リメイク版『異常な普通』も異世界から来るそうですよ?   作:FGMe/あかいひと

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本日2度目の更新!


その16-凡人、ひっくり返す

 

案内されたのは店のはなれにある家屋。

その中、その部屋には既に白夜叉サンと、ルイオス=ペルセウスと思しきイケメン青年が。

 

「おお、待っておったぞ」

「ふーん、君らがあの……ねぇ」

 

白夜叉サンの歓迎ムードに反比例して、如何にも機嫌の悪そうなペルセウス殿…………俗な人間っぽいし、付け入る隙は割とある、か。

 

「お待たせした様で申し訳ありません。こちらから望んだであるのに関わらず…………」

「よいよい、こちらの不手際もあることだしの。とりあえず、席に着くが良い」

 

その言葉に礼を言いつつ、僕らは席に着く。

さて、どう切り出したものかね?

 

「改めて、遅くなりまして申し訳御座いません。そして、この様な若輩に交渉の場を設けていただいたことを感謝します」

「本当にそうだよ。たかが『ノーネーム』の癖に僕を呼びつけるなんて」

「ふん、よくもまあ─────」

白夜叉様(・・・・)

 

威圧を込めて、釘をさす。

今回、彼女の力は必要以上に借りたくないのだ。この場のセッティングをやってもらったことですら苦渋の決断だったの言うのに。

 

「………ッ。あい分かった、大人しく見届け人として静観させてもらおうではないか」

「ありがとうございます」

 

とは言え助かった。

少なくとも、『白夜叉サンが多少なりとも危機を覚える人間』という印象は、つけられた様だ。

 

「申し遅れました。わたくし、『ノーネーム』リーダーであるジン=ラッセルより交渉の全権を任されました、景山健太と申します」

「ボヤッとした野郎の名前なんかどうでもいいよ。………それで? なんでも、苦情を言いたいそうじゃないか?」

「ええ。簡潔に言ってしまえば、『元魔王レティシア=ドラクレアの管理の杜撰さによって被った被害』、『成り立たない大義名分をかざした、そちらの同士による『ノーネーム』への不法侵入』。大きくはこの二つについて、然るべき謝罪などを戴かんと、この場を設けていただいた次第でございます」

 

意訳すれば、『そっちの奴隷の所為でエライ目に遭いました。しかも別枠でそっちの仲間にも襲われたんでちゃんとオトシマエつけてね?』ってこと。

 

「は? なんで僕がそんなことを。つーか、あの吸血鬼が暴れた証拠が何処にあるのさ」

「ルイオス様が納得できる様な証拠はございません。かの元魔王が振り下ろした槍、それによる本拠に残る被害の痕、直接目にしてはいなくてもその音を聴いていた不法侵入したそちらの同士、あとは当の本人の証言ですかね。…………まぁ、この程度なら握り潰せますよね?」

「…………? あ、うん。まあ」

 

面喰らった様に、ルイオス殿が訝しげにそう反応を返してきた。

 

「こちらとしても、かの『ペルセウス』に楯突くのは得策ではありません。ですが、そちらの不手際で被害を被ったことは事実であり、あげた拳をどうすればいいのか、迷っているところなのです」

「ふーん? でも、僕らが君らに付き合う義理はないよね。確かに被害はあったのだとしても、それが僕らのせいだという証拠はない。寧ろ、『ペルセウス』の同士を不当に監禁し、売り手の決まった所有物を未だに保持し続ける君らを、逆に訴えたっていいんだぜ?」

 

ありゃま、意外に頭の回る。まぁ、コミュニティのリーダーだものね。

 

「そうですね…………困りました。でも言質は得られました。貴方の所為ではないと」

「……何?」

「別に、貴方がかの元魔王をけしかけたのだとは思いません。当人も否定しておりました。ですが、僕らが怒っているのはそこではなく…………『元魔王』の管理の杜撰さですルイオス様。何故、元魔王である『アルゴール』を従える貴方が、そんな失態を?」

「ッ!!」

「貴方なら分かるはずです…………元とは言え『魔王』の恐ろしさを。ギフトがあろうが無かろうが関係無い。彼らは然と管理して、被害をふりまかない様にしなければならなかったはずです。たとえ何某かの干渉があったとは言え、元魔王を主戦力として保有する貴方が、本当に『アルゴルの魔王』を管理していていいのか…………その能力を疑われることに、なりますよね」

「…………何が望みだ」

 

リスク計算も、できるみたい。多少譲歩しないと、有る事無い事言いふらされると。握りつぶすことはできるかもしれないが、とも思ってるみたいだけど。

 

「なに、単純なことです。一先ず謝罪は置いておいて…………僕らは、今『ノーネーム』の本拠の地下にある地下牢に、不法侵入者達と、そちらの所有物であるレティシア=ドラクレアを確保しています。そちらを返還し、返却いたしますので…………レティシア=ドラクレアが賞品となっていたゲーム、それを開いてほしいのです。これで、手打ちでいかがでしょう?」

「ハッ! 冗談も休み休み言えよ。さっきも言ったけど、あの吸血鬼にはもう売り手が付いているんだ。多少の不利益は飲み込んでやろうと思ったけど」

 

と、ここで部屋に、ノックの音が飛び込んできた。

 

