人物設定や機体設定なんかはもう少ししてから書こうと思いますので、ヨロシクおねがいします。
――――――U.U0104年……地球圏統一国家とコロニー連合国の間に起きた巨大な宇宙戦争『ラグランジュ戦役』の終結から早2年………
地球と宇宙という2つの領域に分かれていた世界は、戦争の勝利者であるコロニー連合国によって統一が進められ始めていた。
それまで宇宙に住む民を軽視し、独裁的な政策を強行していた地球圏統一国家の方針から、地球・宇宙間の融和を主としたコロニー連合国の政策により、戦争による混乱は『表向きは』収束し始める。
しかし、戦争に敗北した地球圏統一国家軍の一部の将校・兵士、現在の融和政策に反対する反地球思想のコロニー連合軍離反者によるテロ行為は今も尚続いており、世界の真の統一は未だに果たされてはいなかった。
これら軍事的テロリズムに対し、コロニー連合国政府は旧地球圏統一国家軍の再編・統一を進めると共に、ラグランジュ戦役にて生まれた戦争需要後行き場を無くした傭兵及び民間軍事企業の雇用推進の為のネットワーク形成に乗り出す。
人型機動兵器『モビルスーツ』及びそれらの運用艦の整備支援及び多方面に渡る依頼あっせんを行えるシステムの構築により、公的な軍事的関与が行えない事態において小回りの利く『尖兵』を派遣することに成功することで、世界は『戦後の戦争』へと立ち向かっていく――――――
深い闇に覆われ、細かな岩片と瓦礫屑が漂う広大な宇宙空間………
生命の根源でありながら、命の息吹をまったく感じさせない死の世界に一隻の船が漂う。
艦橋部を中心としたメイン部分を白、主兵装であるビーム砲や対空機銃、人型機動兵器『モビルスーツ』を射出するカタパルト部分といった所を緑で塗装されたその戦艦………グリフォン級中型戦艦『シルファリオン』は、スピード感を宿したスマートなフォルムを広げるように、広大な宇宙空間を疾走する。
そのメインブリッジの艦長席に1人の女性が座っている。
10代後半から20代前半辺りであろうその女性は、滑らかな金色のロングヘアーを無重力に漂わせながら、目の前にあるモニターを見据えていた。
モニターに映る映像には、30~40代であろうガッチリとした輪郭を持った男性の姿が映し出されている。浅黒い肌と短く切りこんだ角刈りが特徴的な、厳つい容貌の男だ。
『………と言うことで、仕事を頼みたいというワケなんだが……引き受けてもらえるかな、メルティナ・クレシェントさんよ』
モニターに映し出された男性は、金髪の女性……『メルティナ』と呼ばれた女性に対し何かを依頼しているようだった。厳つい容姿ながら真摯な態度で語るその男性の言葉を、メルティナは自らの長い髪を指でクルクルと回しながら聞き続ける。
『依頼料はいつもどおり、そちらのサポーターを経由して送ろう。依頼遂行後の補給・修理も可能な限り廻せるようにしよう。どうだ、引き受けてもらえないだろうか?』
男の言葉を、メルティナはただ静かに聞く。ブリッジ内には彼女以外に数人の人物がいたが彼らは一言も発することなく場は沈黙に包まれる。
短くも長い、数秒の刻が流れる。
静寂が支配する空間の中、メルティナは髪をいじっていた指の動きを止めると、口元に微笑を浮かべながら見据えていたモニターに向かって言い放つ。
「………分かりました。その依頼、引き受けましょう」
『おお、そうか!やってくれるのか』
「はい。そちらには色々と世話を受けていますから、これくらいの厄介事は目を瞑って受けますよ。こちらも貴重なお得意様を失いたくはありませんから、ね」
『相変わらず物事をハッキリという女だな、君は。まぁそれが君らしいと言えばそうなのだろうが……とりあえず、頼むぞ【テウルギアス】』
「了承しました。民間軍事委託組織【テウルギアス】、そちら側の期待に沿えるよう全力で任務を遂行させてもらいます」
感謝の言葉を述べた男は、軍隊式の敬礼をメルティナに向かって行い、対するメルティナは敬礼をおこなう代わりに可愛らしい微笑みを男に向かって返す。その直後に通信は切れ、モニターは静かに閉じられた。
通信が終了したのとほぼ同時にメルティナは大きく息を吸い込む。肺に新鮮な空気が入り、体内を循環し終えた空気を口から大きく吐きだす。そしてメルティナは艦長席に備えられた小型のコンソールに付けられたボタンの1つを押す。
直後、メルティナの翠眼が大きく見開かれる。
