リメイク版『異常な普通』も異世界から来るそうですよ? 作:しにかけ/あかいひと
(つまりカオス)
◆◆◆
雲霞の如く眼前に広がる人、人、人。
そのどれもが同じ様に、その
異能を持つ…………とは言え、単に異常を平坦に落とし込む力しか発揮できない、人間である僕では、それに立ち向かうことは出来ず。
徐々に身体は潰れ、限界を迎えようとしていた。
足りない。何が足りないって、全てが足りない。
僕がこんな人間でなければ…………何も失わずに済んだというのに。あの
「…………あ」
嗚呼成る程。
僕が
そんな僕の思考に呼応する様に…………身体の中心が、ナニカに塗り潰されていく。
そう、コレだ。こういうことなんだ。だが…………これでも足りない!
「全部……全部だ、全部を持っていけ……。だが、その代わりに目の前の糞野郎共は全て、凡て、総てッ!!! 完膚無きまでに塗り潰すッ!!!!」
血と共に、
身体全てを塗り潰され、
「[──────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────]」
その身を完全に
◆◆◆
『ゴーストタウン』
なんらかの事情によって住人がいなくなった町を指す言葉。
そういった所を拠点にすることもあった僕にとっては、割と身近な現象…………なのだが。
「ウソだろ…………!?」
『サウザンドアイズ』の支店を後にし、『ノーネーム』の本拠である、と案内されて踏み入れた其処で、最初に目にしたのが、ゴーストタウンのようで、其れ以上に死んだ光景。長い…………否、永い時間をかけて風化したであろう景色。
整備されていたであろう街路はボロボロの上に砂を被り、木造の建築物は軒並み朽ち果てて潰れ、街路樹は枯れたまま放置されている。
ゴーストタウンでも、ここまで酷くはならない。
「…………おい、黒ウサギ。魔王とのギフトゲームがあったのは────今から何百年前の話だ?」
僕と同じ疑問を抱いたのだろう。逆廻クンが、黒ウサギに質問する。
僕は、直感していた。この光景は、そんな昔に生み出されたものではない筈。何故なら───────
「僅か、3年前でございます」
そんな大昔であるならば、目の前のウサギの少女が、無表情に徹しながらも、肩を震わせているわけがない。
この姿は、とても似ていた。
『 』を失った、あの親友と僕の姿に似ていた。
拳を震わせ無力を嘆き、その身をバケモノにやつした昔の僕らにそっくりだ。
抱える悲しみが風化し切れていない、その姿が語っていた。
「ハッ、そりゃ面白いな。いやマジで面白いぞ。この
『面白い』と口にしつつも、戦慄と怒りを混ぜながら、彼は獰猛に笑った。
「………断言するぜ。どんな力がぶつかっても、こんな壊れ方はあり得ない。この木造の崩れ方なんて、膨大な時間をかけて自然崩壊したようにしか思えない」
そんな彼の言葉に続くように、久遠サンと春日部サンも続く。
「ベランダのテーブルにティーセットがそのまま出ているわ。これじゃまるで、生活していた人間がふっと消えたみたいじゃない」
「………生き物の気配も全くない。整備されなくなった人家なのに獣が寄ってこないなんて」
より、この場所が死んでいるということを認識させられる言葉。そしてその言葉から、僕はある推測を立てる。
「時間を弄りでもしたか…………星霊かそれ級の存在じゃなきゃ無理だ、こんなの」
僕だって、この景色を見るまではこんな状況を作り出せなかったであろうというのに。どうやら僕の知っていた
「………力のある魔王とは、それ程までに凶悪で強大だったのです。彼らがこの土地を取り上げなかったのは魔王としての力の誇示と、一種の見せしめでしょう。彼らは力を持つ人間が現れると遊び心でゲームを挑み、二度と逆らえないよう屈服させます。僅かに残った仲間達もみんな心を折られ………コミュニティから、箱庭から去って行きました」
白夜叉サンが、あそこまで念押しをして確認を取っていた理由が、改めて分かった。
『ノーネーム』に所属するということは、この光景を作り上げた魔王と対峙せねばならぬことだ。そりゃあ、止めたくもなるに違いない。
…………黒ウサギとは別の理由で、僕はこの『ノーネーム』に所属せねばならんみたいだ。これを見逃すのは…………理不尽の理不尽として、この身を堕としたあの日の僕に対する冒涜であり、
「……………………」
