ハイスクールDevil×Dragon×Dhuman 作:しにかけ/あかいひと
でもシリアスはいるよー。
修行の経過は順調である。
小猫ちゃんはいつの間にか仙術を身につけていた…………まあ納得の範囲内ではあるが。心臓の鼓動を乱される様な一撃は、仙術を少しでも齧ってないと対処のしようがないので、見事に必殺と言えるだろう。
圭太は神器無しだと負けそうなぐらい、徒手格闘に磨きがかかった。野性化している気はするが、野生児スキルが戦闘で活かせるのはユートという前例があるので、寧ろいいことだろう。
朱乃先輩は堕天使の力を解放してあろうことか擬似フォトンを使い出した。まあそう進言したのは俺なんだが…………その、俺よりもテクニック(グラール製魔法)を上手に使われると、才能の格差というものを突きつけられた気分になる。
塔矢はツインハンドガンを杖代わりに、『魔法を撃ち出す』スタイルを確立させ、母さんからおっそろしい魔法を習っては、引鉄1つで発動できる様に自分なりに試行錯誤を重ねて強くなっている。
お嬢は俺の教えるトンデモ魔力操作を身につけて、己の才能を活かす土台を完成させた。魔力の効率的な運用法、纏うという形の魔力の使用法での『滅びの魔力』は、さしもの俺もドライグがいなければ相手をするのは厳しい。本人きっての希望で、直接ライザーを倒したい様だが、余裕でOKをだせよう。
木場は、『魔剣創造』を『実際に鍛えた剣には劣る』レベルから『実際に鍛えた剣と遜色ない』レベルまで昇華させた。それに伴い判断、観察能力も鍛えたことで、本人の剣術センスもあり、圧倒的力量差、あるいは対策がない限り、この男は相手を完封できるレベルまで強くなった。
そんな感じで、日々の訓練も皆死に体になりつつも物にしていき、1週間もすれば兵藤家の空気にも慣れ、訓練が『疲れる』程度で済んでくる様になっていた。
現在、8日目の夜。皆で晩御飯を突いているところ。
ご飯は、母さんと兵藤シスターズが作っていた。俺が作っても良かったのだが、まあ俺が作るよりも栄養に関しても味に関しても上を行くから別にいいんだけど。べ、別に悔しいと思ってないんだからね!
なお材料調達は俺と父さんの仕事である。時には街まで降りたり、時には山の恵みを、時には山の獣を仕留めて、少しでも食卓が賑わえばいいなーと。
「今日も美味しいですわ、お母様」
「あらいやだ嬉しいわぁ。どんどん食べてちょうだいね!」
「太る…………ことはないでしょうが、戻った時には苦労しそうですわね」
「なんなら作り方も教えてあげるわ。まあ、大したことはしていないけどね」
「………お菓子も美味しいです」
「それ、我と姉の合作。えっへん」
「アマレッティって言うんです。良かったらまた、お作りしましょうか?」
「…………ありがとう、お願いします」
「…………なぁガキ共。癒されるよな」
「…………そうっすね」
「…………そうですね」
「…………気持ちは分かるけど、食卓の風景で癒されるとか、俺たちどんだけハイレベル」
「でも、こんなのもいいと思うよ。いかにも平和な風景って感じで」
「お、木場くん分かってるなー。あー…………こういう光景見てると、学生寮の寮長とかやりたくなるよな。こう……みんなで食卓を囲んで『いただきます』って言って」
「いーですね、それ!」
「部長あたりに言ったら、実現しそうですね。言っておきましょう」
「あはは…………」
…………少し、懐かしいな。
クラッド6での、リトルウィング社員と…………俺の『家族』と過ごしたあの日々を、彷彿とさせる光景だ。
「……………………」
元気に、してるだろうか?
泣いては、いないだろうか?
俺が死んでも、ちゃんと前を向いているだろうか?
死期を悟って、それをばらさない様に立ち回って、心配をさせない様にしたけど…………そのことで、あいつらは自分を責めていないだろうか?
