ハイスクールDevil×Dragon×Dhuman 作:しにかけ/あかいひと
…………リメイク前のライザーさんがカッコ良かった所為だちくしょう。
「兵藤くん…………君はリアス達に、何をしたんだい?」
更に凍った空気の中、笑みすら消して魔王が俺に問う。
「鍛えただけ…………というのは納得されないでしょうし、じゃあ軽く説明しますね」
胃痛も大分マシになり、みんなが活躍する様を頼もしく感じていたのか、気分もいいので説明することにした。
「ご存知かとは思いますが…………彼ら彼女らは才能や潜在能力の塊であり、努力することを厭わないヒト達でした」
「ああ、そうだね」
「そんでまあ、俺は裏技を知っていたわけですよ。才能があり、その才能について把握していて、それなりの土台が整っているという条件下でのみ、修行行程を大幅に短縮させるというね」
これは前世で俺が無意識に取っていた訓練法であり、それに目をつけた家族である天才が体系化したマニュアルなのだが。まあその内容の全てを馬鹿正直に話すことはしない。
「まあ言わば………順当に鍛えていけばいつかは辿り着く境地に、無理矢理押し上げた様なものです。とはいえ2週間という短い期間ですので触りだけだったんですが、うまくいってよかったです」
この訓練法の難点は、その先の方向性を固めてしまいかねず、可能性を狭めてしまうことである。みんなの未来を潰すわけにもいかんので、そのギリギリのラインを攻めたわけだが。
「……凄まじい手腕と言わざるをえないよこれは。言ってはなんだが、リアスと朱乃くん以外は精々が中級悪魔レベルだと思っていた。だかこれはまるで…………」
「上級悪魔の様、ですか?」
「下手したらそれ以上だ。ファルビウム辺りが君を見つけたら、何が何でも眷属にしようとしていたぐらいには」
「は、はぁ…………」
ファルビウムというと、現魔王アスモデウスだったか? 褒められてるのは分かるが、例えの内容がイマイチ分からない。
「まあなんにせよ本職には敵いません。俺の知ってる教導官さんや教官さんは、才能がなくても抉じ開けて押し上げていた様な人達でしたし…………。あと俺の専門はやはり直接戦うことですから」
特にチェルシー師匠とネーヴ先生は凄かった。ネーヴ先生からは直接教わったわけではないが、ただの助言一つで俺の戦闘効率を20%押し上げたし、チェルシー師匠に至っては器用貧乏だった俺を抉じ開けて押し上げた張本人である。
とはいえ今ので驚かれるのは少々心外だ。確かにハゲにメガネに小猫ちゃんも、確かにビックリするほど強くなった。
「でも、今回1番笑えないのは…………お嬢と木場なんだよなぁ」
申し訳ないが…………ライザー・フェニックスが、ゲーム後壊れていないか心配である。そうならない様に祈っとこう。
『(誰に祈るんだ?)』
「(この世界で俺が唯一信じる神様は、エーナだけだよ)」
龍神に祈るしかないとは、世も末だなぁと思いながら、俺は観戦に意識を戻した。
◇◇◇
「……少しマズイな」
拠点の生徒会室にて、ライザーはそう言った。
今回のゲームは、制限時間が設けられており、制限時間が訪れた際、優勢な方…………より眷属の残った方が勝者となる。
想像以上に強くなっていたリアスの眷属に、一歩間違えれば己ともう1人以外脱落する怖れすらあるのでは、と冷や汗をかく。
故にライザーは決断した。
「お前たち、今より短期決戦に持ち込むぞ。俺はリアスと直接勝負を着ける。お前たちは勝負の決着が着くまで、リアスの眷属に邪魔されない様に抑えておいてくれ」
『承知しましたライザー様』
慢心を捨てたライザー。しかし、本来なら間違いではない指示が、この場に限り最悪の失態と気がつくのは、そう遠くはないだろう。
「……………………」
嫌な予感を拭えない彼は、そのイメージを振り払うかの様に頭を振り、立ち上がった。
敵の王、リアス・グレモリーとの決闘を取り付けるために。
◆◆◆
『みんな、良く聴きなさい。流石のライザーも焦ったのか、短期決戦に持ち込む様よ』
『あらあら。では部長、どの様に?』