「シルファリオン乗船者全員に伝えます!これより本艦は進路をEエリア 統一軍第27資源衛星跡に変更、移動する。これは我々【テウルギアス】に与えられた正式な依頼に基づくものである!到着予定時間は現時刻より3550セコンド、総員は即時、第2戦闘配置に付くように!」
高々と声を上げるメルティナ。艦内の乗組員達に細やかな指示を出していき、先ほどよりも小さく深呼吸をしながら、彼女はこの仕事を始めてから何度めかの台詞を静かに言い放つのだった。
「今日もまた、ハードな1日になりそうね………」
機動戦記ガンダムVERTEX
第1話 精霊を操りし者
「ぐっ…………!!」
青年、レイド・ラインベルグは今激しい苦悩の渦にその魂を沈めていた。一目見て美形と分かるその端正な顔を苦悩で歪ませ、蒼色の前髪がハラリと目の前に落ちようとも気にせず―――否、気にする余裕すらもたず、ただただ一点を見据える。
ざわつく空間、高まる鼓動、額から滴り落ちる汗、汗、汗………
高まり続ける緊張に今にも押しつぶされそうになりながら、レイドは震える指を少しずつ、少しずつ前へと進ませ、
「だぁりゃぁぁぁぁ!!!!」
刹那、おたけびにも似た叫び声と共に、レイドは風を切るように腕を前へと突き出した。
B A B A
「はい、それじゃあたしの番ってことで………っとこれであ~がり」
「へっ?……って、あぁぁぁぁ!!!??」
先ほどのおたけびを遥かに超えた絶叫を、談話室の中で上げるレイド。その手に持つ1枚のトランプのカードがクシャクシャになるくらい握り締めながら叫ぶ姿は滑稽である以外なにものでもない。
そんな滑稽な姿を、他にも和やかに時間を過ごす者がいる部屋の中で堂々と披露する同僚に対し、リーシャ・S・オルフィーナは肩肘を突きながら呆れた表情で見つめていた。
「あんたさぁ~……よくこういったトコで人目をはばかることなく叫ぶわよね~」
「これを叫ばずにいられるかぁ?!大体、いっつも最初は俺が勝ってたハズなのにいつのまにか逆転されるし……なんかイカサマでも使ってるんじゃないのか?」
「イカサマってのは失礼だよ~!あたしがそんな卑怯な手を1度たりとも使うような人間に見える?」
「グッ………だ、だけどよぉ………いくらなんでもUNO、ポーカー、ババ抜きと3連続でこんな結果になると疑いたくもなるっての!しかもポーカーじゃ初っ端からストレートフラッシュなんか出しやがって……てか、手札変更もナシでとかお前なんなの?!」
「ふっふ~ん、スゴいでしょあたしのきょ~うんは♪」
「いや、スゴいとかそういうことじゃなくって………あぁ、もういいや……なんかこのまま言ってもどうにもならなそうだし……」
自らが述べる反論に対してマイペースな姿勢を崩さずに受け流すリーシャのその姿勢に、返す言葉が見つからない……というより、返す気力を奪われたレイドはただただため息を付くしかなかった。
そのため息を境目に、絶叫を上げたレイドに視線が集まっていた談話室は再び穏やかな空気を取り戻していく。
ババ抜きを終えた後のトランプを片づけるリーシャを尻目に、レイドは手元に置いた冷めかけのコーヒーを静かに口に入れる。口の中にコーヒー特有の渋みがじんわりと広がるのを感じつつ、しかし渋みが強かったのか、手元から少し離れた所に置いたスティックシュガーを1本、コーヒーへと静かに注ぐ。
「しっかし、ここ最近は目立った事件もなくって平和そのものだよな~」
「随分と唐突な話の入れ方だね」
トランプを仕舞い、先ほど座った椅子へと戻ったリーシャの言葉を聞きつつ、レイドはコーヒーに再び口を付ける。今度は程良い味だったのか、コーヒーを飲む速度は速く、冷めていたこともあってかあっという間に飲み干してしまう。
「細かいトコは気にすんなよ。平和だってのは喜ばしいことだけどさ~……仕事がないほど平和すぎるってのも考えもんだよな~……」
「まぁ、確かに……最近は苦肉の策だったペットの捜索依頼や軍施設の水道管の工事なんかのジミ~な仕事なんかも来てないし……」
「こういうのってさ、『嵐の前の静けさ』とかって言わなかったっけ?な~んか起きるんだと思うんだよなぁ」
「それ、あたしも思ってた……こういう悪い予感って大抵……」
当たるんだよねぇ~、とリーシャが呟き掛けたまさにその時―――
談話室、否、艦全体に響き渡る警戒の旨を知らせるアラームが鳴り響く。その音が鳴り響いた瞬間、それまで和やかな時間が流れた場一転して緊迫に包まれる。
無論、レイドとリーシャの2人も例外ではない。
何気ない会話を繰り広げていた両者の表情は、どこにでも居そうな青年や少女のそれから、命のやり取りを覚悟した……一言で言い例えるとしたらそう……『戦士』の顔付きへと変わる。
