ハイスクールDevil×Dragon×Dhuman   作:しにかけ/あかいひと

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番外乱闘だと思った?
残念、本編だ。


その5-昔話×復讐×後悔=懇願

 

さてさて。イリナちゃんと話す前に仕込みだけはやっておかなくてはならない。

木場の精神状態を整えておかねば、話している最中に暴走しかねない。

というわけで俺と木場は、人払いが完全になされたオカルト研究部室にて、顔を突き合わせていた。

 

「というわけで…………少し話を聞いてくれないかね、木場くんよ」

「…………あの、言っておくけど僕は────」

「ああ問題無い。俺は『復讐は何も産まない』だなんて綺麗事を口にするためにお前を呼び止めてるわけじゃない。むしろ推奨するまである。そういう意味じゃ、俺はお前の『先輩』とも言える。…………ま、ちょっと聞いてくれや」

「いや、それも気になってるけど…………」

 

ん? 何が気にくわないんだろうか。

 

「なんで僕…………簀巻きにされているの?」

「いやそりゃ、逃げられたら困るし」

「よく言うよ…………その気になったら、万全の状態の僕ですら一瞬で制圧できる癖に…………」

 

それとこれとは話が別。戦闘狂だけど、俺は注文の多い戦闘狂。愉しめない戦闘はやりたくないのだ。だから逃げる木場の鎮圧戦はなるべく避けたい。

 

「まあとにかく、俺もお前の気持ちがある程度分かるから、前置きはこの位だ」

「…………何?」

「睨むな睨むな。…………さて、どこから話したものかな」

 

地球から遥か遠い場所、グラール太陽系に居た、どうってことない少年の…………って言うのは違うか。

 

「遠い昔……復讐に命を賭けたせいで大切なものを見失った、哀れ極まりない人間の話だ」

 

 

◆◆◆

 

 

ショウ・ウォーカーという少年は、どこにでもいる少年だった。そうだね…………16歳の学生だった。総合大企業の武器部門の技師として働く父と、専業主婦の母と、父親に影響されて機械弄りが趣味になったその子の3人家族で。通学に不便だったけど、広大な草原の光景が自慢の集合住宅の内の一軒家で、ボチボチな生活をしていた。

 

将来の夢……があったかはともかく、未来が何事もなく迎えられると漠然と考えながら、無為とは言わずとも、只々生きているだけだった、ありふれた子供だった。

 

まぁそんなことはともかく、この子供には想像も付かないような形で、人生の転機が訪れることになった…………それも、悪い形で。

 

言葉にするだけなら、とても簡単。『未確認物体が宇宙より飛来』。とはいえ、数が多くて、土壌や生物を汚染する物体だということを除けば、だけど。

 

勿論その子供、ショウ・ウォーカーもただでは済まなかった。自分を庇って死んだ両親、押し潰された友人、瓦礫になった家、自慢であった広大な草原が昏く燃えている光景…………日常を構成するもの全て、尽く蹂躙され、壊れ果てた。

 

変わり果てた死の光景の中で、彼はこう思った。

 

『何故?』

 

 

◆◆◆

 

 

「『何故父さんが、何故母さんが、何故友達が、何故みんなが、何故、何故何故何故何故…………何故?』…………結局、偶々だったようだけどね。一つ言えることはその時に、遺されてしまった、平穏そのものみたいな少年ショウ・ウォーカーは、嫌が応にも変わらざるを得なかった」

「…………どう、その少年は変わってしまったんだい?」

「さあてね…………なんて冗談はともかく。暫くは、死んだように動かなかったけど…………その未確認物体が、生物であることが判明してからは、それはもう目も当てられないぐらいに復讐の道に転がり堕ちていったよ」

 

 

◆◆◆

 

 

生きる気力を、図らずも復讐によって吹き返したショウ・ウォーカー。彼は、総合大企業の武器部門に、父が勤めていたという伝で、武器を手に入れることに成功した。かなり無理矢理だったけど、本当は餓鬼に渡す余裕なんてなかった筈だけど…………まぁ、同情をひいたら如何にでもなったのだろうね。

 

とはいえそれまでまともにそう言ったものを扱ったことがなかった彼が、その未確認物体共に立ち向かえる筈もなく。それら全てを殺してやると息巻いたけれど…………すぐに死にかけた。

 

その時の彼の精神状態からいくと、死ぬことは怖くなかったけれど、仇を討てずに死にゆくことが、何より我慢できなかった……みたい。

 

しかし、少年にとって幸か不幸か…………救いの手が差し伸べられた。今で言う国連軍みたいなの…………同盟軍の、教導官を務めていた、のちに彼の師匠となる人物からの、ね。

 

 

◆◆◆

 

 

「最初は、いい関係とはお世辞にも言えなかった…………気まぐれに救ったそのヒトと、救われた少年。何も無ければそのまま施設にポイだった所を、身の程知らずの少年が『同盟軍に入れてくれ』だなんて言うからね」

