リメイク版『異常な普通』も異世界から来るそうですよ? 作:しにかけ/あかいひと
「それで、弁明は?」
「ハイ、ゴメンナサイ」
現在僕は、談話室にて十六夜クンに土下座させられていた。
まさか寝てたらそこそこ重い拳骨で殴り起こされ、そのまま連行されて土下座させられるなんて思ってなかった。
笑顔の癖に地味にこえーよこいつ。
「て言うか、何故に僕ぁここまで怒られてるので?」
「ほーん? じゃあ、今日のゲームでの目的は何だ?」
「ゲームに勝って、旗をかき集めて、『ジン=ラッセルのノーネーム』っつー名前を拡めると共に返却、そして僕らは『対魔王コミュニティ』であると宣誓…………だったろ?」
で、その名前を拡める際に、それだけの力があることを誇示する為に、白夜叉サンと互角に渡り合った僕の存在をチラつかせ………………………………あっ。
「……………………」
「改めて聞こう。弁明は?」
「…………ゴメンちゃい☆」
次の瞬間、轟音と共に視界に星が飛び回った。
「うぁぁぁああああ!!? 目が、目がァァァァァアアアアアアアッッッ!!!!?」
「ったく…………まあ、テメーがグースカ寝てた経緯は黒ウサギから聞いていたからこれ以上は何も言わねぇが…………俺があの駄蛇をぶっ飛ばしてなかったら、この作戦が頓挫してたところだ」
「マジすんませんでした十六夜サマ…………」
おそらく話はしてたのでしょーね…………僕が『蚊帳の外…………』って凹んで上の空だった時に。
「ん? てことは作戦の第一段階は問題なく…………とはいかなかったけど、クリアしたということっスな?」
「ああ。あの分なら間違いなく、対魔王コミュニティ:ジン=ラッセルの『ノーネーム』の名は拡まるだろうよ。あまり気分は良くねぇが、ガルドの悪行を止めたって事実が思った以上に功を奏している」
「ああ〜…………」
まあ弱い心に漬け込んだみたいであまりいい感じはしないよね。いや、僕は容赦なく漬け込むけど。
「となると、お次は実績」
「ああ、それもこれから暴れるであろう現役の」
「「魔王を倒すという実績」」
魔王の配下を倒したという事実だけでは、あまりにも薄い。実際にぶっ倒した事実が無ければ、件の魔王も興味を向けてはこないだろう。
…………まあ、下層の魔王ならば寄ってくるかもだから、まずはそいつをぶっ飛ばすしかないな、うん。
「だが…………悪い意味で想定外のことが起こった」
心底嫌悪感を纏わせながら、十六夜クンが言葉を吐き出す。
「御チビが言ってた、件の元魔王の仲間が出品されるゲームが、中止になったそうだ」
「…………なに?」
作戦の影響的に、何より現地組のノーネームメンバーの士気的に無視できない衝撃の内容に、声のトーンを落とす。
「話によると、そのままゲームが無かったことになるかもしれないということだ。サウザンドアイズ…………いや、主催者はその傘下コミュニティの『ペルセウス』だったかに、結構な買い手がやってきたらしい」
「…………きなくせーな」
いや、そんな話自体は珍しくないだろう。僕にしてみればクソッタレな話だが、奴隷のやり取りなんて、如何にも異世界モノらしいじゃないか。
ただ、何故か脳内を疾る
「仕方ない、直談判に移るしかないか。因みにその買い手とペルセウスのリーダーについての情報は?」
「オイオイ、俺達はまだ箱庭に来てから1日と少ししか経ってないんだぜ? 知ってるわけがねぇだろうが」
「デスヨネー」
「ま、ペルセウスのリーダーの方は少しだけ噂話を聞いたがな。曰く、俗な人間だとよ」
うん、それはなんとなーく予想してた。
だって、賞品がシャレにならないゲームの撤回って、結構ブーイングが来ると思うんだけど、買い手がつくだけでそれをやってしまえるってのは、リーダー像は俗っぽいという線が濃厚になってくるね。脅された線もあるけど。
