リメイク版『異常な普通』も異世界から来るそうですよ?   作:しにかけ/あかいひと

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今回したかったこと。

健太に『残念だったねぇ!!』と言わせたかった。

ネタが分かる人がいたら、赤域は嬉しいです。

それでは、どぞー。


その11-凡人、キレる

 

「よお保父さん。見事な引率だったな」

「あら保父さん。随分と手馴れていた様だけど、経験があって?」

「流石保父さん。私達にできないことをやってのける。そこに痺れる憧れる」

 

…………本館にある談話室に足を踏み入れたら、真っ先に言われたセリフがコレである。

 

「いやあの、僕保父サンじゃねーし。あと春日部サンのだけなんか違う」

 

それは某吸血鬼のあの人の人間を辞める前の取り巻きのセリフだから。

 

「それで、皆さんお揃いだけど黒ウサギの姿が見えんのですが」

「ああ、黒ウサギなら風呂の掃除をしに行ってるわ。しばらく使ってなかったみたいで、相当汚れてたみたいよ」

「へぇ〜…………手伝いに行った方がいいかね?」

「止めとけ止めとけ。むしろこれ以上お前がなんかやると、黒ウサギが申し訳なさでヘコむぞ」

 

…………うーん。あの性格だとその可能性があって嫌だなぁ。まぁ、自分の手違いで殺しちゃった人間に色々やらせるのは、確かに罪悪感MAXになるのでしょうが。

 

「ちなみに今の口振りからして、景山くんは大掛かりな掃除もできるのよね?」

「ん? まーね。家事一般は母さんに叩き込んでもらったし、そういう依頼も多かったし?」

「依頼、ねぇ? 貴方、此処に来る前は何してたのよ」

「普通に学生やってる傍らで、何でも屋をやってましたン! 『何でも屋:NOFUTURE』! 留守番家政もなんのその、報酬に見合えば化け物退治もやってきた地域密着型の何でも屋でござい! あ、コレ名刺ね」

 

いつもの癖で、懐から僕の名刺を取り出す。と言っても、僕らの秘密基地の固定電話と僕の携帯番号にメルアド、あと『何でも屋:NOFUTURE代表 景山健太』といった最低限の内容しか書いてないけどね。

 

NOFUTURE(未来無し)って…………また恐ろしいな名前ね」

「僕の相方が決めたんだけど、どんな無理難題や化け物も、僕らを相手にしたらNOFUTURE(先なんてない)ってことらしいね。というか僕ら2人がNOFUTURESって呼ばれてたし」

 

まあ、何でも屋を立ち上げた当初はみんなからずっと突っ込まれ続けたから、変な名前だということは自覚している。

 

「相方…ってのは、件の師匠ってヤツか」

 

僕と久遠サンの会話を聞いていたらしい逆廻クンが、そう僕に聞いてくる。

 

「そっ。実はあんな風に空に投げ出されたのもアイツの所為じゃねーのか? なんて思うぐらいにはぶっ飛んだバケモノだよ。まあ、時期に僕を追って殺す為に箱庭に来ると思うから、待ってたら会えると思うぜ?」

「…………。殺すって、物騒だね」

 

うーん、いやでもよう春日部サン。こんなの僕らの間では軽く日常茶飯事なのよねー。

別に腐れ親友に限った話ではなく、割と恨みも買ってますので僕を殺したい人間は沢山いたわけで。…………悲しいねぇ。

 

「……お前、よくそれで何処にでもいる一般人だなんて言えたな。正直、見た目以外は一般人からかけ離れてるんだが?」

「う、うぅ…………僕が1番気にしてることを…………」

 

い、良いじゃない! いつも逸般人とか言われて凹んでるんだからねっ! バケモノが一般人になるのを夢見て、何が悪いっていうのさ!

 

「と言うか! 僕だけ身の上話くっちゃべるのって少し不平等じゃありゃしませんか!?」

「「「いや、その場の雰囲気で?」」」

「なにその連帯感!!?」

 

いや、人のこと言えたことじゃねーけど、本当に今日顔を合わせたばかりなのかよあんたら!?

 

「ちくしょう、今度は僕の方から───────」

「皆様、湯殿の用意ができました!」

 

…………………………………………。

 

「あ、健太さん! 先程は子供達の面倒を見ていただき、ありがとうございまし…………あの、なんでこんな親の仇みたいに睨まれてるのデスか?」

「いや黒ウサギ、グッジョブだ。お陰で俺たちは面白い」

 

…………うん、黒ウサギは悪くない黒ウサギは悪くない黒ウサギは悪くない黒ウサギは悪くない。

 

そう暗示をかけながら、風呂の準備ができたと報告してきた黒ウサギから、視線を外した。

 

「…………とりゃーず女性陣、行ってきたら風呂に」

「そうさせてもらうわね」

「うん、行ってくる」

 

そう言って、黒ウサギに連れられながら久遠サンと春日部サンは談話室から出て行きましたとサ。

 

「…………なんてーか、ですね。僕にみんなの過去を掘り起こさせない様にする世界の意思があるのかと疑いたくなるわけですが」

「ねーだろ」

「速攻でのバッサリ斬り捨てありがとう。お陰で泣きそうになるよ」

 

まあ間違っても泣いたりしませんがね。

 

「まあ、実は積極的に聞き出そうとは思わないんだけどね」

「あん? そりゃどういうことだ?」

 

いや、だってねぇ?

