ハイスクールDevil×Dragon×Dhuman   作:しにかけ/あかいひと

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くっそ、遅々として全く進まねぇ……………!


その12-監督×雑談×不服

◆◆◆

 

 

この命を、余興(ボーナスステージ)だなんて死んでも言えないし、言わない。

 

けれど刻一刻と、運命を告げる時計の針は残酷に、残り時間を示す。

 

 

◆◆◆

 

 

ニート吸血鬼:ギャスパー・ヴラディの解放で、いい意味でも悪い意味でも、オカルト研究部再始動の起爆剤になった。自分よりヤバいやつを見てると、自分がしっかりしなきゃと思うアレである。

 

「ギャスパーくん。僕達が監視する以上、前のような精神的に不健康な生活は送れると思わないことだ」

 

「まっさか、ぼこぼこにされてた側の俺らが教官側に回るとはなぁ。お、減速すんなよ後輩くん、俺の拳が火を噴くからな」

 

「全くだ。ああ待ちたまえギャスパー一年生。別に逃げてもいいが、その場合、貴様がネトゲで積み上げた赤箱(レアドロップ)が無に帰すことを重々承知の上で行うように。無論、バックアップデータなんぞ残す余地はない」

 

「ヒィィイイ!!? 酷いです、あんまりですぅ! というか祐斗センパイ前は凄く優しかったのにィ!」

 

……………一歩間違えたら後輩いじめの現場にも見えんことはないが、そのときはそのときだ。

 

というわけで現在俺たちは夜の学校、その校庭にてギャスパーをしごいていた。いずれは彼らも俺と同じくらいの教官になって欲しいので、今回は大まかなメニューだけ投げてオカ研男子トリオに任せることにした。教えることで身になることもあるわけだしね。

 

『しかし、これでは根本的解決には至るまい。あの吸血鬼が堕したのはその心根の形に因るものではなく、自身の為すべきことを為し遂げたが故の反動であろう? 最低限の生きる意味は持ち合わせているようだが、何かしらの目標を与えてやらんと、あいつは怠惰のままではないか?』

 

うん、そうだね。

でも、怠惰でいいと思うな。

 

『相棒貴様、拾い食いでもしたのか?』

 

「不徳を肯定するのがそこまでおかしいか貴様。というか、寧ろ俺はアウトローだっつーの」

 

正直、褒められた人間性してるとは思わんしな。それはともかく、だ。

 

「動くべきときに動ける男であれば、俺は何も言わないよ。むしろ、怠惰を貪れる程、平和な証拠だろう? いいことじゃないか」

 

『…………少しもすれば、そうも言ってられなくなるだろうがな』

 

「まあだからこそ、だからこそ今ああして追い立ててるわけさ」

 

ギャスパーは、自分にできることなら過程を殺して結果だけを残す。でも、できないことはその限りではない。

 

いつかの1ヶ月間、俺は確かにあいつを鍛え上げた。そしてその方法は、過程を殺してはいるものの、現在のギャー助の中にしっかりと息づいている。

 

だが、それでは間違いなくSEEDからは生き残れない。今までのメニューでは、次のステージに進めない。

 

「幸い、目標は直ぐに見つかると思うさ。というか、朧気ながら目標を持って、訓練に励めているよ恐らく。逃げに徹すればあの三人を撒けるのに、未だ過程を殺さずにビービー泣きながらしごかれてるのがその証拠だ」

 

『……………単にゲームを人質に取られてるだけにしか見えんのだがな』

 

そうとも言う。

 

まあ何はともあれ、いずれは死ぬそのときまで幸せにゆるりとできる世界になっていればいいな。ギャスパーの言う通り、あいつは確かに一生分働いたと言っても過言じゃない。ラスボス倒した後くらい、幸せなボーナスステージはあって然るべきだ。……………残念なことに、それを拝むことはできなさそうだけどな、俺は。

 

『……………相棒』

 

「気にするな、湿っぽいのは苦手だ。どっちにしたって、戦狂いの俺にはロクな最期は待ってない。だからせめて、この命尽きるそのときまで、自分の脚で歩き続け、前のめりに倒れこむだけだ」

 

それが歩みの記録を示す者(ショウ・ウォーカー)だった者の願望なのだから。

 

「ふぇぇぇええええん! やっぱりリアルはクソゲーだぁぁぁぁぁああああ!」

 

…………ともあれせめて、少しは矯正しないと死んでも死にきれないな、うん。

 

と、そんな風に黄昏てると、殺気を感じたので、適当に気合いを入れてみた。

それだけで、俺を突き刺す筈だった何かを弾く音が、リィン! と響く。

 

「おう元ちゃん、不意打ちとは随分ふてぇことしやがる」

 

「おう師匠、いつでも自分の首を狙っていいって言ったのはどこのどいつだ?」

 

おっしゃる通り……………と少しげんなりしつつ、殺気の主に顔を向ける。そこにいたのは、燕尾服にモノクルと、狙ってんじゃないのか? と言わんばかりにパリッと決めた執事風の元ちゃんがいた。

 

「……………えっと、何故執事?」

 

「単純に制服だよ。一応シトリー家次期当主の執事として拾われたからな、俺は」

 

まあそこに趣味が全く入ってないとは言えないけどな……………と言いながら、後頭部を掻く元ちゃん。すこし恥ずかしいみたいだった。

 

