インテリビレッジの座敷童 ~フェイト・ロンダリング~   作:白滝

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LAST GAME;1巻@皆殺しの場合

(陣内忍)

 

 

 ビクンッッッ!!と、俺の頭が強烈に揺すぶられた。

「が、ハ、ぁ……な、にが……!?」

 思わず廊下の壁に手をついて深呼吸しちまう。

 頭ん中に疼く痛みと共に、知らないはずの情報が俺の頭に溢れてきやがる。

 死んだ自分自身。死んだ菱神舞。死んだ隼叔父さん。

 ……だけじゃねえ!?

「こ、れは……そ、そうか、百鬼夜行が……ッッ!!」

 俺が体験した記憶だけじゃねえ!!

 隼叔父さんや菱神舞が、『運命を改変する前の世界』で経験した『がしゃどくろ』事件の記憶まで、俺の脳内へ情報が送られている。

 そして、俺の脳内を埋め尽くすノイズの正体――――コックリさんの情報改変『パッケージ』の事も!!

「これが、座敷童が命懸けで繋いでくれた情報……!?」

 情報の波が押し寄せる。クラクラと眩暈するような気分に襲われた。

「い、一気に色々な情報送り込まれても分かんねえよ……何がどう繋がってんだ!?」

 全身から嫌な汗を流しながらそう呟いた時、俺の耳に単調な電子音が響いた。菱神舞に手渡されていた衛星電話だった。

 通話ボタンを押して耳を澄ます。

『核心に触れましたね』

 ズキリ!!と俺のこめかみを痛みが走り抜けた。同時、体験した事もない記憶が頭ん中を埋め尽くした。

 俺は、コイツを知っている――――!?

 知らないはずなのに、『本来あったであろう世界』で、俺はこいつをブッ倒している――――!?

「テメェは――――偽祝ッッ!!」

『その反応……やはりあなたも「2週目」ですか。やれやれ。座敷童を完璧に改造し直したせいで、あなたが付け込む隙まで生まれてしまったのは想定外でした。まさか、自らを犠牲に最後の超常を振り絞るとは』

「……そうか、そうだったのか、畜生!!全ての視点の情報が集まったお蔭で、ようやく事件の全貌が見えてきやがった!!」

『ほう、面白い事を言いますね』

「ネタばらししてやろうか?テメェら百鬼夜行の鎖国派は、『本来の世界』で俺にぶっ潰されてる。この『■■■■■■■■』をスマホの画面に映して、それを叩き割ってな!!だが、テメェらは生き残ってた。そして、テメェら鎖国派の残党共はこう考えた訳だ――――『もう勝ち目がない……だったら、世界をやり直そう』ってな」

『ふふふ……ご名答。そうよ。あなたに敗北したあの日、私達は運命をやり直す決意をした。そのために、試製三九式座敷童を改造し直す事も』

「テメェらが『黄泉帰り』なんてパチモン組織に変装して、がしゃどくろの死者蘇生『パッケージ』を使ったのもそのためだろ?大昔に座敷童を改造した技術屋の故人達を生き返らせて、当時の改造技術を修得したんだ。……大方、覚せい剤密売のヤクザ連中にセパレート型の『パッケージ』を横流ししたのは、がしゃどくろ本体をヤクザ側に操らせる事で、妖怪本人にバレる事を恐れたからじゃねえのか?いつぞやの、油取りに乗っ取られたタイムトラベル『パッケージ』みてえにな!!」

『なるほど、そこまで到達していましたか。……ですが、あなたに何ができますか?』

「ハッ、何言ってる負け犬風情が。俺はもう既にテメェらには勝ってんだよ。俺が『■■■■■■■■』さえ叩き割れれば―――――」

 言って、気付いた。

 そう、だ。

 確かに俺は「1周目」の世界で、座敷童の未来予知『パッケージ』の同期現象を看破し、『■■■■■■■■』を叩き割る事で奴らの飛行機を墜落させた。

 でも、今はできない。

 なぜなら、

『そう……この「2周目」において、我々はコックリさんを利用した情報改変「パッケージ」を使っている。ただ運命をやり直すだけなんて腑抜けた茶番などする気はありません。あなたに逆転など許さず徹底的に封殺し切る』

