ハイスクールDevil×Dragon×Dhuman 作:しにかけ/あかいひと
サジ君同様魔改造済み!
「…………なぁイリナ」
目的である駒王町のとある一軒家を目指す最中、仕事のパートナーであるゼノヴィアが、不安そうに私に声を掛けてきた。
「どうしたのゼノヴィア?」
「……本当に、お前の友人だという件の赤龍帝は、信頼できるのか?」
「うーん、心の安寧的には信頼できないわ。本人の人の良さと実力は信頼はできるけど」
下手をしたら死ぬかもしれない。そんな覚悟を持って今回の任務…………『
「信頼できないのか!!?」
「まあね。常に想定外を引き起こす様な出鱈目の塊を、信用しろって方が無茶だわ」
刀による裂傷を、傷で開いた部分を『傷を負った』という事象ごと切り取って接合するなんて力技ができるし思いつく様な人間を信頼できるものか。
というか、力技のみならず、あの兵藤一誠という人間は、問題を斜め上に解決していく嫌いがある。例えば『かなり距離のあるA地点まで移動しろ』という問題に対して、普通なら交通機関を使うところ、『走る』『飛行機を自作して飛ぶ』『距離を斬る』みたいに、回答になりえない回答を提示、実行する。走るとか、交通の足を自作するのはまだ百歩譲って良いとして、距離を斬るってどういうこと? 今でこそ私も近距離ならできるけど、日本からバチカンの距離でそれをやってのける彼は、かなりのバグキャラだ。
「だから、心を強く持ちなさいゼノヴィア。何があっても平常を保てる様に…………そうね、事前に法術が施された聖書を、5回ぐらい読み直すといいわ」
「い、一節を読むだけで心を落ち着けさせるあの法術仕様の聖書を!?」
だってそのぐらいしないと、胃痛でやられちゃうわよ?
「ま、まあ良い。人格と実力は信頼できるのだな?」
「それは勿論! 見た目に騙される人も多いけど、彼程のお人好しは滅多に見ないもの。まあ、お人好しの度が過ぎて方々に彼が助けた人がいてちょっぴり厄介だけど」
かく言う私も、そんな助けられた人の1人だったりするのだから、笑えないんだけれど。
「あと実力に関しては…………そうね、おそらく3番目よ」
「それは、人間の中でということか?」
「違うわ。黙示の龍帝、無限の龍神を含めたランキングよ。真面に動く戦力に関しては、実質トップね」
「それは………若くして教会の最強剣士の1人として名を挙げられるお前ですら到底及ばないバケモノ、ということか? 些か信じ難いのだが…………」
ゼノヴィアの言うことも分かる。何故なら私は、天界のシステムを狂わせる激毒とも言える情報を握りつつも、システムへの影響というデメリットと私の教会の戦士として握っておくメリットを天秤に掛けられて、教会にいることを望まれた規格外なのだから。それでも疎まれたりしてるけれど。
「まあ本人を見た方が早いから、後回しにしましょう。とにかく、くれぐれも問題行動を起こさない様に! そうでなくても例のアーシア・アルジェントさんの件でイッセー君を怒らせてるわけだし、慎重によ!」
「あ、ああ」
さて、駒王町はまだまだ先だ。色々とロクでもないけど、最高の友達と久しぶりに会えることに、不謹慎ながらも待ち遠しく思いながら空を見上げた。
◇◇◇
「…………なあイリナ」
「なぁにゼノヴィア」
「…………コレが、『普通の』一軒家か?」
「え、それ以外にどう見えるの?」
「この、下手をすればバチカンの中枢よりも護りが敷かれているこの家が普通だと!?」
「…………? ああ! そういうことね」
一瞬何を言ってるのか把握できなかったけど、確かに普通の家と比べたらちょっとだけ守りは硬いわね。
まあ、そんなゼノヴィアの魂の叫びは置いておいて。記憶を頼りに辿り着いたとある一軒家。ついこの間空けたらしいんだけど、来客用で残している久しぶりの兵藤家宅だ。
「まあおじさんおばさんも良い人よ。安心して」
「あ、ああ……とりあえず安心─────」
「ただおじさんは帝釈天の直弟子で、おばさんが深淵に片足突っ込んでる魔法使いで、イッセー君に似たオーラしてる妹のエーナちゃんがいるけどね」
「人外魔境なのか此処はッ!!!」
うーん、強ち間違いじゃないからなんとも言えないわね。
「まあいいじゃない。こんなファンタジーのごった煮みたいな家、そうそうないわよ? 兵藤家と敵対するつもりはなくても、須弥山や魔法結社とは可能性がゼロではないわけだし、慣れよ慣れ!」
「そ、そうだな…………ふぅ、ふぅ」
ん、ゼノヴィアの息が整った所で、インターホンを鳴らす。
『はぁい。あら、イリナちゃん! 待ってたわ!』
「お久しぶりですおばさん! この度は本当にありがとうございます!」
『いーのよー水臭いわねー。ささ、鍵は開いてるから2人とも上がってちょうだい!』
「はぁい!」
鍵が開いてるらしいので、彼女と一緒に玄関を開けると…………
「「「「いらっしゃいませーっ!」」」」
