ハイスクールDevil×Dragon×Dhuman 作:しにかけ/あかいひと
ひっじょーにまずい。
そう思いながらも、私は小太刀を紐に戻す。
「コカビエルは死んだ? ダークファルス? そんな与太話に付き合ってる暇はない…………と、言いたいところなんだけど」
「…………小娘、貴様あの男に何も聞かされてないのか? それにしては対応が的確…………ふむ、流石は教会最強戦力の一角というわけか」
「あの男?」
惚けてみるが、おそらく誰のことかは分かっている。絶対イッセー君のことだ。
「訂正しよう、死んだわけではない。そうさな、人間が悪魔に転生するように、堕天使だったコカビエルが、別のモノに転生しただけだ」
堕天使が、別のナニカに。まあ理解できないことではない。そして、
「……それを成したのが、あの黒い物体というわけか」
私と同じ答えにたどり着いた相棒が、警戒心をこれでもかと上げつつ口を開いた。
無理もない、あの思いつく限りのドス黒さを煮込んだような黒い何かを取り込んで、まともなものになるはずが無い。こんなことを思うのは業腹だが、悪魔の方がマシ…………というか、悪魔とアレを比べること自体が悪魔に対する冒涜だ。クリスチャンである私にそこまで思わせる時点で相当である。
「意外に頭が回るじゃないか、今代のデュランダルの剣士よ」
ゼノヴィアの発言を肯定するコカビエル…………いや、元コカビエルはニタニタとした笑みを浮かべる。
……イッセー君は忠告してくれた。でも、詳しいことは教えてくれなかった。それは一体どういうことなんだろうか? 正直、そうしてくれた方が私も素直にその方向で準備ができたというのに。
(…………もしかして、イッセー君とあの黒いのは、因縁でもあるのかしら?)
あながち間違ってないだろう勘に内心震えながら、抜刀の構えを取る。
「まあ百歩譲ってその与太話を信じてあげるわ。……それで、直接出向いたってことは、私達のエクスカリバーでも狙ってるわけ?」
「ふん、本来ならそんな玩具なぞ必要ないのだがな。私の部下がそれを欲しがっていたから、戦争の火種にもなるかと思って強奪したまでよ。結果貴様らが来たのだから、労力が無駄にならなかった……ぐらいのものさ。最高戦力の一角を殺せれば、間違いなく鮮血の舞う戦争が起きようて」
まったく、売れたく無い名ばかり売れるものね。私としてはもっと慈善活動に精を出していることについて評価されてもいいと思うのに。いや、別に『いいことしてる私凄い! 褒めて褒めて!』ってわけじゃ無いけど。信徒としての本職の方がアウトオブ眼中なのが腑に落ちないだけで。
「戦争、だと? 堕天使を止めた時点で、貴様は1人だ。それなのに、戦争になると?」
「ほう、戦いになるのか不安なのだなデュランダルの担い手」
ゾワリ
首筋から嫌な感覚が駆け巡る。
気が付けば元コカビエルが、その手に黒いオーラを纏わせ始めて…………
(…………拙いッ!!)
