リメイク版『異常な普通』も異世界から来るそうですよ? 作:しにかけ/あかいひと
話が飛んでると感じた貴方、一個前の話からよろしくお願いします。
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「お電話ありがとうございます! こちら何でも屋:NOFUTURE、景山が承ります! あ、加藤さん! いつもお世話になっております! ふむ、ふむ。ええ、成る程、いつもの場所に幽霊が出没してると。かしこまりました、今から現地の方に向かいますので少々お待ちいただいても…………ええ、はい。あ、今回のお代は結構ですよ。いつもご贔屓にしてもらってるので。はい、はい、ありがとうございます! では、後ほどよろしくお願いします! では、失礼します!」
「……………………」
「ヘイ相棒、少し3丁目の方に行ってくる!」
「…………あ、うん。分かった。と言うか」
勝手に僕の苗字名乗るんじゃねえよ!!?
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本拠最上階大広間。
ジンくんと僕は、被告人である十六夜クンを問い詰めていた。
「十六夜さん、あれはどういうつもりですか!?」
「おいてめー、ありゃ一体全体どういうこった?」
あの後はもう何ていうか、酷かった。
そもそものジン=ラッセルの『ノーネーム』は、名と旗を取り戻すことを含めたコミュニティの再建を掲げていた。つまり、積極的に攻めに行かねばならない魔王は1人か2人ぐらいだったはず。
だが、十六夜クンがこんなことを宣ったのだ。
『俺たちは傘下を含めた魔王関係のコミュニティの脅威から守る。そして守られるコミュニティは、口を揃えてこう言ってくれ。《押し売り、勧誘、魔王関係御断り。まずはジン=ラッセルの元にお問い合わせを!》ってな!』
要約:魔王なんか怖かねぇ…………野郎ぶっ殺してやらァ!!!
そしてご丁寧にあの野郎、連中に言いふらすように言っちまったのだ。即ちジン=ラッセル率いる『ノーネーム』が全ての魔王を敵に回したことは、遅かれ早かれ伝わってしまうと言うわけで。
本来ならたかが『ノーネーム』のそんな戯言、通用なんてしないのだが…………ここで十六夜クンのスペックと、僕によるハートブレイクが活きてくる。
十六夜クンがその圧倒的な力を見せつけた。僕が僅かな希望に縋りたくなるような下地を作り上げた。
なんの疑問も持つことなく、彼らは言いふらす。タチの悪いことに、『神格持ちを打倒した人間がいる』という情報付きで。
「あん? 御チビならともかく、お前なら納得はともかく理解はできてると思ってたんだがな」
「確かに想像は付いてるし、理解はできてるけどね。でも、僕には君が、自分の快楽に任せて行動したようにも見える」
いや、見えるじゃなくて確定だ。この野郎、魔王と戦うことを望んでのこの行動だ。
「ま、否定はしないがな。あんな面白そうな力を持った奴とゲームで戦えるなんて、最高じゃねえか」
「…………生憎僕は、コミュニティを危険に晒す程の
とここで、ジンくんが口を開いた。
「仰る通り…………僕は十六夜さんの発言の意図が読めません。口ぶりから察するに、無闇にコミュニティを危険に晒すだけではないとは思うのですが…………」
あー…………まあコレだけで分かれっていう方が無茶だわな。
「まあ答えてやってもいいが、その前に確認したいことがある。御チビは俺達を呼び出して、どうやって魔王と戦うつもりだったんだ?」
その質問に、ジンくんは黙り込む。…………まあ、魔王をどうにかできる超戦力が身内に居ない以上、先なんて想像できなかったろうしね。
「まず………慢性的な水不足という問題を解決する為に、水源を確保するつもりでした。水神クラスのギフトは無理でも、僕ら『ノーネーム』が使う分を確保できるだけの物ならば、新しい人材と作戦を的確に組めば不可能ではなかったので。ですがそれに関しては、お二方が水樹の苗を勝ち取ってくれたため、解消しました。本当にありがとうございます」
あ、僕じゃないんで。やったの十六夜クンなんで。僕そんなカミサマ倒せる程壊れてナイヨー。
「で、そのあとは? まさか、『堅実にゲームをこなして、地道に強くなるー』とかフワフワしたことを言うつもりは無いよね?」
「あ、えっと…………その」
……………………おおう、マジかい。
「…………いやあのジンくん。君それで本当に件の魔王を打倒できると思ってんの?」
