刀剣男子ってなんぞや?   作:甚三紅

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あくまで練習用。
パソコン購入記念にpixivさんの場所もこの話でお借りしてます。




帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい。

切実に願う。私一般人ヨー、刀剣男子じゃないヨー。

何なの、今日も今日とていきなり連れ出されたんだけど。

今日はどっかの演習場らしい。何か同じ顔がちらほら居て軽くホラーだ。よその家の審神者さんの子だってさ。

怖くて仕方ないので隅っこで腕を組み目を閉じ壁にもたれかかる。下手に視線合わせたらその瞬間ファイト!てなりそうで怖い。とにかく怖い。だから話しかけないで下さいお願いします。

 

とか言ってる間に演習場に引っ張り出された。ええー…私も出るの?メンバーなの?私、即行降参するよ?だって戦えないし。

そして私を引っ張ってきた張本人、最初に私を斬ろうとしやがった奴…名前は知らん…は後方に控えてやがる。しかも笑顔で手を振ってきた。てっめこのやろ!

 

「さて行こうか。何、命の取り合いじゃない。気楽にやろう」

 

眼帯スーツが私の肩に手を置き話しかけてきた。

この人絶対いい人だ!!

あのおっかない野郎共と大違いだよ!あ、なんか目から汗が出そう。

そしてうっかり頷いた自分のばーかばーか…。

 

コートの中で試合のように一列に並び向かい合う。模擬戦だから試合と言えば試合?

大将は最初会った和泉なんちゃら。私は当然一番端っこだ。皆は刀構えてるけどさ、私はそもそも刀の持ち方すら知らんっつーの。

相手方の面子は…て見ても分かる筈がない。あ、何か緑の神主みたいなのが大将っぽい。

 

「抜きもしないとは、俺達を馬鹿にしてんのか」

 

私の目の前に居る真っ黒い甲冑?を着てる奴がこっちを刀で指してきた。

ちょっ、おま、危ないから!

ビビって固まっていると黒甲冑は舌打ちを一つして視線を逸らす。ビビりですいません、直ぐ降参します。

って開始の合図と同じタイミングですっげー気迫で迫ってきた…!あ、あ、足が竦んで動けな…あ、ちょっと動い…ぎゃー!何か今髪掠った!!

つーか模擬戦だよね!?何で真剣使ってんの!!

眼帯スーツの嘘つき!マジもんの命の取り合いじゃねーか!

せめて武器、私も武器持たないと死ぬ!

げっ、刀の束を持ち引き抜こうとした所で足がもつれ…

 

「「退けっ!!」」

 

たけど踏ん張った!よくやった私!

ん?今なんか誰か言った?

刀を手に持ったままコートの中を見回すと大分後ろに引いている味方とボロボロの敵方。特に黒甲冑は酷い有り様で完全に目を回しているっぽい。

 

な、何があった?え?私のせい?

 

顔を引きつらせていると試合終了の声がかかった。

向こうの視線とか味方の何か言いたげな視線とか色々な意味で怖いのでさっさとコートから逃げる。えーと、正当防衛だ、うん。何があったか分からないけど。

ちょっ、斬りつけ魔、ついてくんなし!お前の笑顔怖いんだよ!

 

後日、私は演習場出禁の刑を食らった。

よっしゃああぁぁ!!

 

 

二度とあんなおっかない…や、一番怖いのは合戦場だけど、行かなくて済むと思うと万歳したくなるね!

出禁にるんるん気分で廊下を歩いていると、何か変にひねて屈折してそうな三人を見つけた。儚い三兄弟?

水色、ピンク、空色、すげー色の髪だなあれ。あ、ピンク髪はふわふわして触ったら気持ち良さそうだ。

ところで君達着てるの袈裟ってやつだよね、ホ○ミ使えたりすんの?

 

「貴方に…聞きたい事があるのです」

 

さらさら長髪が声をかけてきた。この人、断トツに髪長いんじゃなかろうか。

 

「貴方は何故、戦うのですか。あんなにも…震えていたというのに…」

 

いつも震えてますが?

えーと、あんなにも…?どの場面見られたんだろ。あと何故戦うって、不可抗力です。寧ろ戦いたくないです、引きこもりたいです。

あちこち視線を向けて考えている内に時間が経ったらしく、さらさら長髪が先に口を開いてしまった。反応遅くてすみません。

 

「…そうですか、貴方は強いのですね…」

 

…ごめん、意味が分からん。

こういう時は必・殺!曖昧な微笑み!

そしたら何だかよく分からないけどさらさら長髪は頷いて頭を下げていった。あ、ちまっこいのも一緒に行くんだ。

あー、曖昧さが許される日本って素晴らしい!

そして残ったピンク髪、私に何か用?

 

「貴方は…、…ですか…?」

 

何か聞かれたのは分かったけど、タイミング良く風が吹いてほとんど聞こえなかった。

ちょっ、ワンモア!