 そう、なのだ。

 俺の唯一の勝ち筋。

 菱神舞が俺に託した、この事件の最初で最後の突破口。

 それが、

 その情報が、封殺されてしまっている。

『残念ながら、我々の「全翼機の見取り図」は「パッケージ」のNGワードに設定させて頂きました。あなたから発信される全ての情報は、「コイン」となって情報の誘導対象になります』

「く、そが……ッッ!!」

『あなたがどれだけ情報を発信しようが、コックリさんの情報改変「パッケージ」は全てをノイズに書き換える。もはやあなたに武器はない。大人しく諦める事です』

 どうしようも、なかった。

 喋っても無駄。

 描いても無駄。

 比喩や暗喩でも無駄。

 頭ん中まで情報を書き換えられる。

 そんな状況で、どうやって『■■■■■■■■』を伝えればいいッッ!?

『自覚しなさい。あなたはただの高校生です。これ以上私達の世界に野暮な干渉をしなければ、命ぐらいは見逃す事を約束しましょう』

「で、できるか……黙ってじっとしてられる訳ねえだろうが!!俺には座敷童の命がかかってんだ!!この世界をぶっ壊して『本来あった世界』に戻さなきゃ、あいつにはもう会えねえ!!そのためにも、テメェらは今ここでぶっ潰す!!」

『そうですか……せめて、病魔に特攻するような馬鹿な真似をしない事を祈っております』

 そう言って、偽祝は通話切った。

「上等じゃねえか……!!」

 俺だって、負ける訳にはいかねえ。こんなところで死んでたら、『本来の世界』のみんなに二度と会えなくなっちまう。

 そのためには、コックリさんの情報改変『パッケージ』を突破し、なんとかして『■■■■■■■■』を叩き割らなきゃいけねえ。

 だが、どうやって?

 どんな手段を用いても情報を封殺する『パッケージ』。

 これを打ち破る方法。

 考えろ、考えるんだ!!

 俺から発信される『■■■■■■■■』をNGワードに設定し、これをコインという記号に置き換えて誘導する。

 おそらく偽祝の野郎は、コックリさんのお呪いに対応させるように、平仮名50音の紙を何かの記号に置き換えているはずだ。そのコマンド実行板を発見し、細工すればNGワードを発見できるかもしれねえ!!

「は、はははは……はははは…………無、理だ…………」

 そんな大事なモン、敵がこのホテルに置き去りにする訳がねえ!!

 このホテルに置いてあるのは、座敷童の未来予知『パッケージ』に使用するために用意していた『ホテルの見取り図』や『■■■■■■■■』ぐらいだ。

 コックリさんの『パッケージ』は今頃、偽祝のいる全翼機の中にでも安置されているんだろう。

「どうしようも、ねえ……」

 今からホテルの外に飛び出して、全翼機を墜落させに行くか?

 馬鹿言え。できる訳がねえし、そもそもホテルの外に出たら警察隊に銃殺されちまう。

 じゃあ、今ここで俺に何ができる。

 『情報が封殺される』この状況で、非力な俺に何ができるってんだ!?

「ちくしょうが……ッッ!!」

 思わず、八つ当たり気味に壁を殴りつけた。

「せめて、俺以外の人に情報が伝えられたら……」

 言いながら、それが不可能である事に気付いていた。

 例え俺から情報を伝えられたとしても、その人から発信される■■■■■■■■も『■■■■■■■■』へとノイズに書き換えられちまう。

「数に意味はねえ……」

 思わずそう呟いた。

「ん……?」

 そして、心に何かが引っかかった。

「『数』…………?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺はフロントの奥の部屋に来た。『本来あった事件』で経験した記憶によって、俺はそこにホテルの見取り図があっる事を知っていた。