『おそらくライザーは、私と一騎打ちするつもりだわ。勿論私はそれを受ける。あなた達には、私達の戦闘を邪魔されない様にライザーの残りの眷属が襲ってくると思うわ。注意すべきは『爆弾王妃』とライザーの妹であるレイヴェル・フェニックス』
『分かりましたわ。では、現在おそらく体育館で虎視眈々とトーヤくんと小猫ちゃんを狙っている『爆弾王妃』は、私が』
『レイヴェル・フェニックスさんは、僕が相手をします』
『…私とトーヤ先輩は、朱乃先輩が来るまで耐えます』
『んー、じゃあ俺は運動場の方に気配があるんで昇格せずにすぐそっち向かいます』
『懸念材料があるとすれば、向こう側はフェニックス。『フェニックスの涙』を持っていると見た方がいいわ。特に持つと思われるのは、『爆弾王妃』ね。朱乃に小猫にトーヤ。くれぐれも油断しないように』
『『『了解』』』
『では、勝ちに征くわよ!』
◆◆◆
「何かを成し遂げた瞬間に、獲物は1番隙だらけになっている…………けどその様子を見るに、あなたたち相当戦い慣れてるわね」
体育館を出た2人に襲いかかった、攻性魔力。その対処に切りたくない手札を切らされた塔矢は、空よりふりかかった声に、背後にいる後輩を庇いつつ、苦い色を載せながら答えた。
「いや、禁じ手を切らされたのだから、油断していたに違いない。流石は『
翼を広げ、宙に浮く魔導師風の姿をした女性。『爆弾王妃』の二つ名を持つライザー・フェニックスの『女王』ユーベルーナ。
「……その二つ名、センスが無くて好きではないのよね。まあいいわ。私の役目は足止め。特に、グレモリー眷属の切札に違いないあなたは、ライザー様の元へは向かわせない」
「成る程、そう来たか。…………だが、」
塔矢が言葉を区切った瞬間、彼女を前面から襲う圧力。飛ばされ、意識を持っていかれそうになるも、持ちこたえて地上に降りる。
前を向けば、塔矢の後ろで拳を振り切っていた小猫が、無表情ながら青筋を立てて怒っていた。
「……心外です。確かに地味ですが、私もそれなりに強いです」
ユーベルーナは思わず自分の常識を疑った。
魔力の動きはなかったと、その道にそれなりに通じている彼女は断定。しかし、もし小猫が拳を振り切って彼女を攻撃したのならば…………まるで漫画染みた、拳圧を飛ばすとか言う不条理極まりないことをやってのけたことになる。
「と言うか、基本的に戦いは地味に立ち回る方がいいです。だから、派手なトーヤ先輩を切札扱いするのは納得がいきません」
「目をひいて意識をそらせる利点はあるぞ小猫ちゃん。そも、派手になりたくて派手になったわけではないのだがな…………まあいい」
苦笑しつつ塔矢は銃を構える。
「とは言えこちらからすれば願ったり適ったり。何故ならば、このゲームにおける切札は、俺や小猫ちゃんではなく、それ以外の誰かだからだ。無為な時間を、過ごさせてもらうぞ『爆弾王妃』」
そう言って銃より放つ雷撃は、見当違いの方向…………上空に向かって放たれた。
すぐには自分に影響を及ぼさないと踏んだ彼女は、己の魔力を操作し、目の前の2人組に向けて放とうとした。
が、
「うふふ……『ラ・ゾンテ』」
丁度頭上より落とされる雷。
「グガ……ァッ!!!?」
全身を駆け巡る電気の暴力に身を焦がす彼女は、突如現れた気配に意識を向け、愕然とする。
片翼は、悪魔のソレ。
しかしもう一つの片翼は……漆黒の翼。
「な、ぁ……!!?」
「威力は調整しましたから、麻痺にはなっていないでしょう? ……ああ、この翼が珍しいのですね」
まるで天使の翼を宵闇に染めてしまった様なそれは、堕天使である証明。
「い、『雷の巫女』……まさかあなたは!!」
グレモリー眷属『女王』姫島朱乃は、苦痛と驚愕に歪む彼女の顔を見下ろして、誰もが見惚れるような笑顔を浮かべた。
「ええ、つまりはそういうことです。そんなことより、もっと遊びましょう『爆弾王妃』。おそらく『フェニックスの涙』も持っているのでしょうし、長く楽しませてくれますわよね?」
◇◇◇
「よぉ木場! 加勢に来たぜ…………って、必要なかったか」
運動場。重要な場所故にグレモリー眷属は『騎士』木場祐斗を配置し、フェニックス眷属は『騎士』『戦車』『僧侶』をそれぞれ1名配置していた。