標的はゼノヴィア。彼女も自分が狙われていることに気が付いてるが、迎え討つつもりでいる。
そこまで考えたら、あとは早かった。
投げるようにして放たれたオーラ。
突き飛ばされる相棒。
そして…………黒いオーラに纏わり付かれて倒れこむ私。
「イ、イリナッ!!?」
「…………くっ、コレ相当堪えるわね」
近寄ろうとするゼノヴィアを手で制しつつ、ヨロヨロと立ち上がる。
「お優しいことだな。仲間を庇うとは」
「ったく……やった手前が言うセリフかよ」
あらやだ、思わず口調が荒っぽく。……まぁこうでもしないとやってられないんだけどね。
「フハハ、面白いことを教えてやろう。貴様が受けたその波導は、その命を徐々に削り、最終的には死に至らしめるものだ」
「…………察しはついてたけれど。オマケに、解呪するには貴方を倒さなければならないってことよね。如何にもな技で反吐がでるわ」
「フン、その顔が絶望に歪むものだと思っていたが、アテが外れた。しかし、条件次第では解いてやらんこともない」
「条件?」
「赤龍帝であるあの男…………『ショウ・ウォーカー』を連れてこい」
聞いたことのない名前。しかし、その名前がイッセー君のことを指すのは間違いなく。
「ゼノヴィア……」
「分かった、すぐに彼を!!」
「イッセー君には知らせなくていいわ。とりあえずこの場を離れてちょうだい」
「…知らせなくても、いい?」
ゼノヴィアが信じられないとでも言いたげな表情を浮かべる。気持ちはわかる。本来なら、そうすべきなのは頭では理解している。
だが、ここでこいつの提案に乗るのは、踊らされてるようで…………何より、友達を売ったようで嫌だ。
だから、自分から助けを呼ぶことはしない。
「ふ、ふざけるなイリナッ!! 今自分がどうなって────」
「ごめん」
例の白いどく○いスイッチ擬き。押し付けながらゼノヴィアに押させ、この場から離脱させる。
……ある意味では、これも彼を呼んだのと同義になるのかしら? 嫌だなぁ……ま、ゼノヴィアを離脱させられたのは助かったわ。
「…………理解ができん」
元コカビエルが、その強面を思いっきり怒りに歪めて私を見下ろす。
「貴様、命が惜しくないのか? コレは脅しでもなんでもない、事実だ」
「へぇ、元堕天使、遡れば元天使なだけあって、お優しいのね?」
でもそうね…………言うなれば、意地?
「命なんて投げ捨てる覚悟、とっくに出来てんのよ。殉教するってのもそうだけど…………自分の手を異形の血で染めたその時から、いずれ自分の血も異形の手を染めるって。そうまでして私は戦いたいし、クソ異形共を放置することなんて出来ないわ。…………能書垂れてねぇでさっさと来なさい。それとも、人間相手じゃ意欲も出ねぇってかッ!!!!?」
怒りつつも、澄ました顔してるのがムカついて、地面を蹴って元コカビエルの位置まで跳び上がり、大太刀に変化させながら擬態の聖剣を抜刀、振り下ろす。
「ウラァッッッ!!!!!」
「グッ!!!?」
そう、それが見たかった!!
舐めきったその顔を、苦悶と驚愕に染めながら墜ちるその光景をッ!!!
ドンッ!!! と、クレーターを作りながら奴は地に落ちた。余裕なんて与えない、着地しつつまた聖剣を紐に戻し、懐に隠してあった本来の得物を抜刀しつつ、追撃をすべく突き刺しにかかる。
しかし、その攻撃は思いっきり空を切る。
姿が揺らぐ元コカビエル。
地面に突き刺さる短刀。
おかしい、幻覚という線は無いはず。クレーターができてるのが何よりの証拠…………いや、相手は異形。それも未確認の。ならば想定外すら想定内にしなければ。
完全に奴の姿がが揺らいで消えた直後、背後から声がした。
「ククッ………クハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッッッ!!!!」
哄笑。まるで爆音にも等しいそれが、夜の公園に響き渡る。
まるで自分を嘲笑するかのような。
まるで私を褒め称えるかのような。
「礼を言おう、人間!! 忘れていた、いつだって『暗黒』を滅ぼしてきたのは『光』!! そこに強いか弱いかは関係無い!! 事もあろうに、我はそのことを忘れて驕っていた!! …………馬鹿な話だ、だから我々は滅ぼされ続けたというのに!!!」
全身を覆う白い鎧。そして、その鎧の色と対比するかのような漆黒の6枚の翼。
白いのに、禍々しい。
そんな存在が、振り返った先にいた。
「それにしても、戦いに命を賭けるか…………ククッ。まるで『
……………………あー、なんかやばいスイッチ踏んだ?