 ちょうどそこで衛星通信電話に着信が入った。

『警告はしました。それを踏まえた上でここにやって来たというのならば、情けをかけるつもりはありませんが?』

「上等だぜ。逆に言えばよ、俺がここで『■■■■■■■■』を描いて破り捨てればお前は『2周目』の今回も負けだぜ?」

『残念ですが、仕方ありません。無策で死地に赴く蛮勇には敬意を表し―――――』

「何言ってやがる。俺は用意してきたぜ…………一発逆転の秘策ってヤツをよ」

『面白い冗談ですね。コックリさんの情報改変「パッケージ」を突破する術はありません』

「いいや、できるね」

『術師でもない、素人のあなたに?』

「ああ」

『まさか病魔に勝つなんて妄想でも?』

「まさか」

『なら、「コックリさんの紙」に細工でも?』

「素人にできるかよそんな事。第一、どうせこのホテルにゃ置いてねえんだろ?」

『では、どうやって?』

 偽祝は、嘲笑するように疑問を投げつけてきた。

 だから俺は、こう答えた――――――

 

 

 

 

 ――――――スマホで。

 

 

『――――「■■■■■■■■」「■■■■■■■■」「■■■■■■■■」「■■■■■■■■」「■■■■■■■■」「■■■■■■■■」「■■■■■■■■」「■■■■■■■■」「■■■■■■■■」「■■■■■■■■」「■■■■■■■■」「■■■■■■■■」「■■■■■■■■」「■■■■■■■■」「■■■■■■■■」「■■■■■■■■」「■■■■■■■■」――――』

 

 それを聞いた偽祝が大声で馬鹿にするように笑った。

『くく、あはははっははははは――――!!携帯電話のボイスレコーダー機能を使って、自分の声を録音してきたんですか?……で?それがどうかしましたか?コックリさんの情報改変「パッケージ」は、あらゆる情報を封殺します。例えどんな媒体を介しようと、NGワードの設定から逃れる事はできない。唯一無二の突破口は、ノイズにまみれて消えるのです!!』

「じゃあ、これならどうだ」

 そう言って、俺はもう一台のスマホを取り出した。隼叔父さんから借りてきたスマホだった。

 もう一台のスマホでノイズまみれの音声を録音し、再生する。

 

『――――「■■■■■「■■■■■■■」「■■■■■■「■■■」「■■■■■■■■」「■■■■■■「■■■■■」「■■■■■■「■■■■■」「■■■■■■■■」「■■「■■■■■■■■■」「■■「■■■■■「■■■■「■■■■」「■■「■「■■■■■」「■■■■」「■■■■■■■「■■■「■■■■」――――』

 

『何をするのかと思えば……小学校の音楽の授業でもやりたいんですか?たかが発信源が2つに増えた程度、何も変わりません。「カエルの学校」で輪唱をする年齢はとっくに過ぎたと思うのですが?』

「まだまだいくぜ」

 そう言って、俺は3台目のスマホを取り出した。惑歌から借りてきたやつだ。

 俺のスマホと隼叔父さんのスマホ、両方から輪唱するように発信されるノイズまみれの音声を『同時に録音』し、再生する。

 こうすれば、惑歌のスマホからは2台分の音声が発せられる事になる。

 しかし、偽祝は全く意に介さなかった。

『で?』

 あくまで冷たく言い放つ。

『たかが4つに増えた程度で、何だと言うのです?逆転の目は潰えました。同情はここまでです――――やりなさい、病魔』

 轟ッッ!!と、廊下の奥から闇のように深い黒い霧が迫って来た。

 しかし、俺の数メートル先で、ガクンと失速する。

 『本来のあった事件』の記憶では、確か菱神舞が足止めをしていてくれたはずだ。

 すると、闇のような霧から、一枚の額縁が放り投げ出されてきた。

 

 ――――『■■■■■■■■』だ!!

