ハイスクールDevil×Dragon×Dhuman 作:しにかけ/あかいひと
「なあドライグ」
『なんだ相棒』
「この状況…………凄くね?」
『ああ…………正直、兵藤家を舐めてた』
合宿12日目。実質最後の訓練日。
今までの総仕上げという形で、エーナ1/25をみんなに当てたのだが…………。
「うん、凄く調子がいいわ」
相手にしたエーナ1/25が
「うふふ……成果が出て嬉しいですわ」
エーナ1/25の腹部が焦げ付いたような貫通痕を残して横たわっていた。彼女の得意な雷系のテクニック、それもただの『ゾンテ』だろう。他にも色々傷が見られるが…………ほぼ一撃で決めたとみて良さそうだ。これは酷い(褒め言葉)。
「ふう、こんなものかな」
エーナ1/25の胸部に一本の悍ましい魔剣が。俺にとって凄い嫌なオーラを放っているところを見ると、アレは『龍殺し』である。…………マジか、そこまで来たのか木場よ。教えた身としてはとても嬉しいよ。
「……やりました」
猫耳がぴょこんと飛び出て可愛い姿とは裏腹に、その側で崩れ落ちているエーナ1/25の苦悶の表情の所為で恐ろしく見える小猫ちゃん。胸元を軽く突いただけに見えるが、寸勁と共に仙術による気の操作を熟すという超絶技巧な一撃…………この子怖い。
「んー、結構強くなったな俺」
そう軽く声をあげたのは圭太。フォトンクロー付き鋼拳にて殴打しまくったのか、エーナ1/25が見るも無惨なことになってる。戦闘中、ずっとエーナ1/25を手玉に取れる程の身のこなしと、そして隙を逃さない直感が、いい感じに高まってることを証明していた。
「全く、軽く言ってくれる」
苦労した様子を伺わせる割には、メガネのブリッジを押し上げる姿に余裕が見られるトウヤ。大魔術に相当する魔弾を、これでもかと乱射する派手な見た目とは裏腹に、エーナ1/25の思考を誘導して追い詰めていく戦いぶりはまさに圧巻だった。
…………というか、ウチの妹の見た目した遺体がゴロゴロ転がってて胸が張り裂けそうなの…………当のエーナは気にしてないんだけど、エーナ以外の兵藤家はみんな顔色を悪くしてた。
それにしても、である。
当初の目的は、エーナ1/25と『互角』である。
しかし、この様子から見て分かる通り、エーナ1/25を『圧倒』している。
ぶっちゃけて言おう。このウチの1人だけでもライザー&眷属を相手できるぞコレ。
「いや、凄いです皆さん。これなら多分、ライザーさん達もぶっちぎりで倒せます。よくぞここまで」
「ここまで来れたのはあなた達が、私たちを何から何までサポートしてくれたお陰よ。本当、ありがとう」
8日目の夜の不安そうな顔は微塵も感じられない。成長を経て、さらなる自信を手に入れたお嬢は、そう礼を言った。
他のみんなも、それぞれの目に自信の光を宿して、礼を言ってくる。
「いえ、サポートと言っても俺たちは助言がメインでした。偏にそれを成し遂げられたのは、お嬢達が今まで作ってきた下地と、厳しい訓練にもめげない根性と、それらを昇華させる才能があったからです」
本当、本当によくここまで…………ちょっと感動モノである。
「そんなわけで、もう俺たちから教えることはありません。ここから先は個人の領域。自分でその力を伸ばすなり、新たな力を得るなりして高めていけば、さらなる高みに登れるでしょう。残り1日半ですが、もうゲームも近いことですし、無駄な負荷はかけず、よいコンディションでゲームに臨めるように、好きなように過ごしてください。俺からは以上です」
『はいっ!』
この合宿の中でサマになった、教導官スタイルも、今日でお別れである。こういうのもいいけど、やっぱり俺は自分が戦うほうがいいしね。
…………嗚呼、みんな強くなり過ぎだ。摘み食いしちゃいそうになるよ。
◇◇◇
さて、そんなこんなでとうとうやってきたこの日。非公式のレーティングゲーム。リアス・グレモリーVSライザー・フェニックスである。
