リメイク版『異常な普通』も異世界から来るそうですよ? 作:FGMe/あかいひと
基本的に、どんな人間も人外も、普段の僕と比べたら素晴らしい人達である、と僕は思っている。事実、僕以外の人は偏りがあるし…………なーんで僕は一部を除いて平均値オンリーなのかね? いや知ってるけどさ。
…………とはいえ、やる気を出した僕ならば話は変わってくる。
「金髪ロリを追っかけてくるむさい男集団…………ギルティ。いや、変態が編隊組んでやってくるといった方が適切か?」
眼前にいるのは、コミュニティ『ペルセウス』の構成員らしき連中。しかし、様子がおかしい…………どうして、一歩も動かないのか、ねぇ?
「し、白々しいことを抜かすなッ!! 貴様が、何らかのギフトを以って、止めているのだろうが!!」
うん、まあ大正解。隊のリーダー格っぽい人が俺に向かって言った内容に、心の中で拍手を送る。ま、3回だけね。
「まあなんでもいいよ…………とにかくあなた方はペルセウスの構成員。そして逃亡した元魔王にして現在奴隷扱いの『レティシア=ドラクレア』を回収しに来た。そして彼女を無理矢理奪ったという口実で、我ら『ノーネーム』に押し入った…………ということでよろしいですかね?」
「……………………」
「沈黙は是也。というか、表情がわかり易すぎてお話になりません…………3年経ってから出直してください」
さて、『クッ……殺せ!!』状態になっている彼らは一先ず置いておいて。と言うか女騎士じゃないとここまでシリアス臭を放つんだ…………笑えねー。
「と言うか…………レティシア=ドラクレアを奪ったって、本気で思ってんの?」
「…………何?」
「レティシア=ドラクレアは確かに我がノーネームに侵入してきた。いいか、戻ってきたのではなくて侵入だ。それに──────」
そこで言葉を区切った瞬間…………本拠の方から轟音が響いてきた。上手くやってくれた様だ。
「絶賛、襲撃中だ。彼女曰く、『間違った方向に進み始めた古巣を潰すのは、我が務め』とのことらしいよ? いやー、ちょっと参っちゃったなー」
「なん、だと!!?」
「そんなわけで、あなた方がウチに押し入るのに大義名分はないのですよ。故に我々は『ペルセウス』に対して罪を問う権利があります。一つ、『元魔王という危険極まりない存在の管理を徹底できなかったこと』。二つ、『不当な理由での不法侵入』。三つ、『元魔王襲撃による被害』。ま、所詮我らは『ノーネーム』、不当にねじ伏せられてしまうのでしょうが…………」
そこで、とりあえず彼らの拘束を解く。
「今ここで退いていただけるのであれば…………不法侵入に関しては見逃してやりましょう。ですがそうでなかった場合は…………」
「構うな、行けっ!!」
無視する様に、彼らは本拠…………正確には轟音のした方向へと飛んでいく。…………なるほど、たしかペルセウスの物語に出てきたよね、空飛ぶ靴。畜生羨ましい。
まあそれは置いておいて…………だ。
「[停止]」
ビタリ、と構成員達の動きが止まる。
文字どおり、止まる。飛んでいる最中だからか、不自然な体勢で、その場に留め置かれている。意識のみ止めてないので、彼らの恐怖は計り知れないものがある筈だ。経験がないので知らんが。
「ったく、話は最後まで聞くものですよ…………せっかちなのは嫌われるってよく聞きますし」
さて、本気で僕にやる気を出させたのだ、覚悟の程はよろしいか。
「例えどれだけ屈強であろうと…………例えどれだけ異能を抱えていようと…………」
『
「さあ、無意味に自軍を不利に追い込む材料を作ったことを後悔しながら、大人しく堕ちるがいい」
ドサリドサリと堕ちて行く彼ら。最後まで遺されたリーダー格の彼は、何を思いながら意識を失ったのであろうか…………少しだけ、気になるところである。
「さてと、縛り上げて本拠に戻りますか。くそ、あの娘来たせいで予定が狂いまくったぞ畜生め」
まぁ、だからこそ代わりに汚名を被って貰ったのだけどね、ウケケケ!