おばさんと、イッセー君と、エーナちゃんと…………なんと、アーシアさんまでお出迎えしてくれた。
◇◇◇
嬉しいことに、私達が来るからとホームパーティーの準備をしてくれていたらしい兵藤さん達。イッセー君が私とゼノヴィアの好みを聞いてきたのはこのためだったのか。
それはそうと、である。
私にはつけなければいけないケジメが。
「あの、アーシアさん」
「あ、はい。なんでしょう?」
う、ううっ。事前に追放した側であることは聞いているはずなのにこの笑顔…………なんだか、自分が腐ってる気がしてくるわ…………。
「蒸し返す様で悪いのだけど、教会追放の件、本当に申し訳なかったわ。ごめんなさい」
「あ、頭を上げてください! あのことも試練だと思えば耐えられますし、」
そこで彼女はテーブルの上にせっせと料理を運ぶイッセー君とエーナちゃんを見て、
「今では、『家族』がいます。私には勿体無いぐらい、今とても幸せです」
「…………そう、良かったわ」
「では、私も準備を手伝いますから、ちょっと待っててくださいね!」
……本当、なんて良い子なのよ。普通なら此処で八つ当たりぐらいするでしょうに。いや、それをしようと思わなかったからこそ『聖女』だったわけだけど。
「…………しっかりとその目を開けて見ておきなさいゼノヴィア。アレは、教会の罪よ」
「…………ああ、しかと心に焼き付けた」
確かに、悪魔を癒すのは重罪だ。
でも、今までの彼女の功績に目を向けて尚、彼女が『魔女』だと思えるものか。
人間、間違いだってある。聖人として祀られる方々だって、間違いを犯したことがあると言うのに。
むしろ彼女は、悪魔に襲われたとして保護されてしかるべきだった。
それなのに、それなのに。
我が身可愛さで、
「まあ、うじうじしていても仕方ないわ。今は、私達すら許してくれた彼女と、彼女を救ってくれたこの家族への感謝ね」
「ああ、そうだな」
なお食事の後、アーシアさんと私達とで聖書談義で盛り上がったのは余談である。
◇◇◇
さて、楽しい時間は終わりを告げた。
おばさんとエーナちゃんとアーシアさんは、今の住居である学校寮へと戻り、3人となったこの家にて。
「さてと。じゃあ改めて久しぶりイリナちゃん。クァルタさんも、改めてようこそ駒王町へ」
「うん、久しぶりイッセー君」
「こちらこそ、赤龍帝殿」
重苦しい空気と共にテーブルに着く全員の顔は、これ以上なく真剣で。
「かるーく事情はイリナちゃんから聞いてるから良いんだけど。…………本気で2人でやるつもりだったの?」
「イッセー君の協力が得られなかったらね。一応は人間のイッセー君なら、味方にしても問題無いはずだし」
「まあ、そうでなくとも確率が高いと踏んで2人なのだがな」
「あー…………まあ、確かにイリナちゃんいたらコカビエルはどうにかなるかもだし、見たところクァルタさんもかなり強そうだから問題は無いのかもしれない。それにしたってもっと人員割くべきだと思うのは、俺だけ? サポート要員もいると思うよ?」
非常にもっともなセリフである。
「まあ、程のいい厄介払いなのかもね。もしかしたら、私達に死んで欲しいのかもしれないし」
「それは、その…………」
「ああ、心配しないで。ゼノヴィアも知ってるわ」
そう言うと、珍しく驚いた顔を見せたイッセー君は、少し気の毒そうにゼノヴィアを見る。
「…………非常に思うところはある。絶望したこともある。だが、今までの信仰が間違っていたわけでは無いとイリナに諭されてな」
「そーいうことか…………ちっ、腐ってやがる」
…………変わらないなぁイッセー君は。
「でも、勘違いしないで欲しいのは」
「あー分かってる、教会全部が腐ってるとは思わねーよ。でも、ダチがそんな腐った陰謀とかに巻き込まれてんのが気に喰わねーだけだ」
「あはは。まあそんな小物如きにどうこうされる私じゃないから安心して」
そういう人程、口だけで大したことないわけだし。
「で、ここからはお願いなんだけど」
「なんなりと」
「力を借りるのは、なるべくイッセー君だけで、此処にいる悪魔には
「…………あー。堕天使と結託して聖剣をどうこうしそうだから?」
「そういうこと。まあイッセー君が懇意にしてるぐらいの悪魔なのだから、そんなことをする小物とは思えないのだけど」
「まあ私達としても、あまり悪魔の手を借りるのは好ましくない。停戦状態なだけで、本来は敵であるべきだしな」
「とは言え表向き……ってことは、」
「自分の管理してる土地で、何もしないのも格好がつかないでしょうし、
「改めて挨拶には伺うが、その様に伝えてくれると助かる」
そういうと、イッセー君はそれはもう安堵の色を顔に浮かばせて、ホッと息を吐いていた。
「おー…………正直、助かる。ちょっと、今ヤバい奴がいてな」
「ヤバい奴?」
「…………『聖剣計画』って知ってる?」
その飛び切りとも言える爆弾に、なんて因縁だと頭を抱えても、悪くないだろう。