「よし、買い手のコトを調べて、その買い手の差し出すモノ以上の貢物を用意するか!」
「ふぅん? やっぱお前、
そして、このセリフだけで僕の思い描く
「だってさー、今の僕らが思い通りにことを運ぼうと思ったら、
しかも、向こうの思惑に乗っかった上での実力行使になるだろうから、僕らは悪くないに違いない。
「ほう、腕に自信があるということか…………まあ、白夜叉殿と引き分けたのだならそれも納得はいくが」
「んーん。単に相手が
急に会話に入ってきたのは、金髪ロングで将来に期待が持てそうなスタイルと顔…………何より、拘束具的な意匠が目を引く美少女だった。
さて、大声で叫ぼう。
なに、なんとなーく直感で彼女の正体に辺りがついてるが、答えは正確には知らないので問題はないだろう。
「ふ、不法侵ny────」
「や、止めろ!!?」
嗚呼、愉快哉確信犯。
◇◇◇
僕の大声を止めようとしたとは言え、耳の良すぎる黒ウサギには届いてしまった様で。
軽〜くパニックな黒ウサギは、謎の美少女サマを見て『レティシア様!?』と叫びさらにパニック。慌てながらお茶を用意しに行ったところで。
「それで、件の中止になったゲームの賞品たる元魔王サマ改め、レティシア様? 新生『ノーネーム』にお越しになられたのはやはり、激励の一つでも掛けに来ようとしたからなのですかね?」
「……最初からお見通しだった、と?」
「ええ、もちろんですとも♪」
「その上であの第一声か…………白夜叉が言っていた通り、実にいい性格をしている様だ」
とは言え、凡俗たる僕は全てを理解している筈もなく。確認作業となったわけなのですよ。
「ヤハハハ! 言ってろ凡人(笑)!」
「寝言は寝て言えと教わらなかったか?」
「うるせぇ! て言うか初対面の割に大分失礼だなアンタ!? ヒトのこと言えないけどね!!」
少なくとも身体スペックと容姿、普段の思考回路は凡人のそれなんだよ!!!
…………まあ、それはともかくだ。
「で、どうです元魔王サマ、実際に見たご感想は? まあ、安心はできねーでしょうけど」
顔を見て、言動と声の調子を聴いて、挙動を考察し、
…………これが受け止める側の僕が、必要以上に歪なら不可能なのだが。まあそこも凡人スペックであることに感謝しよう。
で、そんな裏技ちっくに勝手に共感された元魔王サマは、目を見開き、そして張り詰めた緊張を緩めるかの様に、ため息をついた。
「…………ああ、そうだな。未だ不安の残るところではある。特に聞いた話だけだとね」
「あぁ…………」
というか、もし彼女が僕の情報を白夜叉サンから聞いたのだとしたら。
・いい性格してる性悪
・男なのに魔法少女
・ギフトカードに並ぶ異様な単語
・説明回避してるのである種正体不明
…………どう安心しろと? 少なくとも僕は安心できない。
というか、隣の十六夜は文字通り正体不明だし、ほかのメンツも一癖も二癖もある様な方々だし。つか、そんな問題児共に縋らなければ助かる見込みすら見当たらない程、切羽詰まってるノーネームェ…………。
「だが、それはいい。私個人の感情はともかく、新生ノーネームにかの『白き夜の魔王』を、本来の姿ではないとは言え、互角に渡り合う実力者が現れた。…………半ば諦めていたところに降って湧いた様な奇跡に、柄にもなく喜んだよ。君ならばもしや…………と期待をな」
奇跡、かぁ…………。うんまあ、奇跡なのかもしれないけれど…………うぅん。
「とは言え、たった1人の実力者だけでこの『ノーネーム』を再興できるか…………と言う不安があったため、今日のゲームに介入したのだがな…………」
「へ?」
「ああ成る程、御チビが『鬼種のギフト』って呟いてやがったのは、お前の仕業か
「ふへ!!?」
きゅ、吸血鬼ィ!!? てか話が見えないのだけれど!!?
