刀剣男子ってなんぞや?   作:甚三紅

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ネタの種を頂き、更に感想が凄く嬉しくブーストがかかりヒャッハーしました。
本当に皆様の暖かい心が原動力です。ありがとうございます!

一応新撰組連中…にしたかったのですが、長曽祢虎徹中心です。
堀川国広は局長(長曽祢虎徹)には一応敬語かな、と。
あと正直長曽祢虎徹がよく掴めませんでした。お迎えしてない刀は難しいです。




「ちょっと検非違使狩りしてきて」

 

ある日、すっごい笑顔の審神者ちゃんにお願いされた。語尾にハートマークでもつきそうな大変可愛い声でした。

主命なら喜んでー。ってカソックじゃあるまいしそんな事ないからね!あの超怖い連中だよね、いーやーだー!

 

なんて聞き届けられる筈もなく戦場です。

あの時の審神者ちゃんは怖かった…目に「虎徹こい虎徹こい虎徹こいゴルアァ!」て見えた。虎徹ってあれでしょ、黄金○闘士。え、違う?

と言うか同じ場所ぐるぐる回ってて飽きた。流石に一緒に来てる人達もげんなりしてきたよ。その癖不意打ちみたいに検非違使?とかいうの出てく…うっわ出たー!言ってる側から出てきた!!

こうなったらやけだよちっくしょー!!

 

「長曽祢虎徹という。贋作だが、本物以上に働くつもりだ。よろし…何だ何だ、揃いも揃って随分な有様だな」

 

ぜーはーいいながら光の花っぽいのから出てきた刀剣男子?を見る。何か…破廉恥衣装…いや、虎?虎だな、虎でいいや。

確かにこっちは皆酷い有様だよ。太刀、大太刀部隊だから怪我とかほとんどないけど皆疲れまくり。ぜーはーいってんの私だけじゃなくて皆だよ、あーもう疲れた…。

虎をひっつかんで早々に帰る。

さーにわちゃーん、私達すっごい頑張ったよー。

 

「皆お疲れ様!長曽祢虎徹、待ってたよ!!」

 

帰ると満面の笑顔で出迎えてくれた審神者ちゃん。そんでもって虎に抱きついた。

あー…もう好きにして。私はつーかーれーた…。

 

その日の夜、私の時みたいに歓迎会っていう飲み会が開かれた。

もう審神者ちゃんにっこにこ。微笑ましいけど一部の野郎は目つき凄い事になってるよ。

つーか虎コミュ力高いな。あ、和泉なんちゃらとか何か何人かとは親しそうな雰囲気だ。

にしてもご飯美味しい。眼帯スーツとか雅さんとかが作ってるんだけど凄いね、特に眼帯スーツはおかんみたいだ。

黙々とご飯食べてる私の両隣は王子と魔王様。王子はともかく魔王様はこっちくんなし。

おや、ふと立ち上がった魔王様はどこかに行くらしい。虎もいつの間にかいない。んー…ちょっとトイレ行ってこようかな。

王子、お酒は程々にね。

 

月の光で明るい廊下を歩く。すっごいぼーっとしながら歩いてたら前方に魔王様と虎が居た。

間ちょっと失礼しま

 

「なっ…正気の沙汰か!?」

「大典太…」

 

すよーっと!!?

は!?何?なに?え…ちょっと待って分かんない。何で私の首を挟んで刀二本あるの?お前らいつ刀抜いたの?

魔王様に目をやると渋々といった風に刀を引く。圧迫感が消えたから虎も刀を引いたらしい。

 

「…まぁ、確かにこういった手合いは真正面からの打ち合いに限るか」

「ほう…余程自信があるらしいな。受けて立つ」

 

何やら分かり合った風な二人はそのまま廊下から中庭に下りていった。

ておい!お前らまず殺しかけた私に謝れよ!

 

もやもやした気持ちのまま二人を追いかける。野次馬根性ですが何か?

 

砂利の敷かれたちょっと開けた場所で二人が向かい合って構える。

合図はなくて虎が先に魔王様に仕掛けた。

私が分かったのはここまで。

や、一般人の目で動きなんか追える訳なかったわ。いやー、うっかりうっかり。

暫くして気が付いたら虎が砂利に叩きつけられてたよ。うわ砂利跳ねた。ておいおい、あれまさか気絶してね?

 

「さて戻るか。皆には長曽祢虎徹は寝ていると伝えよう」

 

刀をしまいながらにこやかに話しかけくる魔王様。

うん、嘘は言ってない。確かに嘘は言ってないけども!

 

トイレに行く気はとっくに失せて魔王様と宴会場に戻る。…そしたら審神者ちゃんべろんべろんに酔ってた。おいこら野郎ども!