とは言え私はニヤリと嗤う。ここの所死ぬ気の戦闘に飢えていたところもある。
「いいわいいわ、最ッ高ね!! でも、私が殺される前提で進められるのは気に喰わねぇなッ!!!」
祝福儀礼を施した私だけの得物『薬研藤四郎』に『不動行光』…………かの織田信長と運命を共にしたとされる短刀が二振り。
焼けた跡からでないのもその筈、密かに当時日本で活動していたイエズス会の宣教師……に紛れて同行したエクソシスト達が回収したらしいのだから。なぜ回収するに至ったのかはわからないが、流れに流れて流れ着いた先で私の手に渡った。同じ日の本出身だということ託されたけど、まあ悪い気はしない。
「なれば示せ『教会の魔王』!!! 貴様の刃、このダークファルス【堕天】に届かせてみよッ!!!」
「上等ッ!! 更に堕ちた堕天使風情が、私を止められると思うなッ!!!」
構えて…………駆け出す。目の前の異形を討滅させようと。
そして私は───────
「ちょ、ちょーっとやべーって!!? 聴いてないっすよ兄貴ぃぃぃぃいいいいいッ!!!?」
その情けない調子の声を聞いた直後に、意識を持って行かれた。
◇◇◇
……………………頭が痛い。
後ろから伝わってくる鈍痛で、意識が戻る。
「お? お目覚めですかいサムライガール?」
「…………アン?」
最悪の目覚めだ。だって場所は廃墟っぽいところで、懐中電灯で目元を照射されてるのだから。目が灼けるっつーの。
「…………起きたから光消して。痛いのよ」
「おお、そいつは済みませんねェ。これでも優しくしてるつもりなんすけどね俺っち!」
「………………」
寝起きにこの声は中々に堪える。ハイテンションで耳元でギャーギャー喚かれると結構クルのね。
とりあえず、視界が戻ったところでおそらく私の意識を刈り取ったであろう下手人を見る。
顔はまあ…………イケメンね。白髪で目が赤く、肌もそれなりに。どこかの誰かので見慣れてるからあまり気にならないが、普通ならばおかしい見た目だ。
…………とは言え、見覚えあるのよねぇ。
「……ウチのエクソシスト教育機関出身。しかも身体を弄られたみたいね、その目と髪。で、この状況でそんな人物に出くわすとなると…………やっぱり貴方、どう考えても『フリード・セルゼン』」
「そういうアンタは『教会の魔王』。名前の由来は戦闘時の容赦の無さとその短剣が由来…………教会の戦士のクセして魔王とかwwww」
「笑うなっ!!」
…………ったく、だから私は自分の二つ名が嫌いなんだ。まあ確かに? 織田信長は『第六天魔王』とか呼ばれてましたけど? でも信長の武器を使ってるだけな理由でその名前はどうなんだ? 教会なのに魔王? 嫌味か? ある意味ではトップシークレットを握ってる私への嫌味か?
