ハイスクールDevil×Dragon×Dhuman 作:しにかけ/あかいひと
…………授業参観は想像以上に過酷なミッションと成り果ててしまった。
俺は、『参観者の挙動』に気を配りながら、『妹の暴走』を防ぎつつ、『教師の突拍子も無い授業』を受けなければならなくなってしまった。
そして失敗したッ! 俺は馬鹿丸出しだったッ!
『相棒…………それ、お前が言う側だろう?』
「何か言ったか
『S・H・I・T……』
「……たとえ罠だとしても、その罠から抜け出せなかった以上は…私の負け……そういう意味よ…………」
「……また危ないセリフぶちかましてきましたねお嬢、というか誰のセリフでしたっけ…………?」
「…………ここまで言えば分かるわね、兵藤君?」
「あァ…………超高校級の???ですかァ…………」
「……美味しい……駄菓子が美味しい…………ふふっ、オッティモ…………」
「現実逃避しながらう○い棒をやけ食いするんじゃないよほた…………塔城チャン」
「ふふっ…………ぐすっ、田舎に行って何もかも忘れてしまいたいです…………」
「…………付き合ってあげるよ。悪くないと思うしね、駄菓子屋巡り」
「「「「似た声で遊ぶんじゃないそこの3人」」」」
「「「アッハイ」」」
とは言え、俺たちの傷は深かった。もう立ち直れなくなりそう。
そんな風に弱音を心の中で吐きながら、午前中の惨劇を振り返った…………
◆◆◆
あのあと3人に『余計なことは絶対にするな』と言い含めて、駆け抜ける様に学校へ向かい、到着。まっすぐ教室には向かわず、校舎裏へと。
「…………こんなことで虎の子の必殺技を披露することになるなんて」
『仕方無かろう、相手は無限の龍神だぞ?』
「デスヨネー…………っと」
隠蔽をこれでもか! と掛けながら軍手を身に付け、呪文を詠唱し始める。
「赤に染まりし我が心象、赤が棲みつく我が世界」
『我を染めし友の世界、我を巣食いし友の心象』
「一つは二つに、二つは一つへ」
『幻想は現実に、幻像は現像へ』
「世界を歪むるは我らが幻想」
『世界に現るは我らが意思』
「『此の心砕けぬ限り、我らが現想は永久に不滅也』」
【Boosted gear mirage blust!!】
詠唱完了。軍手から響くのはいつものドライグの声ではなく、甲高い合成音声。何故ならば…………
『ふむ、些か小さ過ぎるが…………まあ及第点か』
「というか大きかったら今は困る、切実に」
ドライグが、ミニサイズでバサバサと俺の眼の前で飛んでいるからな。
新亜種禁手『
ドライグは現在籠手に思いっきり封じられている。聖書の神が死んだとかなんとかで、システムの不調から多少は緩まってるけれども。
でもドライグの全ての情報はこの神器の中に封じられており、それを使えばドライグの身体は再現可能であり、理論上は作れる。そして、それにドライグの意識を転写すれば、赤龍帝:ア・ドライグ・ゴッホを復活させることができると思っていたのだ。
でも、俺を含めたドライグ解読班は絶望した。ドライグを構成している成分が、現代には存在しないのが幾らかあったのだ。錬金術も大得意なウチのママンに相談しても、5秒でお手上げになるレベルで、どういったものかを察して欲しい。
諦めた…………ところに先輩の1人がこんなことを言った。
『別にリアルに用意する必要なくね?』
目からウロコが出た。そういえば、そういう技術がグラールには存在していたのだ。
『ミラージュブラスト』…………ヒューマン、ニューマンが使える幻獣召喚術。しかしその正体は、『カーシュ族の秘術』、もっと言えば『レッドタブレットより伝えられた存在しない物をフォトンで再現する技術』である。オーパーツと言える技術で、当時のグラール文明では追い付かない…………と思いきや、細かく制限を設けることでそれをなんとかしてしまったのである。
ちなみに、キャストやビースト、デューマンにミラージュブラストが使えないのは、フォトンテクニックへの適性、フォトンの質などが問題らしい。もっと言うと、旧文明人に近い体質をしている種族…………もっと突っ込むと、今グラールに生ける人間のベースになっている、旧文明人ミカに近い種族と言えるか。旧文明の技術だしね、仕方ないね!(血涙)
まあそれはともかく、ミラージュブラストの技術を流用すれば、ドライグの身体の再現はできる。そう踏んで試行錯誤を繰り返しなんとか形になり、そこにドライグの意識を転写する…………というまでが今回の禁手である。
スペックに関しては、全盛期ドライグと同クラス以下だろう。今、ドライグにかつての必殺技は使えないらしく『倍加』『譲渡』『透過』の3つの能力と、そのアホみたいな身体能力の高さしかない。いや十分だと思うけど。