 

 

ていう事が暫く前にあったんだけど…さて、何故に私は虎と対峙してるのでしょうか。

場所は演習場。えー、この間もカソックと手合わせしたばっかじゃん!私はとっとと逃げたけど!

 

「ようやくこの体にも慣れてきた頃合いだ、是非とも手合わせを願いたく」

 

願いたく、じゃねーよ!審神者ちゃん命令じゃ強制だよばーかばーか!

ぎゃああぁっ!いきなり襲いかかってきた!虎怖っ!!体竦むよ自分の動きカックカクだ!

刀抜く暇ないし、う、う、腕の怪我ぐらいなら…やっぱ嫌だ!適当に腕ぶん回して…もう蹴りでいい蹴りで!

周りの状態なんか見えない半泣きパニックで体を動かす。と、地面に叩きつけられた虎…うわっ、勢い止まらない!

虎の顔の真横に思い切り足落としちゃった…やばっ…怒られる。

虎が固まってる間に足を引いて演習場から逃げる。

審神者ちゃん審神者ちゃん、やっぱ私に手合わせは無理だよ!

 

更に後日、何か知らんけど虎が馴れ馴れしくなった。

私は君と手合わせくらいしかしてないよ。バトルジャンキーか何かなの?

つーか虎が居ると黄金○闘士がすっげ機嫌悪いんだけど。普段そう悪くない人なのに虎にだけ態度ちょー悪い。

虎、黄金○闘士に何かした?

 

 

 

- - - - - -

 

 

 

長曽祢虎徹は顕現した際に人の身を得る、という不思議な感覚を味わう。そして目の前に並ぶ者達を目にし真っ先に一人の人物に意識がいった。

髪は短く将校といった風な服装、手袋をして束を握る手には全く力が入っておらず自然体だ。目つきは鋭く無表情、氷の顔(かんばせ)と言った所だろうか。

皆息を乱し中々にくたびれている様子だが、彼のみ幾分か余裕が見える。

故に彼がこの隊の隊長かと思ったが、そうではないらしい。とは言え完全に彼を頭として動いているな。よくまとまっている。

長曽祢虎徹が隊の者達を観察している間に大典太光世に引きずられ、その力に驚き目を開く。中々にがっしりとした体つきである己を引きずる腕力、力も強いらしい。

 

長曽祢虎徹を審神者の女性は心から歓迎した。会いたくて仕方なかったので思わず抱きついてしまう程に。

幾人かは嫉妬の炎を燃やしたが、大典太光世は興味がないとばかりに早々に部屋へと引き上げていった。

 

その日の夜、審神者の女性が待ち望んだ刀の歓迎会が開かれる。

審神者のテンションも高く普段よりも豪華で賑やかな様子であった。

長曽祢虎徹は存分に宴会を楽しみ、また、久方ぶりの仲間との再会に表情を緩める。弟には相も変わらず嫌われているが、新撰組の者達との会話は楽しかった。

長曽祢虎徹はふと視線を感じ、その先を辿る。やけに綺麗な姿をした一振りからの視線。

 

誘われてるな、こりゃあ。

 

己は戦闘狂という訳ではないのだが、刀である以上戦いというものに対し血が疼く。

小さく笑い和泉守兼定に断りを入れ宴会場を出ると、案の定彼の刀は後ろをついてきた。

 

長曽祢虎徹は宴会場から十分に離れた頃合いに足を止めて後ろを振り向き、三日月宗近と相対する。

言葉は不要。

互いに刀を抜き振ったその瞬間、間に入ってきた影が一つ。

長曽祢虎徹は驚きに満ちた表情で、三日月宗近はやはりといった表情で刀を止める。

今正に首を落とされかけたというのに、影…大典太光世は眉一つ動かさない。

三日月宗近は大典太光世の咎めるような視線に息を吐き渋々といった風に刀をおさめた。そして長曽祢虎徹に早く刀を引けと強い視線を向ける。

その視線があまりにも強く思わず、といった風に長曽祢虎徹は刀を引いた。

 

大典太光世立ち会いの元、真正面からの打ち合いは長曽祢虎徹の惨敗に終わる。

数合打ち合いはしたものの、全て三日月宗近に軽々と流され気がつけば目を回していた。しかも、その数合も試されていただけにすぎない。

 

なる程なる程、ここの長は奴なのか。

しっかりとした頭が一人居てその下に他の者がつく。まぁ、悪くない。それで主を守れるのならば、下剋上などする気もない。

痛む背中に顔をしかめながらも長曽祢虎徹は深く納得した。

 

