「だね。僅かな振動だけで波打つもん。スケボー云々の前に歩くのも難しそう」

 

 ジャンニーニを降ろす直前に優は軽くジャンプをする。すると、再び何もなかったようにただの修行部屋に戻っていく。優はどこにも触れないように風を操り空を飛ぶ。

 

「うーん。練習すれば、何とかなるかなぁ」

『スケボーは、な。これの最終課題は優が歩いても波打たないだぞ?』

 

 聞こえたきた神の声に優は天を仰いだ。それはない、と訴えているらしい。

 

「どうしたんだ?」

「……思った以上に難易度が高いってことに気付いただけ。スケボーを乗りこなすのは序の口だったよ……」

 

 地面が波打つことを想定したスケボーの練習の方が簡単に決まっている。精神力や集中力という精神的な問題だけではない。無意識に優が纏っている風さえも完璧にコントロールしなければならないだろう。道理で雲雀が修行を優先にしろという訳だ、と優は遠い目をした。

 

「出来るだけ、頑張るよ……」

 

 優の僅かな動きから波打つというヒントもあったからか、リボーンはこの部屋の意図に気付いたようで優の弱気な態度を見ても発破をかけたりはしなかった。それどころか「スケボーだけで十分だろ」という言葉をかけた。

 

 理由はただ1つ。もし優がこの課題をクリアした時、今よりも優の考えがわかりにくくなるからである。

 

「お師匠様が用意したってことは必要なことだと思う。ありがとうね、リボーン君」

 

 気遣ってくれたと思い、優はリボーンに感謝の言葉をかけた。リボーンはニッと笑い返しながらも、ある不信感が募っていた。

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