死神と艦娘の物語   作:ゆーなぎー

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鎮守府の一日


chapter 6-1 死神の一日 午前

二ヶ月間にあったことのダイジェスト

 

 

あの研修期間から二ヶ月が経った。

 

あれから何かあったのかと言われたら特に何もない。

 

強いて言えば、艦娘が100人位増えた事だ。

他には研修の頃とは比べ物にならない位の書類の量を前に泣きそうになったり。

先輩と連絡を取り合って、海域の攻略をしたり。

叔父さんと組手しているのを見た長門とかがオレに弟子入りしたり。

後、元同僚が遊びにきたり。

世話になった変態技術屋がいらんお土産置いて来たり。

夕張達が作ったス○ウター的なものでオレの数値が何かおかしいとか言われたり。

ブラックな鎮守府やってたクソガキと賭け勝負をして、クソガキの鎮守府から艦娘を譲り受けたりした事位か。

 

 

大したことないな。

ごく一般的過ぎて欠伸が出るくらいだろう。

高校生の日常風景の方が面白いんじゃないか?

 

鎮守府は賑やかになった。

賑やかすぎてうるさい位だ。

 

でもそれでいいのだろう。

なんせ、昔の夢だった保育士とかが叶えられている気がするしな。

 

執務室はいつも賑やかだ。

秘書艦当番じゃない子もよく遊びに来る。

主に駆逐艦かな。

おかげで仕事が進まない事が多いが、何やかんやでいう事聞いてくれるから助かる。

 

加賀や不知火、響、日向などのクールビューティー組が何度も「仕事が終わらないと遊ぶ時間もとれなくなるよ」と言い聞かせたらしい。

…実際、クールビューティー(笑)軍団な気もするのだが―――おっと、どこからか殺気を感じる。これ以上はよしておこう。

 

まぁ、とにかくみんないい子ばかりで助かっている。

鎮守府の運営も上手く行ってるし資材も沢山ある。

最初の頃は、大和は演習しかだせずに窮屈な思いをさせてしまうくらい貧者な備蓄状況だったが、今は結構な頻度で出撃させている位だ。

 

駆逐艦、軽巡洋艦の皆にはいつも感謝している。

彼女たちがいなければ、余る位資材が集まる事は無かっただろう。

 

オレとしても彼女たちに労いの言葉だけでなく、できるだけの事はしてあげたいと思っている。

 

だから、遊びに来た子の相手をして仕事が押してしまってひっそりと自室で仕事の続きやってたけど、過労で倒れたりな。

その時は、色んな子に泣かれたり、怒られてしまった。

 

無理をさせてまで、遊んでとか言ってごめんなさい、とか。

どうしてこんなことになっているのに誰も頼ってくれないんですか!とかね。

 

まぁ、こんな事があったからクールビューティー組の言葉が皆身に染みてわかったのだろう。

無論オレもだが。

それからは、きちっと仕事を分担する事にしたりね。

 

 

まぁ、改めて思い返してみると色々あったか。

何が高校生の日常生活の方が面白い、だよ。

 

オレの日常生活も楽しくて面白いじゃねーか。

 

だから、研修から二ヶ月経った後のオレの一日を紹介する。

 

あれ?なんでさっきからこんな風に小説みたいに―――もういいや考えたら負け的な何かだろう。

それじゃあ、いってみよう!

 

 

0510

 

 

目が覚めた。

しかもいつもの起床時間じゃない。

何故わかるかというと、部屋には僅かな光もさしていないからだ。

今はまだ冬。

7時台じゃないとまだまだ暗い。

 

時計を見てみる。

0510かよ。

もう一度寝るか。

 

一応、布団を勢いよくめくってみる。

この時間に起きるのは、オレの他に誰かが布団に入っている時が、多いからだ。

 

よし、中には誰もいない。

最近、色んな奴が入ってきている。

 

最初は響だけだったが、第六駆逐艦隊全員が入っていたり、不知火と陽炎が入っていたり、白露型(五月雨と涼風は無かった、後春雨はうちにはいない)が入っていたり色々ある。

因みに一番ヤバいと思ったのは如月だ。

オレのズボン掴んだまま寝ていた。

ナニする気だったんだ?

