ハイスクールDevil×Dragon×Dhuman   作:しにかけ/あかいひと

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その8-悪夢×契約×冷汗

◆◆◆

 

 

一つ進み、また一つ進み。

 

進んだ先に何があるのかは星霊ならぬこの身には分からないが、それでも愚直に進み続ける。

 

最強だのなんだのと言われようと、所詮俺はただの人……前に進むことしかできない阿呆である。

 

でも、それで良いと今なら思える。

 

無限の(果ての見えない)道を征くのだ、このぐらいでないと後悔を引きずりすぎて迷っちまう。

 

『たとえ先が見えずとも、折れない覚悟さえあれば』

 

火を灯そう。

折れない心、無限の想いに火を灯そう。

きっとそれは、終わりのない道だって導いてくれる明かりになる。

 

それこそが俺の誇る(信じた)最強武器。俺の心を映した無限の『光』。

 

 

◆◆◆

 

 

「……………………このタイミングでこの夢かァ」

 

弱音を零した瞬間意識が落ちる様に寝ていたらしい俺。まあ不眠不休で作業に没頭していたから仕方ないとはいえ。

 

時間は夜。寮の自室の窓から見える空には、都会にしてはまぁまぁ星が瞬いていた。

 

「……仕方ない。兄が完全にアレをモノにするには、あの覚悟、必要」

「うわっ!!?」

 

ベッドに横になってる俺の顔を覗き込んできたのは我が妹…………というか、もしかして今の俺ちゃんの後頭部を支えているのは…………

 

「膝枕、妹の務め」

「いや、そんなことはない」

 

ふんす! と胸を張っているだろう永那。何を見て勉強したんだこの龍神様。

 

とりあえず体を起こして、永那と向き合う。何のためにあの夢を見せたのか、問い質さないと…………。

 

「だから、『無限の唄』を完成させる為に」

「…………他にも色々とあったろう? 俺、あの頃の自分は復讐鬼時代の次に嫌いなんだけど」

 

元々俺は、ヒューマンだった人間。SEEDウィルスのワクチンの副作用でデューマンと化した人間だった。

 

そして徐々にデューマンとなっていく時期の俺は…………なんというか、荒れていた。

 

腕利きの傭兵としてグラールにその名を轟かせていたショウ・ウォーカー。何にも特化することのない、器用貧乏な種族であるハンデをひっくり返し、『臨機応変(オールラウンダー)』『万能武器(ミラクルウェポン)』とまで称されるまでに、傭兵稼業…………正確には戦闘活動に精を出していた。更にはカーシュ族により伝えられた幻獣召喚システム『ミラージュブラスト』を極めて『幻獣召喚師(ミラージュプリースト)』なんて言われちゃったりもして、色々と調子に乗ってた時期だった。

 

収入も一生を遊んで暮らせる額。女遊びこそせずとも、酒場では誰彼構わずお金を振りまく『宴量産機(パーティーホリック)』だったし、ギリギリの勝負が愉しくて博打にどハマりし『一か八か(ワン・オア・オール)』なんて言われることも多々有り。

…………別に堕落してたわけじゃなく、訓練も仕事もしつつ、それと同じくらい遊んでただけ。間違っても穀潰し時代のクラウチとは一緒にしない様に。

 

まさにこの世の春、(自業自得も多分にあるが)不幸を受けた反動なのか、それはもう見事な遊び人だった。今にして思えば、この時摂生してたらあと3年ぐらいはグラールで生きてられたんじゃないかと思うが…………まあ気にしてもしゃーない。

 

しかしそんな俺に3度目の挫折が。

ぶっちゃけると種族がヒューマンからデューマンに変わってしまった。

 

ヒューマンは、特筆すべき特化した点はないとはいえ、全ての潜在能力がいい感じに纏まりつつ、丈夫な身体を持つ種族だった。

デューマンは…………その、攻撃性に重きを置いてしまった種族で、火力と引き換えに、物凄く身体が脆くなり、病気にもなりやすく、身体が資本である傭兵稼業に支障が出た。ブイブイ言わせてたミラージュブラストも使えなくなり…………何より、今までヒューマンとして磨いてきた技能の大半が、おじゃんになった。

 

もう泣いたね。この世界で言うところの豚である生物、原生生物としては最弱もいいところなコルトバの体当たりですら致命傷だったから。攻撃を受け切り、カウンターで相手を斬り刻むスタイルを基本として戦っていた当時の俺にとって、身体が脆くなったことは、傭兵生命を絶たれたも同然であったのだ。

 

復讐鬼時代から持ち直し、当時感覚で言えば幸せの絶頂だった俺にとって、先の見えない道に何も無しで放り出された気分だった…………ほんの一瞬だけど、自殺すら視野に入れたね。

