ハイスクールDevil×Dragon×Dhuman 作:しにかけ/あかいひと
アーシアだから、侵食されないと思った?
…………甘いよ(白目)
「お嬢、最近お元気がよろしくないと伺いましたが」
最近はまってきた執事コス(燕尾服にモノクル)でお嬢の席の後ろで控えていた放課後の部活。木場と小猫ちゃんは用事があるようでこの場に居らず、今この場にいる部員達にショートケーキと紅茶が行き渡ったところで、俺は切り出した。
「ッ!? ……気が付いていたの?」
「気が付いたのは圭太と塔矢です。それを踏まえて改めて観察しましたところ、確かに物思いに耽る時間が増えた様に、感じられます」
あと、最近は自重してるからか、さっき圭太が言ってた様な胃痛のサインは見受けられなかった。やったね!
「あと、部長最近、鳥を見てると凄い形相になってましたし」
「こういうことを言うのは、下僕としてはありえないのかもしれませんが…………『悪魔の形相』とでも言うべきでしょうか?」
「あらあら部長。バレてしまいましたわね」
「…………ハァ。私もまだまだね。眷属や協力者に、ここまで気を遣わせてしまうなんて」
テーブルに着くハゲとメガネの援護射撃に、何やら困った顔で笑う朱乃先輩。どうも、彼女は事情を知っている様だが?
「話しておくべきなのかしらね? …………いや、話すべきなのね」
…………あれ、果てしなく嫌な予感。
前世から磨きに磨いた、傭兵としての第六感が、何やらよろしくないことが起こることを、これでもかと訴えていた。
「私にはね…………婚約者がいるの」
あ、これアカンパターンですやん。
◇◇◇
…………まあ纏めると。
・お嬢には、婚約者がいる。
・でも、結婚するのは大学を卒業してから。
・かと思いきやすぐに結婚せよとの両家からの圧力。
・家を継ぐ者としての義務は理解してるし、その婚約者との結婚も突っ撥ねる程ではなかったが、学校すら自由にならなくなるであろう今回の件にご立腹。
「まあ、悪いヒトじゃないのよ私の婚約者。女にだらしなくて眷属ハーレムを作る様な男だけど、まあそれだけで嫌悪感を持っていい理由にならないし」
「え、いや。流石にそりゃ嫌でしょう?」
現実にも、ハーレムは存在してるけど、自分も取り巻きの1人と化すとか、中々耐えられないことに…………。少なくとも俺は嫌です。
「貴族の結婚なんて、そんなものよ。愛がある方が珍しいわ。それに、今冥界にとって優先されるべきは、次の世代を作っていく純潔悪魔を増やしていくことなのよ。純潔悪魔同士の子供は生まれにくくてね、周りが焦ってくっ付けたがるのも理解できるのだけど」
…………あ、あー。
「そうでなくとも、グレモリー家はお兄様が魔王になってしまったから私が家を継がないと…………だから、理解できる…………理解できるのだけど…………」
バン!! と机を叩く音がした。
怒りに震えるお嬢が腕を振り下ろしたからなのは分かるんだが。
「約束、したじゃない!! 私がただ1人の『リアス』として見られる貴重な場所だから、大学を卒業するまでは自由にしていいって言ってたじゃない!! 契約違反だわ、悪魔としてそれはどうなのよッ!!!」
「「「「…………」」」」
勝手な我儘、とは言えないよなぁ。
だって、本人は納得済みだったわけだろう? しかも自分の立場を理解した上で。
だから、お嬢にとって学生生活ってのは貴重だったんだろうなぁ。多分、数少ない我儘だぜ?
「…………それで、ここのところお元気がなかったと?」
「…………それもあるわね。あと、この状況をなんとかひっくり返す手立てを探していたのだけど、どうしようもなくて」
ちょっと、あんまりじゃないかなぁ…………。
「ハァ、ごめんなさいね見苦しい姿を見せて。とにかく、そんな訳だからあなた達にも迷惑を掛けるかもしれないわ」
「部長…………いえ、リアス。この場でそんなことを思うヒトは居ないと思うわ」
「そうですよ部長! 部長の物分かりの良さに漬け込んだようで、俺は気に喰いません!」
「出来ることは少ないかもしれませんが、必要であればいつでも力になります」
「…………ありがとう、みんな」
ああ、仲良きことは美しき事かな。そんなこんなでグレモリー眷属の仲の良さを目の当たりにしたところで、俺は爆弾を落とす。
「『赤龍帝』は、ジョーカーになりますか?」
◇◇◇
『相棒。思うに貴様、己の肩書きの力を舐めてるだろう?』
いつも通りの晩御飯の後、訓練ルームに入ろうとした俺に、ドライグから声が聞こえかかった。
「舐めてるつもりはないんだけどな。だって、ドライグだろう?」
『…………質問を間違えたな。ああ舐めてるつもりはないだろう。だが、赤龍帝の肩書きが、どんな意味を持つのか、まるで分かっちゃいない』
うーん、そうでもないと思うけどな。だってほら、この間の堕天使ので鎧を展開したとき、大分怯えられたし…………多分そういうことじゃないかな?
