リメイク版『異常な普通』も異世界から来るそうですよ?   作:しにかけ/あかいひと

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ヒロインについての疑問は、ここでお答えします。

リメイク版は、ヒロインなんて用意しません!
(正確には、どうしてもヒロインが必要って意見が多くない限り用意しない)


その3-凡人、驚愕する

 

「そ、そんな…………一体どうして…………!?」

 

おーおー面白い位に慌ててやがる。見ていて面白いぜウケケケケ!

 

「なーにが『その程度なら言わずとも良かったのでは?(キリッ』だよw マジウケるwww」

「う、うぐぐ…………じゃあどういうタネで当てたんですか!? マグレなどだったら流石に怒りますよ!?」

 

お、疑ってんのぉ?

 

「じゃあ教えてあげよう。単純な呼吸の乱れだよ」

「嘘です!! その程度なら自分で制御くらい───────」

「あーちゃうちゃう。正確には呼吸パターンの乱れ」

「…………?」

 

黒ウサギってば、自覚してなさそうだけど、違うリズムの呼吸を、一定周期で行ってたの。

 

でも、『♠︎5』を聞いた時に、その一定周期のパターンが乱れたのさ。

 

「多分、動揺してない様に見せる為に、その一個前の呼吸を無意識的に参照したんじゃない? そこだけ一個前の呼吸リズムと全く同じだったからね」

「…………そ、そんな芸当が、」

「出来るさ。なんたって僕は────」

 

と、口に出そうかと思ったが…………止めた。

今ばらすのは、余りにもつまらない。

 

それよりも、この場を更に面白くするには──────

 

「まあそんなことはいいか。それよりも、自分で言うのもアレだけどお買い得だと思うぜ? 交渉なんかは割と得意だし」

 

 

『そういうの、これから必要でしょう?』

 

 

…………のちにこの時のことを聞いたら、彼女は『心臓を掴まれる思いでした…………』と答えた。解せぬ。

 

 

◇◇◇

 

 

黒ウサギは、ほんの一瞬…………誰にも気が付けない程一瞬、顔を青ざめさせた。

 

「(…………ばれてる? もしかして、既にばれている?)」

 

確信に近い怖気が、彼女を支配する。

 

「(も、もしばれているのだとすれば…………)」

 

黒ウサギは、ある目的を持って彼らを召喚した。…………まあ何処かの出落ち野郎の所為で既に危うくなっているが。

そしてその景山健太(出落ち野郎)が、確信を持って言ったのだ。

 

交渉人(そういうの)、これから必要でしょう?』

 

計画の頓挫というレベルではない。終わってしまっていると言い換えてもいい。何せ、彼女らの抱える事情は、この場で語るには余りにも重過ぎた。

 

「(…………これも、騙そうとした罪なのでしょうか? それならば…………あれ?)」

 

黒ウサギは、はたと気付く。

 

「(ならば何故…………自分を売り込むような?)」

 

そうして、感情を隠していた仮面を脱ぎ捨てて健太を見る。

 

「…………ん? なーにか不服な点でも?」

「あ、そ、その…………」

「とりあえず、僕の番は終わったから次に交代するねー」

 

吃る黒ウサギを尻目に、彼女の横を通り抜けるかと思われた、その時。

 

「(とりあえず、説明はちゃんとしてよ?)」

「!?」

 

音量[0]…………しかし確かに、彼女の耳にその声は届いた。

 

凡人はそれ以上を語ることはなく、ただただ愉快そうにこの場を眺めていた。

 

…………まあ、その凡人を愉快そうに睨みつける少年の視線には居心地悪そうにしていたが。

 

 

◇◇◇

 

 

金髪不良系イケメン逆廻クンの視線に居心地が悪くなりながらも、みんなのゲームが進行していくのを興味深く観察。

そしてゲーム終了。…………アンタらよくもまあそんなやり方で攻略するよな。常人には理解し難いよ。

 

「そ、それではチュートリアルの最後…………何かご不明な点があればなんでも聞いてくださいな…………と、言いたいところなのですが」

 

おっとぉ!? ここでまさかの展開!! これ以上の説明なんざしてやるかバーカってことなのか黒ウサギ!?