 

しかし…………いや、やはりと言うべきか。俺はやはり皆の忘れ形見である自分の命を諦めることができなかった。そして、さっき見た夢に繋がる…………と言うわけだ。

 

そこからの俺は、デューマンに適した戦闘スタイルを確立するために、試行錯誤を繰り返した…………その結果、防御を捨てつつも攻撃を流すことで身を護るスタイルを構築したわけで。いやぁ、よく最強傭兵の座を維持できたよな俺。流石俺。

 

「でも、兄のあの時の想い、今の兄の在り方と同じ。自分だけでなく、周りを導く無限の光」

「…………まぁ、永那が言うのならそうなんだろうけど」

 

しかし、既にアレ…………デューマンだけの固有技能、フォトンを武装化する技『インフィニティブラスト』は完成した筈なんだけど…………。

 

『相棒、それは違う。あのままではただのフォトンの武装化だ。確かに武装化したフォトンは既存の武器を大きく超える物ではある上、俺の『倍加』と合わさってそれなりに強くは見えるが…………』

「仮にも『無限(インフィニティ)』を冠した技。まだその先がある」

「フォトン武装化の、その先?」

 

俺はアレでいいと思うんだけどなぁ…………剣撃も銃撃も法撃も、シンプルだけどなんでもできる伝家の宝刀インフィニティブラスト。かなり小綺麗に纏まってるからこれ以上ゴタゴタするのは嫌なんだけど。

 

「無論、それは変えない。持ち味を殺すのは下策の極み」

「じゃあ、どうすんの?」

『相棒、さっきの夢を思い出せ。自分で答えを出していただろう?』

「えーと…………」

 

そんな、インフィニティブラストをさらに発展させる様なこと、あの頃の俺が思いついてたかなぁ…………うーん。

 

「強いて言うなら…………『無限の想いに火を灯そう』?」

「そう。無限は、我。火は、ドライグ。そして兄は………」

「『光』、ということか」

 

頷く妹様。そこでようやっと鈍い俺でも理解ができた。

もしかして、ドライグと永那がやろうとしているのは…………。

 

「俺の魂にドライグの火を点けて、それによって生まれた力で、インフィニティブラストを本当の意味での『無限の光』に…………? できんのそんなこと?」

『分からん。何しろ前例がないからな。それに言わば俺たちが提案しているのは『無限の龍神化(ウロボロス・セカンド)』。簡単にはできよう筈がない』

「でも、兄ならできる。それに、我も、『無限の龍神(ウロボロス)』も手助けする」

「そ、そりゃあ願っても無い話だけど…………え、えぇ?」

 

一気にスケールが飛んだ。なんだよウロボロス・セカンドって。ただのフォトン武装化技が、そんな極まった域に行くわけが…………いや、決めつけはしないけどよ。

 

…………というか、赤龍帝なだけのデューマンに、無限の龍神になれるスペックがあるものなのか?

 

「素体としては、十分過ぎる。無限を冠した技を扱う上『暗黒()』の因子を持った種族、赤龍帝であることに加え、度重なる龍化により徐々に龍のそれに近付いていっている身体、そして英雄に至る程に極まった魂。おそらく手を加えなくても、いずれは到達する領域」

「…………魂に関してはスルーするにしても、『神』の要素と『無限』の要素を持った上で、『龍』の身体なら…………確かにいけそうな気はするな。ちなみに俺がウロボロス・セカンドってのをやらかしたら、俺は完全に人間を辞めることになるのか?」

『そこも分からんが…………流石にそれはないだろう。『再起の唄(ナノブラスト)』同様に、多少は変質させると思うが、『赤龍帝の軍手(ブーステッド・ギア・グローブ)』を媒介とする以上神器を解けば、最低でも龍人までは引き返せるはずだ』

 

最低でも、かぁ。ツノとか生えたりすんのかな? …………何故だろう、平行世界のデューマンにはツノが生えてそうな気がした。

 

『しかし、なんの因果なのだろうなぁ…………覇龍にて無限を嗤っていた『赤龍帝(おれたち)』が、よもや無限へと至る方法を提示するとは』

「覇に侵されていた故に、仕方のないこと。でも、悪い気はしない。違う?」

『……ああ、悪い気はせん。俺も、いつの日か夢見たあの領域に辿り着けるのだからな』

「無限を嗤う? どういうこと?」

『お前が気にすることはない。覇の理に狂った俺と歴代達が、いつかのお前同様に愚かだっただけだ』

「…………?」

 

まあ、いいたくない過去はあるのだろうし、無理には聞き出さないけどね。

 

「というわけで、兄、ドライグ。契約を」

「『おう』」

 

