リメイク版『異常な普通』も異世界から来るそうですよ?   作:しにかけ/あかいひと

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魔法少女って、敵を拘束して最大火力をぶつける戦い方でいいっすよね?(偏見)


その8-演目、『星まで到れ、其の儘堕とせ』

 

「…………ふざけておるのか?」

 

怒りに震えながら白夜叉サンに言われた言葉がコレ。うん、まあ言われても仕方のないことであるということは理解してはいる。

 

「[成る程、確かに何も知らない貴女から見れば、男の癖に魔法少女コスを身に纏う行為は、ふざけていると捉えざるを得ないのでしょうね]」

「ならば、違うと?」

「[ええ、そうよ]」

 

確かに恥ずかしい。仮に自分が第三者として見たとすれば、思わず存在ごと消してしまいそうだ。

 

だが、

 

「[コレは、私の最初の敵にして師匠である大親友が、私の力にと贈ってくれた装備よ。そこに、巫山戯るなどといった不義理な感情が入り込む余地は、無いわ!!]」

 

腐れ親友が、姿を隠して行動せねばならない僕に贈ってくれた、8割善意、2割爆笑のプレゼントなのだ。

割と真面目に、馬鹿にされるような視線を向けられるのは、不快の極みだ。

 

「[さあ、再開しましょう! この姿を晒した以上、勝ち負けに関わらず、速攻で決着をつけるわ!]」

 

手に持ったルーズリーフのノートの1ページを、無造作に破る。そのページに描かれていたのは、とある条件下において発動する魔法陣。

 

さて、前置きするが、僕に魔力なんて不思議パゥワーは備わっていない。普通の人間に、そんなものは備わっているはずがないのは、自明の理である。

だが、魔導について少しでも学べば…………他所から力を持ってきて、それを基に使うことはできるのだ。

 

「[先ずは一撃! 爆撃(explosion)!」

 

突撃。破った1枚を、白夜叉サンに押し付けて離脱。

僕に触れている間は、絶対に起動しない魔法陣だが…………ある種力の塊に回路が直接触れたら、否が応でも起動する。

魔法陣が怪しく光り…………爆発。

 

己の生み出した爆発を、手を振るうことで掻き消しながら、次の手を用意。

 

「なッ!!?」

「[続けて第2打! 拘束(bind)!]」

 

更に1枚千切り、腹部に押し当てんと特攻。

 

「させんッ!!!」

 

さすがに為すがままにされるのは危険だと判断したのか、炎弾で弾幕を張られた。

 

だが、しかしッ!

 

「[それは、悪手以外の何物でもないわっ!!]」

 

今放たれた炎は、先程と違って物理法則を基点としたものではない、異能による炎。おそらく、これならば僕にも有効打足り得ると思ったのだろうが。

 

千切ったページを前に突き付け、紙が燃えると同時に魔法陣は起動する。

この際、僕に当たる炎はガン無視だ。当たったところで掻き消えるのだから。服は焦げるけど。

 

起動し、展開した魔法陣からは、幾重もの鎖が放たれた、白夜叉サンを拘束した。

 

「[私の拘束(bind)は、相手の力が高ければ高い程強度が高まる特別製よ。星霊なのだから、さぞかし締め付けが酷いことになってるでしょうね]」

 

今度は5枚、ページを千切る。

 

「[1枚目、溜め(charge)]」

 

ページに描かれた魔法陣の中心を破り、周囲に漂った力を掻き集め、球状に整える。

 

「[2枚目、円周(circle)]」

 

球状の力の塊に、2枚目を重ねて輪っかにする。

 

「[3枚目、分解(Decomposition)]」

 

紙飛行機状に折り畳まれた3枚目を、輪の中心に装填。輪と紙飛行機は形を崩し、弾丸状へと変化する。

 

「[4枚目、回転(roll)]」

 

4枚目を翳し、弾丸を高速回転。

 

「…………成る程、牽制することで魔法を使えるということを認識させ、それを逆手にとって次は拘束。最後に、一撃必殺を以って終止符を打たんとしておるのか。ここまでの流れ…………見事、と言っておこう。伊達や酔狂で魔法少女を名乗ってるわけではなさそうだ」

「[ええ、ありがとう。素直に嬉しいわ]」

 

つっても、手は抜かねぇがな。

 

「[5枚目…………点火(ignition)。これで終幕よ]」

 

5枚目を翳し、発射の準備を整える。

中心を破れば、陣は起動する。

 

「[凡才なりに精一杯組み上げた、渾身の一発『魔弾:崩』…………喰らいなさいッ!!!!]」

 

引き金を引く。

高速回転をしていた弾丸は、まっすぐ…………まっすぐ、白夜叉サンに向かって飛んでいく。

 

着弾と同時に広がる閃光…………気を抜けば、僕でさえも消えかねない(その後復活するけど)ソレは、間違いなく彼女を分解し、崩していくだろう…………ッ!!?