黒ウサギ…………僕ら同様、理不尽に大切な存在を奪われたであろう彼女を放っておくことはできない。
「…………前言を撤回しよう、黒ウサギ」
「…………?」
声を出さぬまま、顔だけをこちらに向けた彼女に向かって、宣言する。
「僕は、あんたら『ノーネーム』の再建に手を貸すことは吝かでないと言った。訂正する、この景色を見せられて気が変わった。『ノーネーム』の再建に、この身を尽くそう。なんなら、使い潰してくれても構わない」
淡々と告げた僕を見る周りの感情は…………読まないことにした。
◇◇◇
さて、話は変わるが僕は子供がとても好きだ。と言ってもショタロリコンという意味ではなく、純粋な意味でだ。だって素直で可愛いもん。悪意に塗れることも多かった僕としては、子供とのふれあいは心の清涼剤だったとも言えよう。
そして、面倒見もまぁまぁ良いというのはちょっとした自慢だ。なんせ子守なら、弟と妹の面倒を見てきたという経験と実績もあるのだ。ふふっ、僕にできないのは赤ん坊の母親になることぐらいのものさ。
さて、更に話を変えよう。
僕らはあの廃墟の先を進み、それなりに整っている街並み────を通り過ぎ、街に張り巡らされている枯れた水路の基点…………何かを収める台座のある場所に来ていた。『サウザンドアイズ』の支店による前に先に戻っていた『ノーネーム』のリーダー:ジン=ラッセルくんに、ここに来るよう言われたのでね。
そして今、目の前に紹介と称して集められた、枯れた水路を掃除していたたくさんの子供。黒ウサギ曰く、獣のギフトを持っている子がいるのか、ケモミミだったり尻尾が生えてたりしていた。
さて、この僕景山健太は子供好きである。故に───────
「[さあお前たち、あの忌まわしきマジ★狩る景子を倒しておしまい!]」
「[[[イエスマム!]]]」
「[しまった、罠だったのね!]」
人形劇を披露したとしても、なんら不思議ではないだろう。
いやー、意外に子供受けがいいんだよな、コレ。台本、人形、役など、すべて僕1人のリアル1人劇ではあるが、そこら辺には自信が少しあるので問題はない。
「[喰らいなさい、マジ★狩るエクスプロージョン!]」
「[[[ギャ、ギャーッ!? 目が、目がァ!!?]]]」
「[クッ、撤退だ…………覚えていろ、マジ★狩る景子!]」
そうこう思考に浸ってるうちに、話は最後のシーンを迎える。
「[こうして、マジ★狩る景子は敵の罠を跳ね返し、見事撃退することに成功しました。だかしかし、君の戦いはまだ終わらない! 頑張れマジ★狩る景子、負けるなマジ★狩る景子!]」
人形を片付け、台をしまうことで幕を引く。
「本日はご覧いただき、誠にありがとうございました♪」
100人中100人が凡庸だと言うであろう顔でも、愛嬌一杯の笑みの形にすれば、嫌な気分はしない。むしろ、余計な要素が無い分顔に浮かべた表情をストレートに受け取ってくれるので、僕は自分の姿形が凡庸であることが幸運だと思っている。ほら、目の前の子供達も僕を怖がることなく拍手しながら笑っているのだから!
「すごーい! 面白かったー!」
「ねぇねぇにーちゃん! 今のどうやってたの!?」
ふはははは! 賞賛の声が嬉しいぞチクショウっ♪
「ダメだ、教えん! 芸人にとって、タネ明かしはやってはいけないことの一つなんだゾ!」
『えぇ〜』
残念そうな子供達の声に胸が痛むが、こればっかりはねぇ。
「す、すみません健太さん。子供達に劇を披露してくださって」
「ん? ああ、良いってことよ黒ウサギ。子供は元気一杯に笑ってるのが一番だからね!」
今まではそういう余裕はなかったんだろうけど、これからはこうやって楽しめる催しもしないとだしね、予行演習予行演習!
さて、とはいえ長い時間皆を付き合わせたので、結構な時間の遅さだ。手をパンパンと叩き、視線を集中させる。
「さて、夜も遅いからみんな寝ましょーねー」
『はーい!』
そうして僕は、黒ウサギに本館と子供たちの寝る別館の場所だけ聞いて別館に向かい、みんなを寝かしつける為に子守唄を歌って本館に向かうのであった。
───────アレ、なんか僕早速保父サンポジに落ち着いてない?
知ってるか…………前半でシリアスかましてるアイツと、後半で人形劇してる兄ちゃん、同一人物なんだぜ?
それはともかく、
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