 

こんなこともあって、オレの部屋のカギは二ヶ月の間に10回も変えたのだが、意味をなさなかったので変えるのも止めた。

ホントどっから入ってきているのか不思議で仕方がない。

いつも戸締り確認してから寝るのに。

セキュリティ大丈夫か?

というか皆どっから侵入してるんだよ!

 

あぁっもう!

気にしたら負けだ!

寝ようお休み!

 

0710

 

心地よい。まるで母親が優しく子供を起こそうとしているみたいだ。

 

優しい声につられて目を開ける。

 

「あっ、目が覚めたようですね。おはようございます」

「ああ、おはよう鳳翔」

 

声の主は鳳翔だ。

 

彼女には昨日秘書官を任せていたんだっけ?

前日秘書艦にだった艦娘には基本的にオレの部屋のカギを持たせている。

オレに何かあったらすぐに部屋に入れるようにだ。

 

前日秘書艦だった艦娘はその鍵を使って部屋を開けて、オレを起こしてくれたりもする。

 

ここまでしなくていいといつも言っているが、書類をこっそり私室に持っていって一人でやって無いかを監視する為と言う目的もあるとの事。

 

無理していた前科があるのでこういわれるとどうしようもない。

 

オレは上半身を起き上がらせた。

 

「ふわぁ~あ」

「ふふ、いい欠伸ですね」

 

まだ眠たい為か欠伸が出てしまって鳳翔に笑われてしまった。

何かその優しい表情とか本当にお母さんみたいだな。

 

「まだ、冬だしね。おかげでまだ眠いよ」

「眠くても起きてくださいね?今日はお仕事の日なんですから」

「いつもお仕事の日だよ。起こしてくれてありがとう鳳翔」

「いえ、これくらいなんともないです。では外で待っていますね」

「ん。了解」

 

そういうと鳳翔はオレの私室から退室した。

流石の鳳翔。

オレが着替えることを察してくれたようだ。

流石に男でも着替える時には視線が気になったりする。らな。

誰得だよ。男の生着替えなんてさ。女性でも得すんのかね?

 

さて、下らないこと思っている場合じゃない。

早く顔洗って着替えないとな。

 

表に女性を待たせているからな。

 

さぁ、早く身支度をしよう。

 

今日のバンダナは赤のペイズリー柄だ。

普通だな。

 

戸締りを確認する。

不安だからまた戸締りを確認する。

本当に大事な事だから別に二回確認してもいいだろ?

 

今度こそ…よし!

私室から出ると鳳翔がいた。

 

それもそうだな。

だって、さっき待ってるって言ってたし。

 

「んじゃ、食堂に行こうか」

「ええ、みんな待っていますよ」

 

鳳翔の歩くペースに合わせて食堂に向かう。

途中でまた欠伸が出てしまい笑われてしまった。

 

まいったな、本当に朝は弱い。

 

 

 

 

0730

 

この時間は、食堂で朝食を食べる時間だ。

 

食堂は0700から開いているが、朝練をしている娘達は一番に来るが、他の艦娘はオレくらいの時間帯に来る。

 

食堂は基本的にオーダー制。

ある程度メニューは決まっているが、メニューになくても頼めば大方の物はすぐに作ってくれる。

 

今日のオレの朝食は、色んな具が入ったおにぎりと味噌汁、それとなすときゅうりの漬物。

 

幼いころから和食中心で育ったため、朝食は和食が多かったし、朝食でパンはあまり食べたことが無かった。

だから、朝食は和食に限る。

 

間宮たちから朝食を受け取り、席をつく。

両手を合わせて頂きますと言おうとした所に

 