 

◇◇◇

 

 

 

改めて、俺は思う。

 

「やべぇ、自分の家族舐めてた」

 

その能力と戦闘力に関しては、間違いなく過大過少なく判断できていた。

 

父さんは、通常何十年単位で修練しなければ到達できない仙人の領域に、あの帝釈天(ふりょうぼうず)斉天大聖(しょだいのじじい)の助力こそあれど1年で辿り着いたまごう事なき天才。お人好しのクセにヒトデナシというわけ分からん性格の上に、クッソ強い不良坊主がガチの冷汗流す時点でお察しだろう。相手が生物でさえあれば父さんは誰にも負けないに違い無い。

 

母さんは、魔術魔法というアプローチから、この世の法則を読み解いてしまえる、文字通り魔女である。単純な戦闘力は家族の中でも然程だ。なにせ本職は研究なのだから。だが、ウチの家族基準で考えると然程なだけで、世界的に見ると十分化け物の領域である。研究成果を披露するとき、敵対した奴は精神を保てるのだろうか?

 

アーシアは、戦闘力という面ではウチの家族視点で見ずとも大した事は無い…………今のところは。ただ、無限の龍神と契約した事により、彼女を墜とすのは骨が折れるだろう。未だ『聖母の微笑み』は禁手の兆候を見せるだけだが、神器を扱うに足る思いの丈と、彼女の在り方が噛み合って、傷どころか体力まで回復させる事が出来るようになったなんて、誰が信じられるだろうか。この間イリナちゃんから齎された法術の施された聖書の扱いもマスターし、ちっちゃい妹に叩き込まれた魔法使いとしての基礎も身に付けた…………強力すぎる回復能力と相俟って、後方支援専門としては現時点でも最高峰の存在だ。

 

エーナは、もはや語る必要は無いだろう。最近では俺に触発されて剣を振り回す様になった(それもグレートレッドの爪で作られた赫い大剣)。最早弱点は一つしか無いという規格外中の規格外。まあ『無限』が規格に収まるわけが無いよな。

 

まあそんな訳で、そういう事はしっかりと把握していた俺だ。そこに関しては舐めてなかった。

 

俺が舐めてたのは…………息子、兄のお願いに応えようとする、家族の行動力である。

 

「フォトンの扱いは苦手だが、気を混ぜると意外に使えるな。見てみろよイッセー」

 

お、お父様、いつの間に新たなエネルギーを? 確かにフォトンは仙術との互換性が無かったけど、その発想はなかったよ。自然の流れを源流とする気を混ぜたためか、フォトンの流れが自然に紛れて読み取り辛く奇襲力が凄まじい。それでいて仙術、フォトンテクニックの両方、または複合技で使えるとは…………なんてものを生み出したのだ。

 

「うぅん…………フォトンリアクターを武器に無理矢理積もうとするとすると、この辺りが限界ね……困ったわ。あ、1号。そこのレーヴァテイン・レプリカ捨ててきて」

 

これ以上は頭打ちといって不満そうに北欧神話の魔剣のレプリカを軽い感じで使い魔に廃棄させないでくださいお母様。どこを目指してるの? 一振りで世界を滅ぼす武器でも目指してるの? 既にその領域に至ってる気がするよ?

 

「シールドラインは嵩張らないのに最低限の防御力が期待できるという利点はありますが、エーナちゃんの攻撃に耐えられない時点でお話になりません。『最後の審判』にも耐えられる防御力は得るにはやはり、魔術と法術を組み込むしか…………」

 

ちょっと待ってアーシア。世界の終焉に耐えられる防具って最早防具じゃないです。というかエーナを基準にするのは絶対に間違ってると兄ちゃんは思うよ? というか俺の作ったシールドラインがボロクソに言われてちょっとショック!

 

「兄、最終調整」

 

他の3人よりは比較的落ち着いてるエーナ。まあ基本的に負けが無い彼女にとっては慌てる様なことは無いのだろうけど。しかし契約と称して無理矢理蛇を飲ませようとしたことは兄ちゃん怒ってるからね?

 

というか皆さん頑張り過ぎ。なんで俺のお願い一つでこうなっちゃうの?

 

『滅多にしないおねだりをされたら、こうなることは目に見えていた。愛されてる自覚が少し薄いぞ相棒』

 

ドライグがそんな風に呆れた声を出す。超解せぬ。

 

しかし、これならば完全には安心できずとも…………比較的落ち着いて決戦を迎えられる。

 

ならば俺も準備をした方がいいか…………差し当たっては。

 

「ねぇイッセー…………これはどういうこと?」

 

ウチの家族達の異様な雰囲気に頭を痛めた様子のお嬢に説明するところから、かな?

 

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