ハイスクールDevil×Dragon×Dhuman 作:しにかけ/あかいひと
◆◆◆
崩れゆく身体を抑えることができず、依代を失ったダークファルス【堕天】は堕ちていく。
「…………あんま、外にやんのも不安だしな。あいつの真似でもしておくか」
同じく落下中の一誠の両目が『赤』に染まる。
「腹立たしいが、力の源流は同じだ。俺の中で封印されやがれ」
そして、ダークファルスをダークファルス足らしめていた力の核は───────
◆◆◆
「…………痛え」
ダークファルスをぶった斬った直後、無限の龍神化に限界が来たらしく、無様に墜落。そして、一時的ではあるが神器は機能のほぼ全てが停止。流石に立ち上がるのが面倒で…………俺は校庭のど真ん中で大の字になって横たわっていた。
意識を周りに向けてみれば…………イリナちゃんとかフリードも似た様な状態だ。死屍累々って感じ? 笑えねーけど。
まあ、そんな感じで心地の良い朝日に身体を委ねていると、誰かが飛んでくる気配がした。
「無事かしら、イッセー」
「おお、お嬢。見事に満身創痍ですよ。何にせよ、街の一大事だったのに我儘聞いてもらって済まないっす」
「…………バカね。貴方じゃなければダメだったのでしょう? そんなの、我儘の内に入らないわ。…………まあ、お陰で学校の修復に私とソーナの眷属が駆り出される羽目にはなったけど、其処はまあ必要経費と見ておくわ」
「ありゃりゃりゃりゃ…………」
いやまあ、ね? あんだけ暴れたらそりゃこうもなりますわな。
「それに、個人的にお礼も言いたいのよ」
「木場に関してのことなら、俺は礼なんざ受け取りませんよ。木場と、彼らの背中を軽く押しただけなんで」
「そう、ならば分かりやすく『貸し1』にしておくわ。貴方と私なら、そっちの方がいいでしょう」
「ちげぇねぇ」
にしても、身体の損傷は無限の龍神化によって消えはしたが、まだ燃えるような熱さが身体を支配してる。反動と言えばそれまでだが…………もうちょっと、気楽に使える切り札が欲しいところだね。
「すんませんお嬢、すぐにその『貸し1』消費しそうです。もう正直、意識を無理矢理繋いでいるのがやっとな状態で…………」
「その程度なら友達の好で家まで運んであげるわよ。悪魔だからって何でもかんでも等価交換なわけがないでしょう?」
「じゃあ、『貸し1』でイリナちゃんとフリードを…………」
「……………………1人運ぶのと、3人運ぶのとの労力に大差はないわ。別陣営とは言え、この町での被害者よ」
「あははは…………お嬢ったら、やーさしー」
全く、無理矢理自分を正当化させる理由を探すなんて…………本当に、助かった。
「どっちにせよ、寮の方に連絡を入れないとね。兵藤夫妻とアーシアは、結果は分かっているとは思うけど、デュランダルのシスターが相方のことを心配してるだろうし」
「…………ちょっと待ってください。ちっこい妹の方は──────」
「兄っ!」
ドスッ! と満身創痍の俺に頭から飛び込んできたのは、ちっこい妹…………つまり永那。
「グフッ!?」
「兄、大丈夫!? 身体に異状は!?」
「あ、ありがとエーナ……兄は大丈夫よ……」
ここでお前にトドメ刺されかけました…………とは言わん。兄貴のプライドである。…………まあ、プライドもへったくれもない状態なんだけどな、今まさに。
「……つまり、こういうこと」
「分かってたなら最初から言ってくださいよ、また何時もの細やかな反撃ですか」
「ふふっ♪」
「けっ」
だいたいお嬢が胃痛なのは俺のせいじゃない…………とは言い切れないが、圭太と塔矢だって胃痛の原因だと…………まあ、それも元はと言えばワタクシのせいでございますけどね。
「まあでも、ありがとねエーナ。お陰でなんとかなったよ。勿論、ドライグも」
「我、少し加護を与えたのみ」
『礼を言われる程ではない』
ンフフ、ウチのドラゴン達は照れ屋だねぇ。
「それに、未だ完成に非ず。要訓練」
『だな。せめて、発動後の神器の機能が落ちる点をなんとかせねばな。まあ、其処は相棒のことだ、不安はない』
「テメェドライグ、俺のことなんだと思ってやがる。こんなのに毎回耐えられる程人間やめてないぞ」
「『いや、人間やめてる』」
「……………………」
デコの辺りに意識を向ける。
人間をやめた証である、ツノが。
い、いや。未だ2/5は人間だ。ちょっと龍の部分が増えてきたけどまだ人間であるとゴリ押しはできる。
「諦めなさいイッセー。どう考えても貴方は
「グハッ!!?」
くっそう、絶対何かしらで仕返ししてやる。こいつら、本当に俺のことをなんだと思って…………
『歴代最高の赤龍帝…………まあ、最高の相棒と言ったところか』
「最強の兄」
「ちょっと胃に被害があるけど、優しい私の友達かしら?」
「そ、そんなこと言ったって許さねーぞこんにゃろう!(デレデレ)」
「「『(ちょ、ちょろい……)』」」
もー、まったくもー。照れちゃうだろこんちくしょー!
