ライブラの一員がダンジョンに潜るのは間違っているだろうか   作:空の丼

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レオ視点なだけで原作と話変わってないですね。まあ重要なシーンですししょうがないかなと。


剣姫襲来

 

「えっと、リリ。それで、これからのことなんだけど……」

 

 一悶着の後、ベルが口火を切った。

 

 内容はリリのこれから住むところについて。ファミリアを追われているんだから当然今のリリにはホームがない。

 それは前からもそうだったみたいで、これからも宿を転々とするつもりだと彼女は言った。

 

 ベルは僕とヘスティア様にこっそりと目配せをしてくる。

 

 まあベルならそうするだろうと大体予想は付いていたから僕は笑って了承する。ヘスティア様も不満気な顔をしてはいるけどしっかりと頷いた。

 

「リリ、もしよかったら……僕たちのホームに来ない?」

 

「……え?」

 

「というか、【ヘスティア・ファミリア】に入らないかな?」

 

 当然だよね。リリが【ソーマ・ファミリア】でやっていけないことは誰にだって分かるし、そんな孤独な彼女をベルが見て見ぬ振り出来るとは思えない。

 

「……ヘスティア様とレオ様はよろしいんですか? 特にヘスティア様はリリのことを……」

 

「ふ、ふんっ……勘違いしないでくれよ? いくら嫌なやつでも、身寄りのない子供を放っておくのはボクの存在意義に関わるんだ。再就職先が見つかるまで、少し面倒を見てやろうと思っただけさっ」

 

 ヘスティア様も素直じゃないなぁ。ベルも彼女の頬を染めて顔を背ける様子に苦笑している。

 

「僕の方も問題ないよ。リリはもう同じパーティの仲間だからね。ちょっと部屋は狭いけど……」

 

「う……それは言わないでよレオ。これから僕らが稼いでもっと住みやすくしていくんでしょ!」

 

「新居を構えるという選択肢はないのか。これからもあの教会の隠し部屋なのか」

 

 ちなみに今の僕らはヘスティア様がベッド、僕とベルはソファと寝袋を交互に使って暮らしている。

 

 女の子のリリを床で寝袋なんてするわけにはいかないし、もう一つ寝袋を買ってソファはリリに明け渡すか。それかベッドの大きさを生かしてヘスティア様と一緒に寝てもらうとか……?

 

「ありがとうございます、ベル様、レオ様、ヘスティア様。そのお気持ちだけでリリは十分です」

 

 すでに僕らはリリが首を縦に振ってくれるものだと思っていたから、その返答に唖然とする。

 

「え……ど、どうして!?」

 

「これ以上皆様の優しさに溺れることが心苦しいのと……リリはまだ、【ソーマ・ファミリア】の一員ですから」

 

 リリは儚げな笑みを浮かべながら、肩の上からそっと背中に手を伸ばす。

 

「まだ【ソーマ・ファミリア】の構成員であるリリは、ベル様達のホームへは行けません。もしリリがベル様達のホームに通っていることがバレてしまえば、いらぬ火の粉が確実にベル様達に及びます。そんなことになってしまったら、リリは耐えられません」

 

「ぼ、僕は別にそんなことっ……ぁ」

 

 ベルはなおも食い下がろうとしたけど、何かを思い出したように止まり、僕らの方を見る。

 

 ベル1人が被害を被るだけなら彼は迷わずリリの手を引くだろう。でも家族に、僕と、なによりもヘスティア様に被害が及ぶのならば話は別だ。

 

【ソーマ・ファミリア】は中堅クラスの実力を持つと聞いた。襲われれば自分の身すら危ういのにヘスティア様を守るなんて到底無理だ。

 

「サポーター君、【ソーマ・ファミリア】脱退の条件は、いや脱退自体は禁止されているのかい? 君の主神は何て言っているんだ?」

 

「ソーマ様はこれと明言しているわけではないのですが……恐らく、大量のお金が必要になってくると思います」

 

「金かー……」

 

 また金の話なのか。

 

 つい最近お金の問題に首を突っ込んだばかりの所為もあり頭が痛くなってくる。

 

 しかも今回は借金の返済とは違って分割払いとか、そういう話には出来ない。それに僕らがお金を用意できたとしても彼女はそれを受け取らない気がする。

 

 これ以上負担はかけられないとか言うんだろうなぁ。

 

 ヘスティア様の話によるとファミリア脱退に関してはそのファミリアの主神次第だという。リリの言うようにお金で解決する神様もいれば全く取り合わない神もいるだろうとのこと。

 

 ミアハ様のところは借金が出来てから団員が居なくなってしまったと言ってたけど、きっと何も言わずに申し出を受け入れたんだろうなぁ。

 

 

「じゃあリリ、これからどうするの? また他の宿に、1人で……?」

 

「実は顔馴染みのお店……まあリリにとっては正確には違うんですけど、ともかく、気を許せるノームのお爺さんがいるので、そこでしばらくお世話になろうかと思ってます。あ、勿論働きますよ? なるべく変身も使わないで、ちゃんと認めてもらえるように努力します」

 

 ベルが不安そうに尋ねるとリリは明るい調子で答えた。

 

 とりあえず当てはあるらしい。リリを見る限り、そのお店の人は本当に信用できる人みたいだから一安心かな。

 

 

 

 

 

 そして主にヘスティア様の露店爆破の件で一通り話に花を咲かせた後、僕とベルは神様達と別れ大通りを歩いていた。

 