さしもの祐斗も、その数は捌ききれないだろうと思い、意気揚々と運動場まで飛んで向かった圭太がそこで見たものは。
「やあケータくん。悪いけど、ちょっと本気出しちゃった」
見渡す限りの魔剣の群れ。地面より突きあがった数多のソレが、今はもう姿の見えないフェニックス眷属を血祭りにあげたことは、圭太には理解できた。
「ま……まだ終わってませんわよ…………!!!」
否、1人だけまだ息のある眷属がいた。
ライザー・フェニックスの妹であり『僧侶』。レイヴェル・フェニックス。
「流石は不死鳥…………と言いたいところだけど、降参してくれないかな? 僕は、女の子をいたぶる趣味はない」
「五月蝿いですわ……!!! 私はフェニックス、これしきのこと……ッ!!!」
胸部から突き出た魔剣を掴み、如何にかしてソレを抜き、反撃に出ようとする彼女を見て、祐斗はその顔にさらなる哀れみの色をのせて宣言した。
「無駄だよ…………フェニックスは、己の体を焼いて再生する。君を貫いたその魔剣は燃焼を封じるものだ。銘こそないけれど、不死鳥の轟炎を封じられる程度には、鍛えられている」
貫かれている故に、傷を燃やせず。
剣を溶かそうにも、剣自体が炎を寄せ付けぬ故に上手くいかず。
「こんなことがあってはならないのです……!!! 不死すら殺してしまえるものがあることなど、あっては……ッ!!!」
「そう………」
祐斗がその目に影を落としたその瞬間、彼女を貫く魔剣の根元が斜めに切れ、地に足を着けていられなかった彼女が地面に墜とされ、
「なら、終わらせた方が貴女の為か」
「なにを───────」
首の裏を、剣の柄で強打。彼女は、その衝撃に意識を持っていかれ、気絶した。
「……顔に似合わずエグいなぁ木場」
「不死鳥が相手じゃなかったら、ここまで苦痛は与えなかったんだけどね…………」
気を取り直した彼らは、新校舎の屋上を見上げる。
「
「いや、まだ『兵士』が2人、『騎士』が1人いる。部長の邪魔をされても困るし、探しに行かないと」
「だな」
2人は、己の仕事を全うするために、もう一度動き出した。
◇◇◇
時は少し逆戻る。
「よく来たリアス。一騎討ちの誘いに乗ってくれて、感謝する」
「ええ、こちらこそ」
ライザーの申し出を受け、リアスは新校舎の屋上へと、赴いていた。
「次に謝罪を。俺は君達を舐めていた。僅か2週間の間に、君達は余程の地獄を見たらしい」
「……まあ、見たと言えば見たことになるのかしら? まあ、それもこれも、貴方を倒すため、なのだけど」
そしてリアスは、片手を掲げ魔力を操作。
すると、屋上全体を、薄い紅色の結界が覆う。
「……これは?」
「単なる結界よ。私の眷属も、貴方の眷属も入って来られないようにする為のね。勿論私も貴方はここから出ることはできない」
「まあ、いいだろう。いくら強くなろうとも…………なんて慢心はもう吐かない。だから、俺たち以外の誰かがやってくることができないのは、俺にとっても利点だ」
「そう…………ねぇライザー?」
迷った様に、リアスは彼に問う。
「どうして、貴方まで? 確かに貴方は女好きでハーレムを作る様なヒトだけれど、約束を破る様なヒトではなかった。どうして?」
「…………どうして、か」
少し躊躇ったように目を瞑った後、ライザーは再び目を開けた。
「リアス。君にも家を継ぎ、冥界に貢献する覚悟はあるはずだ。俺にも、その覚悟があっただけだ」
「…………続けて」
「今の体制に変わり、レーティングゲームが流行することで、我がフェニックス家の力は増し、財政は潤った。ある意味では、我らの時代が来たとでも言うべきか。しかし、それでも我らは、『元72柱』の悪魔の家の一つでしかないのだ」
苦しさを吐き出す様に、ライザーはさらに言葉を重ねる。
「今の冥界は、一見現魔王様達によって回っている様に見える。しかし俺は『フェニックス家』は転落し、冥界もこれ以上に衰退するのでは、と危惧している」
「……え?」