…………ああ、こんな雑談してる間にも、意識が闇に落ちそうである。すんげぇ眠い。
『そうだな。暫くは休息が必要だろう。ゆっくりと眠るがいい』
「その間、膝まく───」
『それはしなくていいからな、永那』
「ぶー」
「……本当こうしてみると普通の家族にしか見えないわね」
そんなみんなのやり取りを聴きながら、凄くいい心地で、俺は意識を手放した。
ドクンッ!!!!!
「『…………ッッッ!!!?』」
俺とドライグの心臓が、跳ねた。
手放そうとした意識は一気に身体へと引き戻され、俺は震える体を無理矢理起こし、立ち上がる。
「ど、どうしたのイッセー?」
「お嬢、今すぐ逃げてください」
『永那、皆を頼む』
「……どういうこと、ドライグ?」
永那ですら気付いていない。それ程の手練れ。
そして、俺と『赤龍帝:ア・ドライグ・ゴッホ』が気が付く奴と言えば…………最早一択だ。
まともに動かせない体。神器は使えない。だが、そんなことは関係無い。
奴が、来たのだ。
「『白龍皇が来た…………ッ!!!!』」
一瞬、息を飲んだ2人だが、そこから先は早かった。
2人の姿は一気に搔き消え、学校の修繕に当たっていた悪魔の気配も、イリナちゃんとフリードの気配も消えた。
有難い、これで後顧の憂はなくなった。
『全く…なんてタイミングだ』
「だが、諦める理由にはならないだろう」
『違いない…………なればこそ、悔やまれるのだがな』
赤龍帝と白龍皇の衝突は、何方かが死に絶えるまで行われると言う。今まで、そういうものだったとドライグから聞かされた。
俺の方に、白龍皇を殺す意思はないし、残留思念である歴代の先輩達も、満足している為に俺をそそのかすことはない。
だが、それはコッチだけの話だ。
本来、先輩達の怨念は晴らせるものではないのだ。俺と同じことを、向こうに求めるのはある意味傲慢だろう。
俺が万全の状態ならばそれでもどうとでもなった。しかし、この絞りかすの様な状態では…………死は、免れない。
「…………ごめん、ドライグ。諦めるつもりはねぇが、どうやら俺はここまでの様だ」
『謝るな相棒。寧ろこちらが謝るべきだ。…………済まん、俺の因縁に付き合わせることになって』
「いんや、これは多分…………俺の運命の方もあるだろう」
…………全く、最低限の仕事、ダークファルスの討伐をしたから、俺は用済みなのか。世知辛いねぇ。
だが、しかし。
この町を、友を、仲間を、家族を。
「巻き込むわけにはいかん」
神器が使えない? それがどうした、未だ手足が残っている。
フォトンがすっからかん? その程度、気合で乗り越えろ。
今代の赤龍帝と白龍皇の戦いで、俺以外に被害は出させん。
何としても…………相討ちで、終わらせるッ!!!!
ナノトランサーに収納していたイクザムを取り出し、それを杖にして前を向く。
視線の先には…………綺麗な8枚の光翼を広げ、此方に飛んでくる人影が見えた。思わず見惚れてしまうが、アレは俺に死を運ぶ者だと思うと、どうしようもない気分になる。
…………くそ、ここで終わりなのかと思うと、情けないことに涙が止まらねぇ。まだ、たくさんしたいことがあったのに。もっと、みんなとたくさん…………。
だが、『今』は諦めよう。次回の俺に期待する。
「……………………」
目を瞑り、視界を閉ざし…………視覚以外の感覚に神経を尖らせる。
ビシュッ!!
