リメイク版『異常な普通』も異世界から来るそうですよ? 作:FGMe/あかいひと
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世界が『本物』を求めないのなら、そんな世界すら、僕は騙そう。
『本物』の為の『偽物』ってのも、悪くない。
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そんなワケでさらに翌日。
やはり店員サンの目の下にはクマができており、おちょくる意味も込めて手鏡を取り出すとぶっ飛ばされる程にはキレていた。うむ、今度からは自重しよう。
そして案内されたのは白夜叉サンの私室。つまり、いつものパターンです。
「本日はお招きいただき───」
「面倒だから別に良い。と言うか、今更だろう?」
挨拶しようとしたらコレである。あんまり軽いのは嫌なんだけど。
「それでは本題を。衣装とメイク、またはそれの代わりになるギフトが欲しいです」
「いきなりぶっちゃけ過ぎだ。まぁ、その辺りの話は聞いておる」
とは言え彼女の顔は笑顔であり、あの話はある程度通りそうだな、と安心する。
「確かにお主、『演者』を持っておったな。これを持つ者は演芸に携わる何かにおいて大成しておる。確かにパトロンとして支援するのも、悪くはないの。ま、その為には先にお主が成果を出さねばならぬのだが」
「まぁそれはその通りですね…………って、やっぱり『演者』って固有技能じゃなかったんですね」
「珍しくはあるがの。大抵は『○○演者』などと、方向性が縛られるのだが。さて、『演者』を持っていた人間は、何人いたか…………」
……わぁ、そう考えると僕ってば凄いのね。単に周りの人達のマネをするところから始めただけなのに。才能あったのか。
「これに関しては才能、と言うよりも『これだけの演技ができる』証明に近い。与えられた
「Oh……………」
いや知ってましたけどねチクショウッ!! 誰だ僕にアンナノ植え付けたの!!
「しかし、数奇な巡り合わせよの…………」
「と、言いますと?」
「うむ、少しついてまいれ」
白夜叉サンの呟きに反応して問うと、離れにある蔵みたいなところに連れられた。
中は埃っぽく、暫く放置されていたことが伺える。…………咳が出そうなので、埃を全部消したけど。
「ふむ、やるの」
「まぁ、この位は」
本来の僕を塗り潰して、才能も人間らしさも奪われたのだ、この位の恩恵がなければやってられん。
そんな風に少し落ち込んでいると、白夜叉サンが、玉手箱の様な黒い箱を持ってきた。…………かなり強力な封印を為されているのは、中の物がそれだけのものである、ということか。
「…………これは?」
「見た方が早かろう…………ホレ」
そうして結ばれていた紐を解いて、彼女はそれを僕に見せてきた。
「白い…………仮面?」
いや、確かに白い仮面だが…………これ、僕のデスマスクだ…………。
「ふむ、おんしにはそう見えるのか」
「え?」
「私には、見えんのだ。おそらく、見えないものを見る目を持つ者でも、これを見ることはできないだろう。おんし以外でこれを目にすることができたのは、知る限り2人」
「…………『演者』、ということですか」
「察しが良くて助かる」
『演者』にしか見えないなにか。それも『仮面』だ。もしかして?
「左様。扱えるのなら、おんしの衣装とメイクの代わりになるであろうギフトだ」
「ふぇ…………あ、そう言えば僕にはそう見えると言ってましたが、他の2人は違ったんですか?」
「うむ。1人目は、これを『眼鏡』だと言った。2人目は『鏡』。そして、おんしは『仮面』」
「…………ああ、成る程」
うまく説明できないけど…………なんとなく分かる気がする。僕もだけど、『仮面』を被るイメージで、演じているから。共通点もあるし。
「とはいえ、その2人は使えなかったのだがな…………」
「ええ、そんな気はしてました」
だって、多分僕のイメージが見せてんだろうけど、デスマスクだもの。怖いよこれ。
「2人とも、同じことを言っておったよ…………人間の精神で、これは使えないと」
「まるで人外専用みたいじゃないですか。僕にも無理ですよ」
「…………はっ」
なに鼻で笑ってんですか塗り潰しますよ。
「そして、このギフトの能力は」
「誰かを写す…………成る程、『写し身作り』ですか」
僕の顔が写されたこの仮面。それはおそらく、どんな人間も写す仮面となる。
「だから、驚いたのだ…………おんしが昨日披露したという、演目に出てきた『鏡』と…………」
「…………この仮面の出処は?」
「分からぬ……過去の産物か、未来の産物か……はたまたここではないどこかの物か……どれだけ調べても、見当がつかん。ただ、私にこれを寄越してきたのは、長い髪の女で、その能力を言って去っていったことは覚えておる」
「……………………」
まさか、とか。やっぱり、とか。
思うところはあるけれど。
「すみません白夜叉サン、コレをお借りしても」
「ああ、構わぬ。使えるのであれば、そのまま自分の物にしろ。道具は、使われてこそだろう」
「ありがとうございます」
◇◇◇
本拠の自室にて。
「むー……」
白い仮面とにらめっこ。被る勇気が中々出なくて困っている。
例えどんな干渉を受けてもどうってことない僕なのに、この仮面からはどうしてか…………僕が被ってもヤバい気配を出している。
そして、そんな僕の不安を更に掻立てる要因になっているのがギフトカードに映る『───────(出力不可)』…………だった物。
『──流…家%〒だN』
なんか、文字化けしてる…………。
これ以外のギフトには思い当たるところがちゃんとあるんだよ! 不本意ながら!