「いっちばーん!」

 

白露が元気よく右隣に座って来た。

おいおい折角の朝食がこぼれるぞ…。

 

「おはよう提督!今日もあたしが一番だね!」

「おはよう白露。一番で、いいけど食べ物は大事にな」

 

イエイ!とVサインをしてきてアピールしてきた。

元気がいいな。この元気の良さが白露の良い所だろうな。

やっぱりお姉ちゃんは元気で無いとな。

 

この食堂のテーブルは六人席で分かれている。

最初は適当にテーブルの角に座っていたけど、色んなこに何か変な文句付けられたので真ん中に座る羽目になった。

それで、早く来ていたいたり、オレより少し遅く来ていたことかがオレと相席する。

 

白露はオレより少し後に来るので、大体一番にオレと相席する。

 

「今日も長良達とランニングしてきたのか?」

「うん。そっちも一番だったよ!」

「そっか、がんばったな」

「えへへ」

 

頑張ったらしいので労いの言葉をかけながら頭を撫ででやる。

白露は嬉しそうに頭を撫でられている。

別にあいつら競争する気ないだろうけどな。

 

長良達というのは、長良、鬼怒、大鳳の事だ。

あいつらは毎朝鎮守府内を走ってる。

それに他の艦娘やオレも参加したりしている。

運動不足はよくないからな。

元現場指揮官が書類仕事で体が鈍ったなんて事になったら笑いもんだしね。

まぁ、他にもこっそりなんかやったりしてるけど。

 

「おはようございます司令官。隣失礼します」

「ん。おはよう不知火」

 

左隣に座ってきたのは不知火だ。

相変わらず表情が全く変わらない。

無愛想だと思うがこれが不知火らしさである事は知っている。

 

その変わらない冷たさすら感じそうな表情のまま椅子をオレの近くに動かして、引っ付いてきた。

うん、これもこの鎮守府の不知火らしさだ。

 

「不知火に何か落ち度でも?」

「いや。全く」

 

落ち度なんてないだろうに。

突然こんな事聞かれても困る。

ちょっと前はまでは、こんな風に引っ付かれて食べにくいとか文句を言ったりしたが、今は別に困る事は無い。

むしろどこか心が温かくなる気がする。

 

「おはようございます」

「おはよう鳳翔さん!」

「鳳翔さんおはようございます」

 

鳳翔はオレの目の前に座る。

 

「ふふふ、二人とも甘えん坊ですね」

「いいじゃん。あたし頭こうやって撫でられるの好きだよ」

「不知火は甘えん坊なんかじゃ…」

 

甘えん坊でもいいと認める白露と、甘えん坊であることを否定する不知火。

いやー、本当に心が温まる光景だ。

この温かさを還元するために二人の頭を少し乱暴にわしゃわしゃと撫でる。

 

「もーう、ていとくー。髪が乱れちゃうってばー」

「し、司令…」

否定的な台詞を言いながらも嬉しそうに目を細める白露と、俯いて恥ずかしそうにする不知火。

 

「髪ぐらいいいだろ?食事の後に直せるだろ。それに不知火、お前秘書艦のとき―――」

「し、司令!」

「何か気になる話をしてますね」

「か、加賀さん!?」

 

鳳翔の右隣に加賀を見て驚く不知火。

不知火は加賀を目標としているからこんな恥ずかしい事聞かれたくないだろうな。

まぁ、不知火が想像しているより加賀は控えめなクールビューティーでは無いけど―――おっと、急にオレの体温が下がった気がする。これ以上は止めておこう。

 

「おはよう加賀」

「加賀さんおはよー!」

「加賀さんおはようございます」

「おはようございます」

 

加賀もあんまり表情変わらないよな。

でもまぁ大体どういう表情なのかわかる。

今は皆挨拶をしてくれて嬉しいと感じているのだろう。

 

「提督おはよう」

 

鳳翔の左隣に、長門が座って来た

 

