UAとお気に入りが凄い数になっててビビりまくってます…。
今回も万屋について捏造、独自設定満載ですので注意。
あくまでも練習用の話なので空回りはデフォです。
「味噌と醤油と、あとお酒に洗剤買ってきてね」
突然笑顔のおかんに買い物メモと財布を渡されて本丸を追い出された。
…え?問答無用?
そりゃ、今日は突然非番になったから用事を頼まれるのはいいよ。でもさ、買い物って事は万屋とかって所に行け、て事だよね?
少し前に気まずい思いしたのに鬼かおかん!
しかもメモを見たら量が半端ない。確かに居る人数が多いから量そのものは納得したけど…ちょっ、これをまさか私一人で買ってこいと…?
おかんの非道っぷりに戦慄しながらゲートに向かうとでっかい二人が待っていた。
「おう!待っていたぞ、光忠から必要な物を貰ってきたか?」
「荷物は私達が持ちますので、行きましょうか」
私もそれなりに身長があるけど、目の前の二人は軽く見上げるくらいデカい。弁慶と何とか太郎さん?
や、昔話の何とか太郎さんってデカいイメージがあるからさ。弁慶は弁慶だし…長髪の方は太郎さんでいいか。
どうやら私一人の買い出しじゃないらしい。
あー…良かった。そこまで非道じゃなかった、ごめんよおかん。誤解してた。
リストはこれね、て二人にメモを見せる。すると二人は顔を見合わせた後に何か納得してた。体がデカい、かつ力がある自分達が選ばれた事に納得したのかな?
そしてそこに私が入るのが解せぬ。
買い出しなら色々詳しそうな雅さんとか、おっとりしててもぶっちぎりで力ある神主さんとか居るだろうに。
まぁ頼まれたからにはやるけど。
指定された店に行くとそこは合戦場だった。殺気が舞い審神者の声と刀剣男子の声がまるで津波のように押し寄せてくる。
な、何を言ってるか分から…鉄板ネタはいいや。
でも何これ、本当に戦場?てくらいごっちゃりしてる。
ふと店の前に貼り出された物が見えた。黄色い紙にデカデカと赤字で書かれた特売の文字…。
やっぱ鬼だおかん。
わっちゃりしてる外には他の家の弁慶と太郎さんが待機してる。
ですよね、大勢の二人が店に入ったら大変な事に…いや待て待て!て事はここに私一人で突入すんの!?
ふ…ふふふ…や、やってやろうじゃん…。
うおりゃあああぁぁ!て戦闘より気合いを入れて人ごみに突っ込む。
何とかお目当ての物掴んだけど持ってられな…うわっ、ちょっ、他の刀剣男子に掴んだの飛ばされた!
それを繰り返す事何回も。結局手元には何も残らず。
丁度品物がなくなって、やっぱヘタレには無理だよ…てとぼとぼと帰ると戦利品を持った弁慶と太郎さん。
え?え?何これマジック?君ら今回は出禁だったよね?
「見事な手並みだったぞ!流石だな!」
「目的の数には達していますので、どうぞ会計を」
何これ?何か、狐につままれたような気分になりながらとりあえず会計を済ませる。
…まぁいいか。結果が良ければ全てよし!
味噌と醤油と洗剤は終わったから、次はお酒かな。
酒屋さんは普通だった。特売もしてなければ何かイベントをしてる風でもない。
良かった…また特売でもしてたら流石に心が折れる。
荷物をたんまり持ってる二人には外で待ってて貰って、普通に中に入って指定されたお酒を買う。
一升瓶が十本とかさ、調理用にしても多くない?いや、姐さんと新しくきた飲んべえが飲むから足りないくらいか。あ、ワンカップおまけに貰った。運いいなぁ、私。ありがとう!会計のお姉さん!