「現体制に入ってから、我がフェニックス家は『現魔王派』だ。何せ、環境のお陰で力を得たのだからな。しかし、それだけだ。力を得ても、富を得ようと、冥界を回す側にフェニックス家は周れない。『大王派』達の老害が、未だに政治的主導権を握っているからだ。成り上がり者を許容できる程、彼らの頭は柔らかくない。…………なあリアス、冥界の主要な立場に就けない家が、いつまでもやっていけると思うか?」
「…………」
「そこで俺は、何故大王派が体制の変わった社会でも力を握れたのかを自分なりに考えた。…………『団結』だ。大王派達は、互いが密に関わっている故に、纏まって動けるのだ…………古いしきたりにしがみ付くことを許されるまでに。しきたりは確かに大事だ。しかし、古い物にしがみ付いていては、現状維持はできても、発展は望めない。今冥界に必要なのは、他勢力に脅かされることがない様に復興し、発展することだ。変わらないといけないんだよ。でも、老害共はそれを分かっちゃいない」
「……それと、今回の約束破りと、どういう関係が?」
「…………現魔王派も、力を集めて寄り添うべきだ。それも早急に。彼らを排斥、とまではいかなくとも、大王派のなすがままにされることがない様にするべきだと、俺は思った。…………だから周りの空気に乗っかったんだリアス。これで、君に嫌われることがあろうとも、家を、冥界を、君を救う一歩になると信じてね」
「……少しは、言ってくれたら相談に───────」
そこで、ライザーはリアスの言葉を遮る様に、己の身体から炎を巻き上げた。
「ダメだ、同情してくれるなリアス。俺は、正しいのかも分からない己の考えを押し付けて、君との約束を破った嘘つきだ。だから遠慮なんてしてくれるな。殺す気で来い、リアス・グレモリーッ!!!」
襲いにかかるライザーを見て、リアスは思う。
ここで迷ったまま戦うことは、ライザーに失礼であると。
故に、自分も己のエゴを押しつけることを決めた。
「分かったわ…………だから遠慮無く、私も私の我儘を押し通させてもらうわッ!!!」
彼女の身体から、昏いオーラが立ち上る。
彼女が母より受け継いだ『滅びの魔力』。触れるだけで消し飛ばされる、究極の攻性魔力。
「オラァァァァアアアアアッッッ!!!!」
「ハアァァァァアアアアアッッッ!!!!」
勝負の開始を告げるのは、双方の拳がぶつかり合う音。
押し勝ったのはリアス。拳に纏った滅びの魔力が、ライザーの拳どころか身体の左半分を消しながら吹き飛ばす。
しかしこの程度ではフェニックスが落ちることはない。豪炎を巻き上げながら、ライザーは身体の左半分を取り戻す。
「………成る程、恐ろしい。今の一撃は、死を覚悟した」
「この程度で驚かれては心外よ」
そう言って彼女は右手を掲げ、指を鳴らす。
すると、結界内に紅色にも、白色にも見える淡い魔力の粒が降り始める。
「これは…………?」
「先に言っておくわ。これはそれ一粒一粒が滅びの魔力。名付けて『
その言葉を真実と裏付ける様に、粒の一つがライザーの腕に触れ、消し飛ばす。
「グッ……まさか!!?」
「消耗戦よライザー。先に貴方が力尽きるか、私の魔力が底をつくかッ!!!」
追撃するべく振るわれた腕より、さらなる滅びの粉雪がライザーを襲う。
一粒一粒が必殺級。それでいて込められた魔力自体は見た目通り。
分析をしつつもどうしようもないライザーは、身体の至る所に穴を開けながら、持っていかれそうになる意識を、必死で繋ぎとめようとしていた。
確かに身体は再生する。しかし、常時身体の何処かが欠損していれば、攻撃どころか、動くことすらままならない。
(成る程…………これ以上ないフェニックス対策。流石だ、リアス)
それでもライザーは前に進む。
己のエゴを貫き通すために。
◇◇◇
ボロボロになった屋上。
横たわるのはライザー。
それを見下ろすリアス。
復活する気力が尽きたのか、ライザーは穴ぼこだけの身体のまま、見下ろすリアスに言葉をかける。
「……降参だ、リアス。お前は強かった」
「…………ええ、ありがとう」
ライザーの投了と共に、ライザーの脱落と、リアスの勝利が放送で伝えられる。
初のゲーム、初の勝利。
それにしては、些か味が苦いものだと、リアスは空を見上げながら、そう思った。
さてさて、結局どうなってしまうのかしらん?