リメイク版『異常な普通』も異世界から来るそうですよ? 作:FGMe/あかいひと
◆◆◆
嘘も本当も、綯い交ぜにし続けて。
気が付けば、三流作家も伝説の仲間入り。
平凡だった少年は、人外を経て大人になり、最後は偉大な功績を打ち立てた人間に。
しかし、その代償。
嘘も本当も綯い交ぜにした人間は、言葉のままに、現実を歪める。
─────嗚呼それはまるで、
◆◆◆
時間は真夜中。改めて僕は仮面と向き合う。
「とりあえず被ろうか、あんまり引っ張るものでもないしね」
・
・
・
・
・
意識が飛んだと思ったら、いつの間にか自室にて覚醒する。
自室、と言っても。
「…………実家か」
僕以外の住人を亡くした我が家。一人で暮らすには余りにも広過ぎて、でも忘形見だから捨て去ることもできなくて。
「やぁ、気がついたかね?」
そんな、言い表せない感傷に浸っていると、スーツを着た老人が突然現れた。
…………僕が言うのもなんだが、この老人も平均ど真ん中を貫いてるね。杖にスーツに白髪にヒゲて。狙い過ぎて笑えるレベルである。
「ええ、なんとか。それで、あなたは?」
「ふむ……私には最早不要な物故、教える必要性を感じないね。ただ、敢えて名乗るとするならば…………『
「…………何故知っているのか、と問うてもどうにもならなさそうですね」
その造語を知っているのは、僕とあいつだけなのだ。いや、あと白夜叉サンと店員サンと、分からないけど以前コレを使おうとした『演者』の2人ぐらいか。あ、逆にそっから情報得たことも考えられるじゃん。
「さてと、本当ならば君と雑談に興じたいところなのだが…………まあそういうわけにもいくまい。本題に入ろう」
「ええ。まず、質問よろしいですか?」
「断る。『コレ』を渡した人間について、私には答える権限はない」
「先手を打ったということは、」
「さぁて、な?」
…………なんだこのジジイ。凄く知ってる様な誰かなんだが。思い出せねーけど。
「さて。まず君には仮面に見えているこのギフトは、『演者』を持つ人間に使ってもらうことを想定して作られた」
「それは分かっています…………『演者』以外に見えない様にしている時点でそれは察しています」
「そしてコレは、とある魔王…………いや、とある滅びを打ち砕く為に、別次元の人物が作った兵器でもある」
「一気に設定がトんだ!!?」
なんだソレ!? とある滅びておま、厨二設定もいい加減に──────。
「ああ言いたいことは分かっている。厨二設定もいい加減にしろ、お前と僕との関係性を知りたいんだ…………そんなところかね?」
「心でも読んでるんですか?」
「なに、深く共感しているだけだ。ちょうど、君が誰かの心を読むときにそうしているだろう?」
「……………………」
………僕の頭が覗かれてる? いや、違う。このジジイ、根本的に…………。
「まあそんなことはどうでもいいことだ。そうさな、朝食をパンにするかご飯にするかを悩むようなことだ。どちらにしたって、朝は迎えられる」
「い、いやどうでもは良くないと思うんですが…………軽くショックなのですよ」
己の技術が、他者に軽〜く使われているこの状況。基本プライドは無いに等しいが、ソレに関しては、それなりに自負するところはある。
「なに、君が傷つくことは無い。私は、君と違いその道を極めきったのだ。…………ああ、暗に君は極めてはいないと言ったように聞こえるが、それは違う。単なる年の功だ」
「…………そういうことにしときますよ」
僕が思ったことが正しいのなら、年の功…………というだけでは済まない。つまりは…………そういうことか。
「ふむ、あまり長々と話している時間はなさそうだ。君にはこれから、死ぬ程嫌な目にあってもらおう。なに、君にとってはこれ以上無い位の嫌な事だ。安心してもらっていい」
「安心できる要素が一つもねぇ!!?」
え、なに、今までの演者達ってそんな目に遭わされてきたのん!?
