友達の少ない僕が幼馴染達のお手伝いを頑張る事になった(凍結) 作:なんちゃって提督
先日のA-RISEの座談会は今思い返しても信じられないことばかりだった。抽選に当たっただけでもラッキーなのにグループのリーダーである綺羅ツバサさんと二人きりで話をした上に彼女の連絡先までゲットしてしまったのだ。LAMEのIDは押し付けられたようなものだったけど……本当に良かったんだろうか?
そんな事をずっと考えていた僕だったけど、それは杞憂だったと知る
何故ならそれなりの頻度で綺羅さんからメッセージが飛んでくるからだ
と、言ってもその内容は大した事ないものばかり。『道端で見つけた猫が可愛い』だの『英玲奈に怒られちゃった』だの『あんじゅとデート』だとかそういった類のもので、しかもやり取りは数回で終わってしまうのだ。綺羅さんの真意はどこにあるのだろう?
しかし綺羅さんからそういうメッセージが来るたびに綺羅ツバサというトップアイドルである彼女も普通の女の子なんだと認識させられる。僕は他のファンは知らないであろう一面を僕が知っているというつまらない優越感に浸っているわけだ
そして今もその綺羅さんからメッセージが来ているのだが、その内容が
『次の金曜日って何か予定ある? もしも空いているんだったらどこかへ出かけない?』
僕はしばし画面を見つめたままフリーズした
……これは?
これは!?
もしかしなくても綺羅さんからのデートのお誘いですか!? ついに彼女いない歴=年齢の僕にも春が来たんですかね!? しかも相手は超絶美少女と来れば僕はもう死んでもいい。天にも昇る気持ちとは正に今の僕の状態を指すのだろう
「なんで携帯を見てニヤニヤしてるのよキモチワルイ」
そんな事を考えていた僕の隣を歩いていた赤毛のお嬢様から胸に突き刺さる非常に痛い攻撃を受けた。本当のことかもしれないけどそんなにはっきりと言わなくても良くないですか傷つくんですけど
「それで?」
「それで、って何?」
「だから、どうして携帯を見てそんなに嬉しそうにしてるのよって聞いてるのよ」
「別に嬉しそうになんかしてないけど?」
「してたわよ」
うーむ、困った。こうなると真姫はなかなか退いてはくれないからな。何か答えないと納得してくれそうにないが、馬鹿正直に綺羅さんと連絡を取っているだなんて答えられるわけがない。さて、どう答えようかな……
考えているうちに真姫の表情がどんどん険しくなっていくのが分かった
「何よ、私には言えないってわけ?」
「や、そういうわけじゃないよ」
そんなに不機嫌そうな顔をしなくてもいいじゃないか、とは思っても口には出さない。そんな事をしては余計に彼女の機嫌を損ねてしまうからだ
「実はね、最近新しい友達ができてね。来週くらいにその人と遊べるかもしれないって話になったの」
自分なりに無難に答えた所、真姫は驚いたような表情を浮かべて
「……悠くんにも友達できるんだ」
「なっ!? その台詞は真姫にだけは言われたくなかったよ!!」
「ヴェ!? ちょっとそれどういう意味よ!!」
「そのまんまの意味だよ馬鹿真姫! ツンデレ!! 意地っ張り!!」
「何よそれイミワカンナイ!! 馬鹿って言う方が馬鹿なのよ! 最低! ムッツリスケベ!!」
「むっ!? む、ムッツリってなんだよ! 僕は別にそんなんじゃないぞ純粋な僕に対してその言いぐさはあんまりじゃないか!?」
「へ~純粋、ね。ふーん……」
真姫は若干蔑んだ目で僕を見た。そんな社会のクズを見るような目で見られるような心当たりはないんですが
「ふーん」
「な、何さ真姫。言いたい事があるならはっきり言ってよ」
「別に、何でもないわよ」
素っ気なく返事をして真姫は少しだけ歩く速度を速めた。この話はここで終わり、ということらしい
言い忘れていたけど僕達は今、神田明神に向かって歩いているわけで
「でもさ」
僕も歩く速度を速めて真姫の隣に並んだ
「真姫がスクールアイドルをやるだなんてね」
そう、神田明神に向かっている目的は朝練をする為だ。実は数日前に真姫を含めた三人の新メンバーがμ’sに加入していたのだ
「やっぱり意外だった? 私がアイドルだなんて」
「うん、まぁ。正直に言うとね」
「貴方ね……」
呆れたように真姫は言う。本音を言えば絶対に真姫は穂乃果ちゃん達と一緒にやってくれるとは思ってはいたけど、それは言わないでおこう。これを言うと東条先輩に茶化された事を思いだしてしまうから。うう、恥ずかしい……
「悠くんが私にやりたい事をやれって言ったんじゃない」
「そうだっけ?」
「覚えてないの? あの喫茶店で」
そんな事を言ったような言ってないような
「自分の言った言葉に責任持ちなさいよね、全く……ねぇ、悠くん」
「ん? どうしたの改まって」
真姫は立ち止まって、僕の方を見た。僕も歩くのを止めて真姫と向かい合う。どこか不安そうな目をしているように見える
言葉を探しているのか、言いづらそうにしているが僕はその先を急がせるようなことはせずに黙って真姫が言葉を発するのを待った
「……その、ね」
「うん」
「前に先輩達のライブがあったでしょ、ウチの講堂でやったやつ。その時に悠くんが高坂先輩に言った言葉なんだけど」
僕が穂乃果ちゃん達のライブの時に言った言葉?
