志崎生希だ。
今オレ達は第二倉庫にいる。
救出作戦(?)のオペレーターだった夕張も来ている。
夫婦漫才を繰り広げていた先輩方も戻って来たので、叔父さんが今回のよくわからん事の顛末を説明してくれるようだ。
私は第六駆逐隊(暁不在)の皆から傷の手当てをされ、先輩は熊野と翔鳳の手当てを受けている。
叔父さんは周りを見回し、話を聞くのにキリがいいところを見計らっている。
譲治「じゃあ、説明しよう。私が彼らを誘拐した顛末をね」
今、叔父さんは縄でぐるぐる巻きになっている。
木曾には拘束を解いていいと言ったのだが、どうも叔父さんの事を信用しきれなかった用で、こうして縄で拘束することで妥協して貰った。
今も叔父さんの傍で見張っている。
譲治「まずこの誘拐は生希と生希の艦娘達の信頼度などを確かめる為に行った。私の独断でね」
誘拐ねぇ。そんな感じしなかったけどな。
何かオレが目が覚めた時何かの機材の前でめっさ慌ててたのは覚えているけど。
生希「信頼ねぇ。もちろんオレはしてるけど。まぁ、言葉で言ったら安くきこえるかなぁ…」
響「そんなこと無いさ。私は司令官が私達の事を深く考えてくれることはわかっているつもりだよ」
天津風「そうそう。私の中破をみて凄く取り乱してたもんね」
大和「ええ。私が大破した時なんか泣いて帰還を喜んでくれましたしね」
いやー。恥ずかしい。
こういう事を言葉にされるの弱いんだよな。
だけど結構嬉しいな。
こういう事は態度じゃわかりにくい事だ。だから、言葉や話し方でどれだけ信頼してくれるのかわかる。
他の皆もうんうんと頷いている。
今日来た子たちも取りあえず信頼できると感じてくれたらしい。
譲治「ああ、それは皆がここまでして君を救出しに来たからわかる。優秀でいい部下達だね」
祥鳳「いいえ。私たちが優秀だとかそれだけではありません」
木曾「むしろ、今のオレらは優秀とは程遠いな。だけどコイツがオレ達を必死に運用できるように作戦とかを立ててくれるんだよ」
夕張「そうです!提督も私達の事をしっかり考えてくれて、心配してくれるからこうやって心を開いても大丈夫とわかっているんです」
私はいい部下を持ったと言われ、嬉しかったが他の艦娘がその言葉を否定した。
自分らを卑下する事も無いのにと思ったが、どうやら私がみんなの事を大切に思っていることが伝わった事を言っているようだ。
恥ずかしい。
思わず背を向けようとも思ったが、そんな事をしたら彼女たちに誇れる提督と言えなくなると考えたので、頬を掻いてその言葉を受け止めた。
多分目が泳いでいるな。
だって、恥ずかしいって。
学校とかで忘れ物して教室戻ろうとしたら、あいつ頑張っているよな。とかそんな会話を聞いた気分だ。
いや、それより恥ずかしい。
女子にチョコ渡されて浮かれかけているときに「これ、○○さんに渡して!」って言われた時のような気分だ。
いや、恥ずかしいのベクトル違うし、その後にむなしくなるよな…。
その後、その女子にちゃんとチョコ届けたって、罪悪感生ませないために頑張って笑顔作っていったら「そう…。ありがとう志崎君…」って凄い虚ろな目で言われた。
何でだ。オレは良い事した筈なのに。
それ以来バレンタインはちょっと苦手だ。
何か善意が抉られる…。
と、関係ない話をしてしまった。
まぁ、ようするに嬉し恥ずかしと言う奴だ。
雷「それに暁も探してくれるって言ってくれたわ!」
夕立「白露と時雨も探してくれるって言ってくれたもん!」
電「そうなのです。まだいない子達も探してくれるといってくれたのです!」
村雨「皆が再会できる時を楽しみにって言ってたしね」
そこまで言ったかなとか思ったけど、純粋な彼女たちが言うんだから間違いないだろう。
どっちにしろ、わいわいがやがやがいいと思うし。
譲治「まぁ、とにかくそんなわけだ。君たちの信頼度はわかった。だからこの縄解いて」
大智「ちょっと待ってくれ!総司令確かに前、俺はアンタに誘拐されたことあったけど今回は組手じゃないのか」
熊野「そういえば。大智さんが誘拐された事が…うぅぅ」
祥鳳「わわ。熊野さん泣かないで」
大和「そうです。大智さんはここにいますから」
熊野が泣き出してしまった。
というか、熊野よ今思い出したのか?
いやショックな記憶だろうから蓋をしたがるよな…。
そして、それを祥鳳と大和が慰めている。
そんなに思い出したくないほど、そっちの鎮守府はパニックになったんだな…。
オレの鎮守府より人数も多いだろうし尚更大変な事になったんだろうな…。
雷「組手って?あの組手でいいのよね?」
響「司令官は総司令と組手をしてたのかい?」
電「わ、私たちが突入した時は、一方的に殴られてたように感じましたけど」
生希「あ、ああ。いきなり倉庫に連れてこられて驚いたけど『よっし、書類仕事ばかりの君達に稽古をつけてやる!ほら、かかって来なさい!』って言われたぞ」
そう、オレが目覚めたときこういわれた。
先輩はまだ気絶していたので、叔父さんに言われてゆすり起こしたのだ。
そして、叔父さんがいつの間にか用意した戦闘服に着替えさせられ、この組手が始まった。
というか先輩、叔父さんに誘拐された事あったんですね。
というか叔父さんやっぱり本当に人間ですかね?