「エイナさんに相談するつもりかい?」

 

「うん。とりあえずさっきまで話してた【ソーマ・ファミリア】のことについて報告だけでもって思ってさ。情けない話だけど、僕じゃどうしていいか思いつかないし……」

 

「情けなくなんかないよ。俺もどうすれば良いかなんて全然分かんないし、ヘスティア様だって今はどうすることも出来ないんだ。ベルが情けないなら俺もヘスティア様も情けないってことになるよ?」

 

「そんなことないっ……けど……」

 

「まあ今はベルのおかげでリリに降りかかってた危険は去ってるんだし、焦らず考えていこう」

 

「……そうだね」

 

 リリの変身魔法はかなり珍しいものらしく普通見破れるものじゃないらしい。しかも万全を期して、ダンジョンに潜るとき一目が付かない所まで行く間、リリは冒険者のフリをして僕が彼女のバックパックを背負いサポーターのフリをするという方向でしばらくいくということが話し合いの結果決まっている。

 

 種族も違ってサポーターでもない風体をしていればさすがに感づかれることはないだろう。

 

 

 ……と、そうだ、魔法で思い出した。

 

 

「ベル、はいコレ」

 

 ポーチにしまっていた濃紺の液体が入った試験管をベルに渡す。

 

「これは?」

 

「【ミアハ・ファミリア】が開発した新商品のデュアル・ポーション。魔力と体力がどっちも回復する優れものだよ。雑用だけど開発の手伝いをしたからさ、一本もらったんだけど、ほら、俺は魔法使えないし」

 

「へえー凄い! ……ってまさかレオ、またお金とったりしないよね?」

 

 今度は試験管を手に取る前に動きを止めて警戒しながらこちらを見てくる。

 

「しないしない。もうバイト終わってるから安心していいよ」

 

「そっか、そうだよね。じゃあありがたく受け取るよ」

 

「ほい、10万ヴァリスね」

 

「酷い! 詐欺じゃん!! ていうかそんなにお金持ってないよ!?」

 

「はは、冗談だよっ」

 

「もーっ、レオはすぐそうやって僕をからかって!」

 

 ごめんよ、ベル。でも君があまりにもからかいやすいから仕方がないんだよ。

 

「ほらっ、もうギルドに着いたんだから落ち着いて―――って、あれ?」

 

 談笑しながらギルド本部へと足を踏み入れると、中途半端な時間だということも相まってロビーには空間が目立っており、すぐにエイナさんを見つけることが出来た。

 

 しかし僕が注目したのはそこではなくエイナさんの手前、受付窓口でエイナさんと話している女性の方。

 

「ベル、あの人……」

 

「何さっ? ―――って……ぁ」

 

 僕が見ている方向にベルも目を向け、そしてようやく気付いたらしい。

 

 そこにはアイズ・ヴァレンシュタインさんがいた。

 

 あちらの二人もベルとほぼ同時にこちらに気付き驚いたように固まっている。

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

 ベル、アイズさん、エイナさんが三者三様の体勢で動きを止めてしまっている。

 

「えっと、ベル……?」

 

 その空気に耐えかねずベルの方へ呼びかけると、ベルは表情を変えずゆっくりと回れ右をして……全力疾走を開始した。

 

「ちょっ、ベル!?」

 

「ベ、ベル君!? 待ちなさい!」

 

 僕とエイナさんの制止の声も聞かず逃げるベル。

 

 そうか、ミノタウロスから助けられた時の話を聞いたことがあるけど、こんな風に逃げたのか。そりゃアイズさんも落ち込むわ。

 

 その時、僕の横をアイズさんが通り抜けていった。てか速っ!?

 

 そしてベルに追いつくどころか追い抜き、止まりきれなかったベルの勢いをいなして抱きとめる。

 

 おお~。パチパチとアイズさんの華麗な動きに心の中で拍手を送る。

 

「何やってるの、キミは! いきなり走り去るなんて失礼でしょ!?」

 

「す、すいません、エイナさん……」

 

「ベル……これは情けないかな」

 

「うぅ~……」

 

 羞恥で顔を真っ赤にしつつもアイズさんを見て釘付けになる。そして彼女と目が合うとすぐに顔をそむけた。

 

「そ、それで、こ、これは、一体どーいう状況で……?」

 

「はぁ……ヴァレンシュタイン氏が、ベル君に用があるそうなの」

 

「え!?」

 

 なんでもベルが落としたプロテクターを直接届けに来てくれたらしい。

 

 三日前リリを助けたときに落としてしまったという話は聞いていたけど、助けてくれた人影っていうのはアイズさんのことだったらしい。

 

「……ベル君、後は二人で話をつけるんだよ。レオ君、こっちこっち」

 

「はいッス」

 

 エイナさんはベル君にアイズさんに聞こえないよう囁いた後僕を連れてその場から離れる。

 

「ま、待ってくださいエイナさん!? お願いですからっ、お願いですからまだここにいてくださいっ……! 僕、死んじゃいます……っ!?」

 

「何言ってるの、男の子でしょうっ。言わなきゃいけないことが沢山あるんだから、しっかり一人で伝えるっ。いい?」

 

「レ、レオ~……」

 

 半泣き状態でこちらに縋るベル。

 

 僕はそれに親指を立てて笑顔を返しエイナさんと共に本部の方へ離れていった。

 




ヘスティア様とリリは是非同じベッドで寝て、どうぞ(迫真)

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