リメイク版『異常な普通』も異世界から来るそうですよ?   作:しにかけ/あかいひと

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その6-凡人、脅す

一応の目的を果たした僕らは、先に箱庭に入っていた一行と合流。そして出会った『ノーネーム』のリーダーであるジンくん! いやー、彼とは仲良くできそうで助かったわ〜。なんか着ているダボダボローブに着られてる感あるけど、11歳と聞いて納得しちまった。

 

で、僕らがいない間こっちの方でもいろいろあったらしく、なんとここら辺でそこそこ力のあるヤの付く自由業みたいな方々のコミュニティに喧嘩を売ったとのこと。

もちろんみんなの心配をしてブチ切れる黒ウサギ&厄介事は起こさないに限る為何やってんのとつっこむ僕。

だが、理由を聞くと…………うん、まあ仕方ない。むしろ消そうと言いかねない内容だったので、彼女達にグッジョブと言わざるを得ない。ま、喧嘩自体は首を突っ込むのは無粋みたいなので、裏から動くことにしたが。

 

まあそんなこんなで僕ら一行は、黒ウサギに連れられるまま、僕らが持つという『ギフト』の鑑定ができるところに案内してもらっている最中で。

 

桜並木が植えられた川の隣を歩きながら、久遠サンが納得いった風に呟く。

 

「成る程、平行世界があるのだからこうして元いた世界と時間がずれていてもおかしいことはないわよね」

「まあ呼び出す時間にも寄るよね。ちなみに久遠サンが呼ばれた時期は春以外の時期、そして服装から察するに夏季だった。そうだよね?」

「そういう景山くんは、服に元々桜の花びらが付いていたから、丁度春だったのね?」

「せいかーい」

 

あと、逆廻クンのは学ランなのであまり想像がつかないから分からんが(厚着でないのと薄着でない観点から春か秋のどちらかか、そこからの移り変わり辺りという予想はつくけど)、春日部サンは思っ切りノースリーブの服装だから考えるまでもなく夏だろ。

 

「……。私は秋だった」

「ヤハハハ! 何が『考えるまでもなく夏だろ(キリッ』だよ!」

「…………うるせー」

 

人の失敗は笑っちゃダメなんだぞ! 僕は平気でしてるけどね!

 

(そーれーにーしーてーもー………)

 

妙に間延びした思考を展開しながら僕は思う。

 

呼び出された面子、僕以外のスペックがおかしい気がする。

 

詳しいギフトの能力は聞いとらんが、ぱっと見の異常度がどいつもこいつも…………特に金髪学ランヘッドホンが頭抜けている。

単なる勘だが、この中で誰か1人でもいたら、復興自体はできるんじゃなかろうか? 一応僕も対異常に関しては腕に自信があるので1人でも再興まで漕ぎ付けられる確信はある。

…………となると、いささか過剰戦力な気がしないでもない。

 

(まあ…………喚び出された理由が『復興』だけなら…………だけど)

 

件の魔王が、異様に強いのかもしれない。

僕ら自身が、この箱庭と縁があるのかもしれない。

 

まあ、そこは今考えることではない気がするが。何はともあれコミュニティ『ノーネーム』の復興再建である。

 

と、無駄に真面目な思考から浮き上がると、どうやら目的地に着いたらしい。…………って、もし目的地があの店っぽいのだとするなら、暖簾下げて閉店作業に移ってませんかあの店員サン?

 

「ちょ、ちょっと待っ─────」

「待った無しです御客様。うちは時間外営業はやっていません」

 

あちゃー…………マジで閉店っすか。間に合うようにスケジュール管理しようよ黒ウサギ。まあ時間潰した原因は僕にもあるから僕も反省するけど。

 

「なんて商売っ気のない店なのかしら」

「ま、全くです! 閉店時間の5分前に客を締め出すなんて!」

「文句があるならどうぞ他所へ。あなた方は今後一切の出入りを禁じます。出禁です」

「出禁!? これだけで出禁とかお客様舐めすぎでございますよ!?」

 

…………ふーむ、格式高い感じの店か。仕方ない、こりゃ店に入れない。予想するに、それなりの信用できる相手としか取引しないのであれば…………名も旗もない『ノーネーム』は、信用度最低である。

 

「なるほど、『箱庭の貴族』であるウサギのお客様の無下にするのは失礼ですね。中で入店許可を伺いますので、コミュニティの名前をよろしいでしょうか?」

 

ほら来た。

 

「うっ…………そ、それは…………」

 

うーむ、しゃーねーな。

 

「黒ウサギ、帰ろうぜ。こりゃ無理だ」

 

店員サンの嫌味な返答に対して、ぶつかっていかない判断を下した僕への視線は、申し訳ないといったものが一つと、残りが失望したといったもの。

ま、ある程度事勿れ主義なので、そんな視線向けられてもどうしようもないのだが。

 