そしてこの技の性質と、『透過』能力の応用で、このドライグへの物理干渉は不可能である。概念ごとごっそり持ってく様な荒技しか効かないとのこと。そして、魔力か光力を持っているかしていないと視認すらできないのだとか。…………まるで
「エ○ーズ!」
『3 FREEZE!!』
「…………やるね、ドライグ」
『いつかやってくると思ったからな。ちなみに1から3までの能力は再現可能だ』
「マジでエコ○ズじゃないかビックリだよ」
ちなみに、ドライグの意識を転写している関係上、ミラージュブラスト状態の間神器の能力は使えるがドライグのサポートは受けられず、ドライグの協力が必要な『希炎耀く赤龍神帝の無限煌』は使えない。…………ついでに、『幻』属性の為にエーナからの評判はすこぶる悪い。
「…………というわけでドライグ、マジで頼むな? 一応俺も『複屈折幻影』使うけど」
『応、任された。お前はお前のすべきことをするがいい』
そう言って、ドライグは『透過』能力を使って姿を消した。…………こう考えると、『透過』も便利だな。訓練してみるか。
そう軽く現実逃避をしながら、俺は校舎の中へ足を踏み入れた。…………さあ、ここから先は戦場だ。
◆◆◆
…………初っ端から飛ばしてくれやがったぜ畜生! そう思わずにはいられなかった。
「さぁ、今日は紙粘土で好きなものを作ってみましょう! そういう英会話もある!」
1限目:英語…………先生が紙粘土を持って教室に入ってきた時点で何かがおかしいとは思っていた。…………まさか本当にこうなるとは思わなかったけどな!
「実際の高校はこういった授業をするのか」
参観者達の中から聞こえてきたヴァーリの言葉にツッコミを入れたい。普段はこうじゃないんです。先生なんか今日トチ狂ってるだけなんです。そういう英会話もある? ねーよ!
しかし、周りは既に順応して既に紙粘土をいじり始めている! …………やらなきゃいけない? いけないみたいですね後ろから突き刺さる両親の視線が痛い。
とは言え、何を作るべきなのか…………自分で言うのもアレだが、俺美術に関してはあんまり得意じゃないんだよな。モデルがあればそれを模写する形でそっくりにはできるんだけど。
…………なにをモデルにする? そう思ってもう一度周囲を見渡す。あ、ヴァーリだ。ヴァーリで思い出したけど、ヤツの大剣スティールハーツはそれなりにカッコいいし悪くはないか。よくメンテしたし、構造はよく知ってる。
作るものが決まればあとは簡単だ。適当に紙粘土をちぎり、適当な長さに延ばし、削る様に形を整えていく。
2分もしない内に形はできた。…………できたんだが、色が無いと些か味気ないな。よし、確か自前の絵の具があった筈だ。適当に魔力で出来上がったミニチュアスティールハーツから水分を飛ばし、固める。そして丁寧に丁寧に色を塗っていく。
「ん、できた。我ながらいい出来だ」
周りから感嘆の声と驚きの声が上がる。
…………しかし、剣だけじゃなんか寂しいな。いや、これはこれでいいんだけど、やっぱ武器って人が持ってなんぼなところあるし。
そう思ってもう一度後ろのヴァーリを見る。今日はなにかの制服のような白い服にストッキングブーツを履いたいつものではなく、誰の趣味なのかセーラー服である。
「ふむ……………………」
「な、なんだイッセー…………」
うん、ヴァーリに持たせようか。そう思った俺は、周りの視線や居心地の悪そうなヴァーリの様子が頭から抜け、作業に没頭し始めた。
20分…………気が付けば目の前にはスティールハーツを構える、いつもの格好のヴァーリの紙粘土フィギュアが完成していた。オプションで青薔薇を添えて。まあ胸に青薔薇のコサージュ、髪飾りにも青薔薇付いてるしこのくらい不自然じゃ無いよね。
満足して、頭が冷えて…………血が引いた。おい待て俺、なんか空気に乗せられてる上に、めちゃくちゃ見られてるぞ。
「す、素晴らしい! 兵藤君、君にこんな隠された才能があったとは!」
「あ、いやあの先生。別に才能とかじゃなくてこれは、」
そういうのでは無い、と続けようとしたらクラスメイトの男子の1人がかぶせる様に口を開いた。
「そのフィギュアのモデル、あの後ろの美人…………だよな。かなり親しげだし、もしかして…………イッセーのコレなのか?」
小指をたてる仕草を見て、違う! という前に、
「ああ、イッセーの恋人(にいつかなる予定)だ」
「おいヴァーリィィィィイイイイイッ!!?」
括弧、括弧の中まで言えよ!? いや言ったら言ったでそれはまた別の問題が発生しそうだけど!!