「ああ、君はその場に居なかったのか。だが簡単な話だ。ガルドを当て馬に、彼女達の実力を計ろうとしたのだ。奴に、鬼種のギフトを与えた上でな。…………結果的に、ガルドでは当て馬にすらならず、徒らに君達の友を傷付けただけ…………正直なところ、会わせる顔がなかったから、遠目に見るだけに留めようかと思ったのだがな」
う、うぅん? ここはなんと言うべきか…………?
「それにしても……確か聞いたところによると、十六夜と言う名だったか。良く私が吸血鬼だと分かったな?」
「なに、そんな大したモンじゃない。『鬼』という字を名前に持つ存在で、すぐに他者を鬼にしてしまえる存在は、吸血鬼ぐらいのものだと思っただけだ。あと金髪美少女ってテンプレもあったしな」
「テンプレ…………?」
「あーあー気にしなくていいよう。それよりも…………」
僕としては気になることがあるのよねぇ。
「なら、どうして僕らに声を掛けた? 納得したのなら、それで良かったんじゃないか? おそらく、貴女はこうしていることも、かなり危険な橋を渡っている状態でしょう?」
「それは……」
彼女が言葉に詰まっていると、談話室の扉が開き…………
「想像はついてはいましたが…………やはりそうなのですね、レティシア様」
真剣な表情の黒ウサギが、お茶セットの一式を持って来つつ、そう言った。
「いや、しかし────」
「悔しいことに、今の貴女は所有される存在です。誰かの…………想像は付きますが、その誰かによって一時的に
淡々と…………その実、心では溢れ出しそうな激情を抑えながら、僕達にお茶を注ぎながら発する彼女。
「そんなレティシア様を、守ることができない己が、不甲斐ないのです」
「…………」
紅茶は暖かいのに、空気はこれ以上ないって程に重く冷たい。コレは、良くない傾向だ。
と言うわけで、僕は手をパンパンと叩き、視線を集中させる。
「あーあー暗いのは嫌だよん僕は! で、そんな状態なのに声を掛けてきた理由は大体わかるよ。だって、貴女をどうにかしようと思って十六夜クンと悪巧みしてたところだもんね! そりゃ、気になりもするわな」
「…………え?」
黒ウサギが、鳩が豆鉄砲食らった様に惚け、レティシア様? が俯いていた顔を上げ、僕と十六夜は悪魔の様な
「まあ差し当たって対処しなきゃなんねーのは…………」
「団体サマごあんな〜い! ってことね!」
敷地内に、さらなる侵入者を確認。恐らく、『ペルセウス』とかいうトコの構成員だと思われ。
「じゃ、事を荒立てない様に足止めしてきますか。此処は、任せてちょーだい!」
「おう。俺が出張ると確実に蹂躙になるからな」
ヨレヨレだった自分をビシリ! と整え、ポケットの秘密兵器を握り、窓から飛び出す準備をする。
「だ、大丈夫なのか? 幾ら魔法を使えるとはいえ、人間の君が彼らの───────」
「あっはー! バケモノ相手にそんな気遣いは無用ですぜ!」
それに…………こういう時はなんて言うんだっけか?
「それに僕、時間稼ぎは得意なんです。それこそ、
「「……………は?」」
某メイド長の台詞をパクりながら、僕はルンルンと窓から飛び出し、コケて涙目になり、何事もなかったかの様に歩き出すのだった。
「……………黒ウサギ、アレはどういうことだ?」
「……………黒ウサギにも分かりません」
「ヤハハ! やっぱりアイツは面白ェな! つかボサッとすんな、コッチもコッチでやる事は色々あるぞ!」
それにしてもこの凡人、ノリノリである。
それはともかく!
感想、批評、駄目出し、宜しくお願いします!
特に感想があると、レッドゾーンはフル稼働になりますので!