刀に愛情はあれど、中々に容赦のない審神者の女性は長曽祢虎徹を日々合戦場に出す。練度を上げる事が刀の生存にも繋がると知っているからだ。

長曽祢虎徹もそれを承知しているので否やはない。

そんな日々を過ごしていて、長曽祢虎徹はふとした疑問を抱く。

 

「堀川、ここの長は三日月宗近…なんだよな?」

「あ、気になりますよね」

 

合戦場から戻った際に目に入った光景。

何があったのかは知らないが、三日月宗近が大典太光世に対し非常に気を使っている。どうやら三日月宗近が大典太光世を怒らせでもしたようだ。

唯我独尊と言っても過言ではない三日月宗近が大典太光世にだけは気を使う。

本丸に居た刀剣男士達にとって既に見慣れた光景であったが、新参者である長曽祢虎徹にとっては不思議な光景であった。

その為、一緒に出撃していた堀川国広に思わず尋ねる。

 

「僕はあまり接点はないんですけど、大典太さんって仏様か何かじゃないかと思うんです。まず三日月さんの手綱を握れる時点で色々超越してると思うんですよね」

「……そうか」

 

憧れの目で大典太光世を見つめる堀川国広に長曽祢虎徹は絞り出すような声で一言のみ返す。

聞きたかったのはそこではなかったが、今は聞くだけ無駄であると悟ったのだ。

 

別なある日、大和守安定と加州清光の喧嘩の仲裁をしている時に長曽祢虎徹は先日気になった事を目の前の二人にも聞いてみる事にした。

三日月宗近が長であるのだよな、と。

 

「あ、そう聞くって事は大典太さんでしょ。あの人命の恩人なんだよ、凄く強いんだ。一撃の破壊力が凄くて…」

「はぁ?あの人の凄いとこは太刀なのに薙刀顔負けの攻撃範囲だろ。そんでもって、視野が広くて先々を読んでるって言うか…」

「邪魔するなよ。えーと、基本的に優しい人なんだけど、厳しい面もあって…」

 

二人から、まるで競うように大典太光世の凄い所とやらを聞き長曽祢虎徹は苦笑いを浮かべる。

別に三日月宗近に人望がない訳ではない、何かあれば任せれば良いという空気はある。ただ、それ以上に大典太光世が慕われているのだ。こうやって三日月宗近の話題を押しのけてしまう程に。

長曽祢虎徹はひとまずまた喧嘩を始めそうな二人を引き離す事にした。

 

それなりに練度が高まってきた頃、長曽祢虎徹はそろそろ腕試しをしてみたいと思うようになった。

挑むのならば強者が良い。三日月宗近か大典太光世、かの二振りの内のどちらかと。

そう思い主に手合わせの内番を願い出る。

そしてその願いは即日叶えられる事となった。

 

長曽祢虎徹と対峙するのは大典太光世。

彼が構えを取らない事を長曽祢虎徹は聞いていたが、まさか刀を抜きすらしないとは、と目を細める。馬鹿にされている訳ではなく、それだけの差があるのだと肌で感じ取り好戦的な笑みが浮かんだ。

 

「長曽祢虎徹、推して参る」

 

刀を構え長曽祢虎徹から攻撃を仕掛ける。最初から全力の攻撃であった。

だがそれも当たらなければ意味はない。威力を重視した剣戟は全て紙一重でかわされ、ならばと重さを捨て速度を上げてもその軽さ故に腕で払われる。

 

三日月宗近も化け物じみていたが、こっちも十分化け物だ。

 

ちらと戦い以外を考えてしまった隙を狙われた。

刀の軌道を反らされると同時に横っ腹に重い蹴りの一撃。飛んで威力を殺す事は許されず、地面に思い切り叩きつけられた。

 

「がっ…!」

 

強制的に肺の空気を抜かれ一瞬体の自由を奪われる。大典太光世程の者が相手ではその一瞬が命とりだ、やはり見逃される事なく踏みつけの追撃を受けるも…顔の直ぐ横に足を落とされ命拾いをした。

手合わせでそこまでする必要はない、という事らしい。

 

大典太光世は最初から最後まで無手を貫き、戦闘の高揚もなく終始凪いだ目をしていた。

どこかつまらなさそうに演習場を去っていく彼の刀を長曽祢虎徹は咳き込みながら見送る。

次に手合わせをする時は刀くらいは抜かせてみせようか、と密かに思いながら。

 

「で、大典太と手合わせはどうだった?どうせボロクソにやられただけだろうけどな!」

 

その日の夜、長曽祢虎徹と和泉守兼定は酒を片手に語り合っていた。

肴は長曽祢虎徹と大典太光世の手合わせである。

からからと笑いながら和泉守兼定にからかわれるも、事実である為に長曽祢虎徹は素直に頷いた。

 

