リメイク版『異常な普通』も異世界から来るそうですよ? 作:しにかけ/あかいひと
終わったということは、既に何かを成した後であり───────
あの後、またあの白夜の世界に戻って、試練を受けることとなった3人の挑戦を見ながら、僕は白夜叉サンに質問攻めにあっていたわけだけど。
「のうおんし。あのノートに見せかけた魔導書は、おんしの言う師匠とやらに描いて貰った物なのかの?」
「まっさかー。アイツがこんな初心者丸出しのブツを描く訳ないじゃないですか」
その魔導書と評された、僕としては参考書程度にしか思っていないソレは、所謂授業ノートに近く。だって表紙からして、
『魔法陣の基礎 2-C 日下部 景子』
と、ファンタジーで魔法学校があれば、そこの基礎授業のノートを取ったようなものであり。
中身も、魔法陣やそれを構成する記号、文字などはおどろおどろしくても、女子が書いたような基本丸文字でカラフルな仕上がりだ。
「これは、僕がアイツから受けた魔法陣のど基礎を自分なりに纏めただけの授業ノートです。僕みたいな凡人でも扱えるように、マジで基礎に関してしか記述してない、魔導書と呼ぶにはあまりにもお粗末な参考書です」
「では聞くが…………」
そこで白夜叉サンは、意地の悪い笑みを浮かべながら言った。
「出来のいい魔導書は、その存在そのものが神秘と化すことがある。まあ、少しでも齧ったことがあるものなら、そうなることは分かりきったことであろうが」
「まあ、そうですねぇ」
「ならば何故おんしのその授業ノートは、
「…………チッ。あんまり意地の悪い聞き方しないでくださいよ。これに関しちゃあ、自己修復の陣が裏表紙に描かれてるだけっす」
…………まあ、バレないように偽装工作してますけどね。
「ふむう…………ますます凄いのう。ということは、これはおんしが描いた『魔導書』とは言わずとも、丈夫な『魔導入門書』というわけだ」
「…………ほぼ同じことを、アイツにも言われました」
そうなんだよなぁ…………『僕が使える=誰でも使える』だから、教材としてはめちゃくちゃ使えるみたい。アイツも『アレだね、異常を常人レベルに落とし込む力って、こういうところにまで働くんだね』って妙なところで肝心してたし。
「のう健太よ、別に『サウザンドアイズ』に入れとは言わんが…………これと同じ物を商品として卸してはくれぬか?」
「…………えー。なんか利用されてる感があって嫌でs───────」
「……………………」
睨まれてる。めっちゃ睨まれてる。
「今現在は魔王の動きは活発ではないが、いつ侵略してくるかは分からん。だから、魔王とのゲームで生き残り、戦い抜ける力を持つ者を育てる必要がある」
「…………僕のノートが、その助けになると?」
「左様。確かに、そのノートだけではこの私…………諸事情から力を制限されている私ですら届かなかったが、少なくとも5桁までの魔王ならば…………それ1冊を持ち、扱い方を熟知していれば最低限生き残ることはできるだろう」
「…………マジか」
いやまあ、そう言ってくれるのは嬉しいんですけどね?
「頼む、景山健太。この通りだ」
「あーあー止めて! 土下座とか偉い奴がやるもんじゃないよ全く! いいよ、理不尽から身を守るツールになってくれるんだってんなら、10冊でも100冊でも量産してやるよ!」
…………なんてーか、此処に来てから妙に過大評価されて落ち着かねぇな。嫌んなるぜ。
◇◇◇
てなわけで、僕以外の皆のゲーム…………っても、春日部サンとグリフォンの誇りをかけた勝負だったわけで。規模の差はあれど、やってることは僕と白夜叉サンとの決闘と大差ないと思うんだけどそこのところどうなのかしら?
まあそんなこんなで色々ドンパチやりましたが。
元々此処に来たのはなんででしたっけ?
「…………あ、忘れてました! 白夜叉様、できれば皆さんのギフトの鑑定をお願いしたいのですが」
…………ごめんね黒ウサギ。大事なことを忘れさせてしまう程の衝撃(女装&魔法少女)を与えちゃって。
「成る程。自覚はあるのね、この変態」
「それでも堂々としてたけどな、この変態」
「予備知識はあっても、これは流石に引いた。この変態」
「…………ねぇ、中々心にグサリと刺さって引き抜けないから罵倒するのやめてくんない? 僕の心ってガラスハートなのよ」
いやね、別に趣味じゃ…………ないからさ。
「まあ、その間についてはスルーするけれど。実際のところ、貴方はどうして女装してまで姿を隠さなければならなかったの?」
「地元は既に手遅れだったんだけど、とある事件により能力と名前が売れ過ぎて、敵が増えたから。…………この話はあまりしたくないから、今は勘弁ね」
思い出したいものでも、ないから。
「…………ごめんなさい。余計な詮索だったわね」
「ん? ああ、気にしなくていいよ。普通気になるって」
にしても、表情操作に定評のある僕が、感情を隠し切れなかったとは…………まあ、折り合いを付けられてないことの証左か。早くなんとかしないとな。
「で、白夜叉サン? なんかコソコソしてっけど、黒ウサギに対しての返答は?」
「うぐっ。しょ、正直専門外なのだがの…………」
…………まあぶっちゃけ大方の方向性に関して言えば、僕なら観ただけで把握できるけど、それは言わないことにしよう。
まあそんな内心を隠しながら、白夜叉サンが僕ら4人を順番に観察している様を眺めていると、お手上げと言わんばかりに手を挙げて口を開いた。
「ふむ…………1人を除いて素養が高いのは分かるが、それだけでなんとも言えんな。健太に関しては矢鱈に存在が希薄ということしか分からん。ちなみにおんしら、どの程度自分のギフトについて把握しておる?」
うーん、どの程度かぁ。
「企業秘密」
「右に同じ」
「以下同文」
「…………いやあの、手の内晒したくないのは分かるけど、それじゃあ話が全く進まんと思うんだけど?」
いや、手の内晒したくないから女装した僕の台詞じゃないけどね。
「ううむ…………とは言えおんしらは試練をクリア、健太に関しては私と決闘で引き分けた…………『主催者』としても、星霊の端くれとしても、何かしらの『恩恵』は与えたいところだ。ちょいと贅沢な代物だが、示した力の対価にも合おう」
と、ここで何かを思いついたらしい彼女。ニヤリと笑いながら柏手を打った。
すると、僕らの目の前に光り輝くカードが。
コバルトブルーのカードは逆廻クン。
ワインレッドのカードは久遠サン。
パールエメラルドのカードは春日部サン。
僕のカードは…………クリスタルホワイトとでも言えばいいのだろうか?