 

「ほら、いくら割り切ってるとは言え、元の世界を思い出させたらなんか申し訳ないじゃないか!」

「…………前の世界を思い出させる様なことして悪かったとでも言えばいいか?」

「いやいやまっさかー!」

 

僕みたいなヤツが、そんな牽制するようなことするわきゃねーでしょうが。

 

「ったく、いい性格してやがる」

「そっくりそのまま返してあげますが?」

 

不機嫌な顔をしながらもどこか楽しそうに言葉を交わしながら、僕は今からすべきことについて頭を回す。

 

「ぶっちゃけさぁ…………こんなこと言うのってあの2人を舐めてる様で言いたかないわけなんだけど」

「ああ、成る程? むしろ気を使う方があいつらにとっては屈辱な気もするが」

「そうかもね。でも、汚れ仕事(・・・・)は僕らでカタを付ける方がいいと思うわけで」

「別に不法侵入者(・・・・・)ぐらい、俺一人でも構わないが?」

「冗談。コミュニティの盾になるって言葉は嘘じゃないからね。脅威になるかどうかはお察しだけど、僕が動かないわけにはいかないさ」

 

実に…………実に悪い笑顔を浮かべながら、僕は不敵に笑う逆廻クンを見る。

 

「じゃ、長い付き合いになりそうだし、よろしく頼むぜ十六夜(・・・)クン?」

「ヤハハ! こっちこそだ健太(・・)!」

 

少なくとも、この『ノーネーム』では頭一つ飛び抜けてるであろう僕らは、外部からの不埒者の対処に向かうことにした。

 

 

◇◇◇

 

 

この僕、景山健太自体には意外なことに、直接的な戦闘能力があまりない。我流の自衛術程度だ。異能的な点から見れば、『チート乙』と言われてしまうようなバケモノ性、魔法陣を用いた間接的な魔法行使と、結構充実はしているが。

 

だからというわけではないが────────

 

「オラッ!!」

『ズドォォオンッ!!!!』

 

素の身体能力で、クレーターできる程の速度で石を投げられる人って凄く羨ましいのです。

 

とまあそんな私事はともかく。

現在僕らは子供達の寝ている別館前にいた。…………え? 轟音で子供達が起きるって? 勿論騒音は別館に届かないように途中でシャットアウトしてますとも。

 

で、件の侵入者達は、おそらく例のヤの付く自由業みたいなコミュニティからやってきたみたいである。

 

さて、ここでよく分かるヤの付く(ryコミュニティ『フォレス・ガロ』とそのリーダー:ガルド=ガスパーの所業。

 

・ここら一帯のコミュニティから人質として女子供を攫い、それを盾にコミュニティの名と旗を賭けたゲームを強要。

・名と旗を奪ったコミュニティを取り込み、コミュニティを成長させ、人質を取っても動じなかったコミュニティを威圧し、またゲームを強要。

・取り込んだコミュニティが従順に動くよう、それぞれから人質として子供を数人取っている。

・肝心の人質の子供達は、五月蝿くてイライラしたから殺したとのこと。証拠が残らぬよう、腹心の部下が遺体を喰ったらしい。

 

…………まあ、清々しい程の外道だよね。正直、無粋と言われても割り込んで直接潰しに行きたい僕である。が、直接その発言を聞かされた彼女らの方が胸糞悪いに違いないので、堪えてはいるが。

 

で、この侵入者達はフォレス・ガロからの刺客。そして、子供達が寝ている別館の前に、姿は隠していたとは言えやってきた。つまりは…………そういうことだろう。

 

そりゃもうブチ切れですよ、ええ。怒髪天を貫くとも言い換えよう。

 

「十六夜クン、まさか殺すなんてつまらんことはしてないよね?」

「一応加減はしたから生きてるだろ。ほら、落ちてきたぞ」

 

十六夜クンの投げた石に吹っ飛ばされた侵入者達が、落下してその姿を現わした。…………あ、墜落時の音を消し損ねた。その証拠に、後ろの方から駆けてくる音が聞こえ始めた。

 

「これは…………一体何が!?」

 

ウチのリーダー:ジン=ラッセルくん。消し損ねた音に気が付いて、やってきたようだった。

 

