リメイク版『異常な普通』も異世界から来るそうですよ?   作:しにかけ/あかいひと

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ご迷惑をお掛けしました。
元『忙人K.H』のレッドゾーンです。
詳しくは、活動報告をご覧下さい。


第1章-凡人、箱庭で落死
その1-凡人、出落ちする


この僕、景山(かげやま) 健太(けんた)は普通の少年である。

…………否、異常(・・)なまでに普通である。

 

テストでは常に平均点。

体力テストの結果も皆の平均。

顔も普通なら、身長体重も普通。

知り合いからは『基準点』として重宝され、僕を知らない人は認識すらできない、そこにいるだけで空気な存在の、モブ中のモブだ。

 

個性があるとすれば、モノマネや演技が得意な点であろうか。見た人からは『顔とか格好なんかじゃなくて、存在が同じに見えると錯覚してしまう』と言わせるぐらいだ。神憑り的とも言われるから、密かに自慢である。

それでも、個性が他人に依存していることに代わりはないけどね。

 

そんな、普通であることを標榜としている僕は、通ってる高校からの帰り道、ケータイで親友と電話をしていた。

 

「…………おいお前。今日始業式だったけどなんで来なかったの?」

『えーだってめんどいじゃん。長々と無駄話に付き合わされるつもりはないねー』

「つっても課題提出とか色々あっただろうが!」

『うるさいなぁ、お前は僕のお母さんか。んなもん郵便で提出したわあのヤローどもうるせーから。これでよろしーですか、態度だけは優等生の健太クン?』

「チッ…………まあ無事に戻ってくんならいいけど。せめて通常授業が始まるまでには戻ってこいよ」

『へーへー仰せのままに。んじゃ、ちょっと切るよ』

「うーい」

 

プツンと切れる音がしている、僕はケータイを畳む。

取り敢えず、あの腐れ親友は今回は電話の繋がる(・・・・・・)ところにいるようだ。それだけは安心した。

 

安堵と呆れの溜息を吐き、桜の咲き誇る公園のベンチに腰を下ろす。

和の心でもある桜。その代表格であるソメイヨシノ。曇り空と相まって、その花弁の色が鮮明に写る。

 

「ふー…………癒されるー」

 

首元のネクタイを緩めて外し、背凭れに倒れかかって鑑賞モードに移行する。ここの所、あまりにも忙しくてきっちりと見ることができなかった。幸い、今年の盛りは今日明日明後日辺りらしいので、今の内に存分に花見をしておこう。帰り道で仕入れた板チョコとサイダーで準備は万端である。

嗚呼、この時間帯はこの公園には誰も来ない。この光景は、今は僕だけのものである。

 

「クフフ…………うおっ!?」

 

唐突に風が吹く。その勢いで、咲き誇っていた桜のいくらかが、その花弁を散らし、風に乗って空を舞う。

 

「ほほー、絶景かな絶景かな…………ヘブッ!!?」

 

そんな、僕の感動なぞ知ったことかと風で飛んだのだろうチラシか何かが、顔に張り付いた。

 

「クソッタレ! 誰だこのいい気分を邪魔するようなゴミを捨てたのは…………アレ?」

 

チラシかと思っていた紙は、ただの紙ではなかった。

手紙…………それも、

 

「はい?これ僕宛て…………ッ!!」

 

思わず周囲の気配を探る。が、何も引っかかるものはなく。

 

そして手元の『景山健太様へ』と書かれたその封筒は、間違いなく『異常(・・)』だった。

 

…………改めて言おう。僕こと、景山健太は普通である。

物語における描写すらされない脇役、アニメだと画面から見切れてるモブ。世界に、これでもかと溢れている一般人の、その平均。

 

だから間違っても…………そう、間違っても何もないところから手紙をもらう様なアテはなかったり、

 

『悩み多し異才を持つ少年少女に告げる。その才能(ギフト)を試すことを望むのならば、己の家族を、友人を、財産を、世界の全てを捨て、我らの《箱庭》に来られたし』

 

こんな厨二感溢れる文書を送りつけられる心当たりは……………………うん、まあないや。

 