 

「少し、話をしてもよろしいでしょうか?」

 

…………! はーん、成る程ね。

 

「それは構わないのだけど…………流石にこれだけ立ちっぱなしだとキツいわ」

「あ、あわわわ!? すみません、今すぐ椅子を出しますから!!」

 

そうして、彼女は口を開いた。

 

 

 

 

正直、舐めていたと言わざるを得ない。

 

多分、黒ウサギのコミュニティは崖っ淵に立たされているのは察しがついた。

だって、わざわざ異世界から補充要員を喚び出す必要性って、ないからね。黒ウサギのコミュニティが、箱庭での信用が底辺でもない限り。

 

だから、なんらかの事情で地に落ちたコミュニティなのかなーなんて、妄想してたんだけど。

 

流石に、あんまりだ。

 

働き手、ゲームプレイヤーは奪われた。

残されたのは、働くことすらままならない子供達。

コミュニティを支えていた恩恵もまた。

残されたのは、使い途のない広大なだけの土地。

そして、名前と旗印も奪われた。

残されたのは、『名無し(ノーネーム)』という烙印。

 

地に落ちた、なんてレベルじゃない。

何も…………何もかもがない。

 

「崖っ淵、と言うにはあまりにも悲惨だな」

 

神妙な顔で、逆廻クンが言う。

全くもって、同意だった。

続いて、春日部サンがこの場の誰もが抱いている疑問を口にした、

 

「誰に…………誰に奪われたの?」

 

その問いに、黒ウサギは心底悔しそうに…………噛み締めた唇から血が出るほどに悔恨を滲ませながら、言った。

 

「…………『魔王』、です」

「魔王? あの、御伽噺に出てくるような?」

 

呪詛と聞き間違いそうになる程の怨みの口からは、ファンタジーの匂いのする言葉が紡がれた。

 

「おそらく、皆様が思っているような魔王とは違います。…………確かに、御伽噺の様な魔王もいるのはいるのですがね」

 

…………いるんだ。

 

「この『箱庭』で『魔王』と言った場合、とある特権を悪用する者達を指します」

「とある…………特権ですって?」

 

…………なんとなく、分かった。

 

この世界では、『ゲーム』が全てと言える部分がある。

 

この世界で何かを合法的に略奪しようと思ったら、そんなゲームを作って参加させて奪えばいい。

が、そんな割に合わない…………あるいは勝ち目のないゲームになんか、誰も乗らない。脅されたりとかだったら話は別だけどね。

 

でも、そんな相手の意向を無視する能力があるとするならば……………………

 

「『ゲームを強要できる』権利…………なのか?」

「…………その通りです」

 

主催者権限(ホストマスター)

 

それが、その特権の名前らしい。

 

「条件に合えば、決まったゲームを主催し、強制的に参加させる権利です」

「…………成る程? 確かにそんなものがあれば、そんな悲惨な状況を産むことも可能だわな」

 

特権なんて、生温いものじゃない。

それはもう、チートだろう。

 

「我々は『ノーネーム』…………名乗る名と掲げる旗を奪われたが故に、信用は地の底。ゲームをしようにも、残ったメンバーではそれも儘なりません。今は黒ウサギが働くことで、なんとか食い繋ぐことができているのですが…………」

「……そんなに苦しいのなら、解散して新しいコミュニティを作ればいいんじゃないのかな?」

 

春日部サンが、尤もなことを言う。

悔しいのかもしれないが、背負わずともよい苦労は、背負うだけ無駄なはず…………なのだが、

 

「そんなこと…………黒ウサギにはできません…………!!」

 

涙を滲ませながら言う彼女を見ると、意味があってのことなのだろうことは分かった。

 

「自覚はあるのです…………無駄なことをしていると…………!! ですが…………ですが、我々が解散してしまえば、散り散りになった同士達は、何処に帰れと言うのですか…………!!」

「「「「…………!!!」」」」

「残された我々が、諦めてはならないのです…………!! 例え、もう戻ってこないのだとしても、一縷の望みがある限り、諦めては…………!!!」

 

……………………なんて、こったい。

 

「…………それで。黒ウサギはなんでそんな話をした? 話を聞いて僕らを召喚した理由も分かっちゃったけど、ぶっちゃけ話さずに騙して事後承諾ー…………みたいにしてもOKだったわけだよね?」

 

どの口が、と言われようと構わない。

言わないと、まずい気がした。

 