それはともかく、お酒重そうで嫌だな、と思ったけど意外と軽い。この体、実は力持ち?ラッキー。
買い出しから帰るとおかんより審神者ちゃんにえっらい喜ばれた。
「流石大典太!!これで前回馬鹿にしてきた(ピー)野郎を見返せる!うちの子だって買い物上手いわよ!!」
高らかに笑う審神者ちゃんを見ててちょっと切なくなった。
審神者同士でも色々あるんだね。もうそんな審神者ちゃんにはおまけで貰ったワンカップをプレゼントするよ。
私は酒の味は分かるけど酔えないし。たまには酔う事も必要だよ。うん。
頼まれた場所に荷物を置いて弁慶と太郎さんと別れる。
はー…疲れた。あ、袖のボタン一個取れてる。あーあ、予備のボタンなんてあるの?この服。
買い出しの次の日から、何か弁慶にやたら絡まれる。
あの豪快な性格は好きだけどさ、手合わせ手合わせってうるさいんだけど。
そんなに手合わせしたいなら虎とでも手合わせしたらいいよ!
何せ虎も時々手合わせを頼む!とか言ってくるんだもんよ。
嫌だよ、私は平和主義者なの、暴力反対。
審神者ちゃん命令の内番の時くらいは演習場に立つけどさ、私が自分から行く訳がない。
つーか、弁慶は気は優しくて力持ち、を地でいってるのに何で私にだけ戦闘的な意味で絡んでくんの?この前ちみっこ達によじ登られて楽しげにしてるの見たよ、常にああいうのが弁慶ポジションじゃね?
はー…同じ懐くでも男の娘とは大違いだ。こっちは可愛いのに。
とかやってて数日経った。
縁側で男の娘とお茶をしてるとこに弁慶が現れて、面倒な事にそこに虎も登場。
背後でわいのわいの言ってるけど無視無視。あー、でも男の娘には悪いかな。
移動しようとしたら…げっ、虎おまっ、人の服、踏んでんじゃ、ねぇっ!
たまたま私の服の裾を虎が踏んでて、それを無理矢理引っこ抜いたら虎がバランスを崩して弁慶に激突。
しかも位置が悪かったみたいで、弁慶が縁側から足を踏み外して虎ごと地面に落ちた。
男の娘から何か拍手貰ったけど、えと、やっぱ私のせい?
し、しーらない。
男の娘!撤退するよ!
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今日は万屋の月に一度の特売日である。
政府から給料は貰っているが、少しでも節約しその分趣味などに使いたい、と思うのは大抵の審神者共通の思いであった。
故に、この日の万屋は戦場と化す。
何故なら審神者達が本気で練度を高めた刀剣男士達に買い出しに行かせるからだ。
最初はあまりにもガチ過ぎて万屋が半壊し、いくつかルールが儲けられる程である。
そのルールの中には審神者一人につき刀剣男士一人、岩融や太郎太刀など体の大きな者は出禁(ただし荷物持ちとして外での待機は可)、などがある。
そして今回の戦場に行くべく白羽の矢が立ったのが大典太光世であった。
太郎太刀はゲートの前で岩融と二人、大典太光世を待っていた。
特売日の荷物持ちは既に恒例となっているので今更特に思う事はない。
それよりも、天下五剣でも容赦なく使う主と燭台切光忠に若干恐れを抱いた。
主婦(夫)とは強いな、と。
とは言え、人選としては分からなくもない。
まず主は当然除外、怪我をする。
燭台切光忠は本丸の中を切り盛りしているので、こちらも怪我をしては困る。以前特売日にズタボロにされて色々と滞った事があり、以来主から特売日は外出禁止令が出ている。
歌仙兼定は確かに目利きの腕は凄いが、練度の関係で本気の刀剣男士達に簡単に弾き飛ばされる。
石切丸はその機動力の低さから特売品の取り合いには向かない。
三日月宗近は論外だ。のらりくらりと買い出しをかわし続けている。
そして他の者は言わずもがな、だ。
そうなると常識人、かつ実力も申し分ない大典太光世が選ばれるのは必然であろう。
暫くすると大典太光世が万屋に通じるゲートの前に現れた。
燭台切光忠から渡されたらしい紙を太郎太刀と岩融に見せる。
内容を確認すると前回とさして変わらない。が、何やら数字に見覚えがある。
僅かな間の後、そう言えばと太郎太刀は思い出した。
あれは前回の特売日の事だ。