 

 しかし、俺が■■■■■■■■を認識する前に、『■■■■■■■■』というモザイクめいたノイズに絵が掻き消されてしまった。

『「菱神の女」、ですか。本当に鬱陶しい。彼女さえいなければ、ここまで面倒な事にはならなかったのに。変に勘が良いと手を焼きます……が、その抵抗も虚しいまま、呆気なく幕引きといきましょう』

「それはどうかな?テメェは勝ちの目が潰えたと言ったが、それは正確じゃあねえ」

『はい?』

「勝ちの目は自分で作るモンだ。こういう風にな」

 そう言って、俺は自分のスマホで新たに録音を始めた。

 隼叔父さんのスマホ(俺1人分の音声)+惑歌のスマホ(俺2人分の音声)、合わせて3人分の俺の『■■■■■■■■』という単語が発信されている、それをだ。

『だからそれがどうし―――――いや、ちょっと待て……』

「気付いたか?そうだ。スマホが3台あれば、2台で音声を発信して残り1台で録音作業できる。こうすれば、『無限に音声人数を増やしていく』事ができるんだよ!!」

『こ、れは―――――まさか――――』

 偽祝が呻き声を発する前に、変化の予兆が現れた。

 スマホから発信されるノイズまみれの音声に、変化があった。

 

『――――「■■「■■■「■■「■■■■「■■「■■■」「■■■■■■「■■■」「■■■■■■■機■」「■■■■■■「■■■■「■「■「■■」「■■■取■■■「■■■■■」「■■■「■■■■■「■■」「■■「■■■■「■■■■■■」「■■「■■■■■「■■■■「■■■■」「■■「■「■■■■■」「■■■■」「■■■■■■■「■■全「■■■■」――――』

 

『NGワード設定から漏れて、情報が発信されかかっている……!?そんな、馬鹿な!?』

「単純な仕組みだろうが。コックリさんの情報改変『パッケージ』は、俺から発信される『■■■■■■■■』って情報を『コイン』という記号に置き換えて誘導する。そうする事で、情報をノイズまみれに書き換えて封殺する……でも、それって『コイン1枚』に対してだろ?」

『なん……ですって……!?』

「そもそも、コックリさんのお呪いってのは、たったの平仮名50音しかないコマンドで、たった1枚のコインを誘導する儀式だ。

 

 

 ……だったらよ、紙の上にコインを1000000000000000000枚ぶち撒けちまえばいい」

 

『………………………………は?』

「10枚なら捌けるかもな。100枚ならちょい誘導が遅れるかもな。1000枚ならコックリさんも疲れてくるんじゃねえのか?10000枚なら手に負えねえじゃねえか?100000枚ならどうだ?1000000枚ならどう頑張ったって無理だろ?」

 そう言ってる間にも、俺は3台のスマホで録音作業をループして加速度的に『陣内忍の音声』を量産する。

 

『――――「■■「■■■「■■「■■■■「■■「■■■」「■■■■■■「■■■」「■■■■■■■機■」「■■■■■■「■■■■「■「■「■■」「■■■取■■■「■■■■■」「■■■「■■■■■「■■」「■■「■■■■「■■■翼機■」「■■■■■■「■■■■「■「■「■■」「■■■取図■■■「■■■■■」「■■■「■■■■■「■■」「■■「■■翼機の■■「■■■■■■」「■■「■■■■■「■■■■「■の見取■■■」■■■」「■■「■■■■■「■■■■「■■■■」「■■「■「■■■■■」「■■■■」「■■■■■■■「■■全「■■■■図」――――』

 

『情報が漏れ始めて……ッッ!?そ、そん、な、馬鹿な……あ、ぁあ、ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッッ!!!!』

 絶叫する偽祝の声を聞きながらも、俺は録音作業のループを繰り返す。

 2人分が3人分に。

 3人分が5人分に。

 5人分が8人分に。

 8人分が13人分に。

 13人分が21人分に。

 21人分が34人分に。

 34人分が55人分に。

 55人分が89人分に。

 89人分が144人分に。

 144人分が233人分に。

 233人分が377人分に。

 377人分が610人分に。

 610人分が987人分に。

 987人分が1597人分に――――

 