「ほら、『μ’sの最初のファンである僕がーー』ってやつ」
ああ、思い出した。そういえばそんな事も言ってたっけ。あれは紛れもない僕の本心ではあるんだけど、他人から改めて言われたら結構恥ずかしいな
それにしてもそれがどうしたと言うんだろう
「言って」
「え?」
「言って!」
「え、は? な、何を?」
脈絡もなく放たれたその言葉の意味が分からずに思わず聞き返してしまった。気づけば真姫の表情が不安そうなものから一変、いつものように目を吊り上げて僕を睨んでいた
「だから! 私にも同じことを言ってって頼んでるの!」
同じこと?
先程までの会話から、どう考えても僕が穂乃果ちゃんに言った言葉の事を言っているのだろ。真姫も僕に『何があっても味方だ』とか言って欲しいのかな? なんて、まさかね……どうして真姫がそんなに拘るのかイマイチ判断できないけど、とりあえず僕の言いたい事は
「え~…恥ずかしいからやだ」
「ちょっと! そこは素直に言ってくれる所でしょ!?」
「だって恥ずかしいんだもん」
「どうしてあの人にはサラッと言ったくせに私には言ってくれないのよ!」
「僕からしたらどうして真姫がそこまで執着するのかが分からないよ!」
僕と真姫は、ぎゃあぎゃあと早朝にも関わらず道端で騒ぎ合う。近所迷惑極まりないが、今の僕達の頭の中にそんな考えは全く思い浮かばなかった
そんな修羅場(?)に更なる刺客が現れる
「二人ともおっはようにゃー!!」
「きゃっ!?」
「うわっ!……って星空さんか」
猛スピードで突っ込んできた刺客の正体は星空凛さんだった。擬音で、ドドドドドッ!! って聞こえてきそうなくらいのスピードだった。この人朝から元気だなぁ
「凛、朝からあんまりくっつかないでくれる?」
「え~、別に良いじゃん。真姫ちゃんだって朝から林堂くんと仲良く遊んでたんだから」
「あれのどこが仲良く見えるって言うのよ……」
それには激しく同意です。あの光景は誰がどう見ても言い争っているようにしか見えないと思うんだけど
「せっかく真姫ちゃんと友達になれたんだから凛だって真姫ちゃんと仲良くしたいんだにゃ!」
「だから抱きつくのは止めてって……全くもう」
止めてと言っている割に真姫が嫌そうではないと見えるのは気のせいではないだろう。むしろ満更ではなさそうだ
この光景を見たら分かる通り、真姫に星空さんという同級生の友達ができたのだ。それともう一人、こちらに向かって走って来た
「はぁはぁ、凛ちゃんってばいきなり走り出すんだから……」
「あ、かよちん遅いにゃー」
「凛ちゃんが早すぎるんだよ……」
「小泉さん、おはようございます。いや、お疲れ様です、かな?」
「お、おはよう林堂くん。これぐらい、へっちゃらです……」
走って来て息を切らせて全くへっちゃらそうではない女の子は小泉花陽さん。彼女もまた真姫の新しい友達である
先程、僕が真姫にだけは言われたくなかったと言われたのはこれの事で、真姫はどうも高校生になってからクラスに馴染めていなかったらしく、友達と呼べるようなクラスメイトがいなかったらしいのだ
「おはよう花陽。貴女も朝から凛に付き合わされて大変ね」
「む、その言い方はまるで凛がかよちんに迷惑かけてるみたいな言い方じゃないかにゃ?」
「迷惑かけてるみたい、じゃなくて実際に迷惑かけてるじゃない」
「にゃー!? それは納得いかないにゃあ!」
迷惑というか、かなり振り回しているように見えるのは確かだけど星空さん的には納得がいかないらしい
「真姫ちゃんおはよう。凛ちゃんも、花陽は迷惑だなんてちっとも思ってないから大丈夫だよ」
そんな星空さんを慰めるように笑顔で優しく言う小泉さん。うん、朝から素敵な笑顔をありがとうございます
「ほーら! かよちんもこう言ってるんだから迷惑なんかじゃないにゃ!」
ドヤ顔で胸を張る星空さんと呆れたように首を横に振る真姫、それを笑顔で見守る小泉さん。この三人組ならこれからもっと仲良くなっていけると思う
え、僕が空気だって? そんな事分かってるから言わないで悲しくなっちゃうからさ
