なのはさん30歳、本気で恋をがんばる   作:ミミカキ

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まずは自覚することから始めましょう

 

 

 私が魔法に出会ったのは、まだ私が小学生だったころ。

 

 ユーノくんとのふとした出会いから始まった私の物語……さしずめ、リリカルなのはとでも言ったところだろうか。

 

 その日々は確かに充実したものだった。

 

 フェイトちゃんとは出会って、ジュエルシードを巡って戦って、そして友達になれた。

 

 はやてちゃんとは闇の書……ううん、夜天の書のことでヴィータちゃんたちと戦わなくちゃいけないこともあったけど、最後には力を合わせて、一緒に戦うことができた。

 

 そして私は中学を卒業し、故郷を離れて魔法と共に生きていく決意をした。友達や家族と別れるのは寂しかったけど、あの時はこれから始まる新しい生活に胸を踊らせていたのが正直な所だ。

 

 ミッドでヴィヴィオと出会い、家族になり、格闘技を始めたヴィヴィオを見守る日々。

 

 何故か具体的な内容は思い出せないけど、とりあえず解決はしたはずのエクリプス事件。

 

 思い返せば、本当にいろいろなことがあった。

 

 今でもフェイトちゃん、はやてちゃんの二人とは親友と言ってなんら疑問の無い関係を築けているし、スバルやティアナを始めとした教え子たちとの関係も良好だ。

 

 それでも、楽しいことばかりがあった訳じゃない。

 

 仕事で重症を負い、二度と歩けないかもしれない恐怖を味わったこともある。

 

 心ないものからは魔王などと呼ばれる日もあった。

 

 自分の教導要領に関する本を出版すれば編集にタイトルを『できる! これさえ読めば世界の半分が手に入る本』に勝手に変えられたりしたこともある。

 

 そのことで文句を言いに行ったら「も、申し訳ございません! どうか……どうかスターライトブレイカーだけはご勘弁をォ!」と平謝りされた。

 

 もちろん、そんなことをするつもりは無かったのに……。

 

 そんな調子で、落ち込んだりしながらもがんばり続けて、もう20年。

 

 高町なのは、今年で30歳になりました。

 

「うん、思い返してみると……私、結構がんばったよね?」

 

 20年……そう、20年だ。悪い意味でもいろいろなことがあった。

 

 加齢と共に近付いてくる体の限界。

 

 子供の頃は楽しみだった誕生日の来訪が不安へと変わっていく日々。

 

 階段を上りきった時に息切れを起こしていたことに気付いた時の絶望。

 

 まだ大丈夫。まだ大丈夫と自分を誤魔化していても過ぎていく婚期。

 

 そしてヴィヴィオの友達におばさんと呼ばれる恐怖。

 

 つまるところ何が言いたいのかというと……

 

「完全に婚期を逃した上に、変なイメージがつけられてるせいで出会いがない……」

 

 もっともあったとしても、仕事仕事で愛想を尽かされるのが関の山だろうけど。

 

 いや、もちろん仕事は大好きだし、誇りもある。

 

 でも同時に私だって女の子なのだ。いわゆる『結婚』というものへの憧れもずっと抱えていた。

 

 昔は、お父さんみたいな素敵な旦那様を貰うんだってお母さんと話してたのに、現実は減ることのない書類の束を相手にする日々……。

 

 これじゃあ素敵な旦那様なんて夢のまた夢だよ……。

 

「失礼します。なのはさ~ん? 前の教導の資料なんですけど……って、うわ! どうしたんですかなのはさん!? なんかものすごい負のオーラが出てますよ!」

 

「ああ、エディ……。いや、ちょっとね……。まぁ、気にしないで」

 

「は、はぁ。なんかよく分からないけど分かりました」

 

 彼の名前はエドワード・セドリック。愛称エディ。

 

 何年か前に私が担当した教え子で、いろいろあって今は彼も教導隊に籍を置いて後身の育成のために働いてくれている。

 

 歳は……私よりも10は離れていたと思う。10年前かぁ……あの頃の私は六課にいて、まだまだ未熟だったけど楽しかったなぁ……。

 

「って、もうこれ完全にお年寄りのセリフだ……」

 