「まーそれはともかく、あーたには妙なシンパシー感じちゃっでたんだよねぇ俺っち。ほら、いろんな意味ではぐれ者だろ?」
「…………殺戮に悦を見いだす破綻者と一緒にしないでくれる? 超不愉快」
「おおっと、昔のことを言われると何にも言い返せねぇな」
「…………昔のこと? ああ、貴方も何処ぞの戦闘狂の被害者だったわね」
そういえば矯正したとも言ってたわね。いい仕事するじゃない。
「そういうことだZE☆ いやぁ、昔は『悪魔並びに与する奴はぶっころ〜♪』みたいなスタンスでやってたけどよ…………それ以上に面白いモン魅せられちまったからな」
赤い目が、妖しく揺れる。まるでそれは、やはり何処かの誰かの紅い片目を彷彿とさせるものであり。
(…………癪だけど、似てるわね)
彼の背中を追い続けている私の目と、似ていた。
「…………倒してみたいわよね、アレ」
「ヒャッハー! やっぱ同志じゃん!!」
「うるさい」
「ヘブッ!!?」
抱きついて来ようとするバカの顔面にチョップを入れて黙らせる。と言うか…………
「…………どうしてあそこで邪魔したのよ。覚悟を決めてた以上、フイにされたようで凄く腹立たしいんだけど」
「それに関しては謝るぜ、すまなかった。でも魔王サンよぉ…………あのまま逝ってたら確実に死んでたし、兄貴に少なからず傷を与えてたよな?」
「…うぐっ」
「別にクソ教会の戦士共が死のうがどうだっていい。だが、その所為で兄貴が腑抜けるのは勘弁だ。…………憧れさせた責任は、取ってもらわねぇと」
ニタニタした顔から一転。バツが悪そうな顔をして鼻をかく彼を見て…………ああ、恩義を感じてるんだなって分かってしまった。
「……取り敢えずは礼を言うわ、ありがとう。私はまだ、戦える」
だがしかし…………目の前のこいつは敵だ。いくら兵藤一誠に連なる者だとは言え、許されざる罪を犯した者。
…………人道を踏み外した男である。
「ハッ! そーんなこと、俺が1番知ってるっすよーだ。いくら変質しようと、過去も含めて『フリード・セルゼン』だ。早まった自覚はあれど、後悔なんざして堪るかよ。だから、魔王サンのその目は正しい。俺たちは正しく敵同士だ」
「…………その辺の理解は共有できて何よりね」
ああ、真面目と不真面目を意図的に使い分ける手合は疲れる…………そう思いながら私は身体を起こし、自分の武器に不備がないかをチェックして…………絶望した。
「…………え、え? ちょ、まさか!?」
「あ、もしかして『擬態の聖剣』のことザンスか? あのガラクタなら目くらましに使って放置っすよ放置」
「な、ななな、なァァァァァアアアアアアアッッッ!!!?」
ちょ、マジでマジでマジで!? これって私、聖剣を奪取するどころか奪われちゃってるんじゃ!!?
「な、なんてことをしてくれたのこのはぐれエクソシストッ!! 無くても戦闘に支障はないけどアレないと帰れないのよッ!!!」
「おーおー慌てちゃってまー。そんときゃオイラみてーにはぐれになっちまえばいいY…………あ、冗談なんで首元に剣押し当てんのやめてくんね?」
「冗談でもなんでも、次言ったらその首、胴体からおさらばさせてやるからね?」
にしても、ああ困った…………こんな予定ではなかったのに。
「んじゃま、詫びも兼ねて一丁繰り出すとしませんかね?」
「…………ハァ?」
そう言って、フリードは何かの銃器を構えて獰猛に笑った。…………というか、ガトリング砲? その、人の背丈の倍ほどある其れは、携行できる火器じゃないと思うのだけど。
「俺っちには前衛が足りなかった。だから元ボスとは戦えなかった。あーたは本調子じゃなかった。だから戦えなかった。相棒も今はいねーみたいだし、いっちょ俺と『ダークファルス』討伐戦、やってみねぇ?」
「…………いいわ、精々利用し尽くしてやる」
不本意ではあるが…………まあその実力は信じられるだろう。雰囲気と、何より兵藤一誠の縁者というだけで。
それに、思うところはあるし、それは向こうも同じだろう。
((あの
奇妙な共同戦線契約が、ここに結ばれた。
…………そして、私とこの男との腐れ縁も、ここから始まったのだった。
こんなの、フリード君じゃないやいっ!
→ごめんなさい、この駄作者赤域にあのフリード君の口調を再現させることは不可能でした。
黒いのの生物についての説明は?
→ごめんなさい、次回に持ち越しです。どうしても知りたい方は『SEEDフォーム』で検索。