「…………悪戯にしては手が込んでる。それは認めるからさっさとこいやてめー」

 

こんな異常なことができるのは、僕の心当たりだけだと腐れ親友だけだった。だから、声をかけた。

 

…………のだが、

 

「…………? 返事も気配もない」

 

つまり、我が親友殿の仕業ではなく。

 

じゃあ誰が? と思ったその瞬間だった。

 

 

 

突如として、地面が消えた。

 

 

「…………へ?」

 

地面が消えた、というのは誤り。正確にはどこかの空に投げ出されたみたいだ。

 

だって、僕の落ちるその先には、立派な地面が見えるんですもの!

 

「う、ウギャァァァアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!!!!!!?」

 

落ちる、落ちる、落ちる!

高所恐怖症であるこの身にとって、1番の苦行が僕を襲う!!

 

嗚呼カミサマ。僕は何かやっちゃいましたか?

こんな身に生まれたことも、その他降りかかってきた不幸も、何一つ恨んだことはありません。

 

でも、その結果がこれならば流石に恨んでしまいますよ。

 

空中で仰向けになった僕は、そう思いながら手を伸ばし…………背中から墜落した。

 

 

 

 

これより僕が騙るは、己がただの人であると騙り、バケモノである1人の脇役が、異世界に喚ばれ、異常なことに巻き込まれる物語である。

 

…………ん? 『語る』の間違いじゃないかって?

いやいや、僕は『騙り手』。僕の視点を借りて物語を話す以上、其処には必ず嘘が混じる。だから、この表現が1番正しいのさ。

 

それでは、

 

[『異常な普通』も異世界から来るそうですよ?]

 

はじまりはじまりー!

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

全身の被害の確認。

 

脳、骨、大損傷。出血多量。

 

命の危険。リセット開始。

 

怪我→[0]

 

リセット完了。

これより覚醒を開始──────

 

 

…………と、言うわけで怪我をした身体を元に戻し、目を開ける。

もう怪我はないとは言え、残痛感が半端ない。

 

「あ、起きたわ!」

「…………ついさっきまで死体そのものだったのに」

「ヤハハハ! 面白ぇなお前!!」

 

目を覚ますと、お嬢様系美少女と三毛猫を抱えた無口系美少女、不良系イケメンというなんともキラキラとした人らが顔を覗き込んでいた。共通点は、ヤケに見目麗しゅうござっていることと、心配の表情から一転安堵の表情に変わったこと、何故か濡れているということか。アレか、水も滴る以下略ってか?

 

取り敢えず、聞きたいことを聞いておこう。

 

「…えっと、参考までに聞きたいけれど、どんな感じだったの?」

「悲惨、の一言ね」

「OK分かった、これ以上は言わないでください」

 

とにかく、相当酷い目に遭ったということは理解した。

 

「…………ん。捕まって。大変でしょ?」

「あ、ありがとうございます」

 

無口系美少女が、僕に手を差し出してくれた。ありがとう、本当ありがとう。そして心の中で『ケッ、この面のいい野郎に女郎共が』なんて思ってごめんなさい。

 

そうしてようやっと、周囲に気を配るだけの余裕が生まれた。

見渡す限りの、自然。少なくとも、現代日本にはこんな場所はなかったと思うが…………気にしても、仕方ないのだろうか? 周りもあんまり気にしてない様だし。

 

「兎にも角にも、信じられないわ。まさか問答無用で引きずり込んだ挙句に、空に放り出すなんて。私達は池の上でなんとかなったけれど、死人まで出たわよ?」

 

お嬢様系美少女は、僕らの身に起こったことに憤慨している様。てか、彼女達も僕と同じ目に遭ったのね。まあ僕ならともかく他の人はまずいだろう。そこだけは、カミサマに感謝しておこう。

 

「右に同じだクソッタレ。こいつみてーな例外ならともかく、場合によっちゃその場でゲームオーバーだぜ。石の中に呼び出された方がまだ親切だ」

 