考えの足りないこの僕でも、それでは無理だと分かる程度っすよソレ。
「呆れたぜ、こりゃ何にも考えてなかったみたいだ」
「う…………」
反論したいけど、できない。今のジンくんの心境はそういった所か。
「ねぇジンくん。組織が力をつけて地盤を固くするってのは当然のことで、大前提なんだよ。一応こんなんでも、何でも屋をやってたから分かるんだけど」
何でも屋:NOFUTUREをやり始めた頃は、名前の知名度が低かったことと、怪しげだったこと、メンバーが僕と相棒の2人だけだったこともあって、悲しいほどに依頼が来なかったものだ。
なんで依頼が来なかったのか? そりゃ、信用に欠けるからだ。
「信用を勝ち取るには、実績と名前だ。実績だけが広がってもそれが結びつく名前がなければ意味は無いし、名前ばかり先行しても大した信用は得られない」
その点僕らは、割と有名人だったのですぐにひっくり返り、順風満帆で何でも屋ライフを送れたわけだが。
「じゃあ『ノーネーム』は? 実績は? それを広げる為の名前は? 丸切り無いよね。この時点で既に信用度は地の底に叩きつけられてるのに、以前は繁栄していたコミュニティだったという過去の所為で、落ちぶれた感を演出してさらにドン! 信用を得ようにも、旗なし名無しの現状が、這い上がることを許さない。これじゃ、力をつけても、せっかく人材を呼び出しても、無駄になっちゃうよ」
さて、ここでバトンタッチだ。
「だが御チビ、売り込めるものがないわけじゃないんだぜ?」
「え? …………あ、」
ここまで来たら、ジンくんにも分かったようである。
「僕の…………この『ノーネーム』のリーダーの名前『ジン=ラッセル』を、『対魔王コミュニティ』というインパクトと共に広めることで、信用を得る足掛かりにすると言うことですか?」
「ふぅん? やりゃあできんじゃねえか」
少し満足したように、十六夜クンが頷いた。流石はリーダーを任されただけあって頭は良いみたいだ。経験で取り繕ってる僕とは大違い。
「しかも、それだけじゃない…………打倒魔王を目標にしているコミュニティは、何も『ノーネーム』だけではない。だから──────」
「合格だ御チビ。まあ、最初の壁を乗り越える必要はあるが、この方向で行けば、人材も幾らか集まるだろう」
そしてその最初の壁は、今回のゲーム。それも予想では勝てる相手。
「別に俺並みなんて贅沢は言わん。ましてやそこの凡人(笑)レベルなんて戯言も言わねえ。が、最低でも魔王とのゲームに耐えられる奴が必要だ。まあ、本来関係の無い魔王を引き寄せる可能性はもちろんあるが、魔王を倒せば隷属させることも可能らしい点から、それも人材集めの一環にしてしまえばいい。多少捨て身になる点には目をつぶらなきゃならねぇが、手っ取り早くコミュニティに面子を揃えて建て直すには、コレしかない」
まあ、長期的にやっても良いのなら安全策も取れるだろうが…………どちらにしろ、ジンくんの名前をなんらかの印象と共に広めなければならない点は共通する。それは僕も思っていたことだ。
「一つ、大きな不安要素があります」
「ああ、言わんとしてることは分かるぜ。広めるにあたって、信憑性に足る実力を示さないとダメなんだろう?」
「ええ。ですが、それに関しては近々『サウザンドアイズ』で開催されるゲームで勝ち抜いていただければ、問題は無くなります」
「へぇ? 『サウザンドアイズ』ってことは、力を見せつけるにはうってつけの舞台ってことか」
「それもありますが、もう一つ大きな理由が」
一区切りを入れて、彼は口を開いた。
「このゲームには、僕らが取り戻さなければならない、大事な方が出品されます」
「大事な…………
「ええ。それも…………元魔王の、です」
…………っ!!
「成る程…………それは、いろんな意味で落とせないゲームだね」
「はい。そのゲーム、十六夜さんに参加をお願いしたいと思います。その上で、この作戦を」
「まあ、いいだろ。絶対、明日のゲーム負けんじゃねぇぞ?」
十六夜クンとジンくんの間で交わされた契約…………この二人の表情を見て、僕は絶対に上手くいく確信を抱いた。
……………………と言うか、僕蚊帳の外になってませんか?
因みに健太は白夜叉と引き分けられるという実力を見せ付けたので、問題なしという。こいつ本当に凡人か?
とまあそんなことはともかく。
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