でも、これだけはほんっとうに見当がつかなくて恐ろしいんだ…………。なんなのこれ、健太お家に帰りたい。ついでにあいつに手料理振る舞いたい。
「とは言え…………だ」
どんな奇跡が折り重なってこんなことになったのかは皆目見当が付かないが…………多分この文字化けしているこの状況が、この『仮面』と僕との関係性を示しているとしか思えないのだ。
更に言うと、その『長い髪の女』というのも、心当たりがあるし。
「…………結局、被ってみるしかないのかな」
決意したならあとは簡単だ。仮面を持ち、そのまま顔に被せてしまえば…………
「健太、夕餉の支度ができたぞ」
「わっちゃっちゃっちゃぁぁぁぁああああああっ!!!!?」
ノックと共に飛び込んできた声に、思わず僕は慌てて仮面を落としそうになる。というかビックリしたー。
しかも、僕の慌てた声に勘違いしたのか、
「どうした!?」
バン! と扉を開いて現れる声の正体。『ペルセウス』主催のあのゲームに買って得た賞品。今では『ノーネーム』のメイドとして働いているレティシアさんだった。
…………余談だけど、彼女を取り戻すにあたって動いたのは異世界組、その中でも僕が1番頑張った(という周りの評価)なので、
僕:逆廻:久遠:春日部=4:2:2:2
という形で彼女の所有権の割合を(勝手に)決められていたりする。…………とっても複雑だなぁ。
「い、いや。大丈夫ですよレティシアさん。ちょっと慌てただけなんで」
「そうか、驚かせて済まないな……」
「あ、ああああシュンとしないで! ね、ね!?」
とは言え…………決めた決意がふいになっちゃったなぁ…………。また後で頑張ろう。
そう思って仮面を部屋備え付けの机の上に置き、レティシアさんと一緒に部屋を出る。
「ちなみに、今日の晩御飯は?」
「今日はメインがハンバーグ、だ。合挽き肉をギフトゲームで勝ち取ってきてな」
「へぇ? 久々に豪華だなって思ったら、そういうことか」
ハンバーグが豪華な部類に入る我がノーネームの懐事情よ…………いや、僕もみんなも気にしてないけどね。これからこれから!
「そ、そういえばだな主殿。なんでも、人形劇を子供達に披露しているそうじゃないか」
「ん! ちょっとでも子供達を笑顔にって思ってね。…………あれ、なんか問題あった?」
ちょっとだけ顔が翳ったので思わず不安になる。黒ウサギがオッケーって言ってたから問題ないと思ってたんだけど。
「い、いや大丈夫だ。それでだな…………それは、私にもできたりするものだろうか?」
「…………ああ、成る程。子供達にせがまれたりとかしたわけだ?」
なんでか、大人気だもんねぇ…………すぐに飽きると思ってたんだけど。アレか、マンネリを防ぐために年長の部と年少の部を分けて、年齢にあった内容で披露しているからか?
まあそれはともかく。
「すぐに、というのは難しいと思う…………多分人形の動かし方はすぐになんとかなるんだろうけど、それに加えて声だけとは言え演技も並行してやるし、台本通りに進めるために全て記憶したりとか…………才能だけでどうこうはならない、と思う」
「そうか…………いや、メイド以外にも、私に何かできることがあれば、と思ったのだが」
…………ほぉ?
「待って待って。すぐにはできないとは言ったけど、練習すれば誰でもできるものだよ! もし、レティシアさんがやりたいと言うのなら、練習に付き合ってあげる」
「本当か?」
「本当本当! なんなら今晩からでも練習だ! ちょうどご飯の後にみんなに披露するから!」
「そうか…………ありがとう健太」
「いえいえー!」
ふふふふふ…………劇団員候補、ゲットォ…………。
…………ちなみに、あの文字化けギフトはなにさ?
→ヒントは幻獣種
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