とにかく、真姫、星空さん、小泉さんの三人が新しくu’sに加入した三人である。全員が一年生ということで僕も喋りやすいのはありがたい。未だに先輩である園田さんと南さんと話すときは少し緊張してしまうからだ
「それにしても早起きは苦手だよ……まだ眠たいにゃ」
欠伸交じりでそう言う星空さんはまだ眠そうだ
「朝、苦手なんですね」
「そう言う林堂くんは得意なのかにゃ?」
「得意と言うか、慣れているんで眠たくはないですよ」
「林堂くんって真面目そうだもんね。それなら早起きもできそうだにゃ」
真面目だからといって早起きが得意とは限らないんじゃないのかな。現に真姫も真面目な分類に入るけど、朝は弱かったはずだ。これはもう個人差だろう
「そういえば、小泉さんは眼鏡外したんですね。コンタクトにしたんですか?」
「う、うん……あ、やっぱり変かな……?」
「あ、や、そんなことないですよ。えっと、良いと思います」
「はっきりしないわね。そこはそっちの方が可愛いって言ってあげなさいよ、全く」
「そんなことをこの僕がサラッと言えるとでも思ってるの?」
「思ってないから言ってあげてるの。本当に甲斐性がないんだから」
「ぐぬぬ、真姫ってば最近生意気過ぎだな。もう……」
小声で言ったつもりだったのにしっかり聞こえていたらしく、思いっきり脇腹を抓られた。変な声が出てしまって星空さんと小泉さんに笑われた……くそ、真姫め。いつか絶対ぎゃふんと言わせてやる
そんなこんなで神田明神に到着した僕達は長い階段を上がって頂上へと到着した。早朝にこの階段は少しきつい
境内の広場に着くと、既に園田さんと南さん。穂乃果ちゃんが準備体操をしていた。流石に早いなぁ。僕は挨拶をするために三人に駆け足で近づいた
「おはようございます」
「おはよう林堂くん」
「おはようございます」
「おはようはるちゃん! へっへー、今日は穂乃果の方が早かったね!」
「むぅ、今日は穂乃果ちゃん珍しく寝坊しなかったんだね」
「ちょっと! その言い方だといつも穂乃果が寝坊してるみたいじゃん!」
「実際その通りではありませんか。今日だってことりと私が起こしに行かなければ寝坊していたのはどこの誰だったんでしょうね?」
「う、海未ちゃん!?」
園田さんのカミングアウト。やっぱりね。でも、穂乃果ちゃんらしいと思ってつい笑ってしまう
「もー、はるちゃん笑い過ぎだよ!」
「ごめんごめん、なんか想像した通りで可笑しくってさ」
怒ったらしい穂乃果ちゃんが僕をポカポカと叩いた。叩かれたと言っても、全く痛くない。むしろ可愛らしいくらいだ
「穂乃果、一年生も来たことですしそろそろ練習を始めますよ」
「は~い」
園田さんの一声で僕らは練習をするためにそれぞれストレッチを開始した。新メンバーが増えても練習を仕切るのは相変わらず園田さんだ。最初の頃に比べて慣れてきたのか、指示する姿も様になっている
なんて半ば感心していた僕の所に怖いくらいニコニコしている園田さんがやって来た……今日も来たな鬼教官め。彼女が目の前に来ると僕の背筋も自然と伸びる
園田さんはいつものように僕にメモ用紙を一枚渡してきた
「これが今日のメニューです。怪我をしないようにしっかりと準備体操をしてから取り組んでください」
渡されたメニューに目を通したら、眩暈がした
「最近ようやくトレーニングに慣れてきたみたいですからね。少しだけウエイトを増やしてみました」
少し……? 腕立て五十回は今までの倍の数なんですがそれは少しとは言わないと思います
「とは言っても林堂くんが最初からこのメニューをこなせるとは思っていないので自分でできる所までやってください」
逆らう事は許さない笑みを浮かべている園田さんに、僕は頷くことしかできない。せっかく筋肉痛にならなくなってきたのに、また悶え苦しむ日々が始まるのか……
だけど、このままこれを続ける事ができればモヤシ男という不名誉極まりない称号を返還できるかもしれない。ふふふ、もう二度と真姫にモヤシだなんて言わせるものか!