◇◇◇
「で、どうします?」
本拠の会議室にて。みんなの目の前で司会役としてホワイトボードに色々と書き込みをしながら意見を求める。
なお現在参加しているのは、問題児達、ジンくん、黒ウサギの6人。連行した構成員達並びに襲撃者扱いになったレティシア様は、現在牢屋に改装された地下室に放り込まれている。
「今の所圧倒的にこちらが不利です…………何せ、レティシア様が襲撃したという証拠にできるものが無いに等しいわけですし、寧ろでっち上げようものなら逆にオカルトでこっちの真意が読み取られかねません。しかも襲ってきた構成員達ものしてしまいましたから、そっち方面でも突かれそうです…………ううっ」
そんな風にさめざめと泣くと、黒ウサギとジンくんは俯き、問題児達はジト目で僕を睨み始めた。
「全く、白々しいことこの上無いわね」
「どうせ、打つ手は決まっているんでしょ?」
「嘘泣きしてる暇があるならさっさと説明しやがれ」
「…………おかしいな、演技には自信があったのに」
「「演技だったんですか!!?」」
ジンくんと黒ウサギの反応がぱねぇ。特にジンくんは僕の演技技能を知らなかったのか飛び上がるほどに驚いていた。
「まー君らが言う通り、ひっくり返す手は決まってるさ。とはいえ僕の交渉と外堀埋めに掛かってるから不確実極まりないのさ。だから、他に確実な案が無いかなって……」
今度の発言に嘘は無い。というかさっきの発言も嘘じゃない。それなのになんだこの僕が嘘つきだと思われる風潮。
「一応ではありますが…………確実なの物が一つあります」
ここで黒ウサギが挙手。案があるのならなんでも構わないので言ってもらうよう促す。
「由緒があり、力のあるコミュニティは、誇示する為に自分達の伝説を再現したギフトゲームを用意することがあります」
「もしかして、『ペルセウス』も?」
「Yes. そしてこの類のゲームは、特定の条件を満たしたプレイヤーにのみ挑戦が認められます。勝利報酬は、自らの持つ伝説と……
その時会議室に電流走る────!!
というのは冗談にしても、それならば! という希望の色が顔に映る。
「ですが、『ペルセウス』の伝説を再現したゲームへの参加条件は……その」
「クラーケンと、グライアイの打倒か?」
「そうなのデス…………って、なんで十六夜さんが知っているのですか!?」
「辺りは付けていたんだが、調べられることがないかと思って少し調べた。まぁ、ウチの蔵書だけだと確証は得られなかったが…………」
なんということでしょう、分かってはいたけどこの金髪学ラン不良ヘッドホン、かなりのインテリである。ぐぬぬ…………!
「まーでもそれは最終手段かなぁ…………あんまりゴリ押しすると、『ノーネーム』の名前にさらに傷がついちゃう」
「そうかしら? 力のあるコミュニティを打倒する最底辺のコミュニティって話題性にはなるから、多少の汚名は無視するのも手なのではなくて?」
確かに、久遠サンのいうことも一理ある…………のだけど。
「いやだってさ、このコミュニティは再始動したばかりで、なおかつ『対魔王コミュニティ』だ。出来うる限り清廉潔白に行かなきゃだし…………力でねじ伏せるのは、魔王となんら変わらないよ」
「ッ! ……確かにそうね」
とは言え手段の一つとして確保しておいた方がいいことも事実。言わば保険、である。
「じゃあ、私が行ってくる」
「春日部サンが?」
「うん。今日のゲームでの雪辱を晴らしたい」
マジか。ま、春日部サンならなんとかなるかな…………状況次第ではクラーケンのギフトも得られて彼女の強化になるかもだし。
「あ、あの……一つ良いですか?」
とここでジンくんがおずおずと手を挙げる。
「はいどうぞジンくん」
「元々、健太さんはどの様な手を打つつもりだったのですか? 確実性がないとは言ってましたけど、知らないと僕らの方での判断も出来ませんし…………」
あ、それもそうか。するつもりがなくてもう良いやってなってたんだけど。
「では、僭越ながら…………」
そう前置きをして説明すると…………十六夜クンからはジト目、それ以外からはドン引きをされた。解せぬ。
◇◇◇
二日後。
とりあえず、役割分担が決まってしまったので、みんなそれに合わせて動き始めている。
まず、今回の要になってしまった交渉役たる僕。サポート役として十六夜クンとジンくん。
久遠サンは、牢の見張り。彼女のギフトは統率に向いているからね……少し不本意そうではあったけど。何かあった時の為に黒ウサギもついてるから問題はないでしょう。
そして保険手段を確保するためのゲーム担当に春日部サン。既にクラーケンはゲーム的に打倒、その上お友達になれたとかで、強化されたことがうかがえる。流石です。
みんな頑張っているのだ、交渉役たる僕も頑張らなければ。
そう思ってたどり着いたコミュニティ『サウザンドアイズ』の支店。店の前には、あの女性店員さんの姿が。
「あのー、すみません」
「……。お待ちしておりました。中でオーナーと、ルイオス=ペルセウス様がお待ちになっておられます」
「あ、どもー」
あからさまに目を逸らされた…………と言うか怖がられてる。ちょっと泣きそう。
まぁ、それだけのことをしちゃったってことなのよね…………僕は何を間違えてしまったのやら。あ、全部か。あっはっは…………はぁ。
「よし、許可も貰ったし…………行こうか二人共」
十六夜クンとジンくんを引き連れていざ出陣…………交渉が得意というわけではないが、交渉を成功させるのは得意だ。全てをひっくり返して…………ぶっ倒してやる。
おう、遅かったやないかワレ
→ほんっとうにごめんなさい。ようやっと健太を書く気力が湧いたので。これからはしばらく『異常な普通』を書き進めようかと。
オリジナル作品『普通な僕と異常な君』との互換性は?
→この作品の前日譚です。なおこの作品読んだら今作のヒロインがおそらく判明すると思われ。