そんでもって、カードにはなんか記載がされていて。
─────────────────
景山健太・ギフトネーム
『
『
『
『────(停止状態により出力不可)』
『魔法少女:日下部景子の栄光』
─────────────────
……………………ツッコミどころ多過ぎな件について。
「ギ、ギフトカード!」
黒ウサギが驚いたように声を上げた。そうか、このカードの名前はギフトカードってのかー。
「お中元?」
「お歳暮?」
「お年玉?」
「結論:つまらないものですが〜ってことだよね」
「「「そういうこと」」」
「ち が い ま す!!! というかなんで皆さんそんなに息が合ってるのです!?」
「「「「その場のノリと雰囲気」」」」
イエーイ! とハイタッチを交わす僕らと、疲れたように耳をへにょらせる黒ウサギ。ま、心労はこれからバンバン嵩んでいくからこんなの序の口序の口!
とりあえず、コレは何処ぞの4Dポケット機能付きギフトの名称判断機というカードみたいで。
試しに、魔導参考書と普段はガチャポンカプセルに入れてる衣装を入れてみると、
─────────────────
『マジ★狩る学習帳』
『マジ★狩るドレス』
─────────────────
…………つ、ツッコミどころは満載だが、とりあえずスルーだスルー!
「ちなみに、ギフトカード内のギフトは使うことはできるの?」
「うむ、できる物とできない物はあるがの」
へぇ…………じゃあカード振って魔法発動みたいなこともできるのかなぁ。まあそこは要検証だけど。
「このカード、通称はギフトカードだが、正式名称は『ラプラスの紙片』、即ち全知の一端だ。そこに刻まれるギフトネームとは、おんしらの魂と繋がった『
全知の一端、ねぇ。ああならば半分に関しては納得だけど。
「ねぇ白夜叉サン。ギフトネームが出力不可になることってあるの?」
「………出力不可? まあ動いていないギフトの名称が映らぬことはあるにはあるが」
そう言って白夜叉サンは、僕のカードを覗き込み、顔を真剣なものに変えた。
「…………おんし、まさか」
「ストップ。判っても言わないで」
どの文字列で、血相を変えたのか分かった僕は、その先を口にする前に止めた。
「…………まあ良い。今のところは、だが」
その辺りの配慮が、凄く助かった。
◇◇◇
あの後、逆廻クンの方もギフトネームが『
「今日はありがとう。また遊んでくれると嬉しい」
どこか満足気な春日部サン。おそらくグリフォンに逢えたのが嬉しかったんだろうね。
「あら駄目よ春日部さん。次に挑戦するときは対等の条件で挑むのだもの」
悔しさを笑顔の仮面で隠しつつ、カラッと言ってのけたのは久遠サン。
「ああ。結局あの場で張り合えたのはそこの凡人(笑)だけだからな。こりゃどっちも意味でも悔しくて敵わねぇ」
好戦的な表情で白夜叉サンと僕を睨む逆廻クン。そんでもって久遠サンも同調する様にウンウン頷いてるし。
「あ、あはは…………別にこの程度、君らなら何れは到達できると思うんだけどなぁ…………」
乾いた笑いで、泣きたくなりそうな本心を隠す僕。なんだってこんな味方から好戦的な視線を向けられなきゃならんのか。
「ふふふ、良かろう。楽しみにしておるぞ。…………ところで」
真剣な表情で話題転換をする白夜叉サンが、こう切り出した。
「店前でのやり取りから判断するに、おんしらは自分達のコミュニティの状況を把握しておる。間違いないな?」
「ああ、その話なら1番最初に聞いたからな。名前と、旗を奪われたってことはな」
「ならそれを取り戻すために、『魔王』と戦わねばならんことも?」
「もちろん聞いているわよ?」
「…………。では、全てを承知の上で、『
念を押すように、彼女は確認を取る。
まるで、若者を茨の道に進ませない様にせんとする先達の様に。
「ええ、そうよ。…………遠回しな言い方は止めて貰えないかしら? 分かっているわよ、私達では魔王との戦いに生き残れないと忠告をしたいのでしょう? 魔王の恐ろしさとその戦いの苛烈さの一端は、貴女と景山君との決闘で理解したつもりよ」
「…………ふむ、それは失礼した。一端でも分かっておるのならば、何も言うまい。但し、魔王との戦いの前に経験とギフトを得るためにギフトゲームに挑んで経験を積むことを推奨しておこう」
「助言、ありがと。肝に銘じておくわ」
その時の僕らの表情が良かったのかどうなのかは分からないが。白夜叉サンは、満足げに頷いていた。
と、言うわけでギフトにも変更と追加がございました。え? 一つ明らかギフトじゃないって? 一応アレも何かを成した結果の功績だから問題ありません(錯乱)
とまあそれはともかく。
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