「おはよう長門。今日はどうする?」

「ああ、頼む」

「んじゃあ、オレの業務が終わり次第格技場な。他の奴らにも言っておいてくれ」

「心得た」

 

これは、今日はオレと修行するかと言う確認だ。

ひょんな事からオレに弟子入りする艦娘が出てきた。

教えているのは近接格闘術だ。

艦娘に近接格闘なんか必要なのかと思うが、意外と馬鹿にならない。

格闘術を磨くと戦場での洞察力だとか、次に相手が何するのか予測しやすくなる。

戦艦級の深海棲艦も相手に近づいて近距離戦に持ち込んだりするし、弾薬を節約するために外さない距離に近づいたりするときにも役に立つからな。

 

長門は、オレが提督になってからの弟子第一号だ。

だから、彼女が一番オレと修行しているし、覚えもいいから助かっている。

他にも色んな艦娘が弟子入りしているが今は割愛。

今は、お腹空いてんだよ。

 

「んじゃ、いい加減食べようぜ」

「「「「「はい(了解した(了解しました))」」」」」

 

オレが両手を合わせると後から皆手を合わせてきた。

それじゃあご一緒に

 

「「「「「「いただきます!」」」」」」

 

さぁさぁ、楽しい朝食の始まりだ。

 

皆と楽しく談笑しながら朝食を食べ終えた。

 

皆の相部屋の艦娘とどんなことしてたかとか、昨日オレの執務中にこんな事してたとかが主な話題だな。

皆楽しそうに話すからオレまで楽しくなる。

それがオレ達の朝食だ。

 

 

0900

 

 

この時間から私のいつもの仕事が始まる。

 

あ、オレの一人称は仕事中は私になるから注意な。

よくオレって言っちゃうけど。

 

本当は朝食後に部屋に戻って歯磨いたり身嗜みの確認とか、0830から今日の出撃や合同演習についての会議もあるけど割愛。

 

だって、会議とか重苦しいだけだしつまらないだろ?

メンバーだって、霧島、不知火、加賀、響、夕張etcと真面目な子ばっかりだ、し殺伐としてるぜ?

 

だから、割愛な。

 

「0900、これより秘書艦の業務を大和へと委任します」

 

鳳翔が敬礼をしながら私と大和に伝える。

鳳翔は真面目だからこの『秘書艦引継ぎの儀』を毎回やる。

 

うちの秘書艦は当番制だが、やりたい子がオレに言えばいいと言う志願制でやってる。

結構やりたいという子が多いから、しっかりローテーション組めて助かっている。

 

「本日の秘書艦の業務、大和への委任を承認する」

 

私も荘厳な雰囲気を纏い重くうなずく。

 

「了解。0900、大和、本日の秘書艦の業務謹んでお受けいたします」

 

大和も敬礼をして鳳翔に返す。

 

そして鳳翔が懐から何かを取り出し、大和に手渡す。

 

まぁ、その何かっていうのは私の部屋鍵なわけだけど。

 

この『秘書艦引継ぎの儀』(私が勝手に呼んでる)は、鳳翔や加賀とかの真面目な艦娘がやっている。

別にこの儀式をやる必要性は無い。

駆逐艦同士だと

『今日お願いね』

『うん、夕立提督さんのお手伝い頑張るっぽい!』

『ぽいじゃなくて、本当に頑張ってくれよ』

『ぽい!』

なんかで済ましてるしな。何か回想に私の突込みと言う不必要な要素があったけど気にしないでくれ。

 

何か肩肘ついてこんな事思っていたら、大和も鳳翔もいなくなっていた。

 

鳳翔は、今日出撃予定のない駆逐艦とかの遊び相手になってあげに行ったのだろう。もしくは間宮達の手伝いか。

それか、空母の指導にあたっているか。

 

まぁ、大和が居なくなったのは、

 

「お待たせしました提督」

 

両手いっぱいに書類を抱えて執務室に入って来た。

 