「問題無い…………一歩間違えたら発狂するだけだ」
「それは問題無いとは言わ──────」
僕の発言は、ここで途切れた。
何故なら…………
「グガ……ァア!!?」
「ふむ、心臓を貫かれる事にも慣れてしまっているのか…………いや、今更か」
ジジイの手に持つ杖に心臓を貫かれ、乱雑に引き抜かれる。
痛み以上に、体から抜け落ちる朱がキツい。目に優しく無いし、力が抜けていく。
「…………すまないな、『
最後に聞こえた言葉は、誰に向けた謝罪の言葉だったのか…………。
◆◆◆
自分にとって、1番嫌な事とはなんだろうか…………小市民な僕は『財布をなくす』とか、『家が壊された』とか、そんなありきたりなモノしか思い付かないんだが。
せめて、目が覚めるまでに答えを出しておきたかったが、やはり世界は僕にとって全く優しくなく、否応無しに起動する。
損傷はもう無い。無くなった血も補填されている。
「くっそあのジジイ…………次会ったらぶっ殺してやる」
辺りは付けた。アレは『 』だ。なんでアレが僕の事を苛めよーとしてるのかは不明だが、確かにアレならばこの状況にも納得である。
「…………とりあえず」
体を起こし、現状把握。
勉強机のデジタルカレンダーは、今日が高校1年の時の8/21を指していた。つまり、学校は夏期休暇であり、高校生という事は、既に僕は1人になってしまっているという事だ。
「……………………」
我が家は2階建。そして1階の和室には、仏壇が。
遺影に映るみんなの笑顔が眩しすぎて涙が出そう。意地でも出さないけど。
「…………なんだって、こんな事になったんだろうね」
手を合わせながら僕は呟く。それは、何に対しての言葉だったのか…………まあ、そこはどうでもいいけどさ。
僕にとっての1番嫌な事…………という題名で、家族のみんなが死んだ後の世界を追体験させられているのは、どういう事だろう? 現実逃避してたけど正直に思えば、目の前で家族が殺されるあのシーンでも流されるのかと思ったんだが…………アレなら確実に僕は発狂できるね。
実際、あんなに無力を感じた事はなかった…………もっと早く、人間をやめていればああはならなかったのか…………。考えても仕方の無い事だね。
…………5人家族が住む事を想定した一軒家に独りきり、と言うのはやはり寂しいな。しばらくの間家で独り、メソメソと泣いていたことが懐かしい。
「……ご飯食べるか」
大きな冷蔵庫の中は、割とスッカスカ。1番大喰らいだった弟がいなくなって、冷蔵庫の中を埋めきる必要がなくなってしまったのだ。僕自身はそれ程大食漢でもなかったから…………。
時刻は朝。作り置きっぽいカレーがあったけど、朝からカレーを食べる気にはなれないので、冷凍庫からご飯を取り出し電子レンジで温め、その間にパックの納豆をテーブルの上に置く。
温め終わったご飯を茶碗に移し、箸を持ってそのまま移動。朝ごはんは納豆ご飯オンリーである。
「いただきます」
やはりこれも、1人じゃなかったら本気で料理する気になるんだけど…………悲しいかな、この時期は光は何処かに行ってていないから、どうしても独りぼっちになるのだ。…………まあ、寂しいとでも言えば速攻で戻ってくるのは目に見えてるけど、一応男の子だから、女の子に向かって『寂しいから戻ってきて』なんて言えっこない。
「…………もしかして、1人であることを認識させるのが『嫌な事』?」
そうだとするならば、ヤケに捻くれてるなぁアレ。
そんなことを思いながら、僕は納豆ご飯をかきこむように口の中に入れていった。
…………まあ、そんなんで済むわけがなかったと悟るのは、2時間後の事であった。
謎の老人…………誰かに似てるっていうかモロアイツだろ?
→分かった方、そういうことです。