『――――「■■「■■■「■■「■■■■「■■「■■■」「■■■■■■「■■■」「■■■■■■■翼■」「■■■■「■■「■■■■「■■「■■■」「■■■■■■「■■■」「■■■■■■■機■」「■■■■■■「■■■■「■「■「■■」「■■■取■■■「■■■■■」「■■■「■■■■■「■■」「■■「■■■■「■■■■■■」「■■「■■■■■「■■■■「■■■■」「■■「■「■■■■■」「■■■■」「■■■■■■■「■■全「■■■■」■■■「■■翼機の■■「■「■「■■」「■■■取■■■「■■■■■」「■■■「■■■■■「■■」「■■「■■■■「■■■■■「■■「■■■■「■■「■■■」「■■■■■■「■■■」「■■■■■■■機の見■」「■■■■■■「■■■■「■「■「■■」「■■■取■■■「■■■■■」「■■■「■■■見取■■「■■」「■■「■■■■「■■■■■■」「■■「■■■■■「■■■■「■■■■」「■■「■「■■■■■」「■■■■」「■■■■■■■「■■全「■■■機■」■■」「■■「■■■■■「■■■■「■■■■」「■■「■「■■■■■」「■■■■」「■■■■■■■「■■全翼機「■■■■」■■翼■■「■「■「■■」「■■■取図■■■「■■■■■」「■■■「■■■■■「■■」「■■「■■■■「■■■■■「■■「■■■■「■■「■■■」「■■■■■■「■■■」「■■■■■■■機の■」「■■■■■■「■■■■「■「■「■■」「■■■取■■■「■■■■■」「■■■「■■■見取図■■「■■」「■■「■■■■「■■■■■■」「■■「■■■■■「■■■■「■機の見取■■■」「■■「■「■■■■■」「■■■■」「■■■■■■■「■■ホ「■■■■」■■」「■■「■■■全翼機の見■■「■■■■「■■■■」「■■「■「■■■■■」「■■■■」「■■■「■■「■■■「■■「■■■■「■■「■■■」「■■■■■■「■■■」「■■■■■■■翼■」「■■■■「■■「■■■■「■■「■■■」「■■■■■■「■■■」「■■■■■■■機■」「■■■■■■「■■■■「■「■「■■」「■■■取■■■「■■■■■」「■■■「■■■■■「■■」「■■「■■■■「■■■■■■」「■■「■■■■■「■■■■「■■■■」「■■「■「■■■■■」「■■■■」「■■■■■■■「■■全「■■■■」■■■「■■全翼機の見■■「■「■「■■」「■■■取■■■「■■■■■」「■■■「■■■■■「■■」「■■「■■■■「■■■■■「■■「■■■■「■■「■■■」「■■■■■■「■■■」「■■■■■■■翼機の見取図■」「■■■■■■「■■■■「■「■「■■」「■■■取■■■「■■■■■」「■■■「■■■見取■■「■■」「■■「■■■■「■■■■■■」「■■「■■■■■「■■■■「■■■■」「■■「■「■■■■■」「■■■■」「■■■■■■■「■■全「■■■機■」■■」「■■「■■■■■「■■■■「■■■■」「■■「■「■■■■■」「■■■■」「■■■■■■■「■■全翼機の見取図「■■■■」■■翼■■「■「■「■■」「■■■取図■■■「■■■■■」「■■■「■■■■■「■■」「■■「■■■■「■■■■■「■■「■■■■「■■「■■■」「■■■■■■■■■「■■全翼「■■■■」――――』

 

 

 それは既に声ではなかった。

 音の大津波。

 もはや、人間の滑舌と肺活量の限界を超越した規模で。

 輪唱なんて次元は超えて、声を声で叩き潰すような圧倒的な『陣内忍の声』が、ビリビリとホテルを震わせるような振動を発信する。

 情報が発信されかける度に、手元ある『■■■■■■■■』の額縁にノイズが走り、俺が幻覚で見ていた映像が浮かび上がる。

 もう少し!!

 もう少しで、コックリさんの情報改変『パッケージ』を処理落ちさせて、この額縁が普通の絵に戻る!!

