リメイク版『異常な普通』も異世界から来るそうですよ?   作:しにかけ/あかいひと

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そんなにヒロイン必要!?


その4-凡人、叩かれる

「〜♪」

 

かつてない程に、機嫌がいい。

 

前の世界では、とある方向の案件限定のトラブルシューターをやってたけど、今回のは特大である。

もうそんな義務はないが、『景山健太』で在ることに必要な要素なのだ。

そんなわけで今の僕の状態は、目の前に人参を吊るされた馬みたいなものだ。いろんな意味でハッスルするし、機嫌も良くなるし、テンションも上がるってもんさ。

 

そしてそんな僕を含めた、異世界より召喚された少年少女は、黒ウサギに連れられて、箱庭の本舞台へと向かっていた。

 

「ふん? 中々機嫌が良いみたいじゃねぇか」

 

そんな少年少女のウチの1人、逆廻十六夜クンが、僕に声をかけてきた。

 

「そりゃあね。だってさ、ファンタジーだぜ? どんな人も1度は夢想するファンタジー世界だぜ? ちーとばかし世界に退屈してた僕としちゃ、渡りに船な話なわけよ!」

 

1番の理由はそれではないが、まあ嘘ではないのでそう嘯いておく。

にしても、ヤケに饒舌だな僕。それほど機嫌がいいってことの証左なんだけどさ。

 

「全くもって同感だが、意外だな。如何にも(・・・・)普通そうな人間に見えたからな。そういう奴ってのは、良くも悪くも日常に固執するんじゃねえのか?」

「ははーん、鋭いね! でもそっちこそどうなんだい? 如何にも(・・・・)異常過ぎて世界から弾かれかねなさそうな逆廻クン!」

「………………ハッ!」

「……………ニヒッ♪」

 

あんまり、しょっぱなからそんな心を見透かすよーなことしちゃあ、同じ様に返しちゃうぜぇ?

 

「気に入った。やっぱお前おもしれーわ」

「お褒めに預かり恐悦至極ってね」

 

僕からしたら、アンタの方が面白いと言ってやりたいけどね! それ以上に怖いから言わねーけど!

 

「でも、気にくわねーからそのニヤニヤと観察するようなその目をやめなさーい。居心地悪くてしかたないや」

「おっと悪りぃ。俺の見たことある奴に似てたから、ついな」

「ほーん?」

 

まあ、僕ちゃん平均顔だからどこにでも居そうだけどね。

 

「私も、教科書で似たような人見たことある」

 

僕らの会話に割り込む形で、前を歩いていた春日部サンが声をかけてきた。

 

「へぇ? 春日部サンがどの時間軸から召喚されたのかは知らんけど、普通顏の人が偉人になるようなこともあるのかー」

「…………薄々感付いてはいたけれど、そういうことなのかしら?」

 

久遠サンが、疑心が確信に変わった目をしてそう言った。

 

「多分ねー。もしくはパラレルワールドかもしれないけどー」

 

あのど腐れ親友が言ってた『立体交差平行世界論』みたいなものかもしれないが。まあこの場だとすこぶるどうでもいい。

 

「例えば、久遠サンのセリフから推測するに、貴女のところの家は押しも押されぬ金持ちな家だったんじゃない? 服装も加味すると、戦時中あるいは戦後っぽいイメージするから大財閥的な?」

「…………良くここまで少ない情報で分かるわね。その通りよ」

「あはは! こんぐらいできないと、僕死にまくっちゃうからねっ」

 

そうでなくともプチプチと死んでるからね、こういう技能は磨かないと!

 

「でも少なくとも、時間軸的に戦後70年の時代に生きていた僕は『久遠財閥』とか、それに準ずる物の名前を聞いたことがない。財閥が解体されたにせよ、落ちぶれたにせよ、その残滓は残ってるはずなのに、それを見たことがない。だからこの時点で、僕と久遠サンは平行世界の人間同士なんだろう」

「へぇ…………」

「成る程な」

「…………だからなのかな?」

「…………ニャー」

 

僕のくだらない与太話に対する反応は三者二様アンド猫だ。単純に感心した風なのは久遠サン。後の2人with三毛猫クンは理解を含めたような反応である。

 

……………………察しはついたが、そうだとすれば何故?

ま、気にしたら負けか。

 

「あれ? そうなると、久遠サンってば僕よりも70─────」

「その続きを口にしてみなさい。一生死に続けてもらうわよ」

「ごめんなさい申し訳ありません久遠お姉サマ万歳!!」

 

あっぶねー! ついついあの女郎相手にしてる空気で話ちまった!

 

「しかしだな…………こうしてただただあの黒ウサギについて行くってだけじゃあ、面白みがねぇな」

「そうねぇ。まあ、今の私としては早くこの濡れた服をどうにかしたいところね」

「私も」

「ニャーニャー」

 

ほー。僕は出落ちしたから無縁だが。

 

「じゃあ、お嬢様達は無理だな。おい景山、世界の果てに行ってみようぜ」

「乗った」

 

二つ返事。

時として退屈は人間にとって悪しき産物なのだよ。

 

「てなわけでお二人サン、あとの対処は任せたー」

「そう。せめて生きて帰って来なさいね」

 

久遠サン、それフラグじゃないかなぁ?