「ああ、確かにボロクソにやられた。しかも無手とはな…」

「そりゃ大典太の気遣いだろ。刀抜かれたら、今のあんたじゃ一合も持たねぇよ」

 

自分の練度の低さを差し引いても、当然の如く言われたその差に長曽祢虎徹は目を開く。

一見大雑把に見えるこの男の「目」は確かだ、それ程までに力量の差があるのか、と。

長曽祢虎徹は杯の中身を飲み干し、丁度良いとばかりに和泉守兼定にも何度か繰り返した問いを投げかける。

すると和泉守兼定は、酒を一口だけ飲んで考える仕草を見せた。

 

「確かに長は三日月だ、そりゃあ紛れもない事実だな。命令系統はしっかりしてるぜ」

「だが大典太光世は外れているようだが?」

「そもそもの前提が違う。大典太の奴は三日月と同等だ、下には居ない。別にツートップて訳じゃねぇ、ただただ三日月と大典太は同格なだけだ。たった一つの例外ってやつだな」

「例外か…それは分かった。しかし、そうなるといざという時混乱しないのか?」

 

長曽祢虎徹の最後の問いに、和泉守兼定はどこか呆けたような顔をした後盛大に吹き出し更に笑い声を上げる。

その様子に長曽祢虎徹は困惑の色を見せた。

 

「ぶはっ!ない、それはねーなぁ!あんたはまだ日が浅いから分かんねぇだろうが、あいつらに限ってそれはない!断言出来るぜ!」

「…酔ってるのか?」

「いやいや、あんたがあまりにも面白い事言うからだろ。ほら飲もうぜ」

 

軽く涙目になる程盛大に笑う和泉守兼定に、長曽祢虎徹は少しばかり心配になる。

酒を飲ませ過ぎたか?

だがその心配は杞憂らしい。上機嫌な和泉守兼定に酒を注がれ、長曽祢虎徹はそれを飲み干した。

 

和泉守兼定に大笑いされた日から長曽祢虎徹は大典太光世と三日月宗近を注意深く観察する。すると、和泉守兼定があれ程笑った理由も分かった。

三日月宗近が一方的に大典太光世に合わせているのかと思ったが、どうやらそういう訳ではないらしい。

正に阿吽の呼吸というやつで互いが互いに合わせている。大典太光世が言葉を発さない事などまるで問題にならない程、良い信頼関係が築かれているようだ。

 

もっとも、見た目がおっとりとした三日月宗近が厳し過ぎる程に厳しい鞭…と言うよりも剣であるのに対し、見た目が厳しそうな大典太光世が飴…飴と言うか急慈雨と言うか…とにかく見た目と役割が真逆である事には少しばかり違和感を覚えたが。

 

長曽祢虎徹が二振りの連携具合いを特に実感したのはやはり戦場である。

ある程度練度が高まった頃、一気に経験を積ませる為に主力部隊に入れられた時の事だ。

その時の己の使命はとにかく死なぬ事。故に周りを見ざるをえず、結果的に戦場全体を見る事になった。

そして二振りの関係を思い知る事となる。

 

頭は確かに三日月宗近であった。敵の戦力、戦場の移り変わり、味方の様子とよく見ているし指示も的確だ。

だが三日月宗近は大典太光世にだけは何も言わない。

最初は訝しんだが直ぐに必要ないのだと分かった。

大典太光世はまるで三日月宗近の言いたい事を全て理解しているかのように動く。がむしゃらに刀を振っているようでいて、その実三日月宗近の死角や仲間の死角を悉く塞いでいる。

三日月宗近もそれが分かっているからこそ背後を振り返らない。

ただの一度も、欠片も見ない。完全に大典太光世に任せていた。

そして三日月宗近も当然のように大典太光世の死角を塞ぐ。

時折相打ちでもするのではないか、と心配になるような太刀筋があるがそれすら予定調和らしい。互いの刀は互いの背後の敵へと吸い込まれていっていた。

そして部隊の他の者は二人には近づかない。下手に手を出しては邪魔にしかならぬと理解しているが故に。

 

長曽祢虎徹は戦場から戻り、二振りの様子を眺めながら顎を手でさする。

 

同等…同格、確かにあれは特別枠か。お互い引くべき所も押すべき所も心得ている。

余計な言葉など必要ない、正に相棒というやつだな。

 

あくまでも「部下」しかいなかった長曽祢虎徹は少しばかり二人の関係を羨ましく思った。

 

まぁとにかく、己は実に面白い本丸に来たらしいと長曽祢虎徹は笑う。

主である審神者も中々に良い女であるし、仲間と呼べる者も愉快だ。

自分はまだまだ新参者であるが、この先が楽しみだと長曽祢虎徹は未来に思いを馳せた。

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