「搦め手なんて要らねえ!!100で駄目なら1000で潰す!!1000が駄目なら10000で潰す!!……力任せのゴリ押しだァ!!お上品な解体なんて面倒臭え――――

 

 ――――真正面からブチ抜くぜ!!」

 

 ついに『パッケージ』の処理速度を、量産され続ける『陣内忍の声』が追い抜いた。

 圧倒的な声の大津波がホテル一体を支配する。

 モザイクがかかったようにノイズまみれだった額縁に、『全翼機の見取り図』がくっきりと浮かび上がった。

「できたぜ、弱点」

 奇しくも。

 その時、俺は『本来あった事件』のあの時と同じ台詞を喋っていた。

 絶句した偽祝を置き去りにして、とどめを刺す。

 

「落ちろよ百鬼夜行、地の底まで!!」

 

 重たい衛星携帯電話の底部を、思い切り額縁上の『全翼機の見取り図』に叩きつける。

 ビキリ、という破砕と共に、電話の向こうから乱雑なノイズが響いた。

 

 

 その日、百鬼夜行の鎖国派の夢は潰えた。

 やり直したはずの「2周目」の世界で、2度とないと思っていた全翼機の墜落に遭い……それも、たった1人の一介の高校生に手玉に取られる事によって。

 

 

 同時。

 運命に亀裂が走った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(座敷童)

 

 

「あれ、こ、ここは………?」

「ようやく、目覚めたのね、忍」

 からぶき屋根の縁側で私に膝枕されていた忍が、がばっと跳ね起きた。

 頭をブンブンと振って困惑した表情を浮かべている。

「あれ!?……あれ、なんかすげー怖い夢を見ていた気がしたような……?」

「寝ぼけてるの、忍?もう昼ご飯の時間なんだから、いつまでもグータラしてると太るわよ」

「お前に言われたくはねーよグータラ妖怪!!本ッ当にお前は家事も何もしねえな!!」

 そう言いつつ、不思議がりながらも忍は自室に戻って行った。

 

 

 ……何もしない、ね。

 

 忍は、今回の一件を覚えていない。

 あの百鬼夜行の鎖国派の残党が、私を改造しに来た『2周目の風化村の事件』を忘れている。

 というか、度重なる運命改変で訳分からないほど歴史が改竄されちゃってるし、当人である私自身も正確には把握してない。そもそも、運命を改変した時点で『あっちの世界』じゃ私は死んでた訳だし。

 破損品の『試製三九式座敷童』を使ったせいか、因果の整合性も不完全みたいね。

 『2周目のあっちの世界』は、忍が鎖国派を消滅させた瞬間に「そもそも鎖国派の残党は未来の座敷童を改造してやって来た」という時系列の整合性が矛盾したタイムパラドックスが発生し、その事実に耐えられずに『あっちの世界線』ごと消滅しちゃったっぽい。

 結論から言うと、この事件(ものがたり)は存在しなかった事になった訳ね。

 仮に一直線に歴史が続くこっちの世界を『本編』と仮定したら、消滅した『あっちの世界』は二次創作みたいなものかしら?

 自己犠牲の如く華々しく忍のために死んだつもりだったけど、運命が改変されて、『コックリさん』騒動から始まり菱神舞や隼の『がしゃどくろ』事件まで含めて全部がなくなっちゃったってのは、一抹の寂しさを感じる。

 結局、最後に残ったのはいつも日常だけで、私が彼を護るために紡いだ思いは、誰に知られる事もない。

 私の思いに、彼が気付く事は、ない。 

「おーい、何もしない座敷童様よー。早く来ねーと飯が冷めるぞー」

「はいはい」

 忍の呼びかけに答え、渋々と縁側を後にする。

 

 

 座敷童は何もしない。

 今はそう思われても別にいい。

 でも、いつか。

 あなたのために費やした、想いを。

 いつの日か…………

 

 

 

 

 

 

  ~完~

 

 

 




活動報告にて創作引退したとか宣言した癖に、図々しくも帰って来てすみませんでした!!
許して下さい、インテリ5巻のA面のラストに痺れてしまい、気が付いたら書いていたのです……!!
一応は、これが私の10作目の二次創作となりますね。