『秘書艦引継ぎの儀』の後、事務の方から今日の書類を受け取って来たのだろう。

 

うわー、今日もたくさんの書類だー。

 

「さぁさぁ、溜め息ついてないで、本日も頑張りましょう提督」

「りょうかーい」

 

秘書艦席について大和が書類の整理を始める。

目を通すだけでもいいもの、こちらの承認が必要な物などにわけるのだ。

これをやってくれるだけで、かなり捗る。

書類を分けてくれている内に、確認したい事を大和に言う。

 

「今日の出撃は1000からだよな?」

「ええ、指揮お願いしますね」

「合同演習は結局何時になったんだ?」

「提督聞いていなかったんですか?」

「ほら、会議中に腹壊して席外してただろ?」

「ふふふ、そうでしたね。失礼しました」

「笑うなよぅ」

「失礼しました。合同演習は1100と1530からです」

「了解」

「提督、書類整理終わりました」

「了解。流石大和だな。仕事が早くて助かる。」

「お褒め頂き感謝します」

 

口元を抑えて上品に笑う大和。

この笑顔を糧に今日の書類仕事が始まる。

 

今日の天気は晴れ。

出撃するにも遠征を出すのにもちょうどいい。

 

何より、昼寝は晴れの日に限る。

 

「提督。ペンを持ったまま寝ないでくださいね」

「もうそんなドジはしないさ」

「嘘ばっかり。この前も加賀さんに怒られてでしょ?」

「…善処します」

「宜しい。子供みたいに変な意地を張らないでくださいね」

 

またまた、大和に笑われてしまった。

今日は駄目だ。

考えを巡らせるのが下手だな。

まぁ、昼寝するにもまだ早い。

今は書類仕事をして、午後にぐっすりと寝る予定だ。

 

子供っぽいねぇ。

そういえば聞きたい事があったかな。

 

書類を手伝っている大和の方に向き直る。

大和はかなり集中して書類を書いてくれている。

 

字も綺麗だし、大和も綺麗だし最高級の秘書艦だと思う。

 

まぁ、最近だと正確で処理が一番早いのは加賀と不知火何だけどね。

 

「なぁ、大和?」

「何でしょう?」

 

書類から目を離さないまま大和が返事をしてきた。

 

「この前、一緒に間宮にいったじゃん」

「ええ、行きましたね」

 

この前、大和が頑張ってくれたので間宮たちの経営する甘味処の限定商品のチケットを二枚あげた。

 

二枚上げたのは、仲のいい子と一緒に行けるようにだ。

別に大和と武蔵でもよかったけどな。

 

んで、良かったら一緒に行こうと言われていったのだ。

仕事も一段落ついてたし、特に断る理由も無かったからね。

 

「あの時さ、大和が私の抹茶パフェ羨ましそうに見てたじゃん」

「………」

「んでさ、その時、っておーい大和さーん?」

 

大和の方からペンを走らせる音が聞こえなくなった。

何か、顔も紅いし大丈夫か?

 

「おーい。大丈夫か」

「は、はい!大和は大丈夫でしゅ!」

 

私の方にバッと向き直り、顔が真っ赤な上ちょっと目が潤んでる。

可愛い。

じゃなくて、

 

「それ榛名の台詞だし。後噛んでるし」

 

そのころある部屋では、

 

「はくちゅ!」

「ひえー!榛名、風邪ですか!?」

「いえ、榛名は大丈夫です」

「無茶は良くないですよ?」

「榛名。無茶はNOですよ?」

「ですけど、この会議欠席する訳にはいきません。続けてください!」

「わかりました。お姉さま方『志崎提督を金剛型姉妹の婿にする為の会議』続けましょう」

「「「イエス!!!」」」

 

執務室に戻る。

 

「そ、それでその時の事がどうにかしましたか?」

 

顔をずいっと近づけてきたので、私の腰が少し引けた。

いきなりだったので、ちょっとびびった。

 

「あ、ああ。その時、大和にあーんしただろ?」

「え、ええ。しましたね」

「あれって、子供っぽいのか?」

 

そう甘味処に行った時、大和が羨ましそうに見てきたので、クリームとスポンジ部分をスプーンで取ってあーんしてあげた。

昔は妹とかによくしてたのでついついやってしまったが、アレって子供っぽいのかな?