「でも、そうはならなかった……ってことかい?」

「そう。その同盟軍だって人手が足りなかった。なにせその未確認物体のせいで死傷者はうなぎ登り、被害総額は天文学的数字。だからまぁ、『訓練についていけたら考えてやる』的な感じで、彼は迎え入れられたんだ。ついていけなければ切って捨てられる、ということでもあったけど」

 

 

◆◆◆

 

 

ただの人間には過酷な訓練環境…………でも、意外と戦闘に対して適性があったのか…………短期間で彼は、ただの学生であったのが信じられない程に、成長していった。同期には人種の問題で虐められはしたけれど、強くなれると…………奴らを殲滅できるようになれると信じて、彼は只管に自分を苛め抜いた。

 

そんな彼が、想像以上の結果を叩き出すようになるのには時間はそうは掛からず。実力主義、合理主義的な考え方をするヒトが多い同盟軍内で向けられる視線が変わってくるのも、そう掛からなかった。

 

そうなってくると、彼を拾った教導官も『いい拾い物をした』と気分が良くなる。人種の関係上、正規部隊に配属することはできなかった彼を、その制限がない特殊部隊に配属させるべく、自ら嬉々として訓練をつけたり、彼を付き人として側に置いたりする程度にはね。

 

少年の壊れた心も、徐々に修復されていく。師匠とも、親代りとも言える教導官に、彼を認めるようになった口下手な仲間達。訓練は厳しくても、暖かな何かが、そこにはあった。

 

…………だからこそ少年は、逃げるように師匠の下を去ることになる。

 

 

◆◆◆

 

 

「……分かる気がするよ。『遺された自分が、幸せになってはいけない』っていう気持ちは、僕にもあるから」

「そういうこと。俺からすれば、阿呆とも言える思い込みだけど…………まあ少年は、そんな自分の居場所よりも、復讐を果たすことを選んだわけだ。その時に、師匠と仲間が泣いてしまう(原因不明のバグが発生する)ことになるけど…………それは余談かな」

 

 

◆◆◆

 

 

そこから先の彼は、もう酷いもの。居場所を斬り捨てただけはあって、甘さなんてそこにはなく、只々憎悪という燃料を燃やして未確認物体を潰して回る機械に成り果てた。

時に犯罪に手を染めながら、時に自分を止めようとする人間を斬り払いながら…………彼は仇を潰していく。

 

たくさんの血と、物体から噴き出た液体で体を染めていくうちに、人間は彼から離れていき…………等々彼は、人間をやめてしまった。

 

未確認物体は、人間も汚染した。沢山潰すことで汚染されきった彼は、人類の敵、異形の手駒へと変貌した。

 

それでも彼のやることは変わらない。目に入る敵を斬って、斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って。

 

 

最後には人類の敵、未確認物体の同類として、討伐された。

 

 

◆◆◆

 

 

「医療が発達したおかげで、討伐はされたけど人間に戻れた彼。でも、果たしてそれが良かったのかどうなのか」

「……………………」

「しかも笑えないのが、彼が潰して回ったのは、実は未確認物体の親玉の末端でしかなくて。復讐と信じて突き進んだ彼の行為は、無駄でしかなかったというね」

「……………………」

「本当…………笑えない」

 

結局少年の…………俺のやったことは、未確認物体…………SEEDがやったことと、同じだったのだ。復讐鬼、というだけあって、辿り着いたのは畜生そのもの。俺の振るった凶刃は、いたずらに災害を振りまいただけだった。

 

「結局、彼は別の形で、仇を正しい形で討つことになるけど…………この時の行動のせいで21歳まで寿命が削られるし、最後まで罪の意識に苛まれるし…………本当、どうしよーもねー人生だったよ」

 

間違えに間違え続けても止まらず、堕ちるところまで堕ちなければ答えを得ることができなかった野郎の人生だ。どうしようもないのは、自分で言うのもアレだがその通りだと思うんだ。

 

「ここではないどこか…………でも、確かに現実で起こった餓鬼の復讐劇はこれにておしまい。さて、これを踏まえた上でお前がどう動くのか、楽しみで仕方がないよ」

 

そう言って簀巻きにした木場を解放して、イリナちゃん達の待つ部屋へと向かおうとする俺の背中に、声がかけられる。

 

「その彼は…………いや、()は、後悔しているのかい?」

 

…………さぁて、な。

 

「復讐に身をやつしたことは、後悔してない。そうでもしなけりゃ、生きる気力を無くしていただろうから。でも、大切なものを斬り捨ててしまう程の復讐鬼には、なるべきではなかったとは思ってる」

 

振り返る。

そこにいるのは、その目に迷いの色を浮かべた、いつかの俺だ。

 

「復讐は虚しい」

「しかし俺は、お前の復讐心を肯定しよう。罪には罰が課せられるべきだ」

「だが…………だけど…………」

 

 

 

「お前を案ずる者すら斬ってしまえるような復讐鬼にだけは、ならないでくれ」

 

 

 

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