て言えない雰囲気なんだけど…ピンク髪があまりにも悲痛そうな顔してて。

え、本当に何を聞いたの。つーか何聞かれたんだよ、私。

 

「愚問、でしたね…。では…」

 

またもや勝手に納得された。何か怖い、ここの奴等。本当勘弁して下さい。一体私の何に納得してるのか本人はマジで分からないんだけど。

逃げるように早歩きになったのは仕方ないよね。ね!

 

 

 

- - - - - -

 

 

 

燭台切光忠は彼の初陣の戦に参加していた。故にその凄まじさを実際に目にしていたのだが、折角仲間になったのだからと彼とも仲を深めたかった。

幸運な事に今日の交流戦で彼…大典太光世と一緒に戦う事が出来る、仲を深めるのならば中々に良い機会だ。

ところが、彼は演習場に着くなり不愉快そうにきつく眉を寄せ、誰も近づくなとばかりに隅へと行ってしまった。

三日月宗近に無理矢理連れて来られて不機嫌なのだろうか?

三日月宗近は大典太光世にだけ遠慮がない。今までは他の皆…主も含め、本丸に住まう全てを遠くから見守るような姿勢をただの一度も崩さなかったというのに。

思うに、あれは同等の者に対するが故の気安さなのだろうと燭台切光忠は考える。二人の腕を考えるに深く納得出来る。

もっとも、大典太光世は迷惑そうにしているが…ご愁傷様。あの三日月宗近相手では自分には何も出来ない。

とにかく話しかけなければ何も始まらない。

そう思い燭台切光忠は大典太光世に近づく。声を掛けるのにあと一歩、という所で悪寒を感じ踏み出しかけた足を戻して改めて大典太光世に視線を向ける。彼がまとうのは、まるで肌を刺すような冷たい氷の空気。

なる程、領域には入るなという事らしい。

この場は素直に引き、自分達の番が回ってくるまで大人しく待つ事にした。

 

暫しの間を置き大典太光世達の番が回ってきた。相手は十分に鍛えられた強敵である、腕がなる。

そして正に今こそが好機。

燭台切光忠は大典太光世の肩に手を置き、声を掛ける。彼が声を発する事はないが頷きを返された。たったそれだけの事に燭台切光忠は何故か感動してしまう。

例えるなら、懐かない猫が自分にだけ寄ってきてくれたような気分になったのだ。

 

誰が何に感動していようが時間は進む。

演習場の中央にて刀剣男士達は向かい合い、各々が己の刀を構える。

ところが大典太光世だけが構えない。何故構えないのかと彼の正面に位置する同田貫正国の言い分はもっともだ。

審判は構えない大典太光世に心配になり彼の主たる審神者に視線を向けるが、その審神者が頷いた為にそのまま試合を開始する事にした。

 

同田貫正国は目の前の刀に自分が馬鹿にされていると思った。

いかに命のやり取りのない試合と言えども勝負事は真剣にやるべきだ、と思っているが故に、構えもしない相手は自分を舐めていると感じたのだ。

だから開始の合図と同時に攻めた。

苛烈に、それこそ命を奪わんと攻めた「つもり」だった。

 

何なんだ、こいつは!

 

同田貫正国は奥歯を噛み締め時間が進むにつれ険しい顔になっていく。

なぜなら目の前の相手に己の攻撃が全く当たらないからだ。

本気で斬りにかかっているというのに全て紙一重でかわされる、髪の毛一本、薄皮一枚斬れやしない。己の刃は全て空を切る、これではまるで風か水でも相手にしているようではないか!

幾度もの斬撃の後、このままでは埒があかない、そう判断した同田貫正国は必殺の一撃を与えんと大きく刀を振りかぶる。

と、その瞬間、己の主の近侍である石切丸の声が聞こえたが、時既に遅く意識はそこでぷつりと断ち切られた。

 

早鐘のように脈打つ心の臓を感じながら、燭台切光忠は初めて三日月宗近の教育方針に感謝した。臓腑の中に氷の塊を詰め込まれているかのように体が冷たく重い。

長と言って良い彼の声が聞こえた瞬間考えるよりも先に体が反応し、自分を含めこちらの刀剣達は大きく飛び退いた。そう出来ていなければ今頃自分達も黄泉の神の腕に抱かれていたかもしれない。

目の前に広がるのは正に惨状。

近侍である石切丸は辛うじて意識があるようだが相手方は皆重傷だ、立っている者は誰もいない。特に間近に居た同田貫正国など生きているのが不思議なくらいに酷い有様である。よく折れなかったものだ。

 

居合い抜きによる一撃。

 

たったそれだけで六人全員の生存力を根こそぎ奪ったのか。

燭台切光忠は倒れ伏す刀剣達から目が離せず、その額からは冷や汗が一筋流れ落ちた。

文字通り、あれは次元が違う。

ある意味狂気に飲まれる合戦場とは違い、正気でいられるこの場でこそ改めて大典太光世の恐ろしさを思い知らされた。

暫し静寂が場を支配していたが、結果は明らかであり酷く慌てた風に試合終了の声が上げられる。その声は恐怖に震えていた。

 