 

何か大和の顔もめっちゃ赤かったし。

こんな子供っぽい事恥ずかしいという事だろうか?

しかも店にいた他の艦娘達の視線が氷点下だった気がするし。

 

うわー。今思うと超恥ずかしい。

あいつら子供みたいな事してるー。って事か?

消えてしまいたい……。

 

「あの……。えっと……」

 

大和は困惑顔だ。

うわー。大和に恥をかかせてしまってたのか?

どうしよう。どうすべきだろう。

 

「…提督は私からあーんされて、恥ずかしくなかったのですか?」

「いや全然恥ずかしくないけど」

 

私は全然恥ずかしくない。何せ昔からやってたからだ。

 

私があーんした後、大和があんみつをあーんし返したので、笑顔で受け取った事まで覚えてる。

あんみつ美味しかったな。

また食べたい。

でも今の時期だからお汁粉もいいかも

 

「だって、昔から家族とやってたからな。恥をかかせたらすまない」

「い、いえ。そういう訳では。私も懐かしい気分に浸れましたし」

 

両手をぶんぶん振って否定する大和。

そこまでのジェスチャーしなくても大丈夫だって。

 

「そ、そうかい。気を悪くしてないならよかったよ」

「え、ええ。大丈夫です」

 

お互い書類に向き直り、仕事を再開する。

 

でも執務室に漂う沈黙は気まずさから来るもので、心地よくは無い。

 

ど、どうしよう。

こんな空気にしたの私だし、私が何とかするべきだよな。

さ、さぁどうやって空気を元の流れにしようか……

 

「あ、あの!」

 

大和が席を立ち聞いてくる。

 

「な、なに?」

「お茶入れましょうか」

「じゃ、じゃあお願いするよ」

「は、はい!」

 

大和が嬉しそうな笑顔で返してくれた。!

結局、大和に気を遣わせてしまった。

 

だらしない…。

 

「では、休憩室からお茶を入れてきますね」

「うん、お願いするよ」

 

執務室内には休憩室への扉もある。

休憩室では、料理を作る事も寝る事も可能だが、私はあんまり使ってない。

執務室で寝る時も腕を枕にして机で寝るか、ソファで寝ることが多いからだ。

だから主に使っているのは秘書艦のこだな。

 

大和が休憩室の扉に手をかけた所で振り返ってきた。

 

「あの!さっきのあーんの件ですけど」

「ああ、うん。どうした急に?」

「大和は子供みたいだとは思いません」

 

そういえば質問に答えて貰って無かった。

どうやら大和はそう思ってないらしい。良かった。他の子にやっても馬鹿にされないな。

 

「ですけど、他の娘にやるのは出来ればよしてくださいね!」

「はいぃ!?それってどういう―――」

「失礼します!!」

 

………どういう事だってばよ?

まぁ、いいや。できるだけ、あーんはよしておこう。

あーんをよく思わない子もいるから気を付けろという事だろう。

深く考えないようにしよう。

 

さて、大和のお茶が楽しみだな。

大和がいれてくれるお茶は美味しいからな。

 

この後、滅茶苦茶苦いお茶が来た。

何でセンブリ茶があるんだよ!

と言うか、誰か注意書き張っておけよ!

万人受けするお茶じゃないだろ!

いつものお茶用の茶筒に入れるなよ!

 

でも大和が涙目で謝って来たので、笑って許して飲み込んだ。

苦いもんは苦いが、空気がいつものような陽気な物に戻ったからか、この苦味も悪くは感じなかった。

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