『オーナー。店の表に、ルイオス様と話がしたいと言う男が』

「……今、それどころでは無かろう?」

『ですが……『例の吸血鬼の件で』と言えば分かると』

 

…………ナイスタイミング。思わず僕は、口の端を吊り上げた。

 

 

◇◇◇

 

 

席を外したルイオス殿は、戻ってくるなり僕の胸ぐらを掴みあげた。

 

「お前、一体あいつに何を吹き込んだ…………!!? ほとんど一方的に、商談を断られたんだ、何を言った…………!!?」

 

憤怒とも言えるその表情、イケメン青年がやると迫力が違うねぇ。

 

「別に。ただの世間話ですよ。『古巣でこんなに暴れた吸血鬼ですよ。貴方の言うことを素直に聞くとは思えません』って」

 

まあ、本当はそんなことが無い様に、薄い本的な感じで洗脳とかされたりするんだろうけどね。でも、『元魔王』ってのがかなり効いてくれて助かったよ。

 

「それで…………不利益が、なんでしたっけ?」

 

それはもう、びっくりする程清々しいだろう黒い笑みを浮かべた。それで堪忍袋の緒が切れたのか、拳を振り上げるが…………

 

「クソッ!!」

 

結局その拳が振り下ろされることはなく、僕は掴まれた胸ぐらを解放される。

 

「…………それで、どうしてそこまであの吸血鬼にこだわる? やっぱり、元仲間だからか?」

 

暗に『ちゃんと調べてもいいんだぞ』と脅されるが…………。

 

「え、被害の報復するためですよ。貴方の所為じゃ、無いんでしょ?」

「…………ッ」

「だから『ペルセウス』に報復するのはお門違いですよね。それならば快く捕らえたそちらの同士も返還できますし」

「な、ならそのままあの吸血鬼を抱えるっていう選択肢は───」

「中止になったゲームの賞品だそうじゃないですか。ある意味でそんな贔屓なことをして『ペルセウス』の名に傷がつくのは申し訳がない! だって、あなた方は無実なんだから! だから正当な手段で勝ち取りますよ!」

 

だから周りをけしかけようとするじゃねーぞと牽制を掛けつつ、最早決着のついたこの場に幕を降ろす。

 

「それでは、契約書類を書いていきましょう。なに、『ペルセウス』はもう一度ゲームを開催するだけ。本当に僕らが勝ち残るとは決まってはいないのです。それだけで、同士が戻ってくるのですから、安いものでしょう?」

 

いや、本当は分かってる。

反故にしたゲームをもう一度やり直すのは、かなり名誉に傷がつく。

 

でも、やらざるを得ないよね! 監督不行き届きで自分の身が危ないものね! いやー、元魔王が主戦力で、本当に良かったよ!

 

 

◇◇◇

 

 

結局僕がやったことって綱渡りの連続。交渉の前提をひっくり返した上で、相手に最悪の事態を想像させ続け、慎重にさせることでこちらの意見をのませた、ということ。これは演技に関するギフトを持っていたからこそできた荒技、である。上手くいかなかった場合が怖かったけどね。

 

本当ならさらに突き落とすプランもあったけど、オーバーキルは趣味じゃないし、他人の人生を潰すのも気がひけるし、ここまでで押し留めることにした。

 

ゲームに向けた準備は順調だ。十六夜クンも、久遠サンも春日部サンも、闘志を滾らせている。え、僕? 僕は今回頑張りまくったからもう動くなって言われた。まぁ、いいんだけどね。

 

で、そんなこんなで一気に暇になった僕は、やはり子供達の面倒を見たり人形劇をやったりとで、時間が過ぎていった。

 

「今回は、本当にありがとうございました健太さん。お陰で、僕らは────」

「いやいや、そんなこと言わないでよジンくん。僕は仲間のために口を開いた。だからそれはやはり、無償のソレであるべきだ。感謝の言葉すら過分に過ぎる」

「…………そうですか」

「でも…………そうだね、何かを不甲斐なく思うのであれば」

 

僕は背負ったカバンから、1冊の手帳を取り出す。

 

「僕のやり方を真似る必要はない…………というか、しちゃダメだけど、あれ位はできる様になってた方がいいよね、リーダー的に。これは、僕がそういうのを勉強した時に纏めたものだから…………役立てて」

「…………分かりました。絶対に」

 

うむ、やる気を出すことはいいことだ。

 

さて、今日は忙しくなるぞう! 多分みんなは、レティシア様を連れて帰ってくるのだろうし、パーティーぐらいは開かないとね。子供達も手伝ってくれるだろうし、なんとかなるか!

 

 

 

 

『にーちゃん、たんじょうびおめでとう!』

『いつもごはんつくってくれるおれい!』

 

 

 

 

「……………………ハァ」

 

パーティーから連鎖して、やーなもん思い出しちゃったなぁ。

 

ちょっと暗くなる気分を仮面で押し隠しながら、僕は厨房へと向かうのだった。

 

 

◆◆◆

 

 

「健太…………いない」

「どうして」

「どうしてどうして」

「どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして──────────────────」

 

 

そばにいてくれるって、いったじゃない

 

 




え、じゃあ結局ゲームせずに終了!?
→イエス! ゲームしなくても、ルイオス様倒さなくてもいいじゃない!

さ、最後のって…………
→あははははははははははは
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