『シルファリオン乗船者全員に伝えます!これより本艦は………』
アラーム音に続いて流れるメルティナの指示の声に、その場にいるものすべてが自らの持つべき仕事を行うべく足早に部屋を後にしていく。
ある者はブリッジへ、またある者は格納庫へ……艦内全体が騒然とする中、レイドとリーシャの2人も自らのやるべきことを行うべく席から立ち上がる。
「なんでこういう物騒なことってのは、和やかな会話をしていると急にやってくるのかなぁホントに」
「ウダウダ言ってても仕方がないでしょ。まっ、あたしはなんとな~くそんな予感がしてたけど」
慌ただしくなった艦内をただただ奔るレイドとリーシャ。
口調こそ先ほどとほぼ変わらぬものの、その身からは程良い緊張感が漂いつつある。
「御自慢の勘の良さって奴か?本当に、お前の勘とか運ってのはバカになんないよな」
「ま~ね。ダテにラグランジュ戦役を運良く戦い抜いていないわよ」
「それはまた失礼しましたっと………そろそろ着くな」
などと会話をしながら彼らが到着したのは、シルファリオンの中枢部分後部に存在するMS用格納庫のすぐ隣にあるMSパイロット用の更衣室兼控え室。
男女で分けられた更衣室にレイドとリーシャはそれぞれ入る。数分後、それまで軍服にも似たデザインをしたラフな服から、ボディラインに沿うように首から上以外の全身を覆い隠すアーマーを見に纏ったパイロットスーツ姿へと着替え、2人はそれぞれの頭のサイズに合う型のヘルメットをその手に、格納庫の中へと入る。
年頃の男女から一変―――シルファリオンの配属……もとい、民間軍事委託組織【テウルギアス】の専属のモビルスーツパイロットへと、その有様を変えて―――
格納庫の中は居住ブロックで働いていた重力制御が切れて、完全な無重力地帯へと変化していた。その空間内を、レイド達が着込んでいるパイロットスーツよりも機能性と耐久性を重視したノーマルスーツと呼ばれる宇宙服を着込んだ整備士達が慌ただしく作業を行っている。
レイドとリーシャは作業中の整備士の間を潜り抜けるように、無重力で支配された空間を漂っていく。
彼らの向かう先には2つの巨大なロボットが、その重々しいボディを支え固定するハンガーに固定され、静かに佇んでいた。
EUM-06 ブローバック―――それがこのモビルスーツの名前である。
地球統一国家軍、通称【統一軍】がラグランジュ戦役時に量産・配備していた主力モビルスーツであり、現在ではその後継機であるEUM-09 リローデッド の配備が進められていく中で旧型機となりかけているものの、その拡張性の高さや生産台数の多さ故に統合軍に接収されて尚改修が施され運用が続けられている傑作機である。
シルファリオンに配備された機体は、機体制御系並びに電子兵装系の強化が為された非制式型の近代化改修モデル『PMCカスタム』と呼ばれるものであり、それに加えてレイド機とリーシャ機はその運用戦術の差異により、搭載武装並びに特殊兵装が異なる仕様となっている。
自らの機体に辿り着いた2人は迷うことなくコクピットの中へ入ると計器類の稼働を始めていく。エンジンに火を入れていくのと並行して、暗闇に支配されたコクピット内が淡い光に次々と照らされていき、最後にメインカメラの映像を映し出す前方・両側部に連なる一体型のメインモニターが稼働する。
機体が完全に稼働したのを見計らい、レイドはそれまで抱えていたヘルメットを頭に被ると、パイロットスーツとのつなぎ目に接続し、接続不良が無いかを確かめるようにヘルメットを数度動かす。リーシャもまた、同様の作業を行っていた。
その時、メインモニター前方が格納庫の映像から瞬時にシルファリオンのブリッジ内の映像に入れ替わる。その映像には、ブリッジ内で指示を出しているメルティナの姿が映し出されている。
『2人とも準備は大丈夫?』
「あぁ、こっちはすでに準備完了だぜ」
「こっちも問題ないよ」
『そう……ならば、2人は先に現地に赴いて作戦を実行・開始に映って頂戴』
「ず~いぶん早急に仕事を行おうとしてるねメル」
『まぁ、ね。久しぶりの仕事ではあるけど、ちょっとばっかしハードな仕事でね……なるべく時間に余裕が欲しいのよ』
「ふ~ん………」
特に気にしないかのように、リーシャは言葉少なめにコクピット内の電子機器の確認作業を進める。
『ハードな仕事』など、モビルスーツの運用を行う時点でとっくに把握していたことであり、気にするだけ馬鹿を見るだけである―――というのが、レイドとリーシャの考えであった。