恐れ、怖れる者達に大典太光世は苦虫を噛み潰したように顔を歪め、だから嫌だったんだ、と言いたげに全てに対して背を向けて歩き出す。

彼の刀の主ですら動けぬ中、三日月宗近だけが彼を追い掛けていった。

仲を深めたかった筈なのに、怖れを抱き大典太光世の気配が完全になくなるまで指の一本すら動けなかった自分に燭台切光忠は悔しげに顔を歪める。

 

「カッコ悪いね…僕…」

 

 

江雪左文字は争い事が嫌いだ。

前の主である雪斎の影響もあるが、戦いというものが弟達を歪めてしまった事も大きい。戦により苦しむのは自分だけで良い、と常に思っている。

だからこそ彼は見ていた。弟達を守る為に、もし戦好きならば弟達には近づけさせないと強い意志を持って大典太光世を見ていた。注意深く観察していたからこそ気づいた小さくて大きな事。

彼は初陣の時、刀を鞘におさめる際に手が震えていたのだ。

 

何故手など震える?

 

江雪左文字も彼の初陣の際一緒に居た一振りだ、鬼神の如き働きは実際目にしている。その為あれだけの力を持っているのならば震えるなど有り得ないのに、と疑問に思う。初陣だから?まさか、動揺の欠片もなかった。

そうやって自分の中で質疑応答を繰り返す内に一つの答えに辿り着く。

 

ああ…彼も戦など嫌いなのか…。敵とは言え、葬る事に心を痛めているのか…。

 

気づいてしまうと大典太光世と話をしてみたくなった。もしかしたら強大な己の力を厭うているのかもしれない、ならば何故戦場に立つのか、その理由を知りたい。

 

江雪左文字の願いは存外早く叶えられる。

丁度兄弟三人で居た時に、演習場で何かあったらしく出入り禁止を食らった大典太光世と本丸の廊下で偶然にも顔を合わせたのだ。

彼の機嫌が良さそうに見えるのは他人を傷つける機会が減ったからであろう。

そう思えば弟達に彼を会わせても良いと思い、江雪左文字はそのまま彼と話…と言っても一方的に疑問を投げかけるだけであったが、少しばかり同じ時間を過ごす事にした。

 

やはりと言うか、大典太光世は言葉で返す事はしなかった。喋らないのか喋れないのか…だが彼の視線は己の質問にはっきりと答えていた。

視線で指されたのは弟の宗三左文字と小夜左文字の二人。そして外…つまり穏やかで平和な日常。

彼はこう言いたいのだろう。

 

お前も守る者があるから戦うのだろう?

己もそうだ。

 

と。

彼の場合、守る者とはきっとこの本丸に住まう者全てだ。もしかしたらあの三日月宗近さえ含まれているかもしれない。

そして彼はそれを実現出来る力を持っている。

 

強い方だ…。単純な力だけでなく、その心の有り様が。

 

江雪左文字は素直にそう思った。思わず漏れた呟きのような言葉に返された笑みを見て、自分の考えが間違っていなかった事を知る。

江雪左文字は大典太光世の答えに満足し、そして暖かな気持ちになると自然と頭を垂れた。

 

 

宗三左文字はそんな二人のやり取りをただ静かに眺めていた。自分は兄とは違い実際目にした訳ではないが、彼の刀の話は知っている。

彼は、悪鬼羅刹が如き自分自身が、その力が怖くはないのだろうか。

実物を目にしてふと浮かんだ疑問。

何故そんな疑問が浮かんだのかは宗三左文字も分からない。もしかしたら、豊臣公の所で魔を払う刀として使われたのを知っていたからかもしれない。前田の娘を魔から守る為に何度も戻る程に、大典太光世は優しかったのを覚えている。

ああそうだ、彼は優しい御仁だ。優しいが故に、他者を傷つける己が怖くはないのだろうか。

兄と弟が場を去っても足は動かず、気がつけば湧き上がる疑問をそのまま口にしていた。

 

「貴方は…己自身が恐ろしくはないのですか…?」

 

宗三左文字は音として発してから直ぐに後悔した。大典太光世がこちらを見る目に感情などなく、つまらない事を聞くなと責められている気持ちになる。そんな問題はとうに乗り越えたのだ、お前が口を出す事ではない、と。

失言に慌てて取り繕うように一言だけ残し、兄達を追い掛けようと背を向けた時にそれは耳に届いた。

 

「………」

 

掠れた小さな小さな音、それが耳に届いたのはほんの偶然であろう。空耳かと一瞬己を疑った。

その音に驚きから目を開いた宗三左文字は、真偽を確かめるべく後ろを振り向く。だがしかし、そこに彼の姿はなく、風が一陣吹いただけであった。

耳に届いた小さな音…あれは自分の願望なのだろうか。

 

こ わ い

 

大典太光世は、そう言っていた。

宗三左文字は動けぬまま、彼が去っていったであろう廊下の先を見つめ続けた。

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