「んで、あの女装ヤロウが噂の封印されてたグレモリー先輩の僧侶か…思わず気になって来てみたはいいが……」

 

「なにか思うところでも?」

 

「今の俺じゃ歯が立たねぇな、アリャ」

 

そういって、微妙に顔を悔しげに歪める彼を見て、思わず吹き出す。

 

「……何がおかしい?」

 

「フフッ……………いやぁ、俺らの中で一番大人しくて戦闘欲のない元ちゃんでも、そうなるんだねぇって思うと嬉しくてさ」

 

「ケッ、俺だって神器はドラゴンのだっつーの。強さには人一倍敏感なつもりだ」

 

『安心しろ、匙元士郎。貴様も立派な理不尽(ドラゴン)だ、いろんな意味で』

 

「赤龍帝のお墨付きたぁ、俺もまだまだ捨てたもんじゃねぇな。…………ハァ」

 

言葉の内容に反して、元ちゃんはテンションが低い。自分の腕と、俺の左腕を交互に見ては、更にため息を。

 

「正直、相棒に意識がある師匠が羨ましいぜ…………ミンチレベルで分割されてるからなのか知らねぇけど、俺の龍脈に封印されてるヴリトラ、ウンともスンとも言わねぇからよ」

 

ふぅむ、生まれたときから意識があったから良くは分からないけれど……………まあ、ドライグに意識がなかったら、というもしもを想像してみると、元ちゃんの気持ちも少し分かる。自分と一生を共にする相棒なのだ、意識のあるなしで価値は変わらないけれども……………なんと言えばいいのか分からないが、『だからこそ』なんだよな。

 

と、ウンウンと頷く俺とは反対に、ドライグは渋い声をあげた。

 

『元士郎よ、ヴリトラは……………否、邪龍とは魂すら縛らねばならぬ程、しぶとい存在だということだ。……………お前に限って、乗っ取られるという心配はしていないが、お前は俺の知る悪魔の中で最もしぶとい。ロクでもないことにならんか、実に心配だ……………』

 

「え、なにドライグ。びびってんの?」

 

『ぶちのめすぞ相棒。俺が、この赤き龍の帝王が強敵を前に武者震いはすれど、怯えることがあるものか! 俺が怯えるものがあるとすれば、それは説明することさえ憚られる突拍子もない現象だけだたわけ!』

 

「突拍子もない現象、ねぇ?」

 

何故だろう、どこか遠い異世界で、胸部に強い恐怖を覚えるドライグが居るような気がした。

 

『……………強いて言うなら、魔境(グラール)出身者のやらかすことはある意味でそれに近いな。何が起こるか分からない故、胃をよく痛める』

 

「ああ、師匠と関わると色々とロクなことにならねぇからな」

 

酷い言われようである。

 

「ああ、その気持ちよぉく分かるぜドライグ。俺もヴァーリ相手に随分と手を焼かされた……………」

 

「そりゃあ、ヴァーリはマジモンの天才だからな。あの剣技は、俺が唯一自分のモノに出来なかった人外領域にあるって断言できるね……………って、」

 

いつのまに現れた、新婚提督!!?

 

「普通に校門から歩いてきたが?」

 

「反応なかったぞこのオッサン!?」

 

「ハッハー! そこのヴリトラの神器持ってるお前、俺はあくまでイケオジだ」

 

いや、それはどうでもいい。イケオジだろうがちょいワルだろうがまるでダメなオッサン、略してマダオだろうがどうでもいい。問題は、俺と元ちゃんの張った網をどうやって掻い潜ってきたのか、だ! 最近はビックリするほど警戒してるというのに!

 

「うちの娘が、お前を驚かすなら…………と、世界からの認識からずらしてくれたんだよ」

 

「…………切ってずらしたってか。もうわけわかんねぇな」

 

恐らく感覚的にやってんだろうが、俺がやろうとすると恐ろしいほどの集中力を要求されるだろう。具体的に言うと無限の龍神化という力を無駄にもて余す状態で、吹き出す焔を針の大きさ程度の最小の出力を維持しつつエーナ1/1と戦うぐらいの。そもそも認識を切ってずらすってのは、自分の一部……………この場合『気配』ってことだが、それを別次元、相手が認識できない領域にずらすってことなのだ。この『ずらす』ってのが厄介で、斬り飛ばしてしまうのは楽なのだが、そうしてしまえば取り返しがつかなくなるのに対し、ずらしたものは、引っ張ったらもとの位置に戻すことで取り返しがつくのだ。……………どうすればそんなことが、感覚でできるんだろうね?

 

「そもそも別の次元へ楽に斬り飛ばせると豪語できる師匠も大概だとは思うぜ?」

 

「いや、切るじゃなくてもいいけれど、別次元に何かを飛ばすのは字面以上に楽だぞ? 空間に穴開けたり切れたりさえすれば、そっから先はトントン拍子だ」

 

グラールでは空間をぶち抜くスピアのフォトンアーツという形で普及化すらされている。本当に、本当に、難しい話じゃないからね? ちょっと魔力さえあれば、フォトンアーツなしでも同じことが誰でもできるんだから!

 

『「これだからグラールは!」』

 

だから、その扱いは非常に解せないんだが!!?

 

 




わりとグラールって魔境だと思います、切に!
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