『とりあえず、大まかな内容は伝えておきます。依頼主は連合軍のローグ・ゴトウィン少佐。依頼内容は元統一軍系のテログループが秘かに建造しようとしている前戦争時の試作モビルスーツの製造パーツの奪取、もしくは破壊よ』
「ゴトウィンのオッサンからの依頼か……相変わらずあのオッサンはなかなかやりごたえのある仕事を送ってくれるぜ……」
『その試作モビルスーツがなんなのかは分からないけど、敵テログループは他のテログループに対する人脈に優れているらしく、仮にその機体が完成したとすればその完成データが広く流出し、テロ行為の激化が危ぶまれるわ。一応連合軍や他の同業者の方でも動きはあるし、こっちへの支援もある程度行われてるけど、とにかく油断だけはしないでね……』
「うへ~………ホンットにハードな仕事だねそれは……」
メルティナとの会話と共に送られる今作戦のデータを脇目で見ながら、茹だるような声を上げるリーシャ。
こちらの戦力は2機のモビルスーツと、加速力こそあれ火力はそれほどでもない戦艦が1隻に対し、敵はテロリストに墜ちようとも歴戦の戦士とこちら側の数倍の戦力―――数字上の戦力差とはいえ、ハードどころの話ではない。
だがそれでも―――レイドの目には余裕の色が滲みでている。自然と口からも、皮肉交じりの言葉が吐き出される。
「文句を言っても仕方がないだろ、リーシャ。俺たちの仕事は、昔っからそういったハードな仕事も行わなけりゃならないもんだろ?苦いコーヒーを飲みながら勝てないポーカーに挑み続けることを強いられるより、百倍マシってもんよ。な、リーシャ?」
「ハァ……そうだよね……ウダウダ言ってても何も始まらないよね……!」
メルティナから聞かされた依頼内容にテンションが下がっていたリーシャだが、それはタダの“振り”だったようだ。始めから覚悟は決まってたかのように高々とそう言うと、自らが搭乗しているブローバッグPMCカスタム(リーシャ機)を一歩ずつ前へと進める。同時に、武装用の懸架ハンガーから大型のガトリング砲とサブマシンガンを機体に装備させる。
レイド機も、その隣の武装ハンガーからコンパクトな形状の片手用ライフルと身を守るためのシールドを装備する。武装を装備した2機は前へとさらに進んでいくと、床部分に備えられたカタパルトに脚部を固定させる作業を行う。
やがて脚部の固定が行われると、グンッという鈍い音と共に機体がエレベーターによって上に運ばれていく。
数秒後、エレベーターがその動きを止め、淡く紅いランプが二本、直線状に並ぶ空間に2機は辿り着く。
そこはシルファリオンのモビルスーツ射出用のカタパルトユニット。
『1番射出口レイド機、2番射出口リーシャ機、共に配置に着いたことを確認』
ブリッジ内にいる専属の通信士による最終確認を伝える通信がコクピット内に入り、その音が狭い空間内を小さく木霊していく。それを聞くや否や、レイドとリーシャは静かに深呼吸を行い始める。
これから向かうは意地と信念と死と硝煙が漂う戦場………実力と一瞬の油断、そして運が生死の境を分けるその世界へ向かうための、最後の確認を心の中で静かに確かめるかのように、息を吸い、吐き、また息を吸い、吐き………
そして目を大きく、見開く。
「さぁてと………向かうとするか……!」
レイドがそう呟く。それに呼応するかのように、紅いテールランプのみが照らし出す暗闇の空間に光が一筋差し込んでくる。
それは前方のカタパルトハッチが開かれたという証。今まさに、モビルスーツという巨大な機械兵士が宇宙へと飛び立つ。
『前方の障害物の有無を確認。機体コンディション、オールグリーン。ブローバックPMCカスタム、レイド機並びにリーシャ機…………発射、どうぞ!』
「りょ~かい!リーシャ・S・オルフィーナ、ブローバック、行くよ!!」
「レイド・ラインベルグ、これより作戦行動に入らせてもらう……!」
高々と宣言したレイドとリーシャ、両者のモビルスーツがカタパルトにより高速で射出され、宇宙を切り裂くように前へ前へと突き進む。
完全なる平和が未だ訪れぬ混迷する世界に降り立ちた、モビルスーツという名の『精霊』と、『音速』の名を冠した方舟を保有し、不安定な世界を力強く生き抜こうとする者達。
彼らは自らをこう呼び、呼ばれる。
精霊を操りし者……【テウルギアス】と……
EPISODE1 END
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