 

「[…………まさか、]」

 

閃光の中に、人影を見た。

アレは間違いなく、白夜叉サンだ。

 

マジかよ…………アレが効かないとかどんだけ…………。

 

「もう一度言おう、見事であった。人の身で、良くぞここまで」

 

光が無理矢理振り払われたその中心で…………白夜叉サンは言った。

 

「だがしかし、まるで全然、この白夜叉を倒すには程遠いッッッ!!!」

 

ちょ、ソレどこのファンサービスだよ…………って思考停止している間に、懐に潜り込まれていた。

 

「フンッ!!」

「[───────ッ!!!?]」

 

拳一閃。それだけで、何もしなければカスすら残らない一撃。

目を白黒させながら耐え切るも、もう一つの拳が襲ってくる。

それはなんとか回避した…………が、拳圧による衝撃だけで吹っ飛ばされた。

 

無様に転げ回った僕は、恨みがましく白夜叉サンを睨み付ける。

 

「[ガハッ、ゲホッ! な、なによこれ…………デタラメもいいとこじゃない!!]」

「そうだ、コレが魔王。理不尽の権化だ。…………『ノーネーム』を滅ぼしたのも、この様な理不尽だ」

「[…………退け、とでも言うつもり?]」

「当たらずも遠からず、だ。成る程、確かに私に決闘を挑むだけはある。才はないが、それを補って余りある経験と知識。しかし、おんしのそれだけでは足らんのだ」

 

…………まあ、そうなのだろう。

とはいえ、足りないからと言って諦めるのは、我慢ならん。

 

「[まだ…………仕込みしかしていない魔法を起動する前にそんなことを言われても、退けないわ]」

 

指パッチン。それで全てが現れる。

 

「仕込み、だと? そんなモノが何処に…………ッ!!!?」

 

凍った大地に削ることで描かれた、僕らを囲む大きな大きな魔法陣。僕の本来の能力で隠されていたソレが、露わになった。

 

 

◇◇◇

 

 

「[骨が折れる作業だったわ…………ちょこまか動き回りながら地面を削って、尚且つ傷付けられないように気を張るのは]」

 

勝ち誇った顔ながらも、苦し気に彼は言う。

 

「[普通なら使い所がない陣だけど…………こんなところで活きてくるとは思わなかった]」

 

白夜叉の力にあてられて、魔法陣は黒く(・・)輝き始める。まるで、光を吸い込む様に。

 

「これは…………まさか!!?」

「[恒星の最期…………重力崩壊の成れの果て…………光すら逃がさぬ歪…………ブラックホールを参考に作り上げたコレは…………『複合陣:星堕とし』]」

 

巨大な円の中心が歪み始める。光すら吸い込むそれは、只々黒い点にしか見えない。

 

「[Reach for the stars.(星まで到れ) Downfall the stars.(其の儘堕とせ)]」

 

彼がそう呟く間に、黒い点は徐々に大きくなり、渦を形成し始める。

 

「おんし、正気か!!? このままではおんし自身も巻き込まれるぞ!!」

「[フフッ、馬鹿ねぇ。最初から、諦めてるわよ自分のことなんて]」

 

覚悟、と言っていいものなのかどうか。だが自滅を承知で、彼が白夜叉を倒そうとしていることは明白であった。

しかも、

 

「ぐ、ぐぅ…………ッ!!!」

 

星霊であるが故に逃げられぬ重力の鎖が、徐々に…………徐々に白夜叉を引き込んでゆく。

 

「[勝ちたかったけれど…………引分けなら御の字ね─────────]」

「ぐ、ぐぉぉぉおおおおお─────────」

 

黒い渦は、(白夜叉)堕とす(飲み込む)まで消えることはなく。

 

安らかに微笑んだ彼のセリフの名残と白夜叉の絶叫を残し、2人はその渦の中へと消えていった。

 

『…………え?』

 

その場に残された4人は、主人の居なくなった空間が崩れ、元の白夜叉の私室に戻るまで、固まったままだったという。

 

 

◇◇◇

 

 

戻ってきた4人が見たものは。

 

「む、だがしかしそれでは安定せぬではないか」

「やーでもここに僕の師匠(腐れ親友)が開発した余剰分の魔力を排出する空回りの文字を配置することで、その問題は無くなりますよ? まあ僕は効果を知ってるだけでなんとも言えんのですが、白夜叉サンなら詳しく分かるのでは?」

「ふむ、成る程! まさかあの文字を弄ってこの様なモノを生み出すとは…………。これならば書き上げる際の手間が大幅に削れる。まこと、おんしの師匠は天才だの!」

「まあ、自称天災魔法使いですからね…………一応齧った身としては、あいつの規格外さは訳わからんですよ…………」

 

仲良く談笑している、消えたあの2人だった。

 

「え、え!? お二方、ご無事だったのですね!?」

「おお黒ウサギに童達、直ぐに戻してやれんで済まなかったな」

「やーごめんねー? まさかあそこまで熱くなるとは思わなくて」

 

熱くなってブラックホール擬きを出されてはかなわない…………が、そこにツッコミを入れるのを我慢しつつ、黒ウサギは質問した。

 

「け、結局この勝負は…………」

「「引き分け」」

「そ、そうでございますか…………」

 

黒ウサギは考えることを諦めて、2人がこちらに友好的であることを神に感謝したという。

 

「…………凄いのは分かるのだけど、変態?」

「…………突き抜けるとこうまでなるのか」

「…………本当に、教科書通りだったんだけど」

「…………ニャ、ニャー」

 

そして先程の激闘を観ていた3人と1匹は、賞賛と侮蔑の目を、景山健太に向けていたとさ。

 




やり過ぎましたが、反省しても後悔はしてない!
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