『リアス・グレモリー』の協力者という立ち位置故に、観戦席へのお誘いをいただいたので、まあそちらには行くが…………最後の激励という形で、みんなの待機場所であるオカルト研究部室にいた。
なお、ウチの家族は表向き普通の家族なので観戦席で観るわけにはいかなかったのだが、そこは流石のお母様。既に舞台の空間を捕捉し、観測できる準備を整えていた。今頃スクリーンの前で家族揃って観戦準備をしているだろう。
「──────さて」
皆がいつもの配置で座っている中で、俺だけが立ち上がり、みんなを見渡す。
ゲームまで、残り15分。最後の挨拶を。まあお別れじゃないんで悲壮感なんてないけど。
「お嬢の貸し1で、僭越ながら鍛えさせてもらいましたが…………みんな、とても強くなりました。まあその辺りの話は合宿の時にもしたので割愛ですね」
少しだけ笑いをとって、もう一度顔を引き締める。
「今回の相手は不死鳥。プロのレーティングゲームプレイヤーで、実質無敗の男、ライザー・フェニックス…………まあ普通なら怖気付く様な相手だとは思いますが…………俺らの訓練を切り抜けたみなさんなら、そんなことありませんよね?」
力強く頷くのを確認しながら、俺は笑った。
「ならば、声を大にして言いましょう……『
死なないだけで最強になれるなら、誰も苦労していない。まあライザー・フェニックスがそれだけとは全くもって思わないけど、その強さのベースになってるのは間違いなく『不死』だ。俺から言わせれば、そんな不安なものをよくベースにできるなと言いたいところだが…………まあ虚弱故の愚痴になりそうなのでここまでだ。
「本当ならば、俺もついて行きたいところですが…………まあ、それは寧ろ皆のプライドが許さないでしょうし、遠慮しておきます。だから俺が最後に言う言葉は」
息を吸い込んで、激励を。
「勝ってください」
それなりの声量を伴って放った言葉は、妙な重さを持って広がる。
それぞれの目を見て……分かりきっていたことではあるが、もう大丈夫だと確信する。
「以上です。では、存分に」
一礼をして、部室を出る。
「よろしいですか、兵藤様」
出たところで待っていたのは、グレイフィアさん。まさか彼女が、俺を観戦席に連れて行く係だとは。
「ええ、もう大丈夫です。お願いします」
「分かりました。それでは───」
下から現れる魔法陣の光に包まれながら、
「(…………胃、保つかなぁ?)」
御偉方に囲まれるこの後のことを想像し、軽くお腹をさするのだった。
◇◇◇
「私からも…………と思ったけれど、まあ要らないわよね」
苦笑と共に漏らされた彼女の言葉。無論、とでも言わんばかりの眷属達。
「先に言っておくわ…………ごめんなさい。私の我儘に、みんなを突き合わせて。ああ、分かってる。気にしていないことは分かってるわ。でも、これはケジメよ。大目に見て頂戴」
ザッ、と立ち上がる彼女は、その美貌を鋭いものに変えて、声を張り上げた。
「なにがなんでも勝つわ。この戦いだけは、負けて得るものがあるなんて戯言は吐けない。私の我儘に突き合わせたあなた達や、私達を鍛えてくれた我らが友のためにも…………絶対に、絶対にッ!!!」
部室の魔法陣が光り、転移する。
場所は異空間、彼らの学び舎『駒王学園』のレプリカの、オカルト研究部室。
『皆様、この度グレモリー家、フェニックス家のレーティングゲームの審判役を担うこととなりました、グレモリー家の使用人グレイフィアでございます。我が主、サーゼクス・ルシファーの名の下、ご両家の戦いを見守らせていただきます。どうぞ、宜しくお願い致します』
レプリカの校舎のスピーカーから、審判の声が響く。
簡単な説明の後、戦いの始まりを告げるチャイムが鳴った。
「部長…………
眷属皆が立ち上がり、代表として女王:姫島朱乃が、王に伺いを立てた。
「立ち塞がる障害は……己の全力を持って消し飛ばせッ!!!」
「「「「「承知ッ!!!」」」」」
後にその名を裏の世界中に轟かす最高峰の戦闘集団、リアス・グレモリーとその眷属の、記録に残らない戦いが始まった。
さーて、どっちが勝つかなー(棒)