 

 

◇◇◇

 

 

「やっぱりフラグだったよチクショウ!!」

「ギャーギャー五月蝿えぞ」

 

あの時、一つ忘れていたことがあったのだ。

 

それは、身体能力の差。

 

だいたい僕の1500m走のタイムは6分前後。50m走は7秒前後。このことからも分かるように、僕の身体能力は極めて一般的だと言えよう。

対してこの野郎のスペック、そらもう人間かどうかを疑うレベルでおかしかったのだ。…………察しはついてたけどね?

 

Q:そんな、身体能力に開きのある両者が同じ目的地を行くとき、どうなるでしょう?

 

…………本来なら自転車でも取り出そうかと思ったんだけど、その前に首根っこ掴まれて全力疾走されました。

お陰で早く着いたのはいいが、何回か気絶してしまい、もう泣きたくなったもんだ。

 

…………ま、言ってた『フラグ』は、その話じゃないんだけどね。

 

「もうちっとどうにかならんかったのか!? お陰で首痛めたわこの野郎!!」

「ハッ! 冗談も休み休み言えよ。誰が好き好んで野郎相手にお姫様抱っこなんか─────」

「背負うという選択肢はなかったんかい!!?」

 

男をお姫様抱っこするのはいやなのは分かるけどね!!

 

…………まあそんなことはともかく。

 

現在未だ世界の果てを目指す道中で、何やら滝っぽいところに到達して今に至る。

 

「…………ところでアレ(・・)、どうするよ?」

 

僕が視線で促した先にあったのは、巨大な蛇。それも、ただ巨大なだけの蛇ではなく『神』の類の存在である。直感だとこいつ、人身御供からうんぬんかんぬんで祭り上げられたっぽい。だとすると性別は女性かな? 声の感じからしたら想像つかないけど。

 

…………って、そんな豆知識は要らなくて。

 

「知らん。なんかふざけたコト抜かしやがったから少し遊んでやっただけなのによ」

「いやいやいや!? あいつカミサマだよ!? 確かに『試してやろう(キリッ』とか言われたらイラつくのも分かるけど!? でも後々祟りとか来るかもしれねーこと考えなかったのかよ!?」

「へー? こいつ神なのか。ま、だからと言って俺がそんなこと気にする道理はねぇが」

「我が道行き過ぎ!!?」

 

嗚呼、胃が痛い…………カミサマ連中は結構面倒なんだぜ?

 

「つーかぶっ飛ばしたのは俺だが、気絶させたのはお前だろう?」

「…………ぼ、僕のログには何もないな」

「目ん玉泳ぎまくってんぞオイ」

 

知らない知らない!

別にこの蛇が起き上がりそうで面倒だったから完全に意識を[0]にしたなんて、僕は知らない!!

 

「それに僕の能力…………あ、此処ではギフトって言った方が良いのかな? は、単に身体を再生さすだけのものだしぃ? 僕ちゃん知らなーい」

 

…………そういうことにしておかないと、これ以上ロックオンされても困るしね。

 

「…………ほう?」

「…………んだよ?」

「じゃあなんで、身体を再生するだけのギフトが…………服にまで作用しているんだ?」

「ッ!!!」

 

墓穴を掘った僕に向かって、奴がニマニマと愉しそうに笑いながら言った。

 

「この時点で既に、お前の持つギフトは2つ以上、または身体を再生するだけに留まらないギフトを持ってることは明白なんだがな?」

「…………チッ」

 

これだからスペック高いヤツらは!!

そんなん相手し続けるの疲れるっての全く!!

 

とはいえ、このことが誰かに知られるのはマズい。こいつがこのことを言いふらしたりすると非常にマズい。もしかしたらコレに対して恨みを抱えてる奴が、箱庭(この世界)にいるかもしれないし。

初対面の人間相手に、無様な信用信頼をする程、僕は世界の明るいところしか見ていなかったガキではない。

 

…………こうなったら、

 

「…………記憶を[0()]すしかないのかな」

 

実力行使あるのみ!!

 

「面白れェ…………やれるモンならやってみろ」

 

対する向こうは、『こうなることを待ってました!!』と言わんばかりに、顔を獰猛な笑顔に歪めていく。

しかし、自分が勝つことを確信してるようなそのツラ…………気に入らないねぇ。

 

「ハッハッハッハ! 挑発したこと、後で後悔すんじゃねーz───────」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まずは団体行動を乱したことについて後悔なさい!! このお馬鹿様方ァァァアアアアアッッッ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

本日7度目の意識の暗転。

 

何か、ハリセン的な何かに叩かれたようだが…………威力、おかしくね?

 

その最後、僕の視界に映ったのは、緋色の髪の毛をした、黒ウサギだった。

 

「…………それ…………黒ウサギちゃう…………赤ウサギや…………」

「誰もが思って言わないことを口にしないでくださいっ(泣)」

 

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