以下、恒例のネタバレあとがきタイムになります。





・忍パート
 「舞台設定を考えるのが面倒臭いなー。学校で事件起こせないかなー」とぼんやりと考えた結果、コックリさんが登場する事になりました。
 同じく学校の怪談繋がりで、実はメリーさんを登場させてみて、「忍が電話を2台用意して(互いのスピーカーとマイク部分を合わせて)メリーさんの電話を相殺させてやっつける」いうシナリオも妄想してはいたんですが、ピンチっぽく演出しにくかったので没案になりました。
 また、7巻にて惑歌が渚を「ナントカ渚ー」と呼んでいるので、この二次創作では2人の距離感が原作本編と若干違う気がしましたが……そこはご容赦下さい(汗)
 ちなみに説明し切れなかったので補足なんですが、コックリさんが忍達を襲った理由は「自分の特性を利用したパッケージで悪い事をしようとしている連中を懲らしめるため」でした。百鬼夜行鎖国派の残党一派(というか偽祝)がコックリさんの性質を切り取り情報改変『パッケージ』を作った事に、コックリさん当人も気付いていました。そこで、コックリさんは自分をお呪いで呼び出した奴らが『パッケージ』を作った犯罪者(偽祝)だと思い込み、襲いかかっていた訳です。……実際には、全く関係のない無実の忍でしたww

・舞パート
 インテリSSを書く気が微塵もなかった去年頃に、病院のトコを1シーンだけ書いたのがこの二次創作の始まりでした。以降、インテリ5巻を読んで、投稿するために忍パートや隼パートを付け加えていった感じですかね。
 舞はインテリ3主人公の中では一番好きなんですが、何故か二次創作でも本編同様に敗北ばっかでした……どうしてこうなった。おかしい、一番好きなのに……ww(汗)
 舞パートの敵役は皆キャラが濃くて好きなので、機会があればまた原作本編も再登場して欲しいです。ほぼ死んでますが。

・隼パート
 「ミステリー物を短編で書くのは無理やろ!!」と一番苦労しました。主に文字数的な意味で。無駄に説明ばっか増えるので、文章を減らす作業が多かったです。
 というか、ミステリー物なんて私に書けるはずもなく、それっぽい雰囲気を匂わせる事に必死でした。
 隼さんと艶美ちゃんのコンビが好きなので、ここぞとばかりにイチャイチャさせてみました。早く2人には結婚して欲しいです。

・最終パート
 当初から運命改変ネタのシナリオを構想していたんですが、まさか原作7巻本編でも運命改変ネタが来るとは全く予想しておらず激しく焦りました。それも、7巻の原作本編はめちゃくちゃ面白くて……ッッ!!
 正直もう私が二次創作で運命改変ネタを書く意味ないのかな、とも思い投稿はやめようとも感じていたんですが、せっかくなので当初に妄想していた感じで書かせて頂きました。
 とはいえ、「インテリらしさ」を書きたいために精一杯努力してみたものの、変化球を狙い過ぎて訳分からなくなってきて本末転倒で(汗)
 それでも、やりたい事を全部やったので満足です!『パッケージ』をゴリ押しでぶっ壊すのとか見てみたかったので、「やり遂げたぜ…」感がありましたww

・最後に
 一人称の地の文だと説明パートが上手く作れなかったので、補足を。
 病魔さんは、未来から2周目をやりにきた偽祝の一派とは異なるため、改変された世界では「1周目」状態です。鎖国派なのに、偽祝の情報改変『パッケージ』の正体を暴こうとしていたのもそれが理由です。
 2周目の改変された世界で全ての世界線の記憶を引き継いでいたのは、実は忍と偽祝の2人のみでした。



 インテリSSが書けて、(面白いかどうかはともかく)個人的には満足でした。書いていて楽しかったです。
 またいつかふらっと投稿する可能性もあるので、その際はお付き合い頂けると嬉しいです。
 ここまで目を通して頂きありがとうございました!




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