「…………本当のことを申しますと、そうするつもりでした。ですが、これ以上我々の都合にあなた方を振り回すわけにはいかないと、思ったので」

 

…………や、確かに急に召喚されて高所落下で死んだけどね? あんまり気にしてないけど。

 

「箱庭に入れば、30日はコミュニティに入らずとも自由に行動できます。その間に、入りたいコミュニティを探してくださいな。それまでは…………我々が皆様のお世話をさせていただきます」

「でも貴女…………私達にその『ノーネーム』に入って欲しいのではなくて?」

「…………いいのです。これ以上は─────」

 

 

 

 

 

 

「気に喰わないね、その目」

 

 

 

 

 

 

その、諦めた目がとてもとっても気に喰わない。

 

「そのハナから無理って諦めてるその目…………それが何よりも気に喰わない、嗚呼気に喰わない!!!」

「で、ですがこんなコミュニティに誰が、」

「僕が入るさ。そんなコミュニティに」

「………ッ!!」

 

驚愕に、彼女の目が開かれる。

 

「個人的にね、貴女の言った『魔王』とかいうヤツに腹が立ってさ。だから、あんたら『ノーネーム』の再興に手を貸すことは吝かじゃない。…………ま、他の人は知らんけど」

 

チラリ、と視線を彼らに向ける。

 

「私も……構わないよ。この世界には、友達を作りに来ただけだから」

「あら、そうだったの春日部さん。なら、私がその一号に立候補しようかしら?」

「お、なら僕は二号で」

 

と、ここで僕らは逆廻クンに目を向ける。

 

「………何を期待してんだよ?」

「別に、なんでもないわ?」

「やー、なんでもねーです」

「………………………じー」

「にゃーにゃー、にゃにゃ」

 

別に、空気読めよとかは思ってないからねっ!

 

「ハァ…………ったく。あーあー分かった分かった。三号でも四号でも好きにしろ」

 

…………よし!

 

「…………ありがとう。みんな、私の知る子達とちょっと違うから、大丈夫だと思う」

「にゃー、にゃーにゃー!!」

 

えっと、三毛猫サンが狂喜乱舞しとるけど、大丈夫なんだろうか?

 

まあそれは置いといて。

 

「私も構わないわ。そこの景山くんと同じで『魔王』という輩は気に食わないし、何より最高の環境を求めるつもりならこんな異世界まで来ていないわ。私、久遠飛鳥はおおよそ人の望み得る全てを捨てて此処に来たのだから」

 

…………見た目とオーラと喋り方からなんとなく確信はあったけど、アンタやっぱお嬢様だったのな。

 

さて、残るは1人なわけだが。

 

「…………一つだけ答えろ、黒ウサギ」

「は、はいな」

 

なんだか、目の前で奇跡が連発して処理が追いつかなくて呆然としてる人間みたいな黒ウサギが、逆廻クンの一言で再起動を果たした。

 

そして、逆廻クンの口から出たのは────────

 

 

 

 

 

 

 

 

「この世界は、面白いか(・・・・)?」

 

 

 

 

 

 

 

多分、僕らも思っていたこと。

 

みんなの口ぶりから察するに、此処に来る…………前の世界に飽いていた理由はあれど、捨てるとまではいかなかった筈だ。…………あの手紙が無ければ。

 

悩み多し、というぐらいだから、その悩みを解決(即ち)この世界が魅力に溢れているということだと思うのだ。

 

「イ、Yes!! 此処は神すらも集う世界、最高の娯楽である『ギフトゲーム』のある箱庭!! どの世界よりも、断トツに愉快で面白いであろうことを、黒ウサギの名において保証いたします!!」

「そうか。なら、そんな愉快な世界に喚んでくれた義理ぐらいは果たしてやんよ」

 

『魔王』ってのにも、興味が湧いたしな…………と、そっぽを向いて、彼はそう言った。

 

「…………本当に、ですか?」

「「「「本当、本当」」」」

「…………本当、本当にですか?」

「「「「しつこい。何度も言わせんな」」」」

 

気持ちは分かるけどね…………。

 

と、呆れた様に肩をすくめていると、

 

 

 

「…………グズッ。ありがとうございます…………本当に、ありがとうございます…………!!!」

 

 

 

…………まあ、嬉し泣きで目が輝いてるからいっか。

 




ツンデレ十六夜。多分需要はない(性転換でもしない限りね)。
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