よく演練で会う審神者の男性と主が偶然鉢合わせした。
普段完膚なきまでに負けを叩きつけられている審神者の男性の方が、戦利品を主よりも多く手にした事を思い切り自慢したのだ。
それはもう主は悔しがったが、内容が内容なだけに本丸でジタバタするだけで終わっていた。…と思っていたがしっかり根に持っていたらしい。
この数字は彼の審神者の男性を意識している。何せあの時懇切丁寧に数を教えてくれたので太郎太刀も微妙に覚えていた。
どうやら岩融も自分と同じ事を思い出したらしく自然と顔を見合わせる形となる。
主は負けず嫌いよな、と二人同時に頷いた。
万屋に着くと相も変わらずの盛況ぶりであった。
さながら合戦場のような雰囲気は毎月の事である。
慣れている太郎太刀と岩融はともかく、初めてこの光景を見た大典太光世は大丈夫だろうかと様子を窺ってみると…普段と変わらぬ様子で特売場という戦場を見ていた。
この男が感情を動かす事はあるのだろうかと太郎太刀が大典太光世を眺めていると、彼の刀は何の気負いもなく刀剣男士達の中へと入っていく。
自分達は今日の万屋には入れないからと外で待っていると、突然味噌の袋が高く舞い上がりこちらへと飛んできた。
何事かと驚いたがそれには大典太光世の神気が見えた為、彼が飛ばしたのだと太郎太刀は一瞬で理解する。
「岩融!」
「応!」
名を呼んだだけで岩融は理解してくれたらしい。
次々と飛んでくる特売品を受け取っては太郎太刀に渡す。品物は破れたり欠けたりする事なく寸分違わず同じ場所に飛んできた。
「いや、これは考えたな!これなら確かに他の者には奪えん」
「力加減も絶妙ですね」
岩融は中々に豪快な手法にカラカラと愉快そうに笑いながら、太郎太刀は大典太光世の制御の精密さに感心しながら戦利品の数々を眺める。
暫くして大典太光世が人混みの中から出てきた。
流石に揉みくちゃにされたらしく、髪や服が多少乱れているが数を確認する姿は普段通りである。
予定数に達しているのを確認したのか大典太光世は支払いをしにまた万屋の中へと入っていった。
弟刀である次郎太刀は大典太光世の事を恐ろしくも優しい刀だ、などと絶賛していたが、こうして何の感情もなく淡々と任務をこなす様はさながらよく訓練された猟犬のようだと思う。
へし切長谷部が感情剥き出しであるのに対し、こちらは酷く無機質だ。主であれば軍用犬のようだ、とでも言うのだろうか。
例えば今、隣を歩く岩融から大典太光世に誘うような剣気を感じる。が、大典太光世は全く相手にしない。
岩融の性からして、大方先程の万屋での様子を見て大典太光世と手合わせをしたくなったのだろうと予測出来るが…この買い出しには必要のないものだから、と見向きもしない。
そして岩融の剣気に目的の大典太光世ではなく、周りの血気盛んな刀剣の方が釣れる始末である。
もっとも、邪魔だと言わんばかりの大典太光世の冷たい視線に耐えられず引き下がる者ばかりな為、今の所問題はない。
酒屋に着くと大典太光世だけが店の中に入っていった。
確かに戦利品をたっぷり持った自分達が居ては邪魔であろう。
太郎太刀と岩融は素直に店の外で待つ事にした。
「中々釣れんなぁ、感情の制御は完璧といったところか」
「今は彼が全て払っているので良いですが、無用な争いを呼ぶべきではありません」
「相変わらずお堅い奴よ。あれだけの腕だ、刃を交えてみたくなるのは当然であろう」
楽しげに笑う岩融に太郎太刀は溜め息を吐く。
この戦闘狂とでも言える気質さえなければ、本当に良い御仁なのだが…。
そうこうしている内に酒一斗を軽々と持って大典太光世が戻ってきた。
なる程、書き留めにあったあの鬼のような量の理由はこれか、と太郎太刀は納得する。書き留めを見た時、もしかしたら自分達だけでは少々手が足りないかもしれぬ、と思っていたのだから。
ふと岩融を見れば大典太光世の腕力に驚き、そして益々愉快そうに顔を歪めている。
また面倒な、と太郎太刀はもう一度溜め息を吐いた。
余談ではあるが、本丸に帰ってきてから大典太光世が主にお土産を渡す様子からして主は好きなのか、と太郎太刀は思う。