艦娘達がいっぱいいる鎮守府から提督掻っ攫って、しかも鎮守府内に潜伏するって…。
よっぽどその鎮守府の事をわかってないと無理だし、鎮守府内の誰かに協力して貰ったのかな。
やっぱり叔父さん今の立場につく前に潜入任務でもやってたのかな…。
譲治「その話は今は置いといてくれ。本当だったらあの機材で君たちを柱にしばりつけた所をPCを経由して放送する予定だったんだが…」
あの機材と言うのは倉庫の隅っこにある奴だろう。
組手で夢中で気づかなかったけど、よく見たらカメラだな。
譲治「機材の調子が悪かったのかわからないけど、上手く放送のテスト用のPCに映ってくれなくってね」
譲治「それで、何か生希が目を覚ましたような雰囲気だったから急いで機材をどかした訳だ」
なるほどでは何でその人質の様子を放送しようと思ったのだろう。
譲治「放送は場所のヒントにするためさ。彼女たちが場所を迷わないためにね」
大智「俺の時は、目隠しと口枷までされたな」
熊野「本当に…本当に酷い状態で」
譲治「演出の為に血糊や制服も破いたからね。はっはっはっ。痛い!」
叔父さんが先輩を誘拐した時の事を子供の頃のいたずらを思い出したように笑っていたのに腹を立てたのか、熊野が涙目で叔父さんの頭を割と本気そうな勢いで叩いた。
珍しい、普段おっとりとした感じの熊野がここまで怒るとは。
でもそれほど心配をしたという事だろう。
木曾「で、なんで組手と称してリンチをしてたんだ?」
譲治「ああ、それは機材の不調でノーヒントじゃかわいそうだから悲鳴でも上げさせてヒント代わりにでも、って痛いよお嬢さん!止めて死んじゃう!」
嘘付けよアンタ。事故とかの後でもぴんぴんしてたの知ってるぞ。
後オレが散々死にかけて無事だったんだから、血筋的に叔父さんも死なないだろ。
ちなみに、組手はオレと先輩のペアVS叔父さんだった。
先輩は開始三分でダウンし、オレはその後も何とか耐えきったが急にボコボコにされかけた。
多分偵察機がオレ達の事を発見した時だろう。
オレも何か見られている気がしないでもなかったが、叔父さんははっきりと見られているのがわかったのだろう。
やっぱり化け物だな。
ちなみに格闘術の師匠は叔父さんだ。
オレの母さんは叔父さんより強かったらしい。
じゃあ、オレもその領域までいくのか?
怖いなぁ。
譲治「でも良かった。二年過ぎただけで色んな事がおきたからね」
譲治「でも君は古くからの仲間や新しい仲間と一緒にこの新しい困難に立ち向かってくれた」
譲治「私はそれだけで嬉しいよ」
叔父さんはいつの間に縄から抜けたのか、オレの事を抱きしめていた。
譲治「これからも色々な困難にぶつかるかもしれない。」
譲治「だけど、君達ならきっと大丈夫なんだろうな」
譲治「もちろん上の人間としてこれからも君たちの事はサポートしよう」
譲治「甘やかすつもりは無いけどね」
叔父さんはわしゃわしゃと頭を撫でてくる。
懐かしい優しい気持ちになる。
母さんも確か頭を撫でるのが上手くなかった気がする。
よくある優しい撫で方は父さんがしてたな。
母さんは男勝りでしゃべり方も女性的な感じだったな。
譲治「コホン。今から志崎生希の研修を終わりとする」
大智「総司令!それは俺が決める事じゃ!」
譲治「上司に逆らうなよ大智君。それとも減―――」
大智「わー!!嘘です。面倒事が無くなって助かりましたありがとうございます!!!」
譲治「君には信用して私の子を預けたつもりだったのだが面倒事だと思っていたのか…。すまない面倒事を―――」
大智「いえ。面倒事だとは思ってませんよ。こいつとは久しぶりに一緒に過ごして楽しかったです」
大智「だから、ホントのコト言うと寂しいっすよ」
先輩は屈託のない笑顔を浮かべて言ってきた。
流石だな。
流石、抱かれたい日本軍の軍人ベスト5に入るお方だな。
あっ、このアンケートの主な回答者は男です。
譲治「じゃあ。研修期間が終わった記念だ。私のお気に入りのいい料理店の予約取っているんだ、皆で行くぞ」
譲治「勿論私が全額持つぞ!」
皆「おー!!!」
いいお店とおごりと言う言葉を聞いて皆ハイテンションだ。
駆逐艦の皆なんか飛び跳ねてる。
皆スカートの事、少し気にしなさい
はしたないですよ!
大智「今日は騒ぐぞ!」
熊野「程々にしてくださいな。介抱するのも大変ですのよ?」
電「おいしいお菓子とかあると嬉しいです!」
雷「あるわよ。何せ総司令官のお気に入りのお店なんだし」
響「ロシア料理もあるかな?」
祥鳳「私、とても楽しみです!」
夕張「お料理のデータでもとってみるかな」
木曾「気前がいいな総司令官は」
夕立「ごっはん~ごっはん~♪」
村雨「夕立ちゃんご機嫌ね」
天津風「どんなお店なのかしら?ふふ、わくわくするわね」
大和「提督、早く行きましょう!」
生希「ああ、行こう!」
皆に手を引かれ歩きだす。
これから、沢山の試練や困難にぶつかるかもしれない。
だけど、皆で乗り越えて見せよう。
『死神部隊』にいた時のように、どんな難題でもこなしてやる。
ここにいるみんなは『大切な仲間』であり、『家族』だ。
この『家族』と笑いあえる一時は、みんなで護っていこう。
そして、こうやって笑いあえる一時がずっと続いていけるように戦い抜こう。
オレは改めて誓った。
絶対に平和な未来を掴みとろうと。
―――もう、誰かが泣くのは嫌だから。