現在の時刻は深夜の一時をすでに過ぎている。
カタカタカタカタカタカタ・・・・・・。コーヒーの香り漂う、資料まみれの研究室。そこで彼は一心不乱にパソコンをタイピングしている。
「・・・・・・・・、・・・・・っ!」
何気なくカップに注がれたコーヒーを飲もうとして口に含む。淹れたてであったことを忘れていたのだろう。不意に感じたコーヒーの熱さに顔をしかめる。
熱さを我慢しコーヒーを一口飲み、また作業に没頭する。彼は今現在『インフィニット・ストラトス』というパワードスーツ、通称『IS』を開発している。
なぜ、開発しているのか?と問われるならば、彼は『世界で二番目』にISを動かしたからである。彼は元々、カナダに本社を置く大企業『リーゼ・マクシア』のIS設計者兼研究者だ。ISに携わる以上、ISに触れる事はしょっちゅうだ。
日本で織斑一夏という少年が、ISを起動させてしまった直後、ほとんど同時に日本にある研究室でも、彼の手によって何の因果かISが起動してしまったのだ。
それから、IS学園へと入学を余儀なくされた。
以上の理由により、元々は試験機として設計していたISを本社の社長に無理を言って自分の専用機に貰い受けたのだ。
今彼がやっている作業は、ISのスラスターやOS、その他システムの微調整である。
カタカタと軽快にキーを叩いていた指が不意に止まる。彼の顔はまるで一仕事終えたかのように晴れやかだ。どうやら作業が終わったらしい。
「ふぅ・・・・、やっと終わったよ。あとは明日・・・もう今日か。お昼くらいにでもハウスさんに持って行こう。そしたら入学して少し位したら完成して届くだろうし。」
んん~、と伸びをした後、欠伸を噛み殺して椅子から腰を上げる。
ガチャリと扉が開き、扉の開いた背後を振り返った。するとそこには一人の少女が立っていた。
可愛らしいと言うよりも凛々しい顔つきで、赤紫色の宝石のように美しい瞳、桜色の唇。腰まである金髪は金糸を思わせるがごとく。体付きも、出ているところはちゃんと出て、引っ込んでいるところはちゃんと引っ込んでいる。その少女が口を開く
「・・・・・・なんだ、ジュード。まだ起きていたのか?入学まであと二日なんだ。あまり無理をすると体調を崩してしまうぞ。」
優しくだが、少し咎めるように彼女は言う。彼、ジュード・マティスは苦笑いをしつつ応える
「すいません、マクスウェル社長。でも、もう終わったので今から就寝するところだったんですよ。」
「ジュード、二人きりの時はミラ、だ。」
そう、頬を少し膨らませながら咎める、自分をミラと呼ぶように言った少女は、15歳にして大企業『リーゼ・マクシア』の社長であり、ジュードマティスの幼馴染みのミラ・マクスウェルだ。
「あ、ごめん。そうだったね、ミラ。」
「そうだ、それで良い。」
名前を呼ばれて満足したのか、笑顔になる
「では、ジュード!一緒に寝ようではないか。」
笑顔で爆弾発言を投下してきた。その言葉を聞きジュードはボッ!と顔を真っ赤にしてしまう
「えぇっ!?ちょ、ミラ!からかわないでよ!!」
「からかってなど居ない。むしろ、真剣だ。ジュードと一緒に寝ると安心して熟睡できるのだ。」
聞いているこっちが恥ずかしくなることを、平然と真面目に言ってきてジュードは折れるしかなかったのである
「し、しょうがないなぁ。じゃ、寝よっか・・・・。」
そうして、研究室の隣の自室でジュードは抱き枕にされながら寝れない夜を過ごしたとか。