「イ、イッセー君に恋人!?」
「そ、そんな…………! 松田君や元浜君とのことは遊びだったの!?」
「執筆中の『木×兵』本がァ!!?」
「それでも、私は!
色々と待って欲しい君たち。ツッコミが追い付かんよ、ねぇ。
「羨ましいっちゃ羨ましいが、まあ妥当だろーな」
「ご近所ヒーローだし、顔も悪くないし。まあ色が白いけど」
「寧ろなんで今までいなかったのかが疑問という」
そして案外大人しい男子諸君にビックリだよ。
と、とりあえず誤解は解いておいたほうがいいよな、よし。
「あ、あのな君ら。別に俺らそんなんじゃなくて、」
「大切な約束を交わした仲、だな」
だから言葉足らず─────────ッ!!! したけど、色々としたけど!
「「「「「ま、まさかの許嫁!!?」」」」」
ホラァ!! 勘違いが加速するからさァ!!!
…………と、ここで不可視の何かが動いた。
「─────潰す」
微かに聴こえた妹様の声、そして何かが振り下ろされる音。
「(ドライグッ!!!)」
『(応ッ!!!)』
そして、俺の助けに応じたドライグが、その振り下ろされたナニカを受け止め、そのまま妹様と押し出しながら教室の外へと飛び出していった。
『向かってくるのか……逃げずにこの永那に近づいてくるのか……』
『近付かないと、貴様を止められないんでな』
…………ごめんなドライグ、エーナは任せた。でもネタに走ってるところ見ると余裕そうだから丸投げするね!
「(…………ふっ、計画通り。外堀はこれでさらに埋まったにゃ)」
「(駄猫、後でアイアンクローな)」
「(ひいっ!?)」
◆◆◆
…………とまあ、1限目から既に終わっていた。2限3限の数学と世界史は授業はまともだったがウチの両親がはしゃぎ過ぎてなんとも言えなくなり、4限の体育、ドッジボールのときは何故かどえむたいがーが混じってアヒンアヒンと喘いでいてぶっ飛ばすと同時に頭を抱え…………もうなんか疲れたよ、色々と。
「…………あ、食堂行かなきゃ」
今日、3人とも食堂で昼食済ませるって言ってたから、多分集まってるんだろう…………ヤバいなぁ、目を離すと余計なこと言われてたりしそうでもー怖過ぎる。エーナもちょいちょい不埒者狩りをしようとしてるからそれを止めるのにかなりの精神力と擬似フォトンが消費されてめちゃくちゃしんどい。これ以上は何も起きて欲しくないのである。
「あ、なら全員で行きましょうか。ね?」
そして心優しいお嬢は、俺の味方になってくれると同時に、みんなを巻き込むことにしたらしい。そして、俺と塔城チャンに目配せ。
「(私達だけ胃痛なんて、理不尽じゃない?)」
「(おっしゃる通り、俺たちだけ頭痛なんて間違ってます)」
「(…………みんなも思い知ればいいです)」
「「「(フフフフ…………)」」」
──────そして、その判断は間違っていたことを、俺たちは思い知ることになる。
「あ、貴方は…………あの時私を助けてくれた…………!!?」
「もしかして、あの時倒れてたハーフ堕天使の女の子…………?」
見つめ合う