「侵入者だぜ御チビ様、例の『フォレス・ガロ』からだろうな」

「…………! 成る程、そういうことでしたか」

 

十六夜クンの答えに、ジンくんは現状を理解したようである。

 

さて、それはともかくさんざっぱら隠れやがってイライラしていたので、転がってる内のリーダー格ぽい獣人の胸倉を掴んで起こし、口を開く。

 

「アンタら、『フォレス・ガロ』の人攫い部隊ってことであってるよな?」

「そ、そうだ…………」

 

怯えたように、その獣人は肯定した。

確認終了。故にもう用済みだ。

 

「そうか分かった。さっさと潰れr────」

「止めろ」

 

潰すべく振り上げた右腕を、十六夜クンに止められる。

 

「まだ聞かないといけねえことがある。勝手に再起不能にしようとすんじゃねぇよ」

「…………あいよ」

 

僕としては用済みだが、彼からしたらまだこいつらには利用価値でもあるみたいだ。仕方がないので、僕は掴んだ獣人を無雑作に放した。

 

「さ、流石だ…………神格持ち相手に圧勝したという子供がいたという話は本当だったのか」

「へえ? もうそんな噂が出回ってんのか」

 

リーダー格は、咳き込みながらそう言った。…………あんま目立つのは苦手なんだが。

 

「恥を忍んで頼む…………我々の…………いや、魔王の傘下であるコミュニティ『フォレス・ガロ』を完膚なきまでに叩き潰してはいただけないか!?」

 

そしてそのまま、最期の希望にでも縋る目をしながら、彼は懇願してきた。

 

だが、

 

「嫌だね」

「お断りだクソ野郎」

 

それに応えてやる義理はねー。

 

「ちょ、お二人共!」

「え、なに? ジンくん的にはお気に召さない感じ?」

「気に召さないと言うことではなく、もう少し言いようがありませんか! おそらく彼らは、フォレス・ガロに人質を取られた方々なのでは!?」

「んー、あーそう。それで(・・・)?」

「…………!!?」

 

冷たく言葉を叩きつけながら、僕は呆れた様に見せかけた目でジンくんを見下ろす。

いや確かに、歳不相応に思慮深いんでしょう。だが、どうにもその歳ゆえに冷徹に成りきれないと見える。コミュニティのリーダーなのだから、時には冷徹を通り越して冷酷に成らざるを得ない場合だってあるのに、この程度では…………。だからこれを機に、彼には成長してもらおうか。

と、ここで十六夜に目を向けると、似たようなことを考えていたらしい。目配せをしながら、シナリオを描く。

 

「おい御チビ様、お前こいつらが…………こいつらも人攫いだってことが頭から抜けてねぇか?」

「…………ッ!」

 

十六夜クンが、彼に助け舟を出す。

 

「察しは付くが、原因や理由は知らねえ。と言うか、知ったところで意味は無え。こいつらは、自分の身可愛さで人攫いに身をやつした同じ穴の狢だ」

「そーいうこと。そんな奴に、僕はこれっぽっちも手を貸したくは無いね」

 

まあ、同情はできるけどね。でも、許せない。

 

「し、仕方がなかったのだ…………! 自分の身可愛さな部分があったことは否定しない…………! だが、逆らえば我らの人質である子供達が────」

 

僕は、遮るように言葉を挟んだ。

 

「その人質、殺されてるけど」

 

時間が止まったかのように、侵入者達は固まりそして、

 

「……………………ぇ」

 

意味の無い呻き声をあげた。

 

「聞こえなかった? 殺されてるってさ。いいか、よく聞け。僕の仲間がガルド=ガスパーから直接聞いたところによると、集められた子供達は、連れられたその日に殺されていたんだよ。残念だったねぇ!! 君らの行動は!! 無意味に死体を量産しただけに過ぎなかったんだよ!!」

 

突き付けた、容赦の無い現実。彼らが絶望に陥るのは、自明の理であった。

 

───────ここまでは、僕の役だ。後はお前がやれよ、十六夜クン。

 

「お前達……『フォレス・ガロ』が憎いか? ガルド=ガスパーが憎いか? その裏にいる魔王が憎いか? 不甲斐ない自分が憎いか? …………こんな理不尽が、憎いか?」

 

その言葉は、潰れた心に入り込むには十分。

 

「…………ああ、憎い…………殺したい程に、憎い…………ッ!!!」

 

諦観に支配されつつも、殺意を放ちながら、彼らは食いしばり、唇から血を流す。

 

「そうか…………喜べお前ら」

 

十六夜クンは、笑みを深めながら告げた。

 

「ここにいるジン=ラッセル坊っちゃんが、魔王を倒すコミュニティを作る(・・・・・・・・・・・・・・)

「…………え?」

 

彼らにとっての福音を。ジンくんにとっての想定外を。

 

…………え、いや、流石の僕も想定外なんですが!!?

 




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