死神と艦娘の物語   作:ゆーなぎー

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 主人公の一人称が変わるのは仕事とプライベートでわけているからです。
 仲がよくなると普通にオレに変わりますけどね。


chapter 0.5-2 日常の終わり

 授与式後、オレはある部屋に来るように言われていた。

 その部屋で行きノックする。

 少し緊張してきた。中から声がし、入室の許可が下りる。

「失礼します。」

 私は入室し、できるだけ背を見せないようにして扉を閉めると、相手を見据えて敬礼する。

「志崎生希ただいま到着しました」

 呼び出された部屋は総司令の執務室。そう呼び出したのはこの日本の軍の総司令であり、

「よく来てくれた生希」

 私の叔父その人だ。総司令は執務机にある書類から顔を上げてこちらをみた。総司令は50代に入ったばかりのお方だ。

「は!」

 敬礼をやめ姿勢を正し背筋を伸ばす。

「そんな堅苦しくしなくていいから、そこに座りなさい」

 叔父は優しい笑顔でソファに座るよう促してきた。その笑顔は、社交辞令的なものでなく子供に向けた優しい笑顔だったから、力が抜けてそのままソファに座った。ああ、凄いソファがふかふか。もう抜け出せない…。

 叔父は執務机の高そうな椅子から腰を上げこちらに歩み寄るとオレを抱きしめた。

「お、叔父さん…」

 何か恥ずかしくておどおどしてしまう。叔父はわしゃわしゃと髪を撫でる。

「良いじゃないか~。病院ではお前が辛そうでこんなこと出来なかったし、他の奴の目もあったからな~。」

 お~よしよしと子供をあやすように撫でるその優しい手に思わず眠気が…って、

「違うでしょ!総司令こんな事するためにわざわざ私を呼んだっわけでは」

 仕事モードに無理やり入るはずがまだ息子モードに入ってることを自覚した。

「いや~これも目的だぞ?こうやって子供を愛でるのもな~」

 叔父さんの優しい口調にまたスイッチが入りそうになる。

「髪もこんなに真っ白になってな…」

 オレの髪を撫でながら少し寂しそうな声で言う。

「…色々あったんんです」

 黙ってしまいそうになるが黙ってたら余計に心配をかけてしまうから口を開く。こっちが余計だったかな…。

「そうか…。でもなんとか乗り越えたみたいだな。良かった良かった」

 頭をポンポンと叩き向かいのソファに行ってしまった叔父。頭になんか名残惜しさが残ったな…。

「乗り越えられたかはわからないです。でも立ち向かえてはいたでしょうね」

 笑みを浮かべて返すと、総司令も笑みを浮かべてくれた。良かったちゃんと笑えたか。

 こほん、と総司令がわざとらしく咳をする。どうやら本題に入るらしい。

 向かいの総司令は向かいのソファに座りこちらを見る。

「今呼び出したのは、授与式で粗相があったとかそういう類ではない。」

 …うん、まぁわかってた。これは叔父流の冗談みたいなものだろう。真面目で重要な話をするときはこんな事を言ってこちらの緊張を和らげようとしてくる。

「今、世界は大変な危機に陥ってる」

 室温が下がったような錯覚を感じた。思わず目を見張り、拳に強く力が込める。

「…まだ、テロは続いているのですか?」

 少し怒りがこもっているのを感じた。また戦争になるのか?せっかくオレたちは平和を掴んだのにまた!

「テロ…。これはある意味ではそれ以上の脅威かもしれん」

 何だと?じゃあどうすれば?その脅威とは何だ?

「何ですか?その脅威とは?」

 そんな脅威の情報は全く聞いてない。皆気遣っていたのか?…多分そうだろうな。

「今から話すことは全て事実だ。決して創作の話では無い。」

 こちらを見据えて言ってくる。その強い瞳に事態の重さが伝わってくる。

「わかりました。話してください。」

 一度唾を飲み込み気持ちを整えた。

 

 

 

 

 ある程度簡単に言ってしまうと、危険思想の国家、凶悪なテロ組織の脅威から世界の平和を勝ち得、世界は平和を謳歌していたらしい。 

 壊滅的な損害を受けた都市は、他国と連携をとったりして再復興を遂げようとしたり、国家間で新たな同盟や条約を結び国際平和を強化したり、麻痺した行政機関の立て直しを図っていた。

 様々な摩擦や食い違いを引き起こしながらも世界は良い方向に収束していった…筈だった。

 世界大規模テロ終焉から半年後の事だ。平和な世界をぶち壊すかのように化け物が現れた。深海棲艦と呼ばれる軍艦を模した化け物だ。

 そいつらはこの世界の海上を荒らしまくった。シーレンを破壊し、世界の海上防衛も壊された。

 だがそんな化け物にも人間は屈さなかった。また世界で連合を組み、化け物を絶滅させようとした。

 だが奴らは強かった。圧倒的だったらしい。

 普通の船には無い機動力(まるでスケートのリンクを滑るような滑らかな移動らしい)、人と同等の知能を持って行われる連携能力、高い火力を有し、こちらの軍艦を虫を潰すかのようにあっさりと撃沈していったらしい。