「なのはさん本当に大丈夫ですか……?」

 

 うぅ……エディの優しさが今は痛いよ……。

 

「あ、そうだ。ヴィヴィオ、元気にしてます? 来週誕生日でしたよね? またプレゼント渡しておいてもらってもいいですか?」

 

「へ? ああ、ヴィヴィオね。ヴィヴィオならいつも元気ハツラツだよー。あと去年も言ったけど、プレゼントはエディが自分の手で渡すこと。その方がヴィヴィオも喜ぶし、なによりプレゼントを又渡しするのは良くないよ」

 

「ですか」

 

 ちなみに彼が管理局に身を置く前は、ヴィヴィオの学校の先輩でもあって、ヴィヴィオにはかなり良くしてくれていたらしい。

 

 その話は何度もヴィヴィオから聞いたし、なにより今でもこうやってお互いの誕生日にプレゼントを贈り合う辺り、相当仲が良かったんだろう。

 

 ヴィヴィオも隅に置けないなぁ。

 

 そういえば、エディ情報だとヴィヴィオって学校じゃモテモテなんだよね……。

 

 一方の私はというと……男子のクラスメイトから録に話し掛けられたことすらないかも……。

 

「やっぱり私って、魅力無いのかなぁ……」

 

「いやいや、なのはさんに魅力が無ければ、世の中の女性の大半はマネキンですよ……」

 

「そうかな? もう私なんてもうおばさん一歩手前だよ?」

 

「その外見で言われても説得力皆無ですけどね。正直余裕で20代前半で通せます。むしろ実年齢の方が信じられないくらいです」

 

「あはは、じゃあエディがなのはさんを貰ってくれる?」

 

「喜んで! ……と言いたいところですが、すいません。僕彼女いるんで」

 

「あらら、残念。振られちゃった」

 

 本気……とまではいかなくてもエディなら良いかもって思ったんだけどなぁ。

 

「なのはさんなら僕なんぞよりよっぽどいい人見つけられますよ」

 

 恋人がいる人ってみんなそう言うよね。こっちはそのいい人が絶賛行方不明中だから困ってるんだけど。

 

「ま、いいや。とにかく来週はちゃんとウチに来ること。いい?」

 

「分かりましたよ。まったく、彼女が嫉妬しちゃうんだけどなぁ……」

 

《Mr. Eddy, message is coming from your lover》

(エディ様、恋人からのメッセージが届いています)

 

「おっ、噂をすれば彼女からメールです」

 

 そう言ってメールを開くエディの表情は本当に幸せそうだった。

 

 若いっていいなぁ。

 私も今からでも間に合うかなぁ……。

 

 ううん、もうそんな希望的観測の時間は終わり。なんとしてでも間に合わせるんだ。

 

 宣誓! 高町なのは30歳、今年は本気で恋をがんばることを誓います!

 

 と、そこで視線を感じて、ふとエディの方を見てみると、彼は何やら難しい顔で私を見ていた。

 

「あー……その、彼女からだったんですが……」

 

「んー? あ、もしかして早く会いたいコールとかかな? 今日の仕事はもうほとんど終わってるし、あがってもいいよ」

 

 エディは歳の割にはよく働いてくれているし、普段から真面目な子だ。こういう時くらいは年上のお姉さんとして気を利かせてあげなきゃ。

 

「いえ、そうじゃなくて……その、来週、大丈夫です。いえ、むしろヴィヴィオの誕生日、フェイトさんやエリオくん達も誘って、盛大にパーティでもやりましょう……?」

 

「え、なにその突然の心変わり? そりゃヴィヴィオも喜ぶだろうけど……。エディ、彼女さんと何かあったの?」

 

「…………たった今、彼女に振られました……。なんか、突然冷めたとか言われて一方的に……」

 

 さっきまでの幸せそうな表情とは一変、エディは本気で泣いていた。

 

 ……若いって言うのはそれはそれで大変なのかもしれない。

 

「……今度、婚活パーティに参加する予定なんだけど、エディも来る?」

 

「お供します……!」

 

 その日、私たちは上司部下を越えた同士になった。

 とりあえず、今晩は私の奢りで飲みに行こうか。

 

 




主人公の名前は日産の車から
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