空気を叩く音が聞こえた。
そして俺は勘の赴くままに、イクザムを振り下ろした。
ガィインッ!!! と弾かれる俺の剣。相手の獲物は余程重い様だ。
追撃の気配、今度はイクザムを前にかざして攻撃を受け止めて、弾く。
…………白龍皇の神滅具『
満身創痍の現状、半減領域に関してはカス程の戦闘力がさらにカスになるだけだからあまり怖くはない。
ならば、俺は触れられることなく隙を突いて殺すしかない。のだが…………
「(…………くそ、戦闘技術の方も半端ねぇな)」
少なくとも、現状弾き続けるので精一杯なのだ…………遠くないうちに、向こうの得物が俺の急所を斬りつけるだろう。
幸いなのが…………向こうが『
くそ、諦めないつもりだったのに、思った以上に白龍皇が強過ぎて心が折られそうだ。本当、万全の状態で戦いたかった。
そして、
「ッ!!」
何百回と打ち合った結果…………俺の脚から力が抜けた。限界を超えて立ち上がったのだ。いつもならよく持ったと言いたいが、この場ではどうしようもなく腹立たしかった。
立ちたい、立ち上がりたい。まだ、まだ負けるわけにはいかんのだ。
しかし、そんな己の意思を無視しながら…………とうとう俺は崩れ落ちる様に倒れた。
「…………ここまで、か」
……せめて、顔だけは見ておこう。俺を倒した奴の顔くらいは、最期に憶えて逝きたい。
最後の力を振り絞って、仰向けとなり、目を開く。
そして、俺は思わず…………その目を見開いてしまった。
俺の様に白い肌に、紅い片目を隠す為であろう眼帯。間違いなく、デューマンであろう。
その顔は、よく知った奴の顔だ。共に戦い、時として刃を交え…………俺が助けた奴の顔だ。
そして、そんな俺の思考を裏付ける様に、そいつが持っている得物もまた、俺の記憶にある奴の武器と同じなのだ。
─────人知れず、災禍の欠片を集め続けた少女がいた。
その少女の名前は…………!!!
「ナ、ナギサ…………!!!?」
俺がその名を呼んだ瞬間、胸倉を掴まれてビンタされてた件。あれ、凄いデジャブ。
「………………………………」
「………………………………」
いや、あの。何か言おうよ。流石に、訳も分からずハツられると、何にもできない。
「……………………どうして」
そう思ってると、彼女は感情を押し殺した様に震えた声を漏らした。
「…………どうして」
俺を見下ろす彼女の頬に、涙が…………。
「どうして、どうして何も言わなかった!!!」
…………どうして、か。
「……お前含めて、みんなの辛気臭い顔見んのが嫌だったんだ。『あと1年で俺は死にます』とでも言ってみろ、どうなったもんか、分かったもんじゃない」
多分、あの手この手を尽くして、みんなは頑張ってくれるのだろう。嬉しいことに。
だが、その結果を思うと。みんなの絶望する顔を見たくなくて。
「やらなきゃいけないことは、終わってたんだ。だから、せめて余興の人生は…………みんなと楽しく過ごしたかった」
「それが、それが後で真実を知らされて、余計な悲しみを産むと知っていてもか!!!」
「……………………」
そう言われると、言い返せない。結局、チェルシー師匠の元から逃げた時にやったことと、大差はないものな。
「…………悔しかったし、悲しかった。貴方の恩に報いることができず、置いていかれた様で」
「……すまない」
「嫌だ、赦してやるものか…………どれだけ、どれだけ…………」
倒れこみ、俺の胸に縋り泣く。
せめて、泣き止むまでは。それが、みんなを…………ナギサを泣かせた俺の責任だろうから。
『(…………おい白いの、これどういうことだ)』
『(…………知るか。地獄に落ちろ赤いの)』
『(何故だ!?)』
ふぅ、疲れたー。
というわけで、感想批評ダメ出しなど、ございましたらよろしくお願いしますー。