「林堂くん、顔が怖いけど何かあったのかな?」
「悠くんは偶に、というかよくああなるのよ。一々気にしていたらキリがないわ」
「ふむふむ、真姫ちゃんは林堂くんのことよく分かってるみたいだけど、どういう関係なのか凛、気になるにゃ~?」
「ヴェ!? べ、別に何でも……ただの幼馴染よ! 変な意味なんてないんだから!」
「そんなに焦って言っても何の説得力もないにゃ」
「ふふふ、いいなぁ真姫ちゃん。私もそういう人がいたらなぁ……」
「ちょっと花陽まで変な事言わないで! だから私と悠くんはそんなんじゃーー」
「なになに? 何の話してるの?」
「悠くんには関係ないから黙って一人で練習してて!!」
「ぐはっ!? な、なんで殴るの……?」
「真姫ちゃん容赦ないにゃ」
「さ、流石に少し可哀想だね」
いきなり真姫から鉄拳制裁を受けた僕は仕方がなく言われた通りに、少し離れた場所で体操を始めた。小泉さんと星空さんから向けられる同情の視線が胸に染みるよ……
そういえば話は変わるんだけど、真姫達がメンバーになった時、穂乃果ちゃんが真姫によく分からない事を言われたとか言ってたな。どういう意味だったのかそれとなく聞いておいてと頼まれていたのにすっかり忘れてたや
チラッと真姫の方を見れば真剣な表情で筋トレに励んでいた。今はとてもじゃないけど聞けるような雰囲気ではない。そのうち聞くチャンスがあるだろう、と考えて僕も準備体操の方へと意識を戻した
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話は数日前に戻る
音乃木坂学院の屋上
そこでいつものように穂乃果達が練習していると勢い良く扉が開け放たれた。見ればそこに立っていたのは先日に一緒にアイドルをやろうと声をかけた眼鏡をかけた少女、小泉花陽
どうやら友人達に勇気づけられて一緒に活動をしてくれる気になったらしい。三人では少し寂しいと思っていたところだったのでそれは有難い申し出であった
こうして小泉花陽は晴れてμ’sのメンバーになったわけだが、穂乃果達はさらに彼女の付き添いで来ていた星空凛と西木野真姫をも勧誘する
穂乃果達から差し出された手を掴んだ凛と真姫も同じようにμ’sの一員になったのだった
「やったー!! メンバーが三人も増えたよ!」
「やったね穂乃果ちゃん♪」
「うんうん! ねぇねぇ海未ちゃん、今日はもう練習切り上げてさ、何か甘いものでも食べに行こうよ!」
「穂乃果、しかしですね……」
「いいんじゃないかなぁ? 一年生の歓迎会みたいな感じで」
「ほら、ことりちゃんもこう言ってるしさ!」
「全く、仕方ないですね……と、言うことなのですが。三人共この後の時間は大丈夫ですか?」
「凛は大丈夫です! かよちんは?」
「私も大丈夫だよ」
「私も、まぁ、この後は暇ですけど」
「よっし! それじゃあ決まりだね!」
「三人共、これからよろしくね~」
「多少きつい事もあると思いますが、一緒に頑張って行きましょう」
それぞれが改めて握手を交わしていく。その際に真姫と穂乃果が握手した時に、真姫の方がポツリと
「……絶対負けないから」
「……え?」
言葉の意味が理解できずに呆ける穂乃果を尻目に、真姫を背を向けて隣の海未の方へと行ってしまった
何だったんだろう? と首を傾げる穂乃果。歓迎会と称して行ったファミレスで聞いてみたが、言葉の意味を答えてはくれなかった
ひょっとして嫌われているのかも、と不安になった穂乃果だったが話をしている感じ、そんな事はないような気がした
穂乃果はこれ以上の追及を諦めた。そのうち理由を話してくれるだろうと楽観的に考えて
「……ま、いっか」
「どうしたの?」
「何でもないよー。さ、食べよ食べよ!」
「……」
その為穂乃果は自分を見定めるような視線に気づかないフリをしたのだった
いかがだったでしょうか?
お気に入り、感想ありがとうございます!
評価つけてくださった方も感謝感激でございます!
質問とかも受け付けているので答えられる範囲でお答えしますのでよろしくです
真姫ちゃんの言葉の意味は簡単に分かると思います