 しかも奴らの全長は人間位なので高い機動力なども相まってこちらの砲撃も爆撃もまともに当らないのだ。

 大損害を受けながらも4ヶ月を耐え抜き奴らの事を研究し、何とか奴らの進行を遅らせてきた。

 だが、奴らにはなぜかこちらの砲撃は効かず世界の国々の資源を消費していくばかりだった。

 そして、このままでは本土への上陸を許してしまうそんなギリギリの所まで来てしまったらしい。

 こうなったら核を使ってでも止めるしか、本当に極限の状態まで来たその時だ。

 救世主が現れた。

 妖精さんである。

 彼らは人類を救うためにある技術を提供してきた。

 それは、軍艦の能力をデータ化し、適性のある人間に適応させる技術だ。

 その適性は何故か女性にしかなかったので、この技術を使って生まれたのが『艦娘』と呼ばれるようになった。

 この技術は今だ安定した物でなく様々な改良が今も加えられ、様々な軍艦の能力が今も再現されつつあるらしい。

 世界は大急ぎでこの技術を広め発展させた。日本では駆逐艦型の艦娘が最初に作られ奴らと互角に渡り合い、撃退。

 そして世界もどんどん艦娘を生み出し、何とか近海を奪還した。

 今では巡洋艦、戦艦、空母の艦娘までいるらしい。

 そうした、海上を防衛・奪還し、軍艦の戦闘能力を再現しどんどんデータ化していっている今、人類は反撃の狼煙を上げ始めていた…。

 そんな時期にオレは目覚めた、ということだ。

 

 

 

 

 まぁ、そんな感じだ。結局簡単じゃなかったか…。

 

「どうかな?わかったかい?」

 総司令は子供に言いつけるように優しく私に聞いている。

 多分オレの表情は釈然としてないだろう。それもそうだろうなんせこんな話フィクションやオカルトの領域だ。

 オレはどちらも嫌いじゃないが、まさか真面目な顔でこんなこと言われると思わなかった。(でも今思うとテレビCMで旅行関係のCMを見てなかった気がする。)

 正直、整理がついてない。わざわざプロジェクターで映像資料を見せてもらったがCGかと疑うレベルだ。

 だけど、あの映像で聞こえた悲鳴は決して演技じゃないことは感覚で理解できた。耳を潰してしまいたくなるほど戦場で聞いたからだ。

 オレは腕を組んで今の話を整理する。…親族とは言え、腕組なんて上司にとる態度じゃないことは理解してたよ。

「流石に、こんな与太話みたいなこと信じるのは難しかったかな?」

 総司令が苦笑しながら言う。不安だったのだろう。全くこの世界の状況がわからない人間にこんなファンタジーな事が起きてるなんて信じられないからだ。

 正直、信じられなかった。病院でも、軍でも、町でもそんな雰囲気じゃなかった。テロリスト共の戦争が始まる前までの平和だった時と変わらないと感じてた。

 だからこそ、この話が信じられなかった。

 でも事実なのだろう。叔父の瞳はとても力強かったが、同時に悲しみを湛えていた。何人もの人が犠牲となったのだろう。

 だから、

「いえ、信じます」

 私は信じることにした。

 この言葉に総司令は深く息をはき、ハンカチで額に浮かんだ汗を拭った。

「ふぅ、よかった。信用してくれたか」

 安堵の笑みを総司令は浮かべた。だが、緊張は解かれていない。もう一つ何かありそうだ。 

「そこで、君にはまた現場で指揮をしてもらいたい」

 少しばかり、反応する。指揮か…。あの部隊で隊長だったのだ。適材適所と言うことだろう。

 だが、総司令が悲しそうな表情を浮かべる。

「君は戦場で何人もの部下を失う立場だった」

 多くは無いが部下を失ったのは確かだ。部下というより同僚に近い関係だったが。

 やむを得ず見捨てることもあったし、この部隊が生き残るために犠牲となってくれなんてことも言わなければならなかった。

 だから、総司令はこのことで深く傷ついてると思っているのだろう。

「君はまだ若いし大きな手柄も立ててくれた…」

 帽子で表情を隠す。

「だが、誰が言おうと君には自由になる権利がある」

 次にくる言葉は総司令でなく、私の育ての親としての言葉だろう。

「だから、軍から退役することも可能だ」

 これは軍人としての思いを押し殺した叔父の言葉だろう。これ以上私が傷つくのを見ていられないのだろう。髪の色は元々は黒だった。だが今は灰のように真っ白な髪だ。

 それだけ見れば、私が戦場でどれだけの『痛み』を味わったかある程度想像できるだろう。

 だが、私はあの戦場で変わった。変わってしまったのだ。

「いえ、やります」

 軍としては、英雄が復活して指揮が高まると感じているはずだしここで退役してほしく無いだろう。

 そんな思惑はどうでもいい私は私の為に戦い続ける事を再び誓った。

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