この金髪不良系イケメンは、なんともおかしなことを言う。なんだこいつ、僕の親友と似たり寄ったりな匂いを感じるんだが…………気にしたら負けかもしれない。

 

「いやいや、ここは王道で魔法陣の上から登場がベストじゃないかな? そんでもって『貴方はこの世界を救う為に遣わされた勇者以下略』的な展開で」

 

黙ってばっかりなのもアレだから、素直に僕の意見を口にした。

すると、

 

「よく分からないけど、なんの捻りもないことは分かったわ」

「捻りがなさ過ぎてつまんねえよ」

 

息をピッタリと合わせ、そんな反論をしてきた。何君ら、僕の読み取り的には初対面の筈だよね? 何長年組んできた相棒みたいに息ピッタリなの? ああ、なんかツッコミどころが多過ぎる。

 

そこから、『異世界召喚におけるベストな状況』について議論しあい、5分後に『そんなもの、答えなんてあるわきゃねー』と結論を出したところで、無口系美少女が口を開いた。

 

「此処………どこだろう?」

 

多分、この場の誰もがその答えを知りたいだろう。

でも思い出して欲しい。

 

『我らの《箱庭》に来られたし』

 

って文が、手紙には書かれてあった。

 

つまりは、此処は『箱庭』という世界なのだろう。まあでも他の人にもそんな手紙が届いたという確証はないけどね。確信はあるけど。

 

「まず間違いないだろうけど、一応確認しとくぞ。もしかしてお前達にも変な手紙が?」

 

ほら来た。金髪不良系イケメンの言葉で僕は確信を深めた。

 

「そうだけど、まずは『オマエ』って呼び方を訂正して。私は久遠飛鳥よ、以後は気を付けて。それで、そこの猫を抱きかかえてる貴方は?」

「…………春日部耀。以下同文」

「そう。よろしく春日部さん。次に、初っ端から墜落死して、尚且つ生き返った貴方は?」

 

な、なんつー言い方…………まあ否定ができないのがなんともね…………。

 

「ア、アハハ…………ご心配をお掛けして申し訳ありません。僕の名前は景山健太。何処にでもいる、ただの一般人です。以後よろしく」

「…………何処にでもいる?」

「…………ただの一般人?」

 

あ、あの…………気持ちは分かりますけど、そんな言い方やめていただけません?

 

「寝言は寝て言えって、言われる方だったんだが、こうして他人に言う機会があるとは…………いやはや、人生何が起こるか分からねえモンなんだな」

「容赦ねえなアンタ!!? そこまで!!? そこまでなの僕って!!?」

「「「うるさい」」」

「り、理不尽だ…………」

 

思わず気分はorzである。立ち直れない…………。

 

「…………まあ、百歩譲ってその見た目からそういうことにしておくわ。よろしく景山君。最後に、野蛮で凶暴そうなそこの貴方は?」

「高圧的な前フリをありがとよ。見たまんま野蛮で凶暴な逆廻十六夜です。粗野で凶悪で快楽主義と三拍子そろった駄目人間なので、用法と用量を守った上で適切な態度で接してくれお嬢様」

 

高圧的、と口にしつつも金髪不良系イケメン改め逆廻クンは、高圧的に…………そう、まるで久遠サンを見下ろす様に、そう言った。

 

「そう。取扱説明書でも書いてくれたら考えてあげるわ、十六夜君」

 

カチン、ときたのだろうお嬢様系美少女改め久遠サンも対抗して喧嘩を売り始めた。

 

「ハハ、マジかよ。じゃあ今度作っとくから覚悟しとけ、お嬢様」

 

あ、もうダメだ、火花が散ってる。この中を一般人である僕が割り込むのは、不可能に近い。

 

もう1人の、無口系美少女改め春日部サンを期待しながらチラリと見る…………が、

 

「……………………」

 

アカン、近くの木を見てボーッとしていた。まるで無関心を決め込む様に。

 

 

 

 

 

 

拝啓お父様にお母様、弟に妹。

 

何故かこの健太、異世界に来てしまった様なんです。

 

…………たすけて!!!

 

 

 

 

 

 

 

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