『少し、認識が甘い。確かに、畏怖される存在である。だがそれ以上に、二天龍は三大勢力を衰退させた存在なのだ』
「…………あっ」
『今はまだ俺の本来の力全てを出し切れていなくとも、お前は今代の赤龍帝:兵藤一誠。衰退に追い込んだ前科を意図せずに持つ、最恐最悪の破壊者だ』
…………あー、うん。そこまでするつもりはなくても、向こう側がどううけ取るか分からんもんな。
『まあ、気持ちは分からんでもない。友であり雇い主、大恩人であるリアス・グレモリーのためなら、なんとかしてやりたいことも。かく言う俺も恩は感じているところだ、力を貸すのは吝かではない。が、立ち回り方は考えるべきだぞ』
「自重しないと、逆にお嬢が苦境に立たされるってことだもんね…………ごめん、『赤龍帝』舐めてた」
爆弾の後にお嬢が嬉しそうにしつつも困った様に笑ってた理由が分かったよ。確かに劇薬過ぎて使い所に困るわな、こんな野郎。
『本来なら謝るべきは俺なんだがな…………昔の俺が馬鹿をしなければ、こういうことを考えないで済んだのであろうに』
「まーまー。そうなったらそうなったで、会えなかった可能性が大な訳だろう? そこに至る被害については、まあなんとも言えないけど。こうしてお前が神器って形で俺の中にいてくれて、俺は救われてるんだ。反省はいくらでもしたらいいと思うけど、それを俺に謝る必要はこれっぽっちもないからね」
『…………そうか。なら、この話はここまでだな』
「うい」
とは言えしかし、せっかく使い様によっては役に立つ己の肩書きだ、今回のお嬢の問題に役立てるなら、使いたいところだ。ドライグもかなり乗り気だし。
そんなことを考えながら、ブシューッと訓練ルームの扉を開ける。
「
「え、えーと…………えいっ!!」
ブシューッ!! っと、扉を閉めた。
うーん、俺もお嬢のことを言えないらしい。どうにも疲れているのか、見えてはならないものが見えた気がした。
「なあ、ドライグ。どうにも俺は正気でないらしい。どうしたらいい?」
『奇遇だな相棒。俺も相談しようと思ったところだ』
ふむ、ドライグも疲れているのか。いけないな、結構こいつに頼りきりだったのかもしれない。
とりあえず、息を整えてもう一度、ブシューッ!! と訓練ルームの扉を開けた。
「姉、才能ある。このまま極める」
「え、えへへ。照れちゃいますよぅ」
……………………なにやってんの、マイシスターズ。
◇◇◇
くらりと倒れそうな身体を無視して事情を聞いたところ、恐ろしい事実が判明した。
「私も兵藤家の一員ですから、お兄ちゃんぐらいに強くなりたいんですっ!」
ぐっ! と拳を握って、憧れの目で見られるのはいい…………いいんだけど…………。
ぶっちゃけ言おう、アーシアは性格的に戦闘適性は底辺
「妹、姉のいうことを聞くもの。だから手伝った」
そしてドップリと俺に毒されている妹様が、お姉ちゃんのそんな願いを聞き入れないわけがなかった。というかドヤ顔がここまで映えるゴスロリっ子はまあ珍しいと思うよ!?
アーシアにはどうも、神と契約したり降ろしたりして、その力の一端を行使する、まさにシスターとか巫女とか言うべき才能があった様だ。試しにエーナ、
…………なあ、大丈夫かな? これ下手したら、この能力が発展してあたらしい神様とかになったりしない? ほら、丁度聖書の神様いないし、アーシアってば敬虔なシスターだし。
「でも我、基礎的なことだけ。戦い方、応用は兄が得意」
「お兄ちゃんも、手伝ってくれませんかっ?」
「 」
癒し系のマイシスターに、戦闘技能を仕込む? 戦いに関して節操無しな俺でも、自重という言葉はあるよ?
それに戦闘面でこれ以上アーシアに関わったら…………引き戻せないところまで行きそうですっごい不安。
だ、だがしかしっ! 妹からのお願いをスルーできる程、俺は薄情な兄ではないのだ…………ッ!!! ぐっ、コレが板挟みと言うヤツか!!!
「す、すぐに強くなるとかは無理だし、しばらくはエーナと一緒に基礎訓練を続けた方がいいと思う。こういうのは、日々の積み重ねがモノを言うからな。ほら、信仰も日々の祈りからだろ? そういうもんだ」
「成る程、分かりました! じゃあエーナちゃん、まだまだ付き合ってくれる?」
「もちろん」
…………ごめん、進行を抑えることしか出来ない俺を、許してくれ。
ドーム状になってる天井を見上げながら、俺は一筋の涙を零した。