それよりも主への土産が幻の吟醸酒と呼ばれるものであった為、次郎太刀を大人しくさせるのが大変であった。
まぁ、最終的には物理で話をさせて貰ったが。
岩融は戦いというものが好きだ。
戦場の焼け付くような緊張感、強敵と刃を交える身を焦がすような高揚感、一歩間違えば奈落へと落ちていく恐怖すらもまとめて戦いというものを好んでいる。
前の主の影響も強い。何せかの有名な荒法師、武蔵坊弁慶だ、戦いを好むのも致し方あるまい。
そんな岩融は最近気になって気になって仕方のない者がいる。
彼の者の名は大典太光世。
天下五剣が一振り、一部では妖刀ではないかという言さえ囁かれる程の切れ味を誇る刀だ。
その気質は受け取り手により様々に変化する。
ある者は氷だ、近づき難い、畏怖の対象であると。また、ある者は優しく慈悲深い、憧れの対象であると。
岩融はその全てをもってして大典太光世という刀だと思っている。
神とは往々にして二面性があるものよ、大典太光世はそれが少々極端なだけだ。
だがまぁ、本題はそこではない。
本題は大典太光世の戦闘能力の高さである。
練度はまだ中堅といった所であるが、三日月宗近に並ぶ…いや、もしかしたら既に三日月宗近よりも戦闘能力が高いもしれない。そんな強者と是非とも手合わせをしたい、叶うならば死合いをしたいと岩融は思う。
いかほどの楽しみを与えてくれるのかと、その時を思えば愉快で仕方なかった。
だが件の大典太光世はこちらの誘いには一切乗らない。何度誘っても袖にされる。
同じ本丸の刀剣同士が死合いなど無意味だ、と言わんばかりに悉くふられ続けた。
無駄な事はしない合理主義者というやつか。
その思想に理解は示せど、遊びを楽しむ岩融は勿体なくて仕方がなかった。折角の良き相手がいるというのに手合わせすら叶わない。
恐らく、手合わせをしてしまえば強制的に死合いに持っていかれると理解しているのだろう。
そうして手合わせに誘ってはふられ続ける日々を繰り返していたある日の事だ。
その日は縁側で乱藤四郎と茶を飲む大典太光世に絡んでいた。
乱藤四郎に思い切り邪魔者を見る目を向けられたが構うものか、大典太光世との手合わせの方が優先度が高い。
するとそこに長曽祢虎徹が加わった。彼の刀も大典太光世との手合わせを切望している。
俺が先だ、いいや俺が先だと岩融と長曽祢虎徹が言い争っていると、その喧しさに乱藤四郎の顔が歪んだのを見て大典太光世が動いた。
予めわざと長曽祢虎徹に自分の衣の裾を踏ませていたのだろう、いきなり自分の衣を引っ張り長曽祢虎徹の足下を揺らがせ体勢を崩させた。
勢いも角度も、岩融の足場さえ計算に入れていたとしか思えない程それは効果的であった。
打刀にしては体格の良い長曽祢虎徹が岩融に勢いよくぶつかり、その衝撃で岩融の足が縁側から外れた。
足場がなくてはさしもの岩融も己の体を支えられない。そのまま二人は勢い良く縁側の下へと叩きつけられた。
長曽祢虎徹も痛かろうが、岩融は地面に強か背中を打ち付けた上に重い長曽祢虎徹が落ちてきた事で更にダメージを受けた。
どうやら大典太光世は連日の自分の誘いに大分お怒りだったらしい。
「すごーい!流石お兄ちゃん!」
乱藤四郎が呑気に拍手をしているが、こちらはたまったものではない。
痛みに顔を歪めながら大典太光世に視線を向け…岩融と長曽祢虎徹は蛇に睨まれた蛙の如く固まった。
大典太光世が言葉を発する事はない。だがこちらを見下ろす目は雄弁に語っている。
いい加減にしないと本気でぶちのめす。
と。
これ以上は触れたら拙い領域だと岩融も長曽祢虎徹も直感した。
恐怖により体は動かないが、二人はそっと大典太光世から視線を外した。
去っていく大典太光世に続く乱藤四郎がこちらに向かってあかんべー、と舌を出したが正直それはどうでも良い。
短刀のする事だ、可愛らしいくらいである。
それよりも先程の大典太光世の気迫が恐ろしかった。絡むのを暫く自重しようと思うくらいには。
ふと岩融と長曽祢虎徹は互いに顔を見合わせる。
「…俺達で手合わせをするか」
「…そうだな」
双方の声は酷く疲れたものであった。