「時に黒ウサギ。君の審判業務の斡旋は、何処がやってくれてるのん?」

「あ………この『サウザンドアイズ』ですが…………」

「で、この近辺に他のウサギは?」

「いえ、黒ウサギ1人だけですが…………」

 

ニィ、と口の端を釣り上げる。

昔僕と腐れ親友が使った手段が使える。

 

 

 

「よし、なら黒ウサギ。これからこの『サウザンドアイズ』サンに依頼されても無視しちゃおうぜ☆」

 

 

 

『…………は?』

「…………!」

 

逆廻クン以外が、呆れたように口を開けた。

 

「だってさ、今までは黒ウサギがコミュニティの収入を全部稼ぐ必要があったけど、これからは僕らがいるよね! まあ大手のコミュニティに目を付けられるのは仕方がないけど、僕らは無価値の『ノーネーム』! 元から相手にされないのないのならあまり気にならないよねっ! そして路傍の石程の価値しかない『ノーネーム』なら、躍起になって潰しにくることもないだろうしねっ! だったらこんな性悪なこと聞いてくるような大手なんて、関わるだけ害悪だよ!」

 

ここら一帯に、ウサギはいない。

というか、そもそも『箱庭の貴族』と言うぐらいだ、絶対的な個体数はおそらく少ない。

で、黒ウサギは『ノーネーム』所属だ。足元見た条件で審判業務を行っていた可能性がある。

と、いうことは黒ウサギがこれからの仕事を蹴り続けるのなら、向こうさん…………『サウザンドアイズ』だっけ? は他のウサギを雇う必要がある。おそらく、そのウサギは立派なコミュニティに入っていて、お高くとまってるに違いない(偏見)。そんなウサギ相手に、今までの様な対価で審判業務を請け負って貰えるか? 答えは否だろう。

じゃあ審判いなくてもいいのだろうか? おそらくそんなことはない。ウサギが審判を務めたゲームは箔がつくといっていた。もし、黒ウサギに審判業務を依頼して、ゲームの信頼性を高めていたのだとすれば…………黒ウサギが審判業務を蹴ることで少なからず信用が無くなるだろう。こういうお店やって商売してるところは、信用が減るのは致命的である。

というか、『箱庭の貴族』に愛想尽かれたコミュニティって、それだけで信用ガタ落ちでしょう。

 

という内容を、声高に、大げさに、大仰に、周囲に響き渡るように騙る。

僕のせんとすることが、逆廻クン以外にも伝わったのだろう。なにやら店員サンが顔を青ざめさせているが、顰めっ面してもこっち側からの反論はないので続行である。あ、なんか黒ウサギも顔を青くしてアワアワしてるけどスルーで。

だって流石にイラッとしたもん、嫌がらせで返したとしても仕方ないよねっ!

 

「と、言うわけで帰りましょー。いろんなことがあって僕疲れましたよー」

「ちょ、ちょっと待ってください!」

「嫌です、待ちません。だって貴女が僕らを引き返すように言ったじゃないですか? だから僕らはおとなしく帰ります。無理しなくていいですよ? 僕らは『ノーネーム』だ。そんな信用できない相手を店に入れないという貴女の判断は間違ってません。誇ってもいい。ただ…………その態度に傷付いた黒ウサギが、そちらからの依頼を受けなくなったとしても、そのせいでそちら不利益が生じようと、弱者な僕らには必要以上に糾弾されるような落ち度はない」

 

まあコレは黒ウサギに希少性がなかったら使えなかった手だが、想像以上に彼女の希少価値は高い様子。

とはいえ…………大手を敵に回すのは流石にキツい。故に向こうが折れたらそこに乗っかる必要が、僕らにはある。

 

「…………分かりました。オーナーに確認を取りますので、少々お待ちください」

「え、いいんですか? いやー、ありがとうございます! これからも、良い関係でいられるといいですね!」

 

白々しいと言うなかれ、こうやって使える武器はある程度は出し惜しみせずに使わないといけないのだ。脅しも、効果がある内に使う。

 

「景山くん…………控え目に言って貴方、悪魔ね」

「アッハッハ! お褒めに預かり恐悦至極!」

『いや、褒めてないから』

 

女性陣から声を揃えて言われた、解せぬ。

 

「だって、こういう交渉は相手の痛ーいところを突かねーと意味ないじゃん」

「アレが交渉と呼べるのならね…………」

「いやしかし、その童は上手いと言わざるをえんぞ?」

「まー、そーゆーのやれないとお仕事減っちまうから当然さ」

 

まあ褒められるのは素直に嬉しいので照れておくけど。

 

…………でだ。

 

「誰だアンタ!!?」

 

いつの間にか、僕らの背後に白髪ツノ付きの和装ロリータがいましたとさ。

 




いやー、店員さんは強敵でしたね。

それはともかく。

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