死人に口無し。もう俺の声はみんなには届かない。
遺書は遺したけど、あんなんだけじゃ語り尽くせないほど、言いたいことはあったんだけど。
一言だけ…………一言だけ言えるのなら。
「…………幸せになってください」
届くはずのない言葉は、みんなの話し声の中に消えていった。
◇◇◇
そんな、セチメンになってしまったため、どうしても寝れなかった。
ダメだな、割り切っていたつもりなのに、思い出すと止まらない。
得体の知れない、焦燥感みたいなのが、咽喉もとから迫ってくるような、そんな気持ち悪さを押し込めるために、俺は男子寝室を出てキッチンへと向かい、冷蔵庫から水を出し、コップに注いで飲み込む。
「ぷはっ…………はぁ、くそっ」
取り出す、気持ち悪さは飲み込めたが、でもどうしようもない焦燥感みたいなのは消えない。らしくなくイライラしてきた。
「………どうしたの、イッセー?」
「ッ!! …………なんだ、お嬢ですか」
暗いから、誰もいないと思っていたリビングに、お嬢がいた。そうか、悪魔だから夜目が効くから、明かりはなくても大丈夫だったっけ。
「というか、お嬢こそどうしたのって話ですよ。…………まあそこにある資料とか見たら、大体のことは想像つきますけど」
「そうね。強くなってる自信はあるのだけど、まだ不安なのかしらね…………意味もなくこうやって、『レーティングゲーム』の資料を読んでしまって」
「それで気分が落ち着くなら問題ないですよ。ま、身体を休めるためにもちゃんと睡眠はとってくださいね」
「そっくりそのままお返しするわ。私達に付き合うのとは別で、貴方も鍛えているのでしょう?」
…………まあ、そりゃあ。鈍るし。
「それにしてもイッセー、訓練をつけるのも上手いけど、講義をするのも上手かったのね。所々で挟む座学、とても興味深くて面白いわ」
「お褒めに預かり光栄です」
「面倒見もいいし、もしかして将来の夢は、教師だったりして?」
このタイミングで、その単語は、少々胸に応えた。
「…………はは。そうだったら、良かったのに」
「……イッセー?」
グラール時代の、更にSEED事変の前。何も知らなかった『ショウ・ウォーカー』の将来の夢は『先生』だった…………気がする。
近所の子供の面倒をみるのが得意だった気がする。勉強を教えるのがそこそこ上手だった気がする。表面上では嫌がりつつもその実…………慕われるのが嬉しかった気がする。
まあ、何もかも全て吹き飛ばされてしまったワケだから、もう本当のことは何もわからないのだけど。
「ずっと昔…………何も知らなかった頃は、そんな夢を持っていた気がしたんですよ。もう、あやふやなんですけど」
「あ………その、ごめんなさい」
「気にしないでくださいお嬢。俺は今幸せですから」
たとえ、まともな夢を追うことができなくなる程歪められているのだとしても。
俺が幸せなのは、間違ってない。
「それに、口に出せて幾分か落ち着きました。申し訳ありません、捌け口にしたようで」
「それこそ気にしないでいいわよ。貴方にはこれだけ世話になってるのだし、その程度のことなら問題ないわ」
とは言え、それでは余りにも悪いので。
「じゃあ、今度はお嬢のお話でも聴きましょうか。眷属のみんなには話せないことも、協力者なら話せたりすることもあるかもしれませんし」
「うーん、じゃあお願いしようかしらね」
そこからしばらく、2人で自分のことや周りのこと、取り留めもないことを話した。
男女2人っきりなのに、色っぽさの欠片もないムードなのは、やっぱり互いにそういう対象として見れないからなのか。でも、この空気は嫌いじゃない。気付けば得体の知れない焦燥感も、なくなっていた。
「なんか、アレですね。お嬢と話してると、友達のノリで進むから楽しいです」
「あらありがと。私も、男友達はいないから新鮮で楽しいわ。まあ、普段もうちょっと自重してくれると助かるけれど、ね?」
「あはは……スンマセン」
この日俺に女友達ができた。うわっついた空気は全くないけど、こんな関係もありなのかもしれない。
悪戯っぽく笑う彼女の顔を見て、俺はそんなことを思った。
イッセーくんの将来の夢らしきもの…………あれ、そういや将来の夢が『先生』のヤツっていたよね?(確信犯)