友達の少ない僕が幼馴染達のお手伝いを頑張る事になった(凍結) 作:なんちゃって提督
「はぁ……」
がっくりと肩を落として一人で下校する
結局、友達どころか誰とも話せなかった……
僕、ひょっとして中学から何も成長してない? 人見知りもかなり直ってきたと思ったのにあのザマだ
いやいや、まだ一日目だし希望はまだまだあるよね。プラスに考えようプラスに。ポジティブシンキング、大切大切
「何を一人でブツブツ言ってるのよ」
「うひゃぁ!!」
いきなり背後から声をかけられ驚きのあまり大きな声を出してしまい、慌てて後ろを振り返るとそこにいたのは昔から交友のある、友人の一人
「ちょ、いきなり大声出さないでよ! びっくりしたじゃない!」
「そ、それは僕の台詞だよ! いきなり後ろから声かけられたら誰だってびっくりするよ!」
「ナニソレ、イミワカンナイ! 悠くんがあまりに挙動不審で怪しかったからせっかく声をかけてあげたっていうのに!」
「うぐ」
何も言い返せない自分がとても情けないです
「……それはそれとして」
「なによ、少しは落ち着いたわけ?」
「さっきのはあんまり深く聞かないでくれると助かるかな……それで真姫は学校はどうだったの?」
「別に普通よ。まだ入学初日なんだから特に何かある方がおかしいじゃない」
そう言う彼女のフルネームは西木野真姫という。真姫との付き合いは小学校四年ぐらいからなので、友達が少ない僕にとって数少ない幼馴染と言える存在だ
「それもそっか。そりゃそうだよね、あはは……はぁ」
「深く聞くなとか言っておいて溜め息なんてつかないでよ。馬鹿っぽいから」
真姫の僕に対する当たりは結構強い。付き合いも長いので慣れたと言えばそこまでだが、やはり少しだけ傷つく
「これでも勉強頑張ってるんだから馬鹿は酷いんじゃないかなぁ」
「勉強頑張ってるのは知ってる。貴方がよく“あの”音乃宮に入れたわね。今でも少しだけ信じられないもの」
酷い言われようだ、とも思うが、実際その通りだった
僕が通う音乃宮学院はこの辺りじゃかなり有名な進学校で偏差値もかなり高い。この学校に入る為に僕は死に物狂いで勉強しなければならなかった
「それにしても、本当にどうして音乃宮に進学したの? 受かったら教えてくれるとか言ってもったいぶっておきながら、未だに教えてくれないじゃない」
「やっぱり真姫には内緒」
「それぐらい教えてくれてもいいじゃない。ケチ」
この理由は言ったら笑われるだろうから言えない。何と言われようともこれだけは言えない
「そういえばお母さんが久しぶりに真姫に会いたいんだってさ。そのうち暇な日にでもウチに遊びに来てよ、喜ぶからさ」
「露骨に話を逸らしたわね……まぁ、いいわ。そのうち挨拶しに行くわよ」
「ありがと」
これ以上の追及は無駄だと分かったのか、真姫は何も言ってこなかった。それなりに付き合いが長いと相手の考えている事がなんとなく分かるというのは本当だったらしい
「あ、部活とか決めた?」
「まだよ。だから一日目なのにそこまで考えてるわけないじゃない」
「だけどやっぱり真姫だったら吹奏楽部とか? 文化系の部活だよねー、きっと」
「……言ってなかったかしら」
何気なく言った僕の言葉に対して、真姫の言葉はどこか棘を感じた。何か気に障る事でも言っちゃったかな?
「私ね」
その言葉を聞いて
「音楽、やめるから」
僕の思考は完全に停止した
「……え?」
同時に歩いている足も止まってしまう。この子は一体何を言ってるんだろう、と思った
「あのねぇ」
呆れたように、真姫は言う
「私が大学は医学部に入らなくちゃいけないのは知ってるでしょ?」
それはもちろん。よくよく知ってるよ。だけど、それが何の関係があるっていうのさ
「だから、高校生活は勉強に集中しなきゃいけないの。だから私の音楽はーーもう終わり」
少しだけ、悲しそうな真姫の顔を見て我に返った。慌てて彼女の決断を引き留めようと言葉を探した
「あ、あのさーー」
「って言っても完全にピアノとかから離れるわけじゃないから」
……へ?
「本気で勉強しないといけないけど、息抜きは必要でしょ。だからたまにはピアノを弾いたりするかもしれないわ。習い事をしたりするのをやめるって事」
よ、良かった……てっきりもう二度とピアノを弾かないとか言い出すのかと思ったよ
「何を思いっきり間の抜けた顔してるのよ」
「いやぁ、安心しちゃってさぁ~」
意味が分からないように、怪訝そうな顔をする真姫
「だって、僕はてっきりピアノも弾かなくなっちゃうのかと思ってさ。そしたらもう真姫のピアノ聞けなくなっちゃうでしょ? そしたら凄くショックだなーって。前も言ったけど、僕は真姫のピアノが好きだから」
「……ッ/// なにそれ、意味分かんない」
「あはは! そのままの意味だよ」
「ふん!」
「え、なんで怒ってんの?」
「怒ってないわよ馬鹿!!」
「めっちゃ怒ってるじゃん……はぁ」
急に早歩きになって僕より少しだけ前を歩く。素直に褒めてあげたのにどうして怒ってるんだろ……でも、真姫は昔からこんな感じだしそんなに気にしなくても大丈夫そうかな
「悠くんだってヴァイオリン辞めたくせに……」
「何か言った?」
「別に。ほら、さっさと帰りましょ」
やっぱりね。ちょっと先に進んだ所で振り返って僕の方を見た。こうして改めて見ると本当に綺麗になったよね……って何を変な事考えてるんだ僕は。そんな事考えてたってばれたら何を言われるか分かったもんじゃない
ぶんぶんと頭を横に振って雑念を弾き飛ばすと、笑顔を作って真姫の隣に並ぶ。そこからは割とどうでもいい話をする時間が続いた
「それじゃあ私はこっちだから」
「分かった、それじゃあまたね。そのうち暇な日あったら本当に僕の家に来てよ。前の家より結構綺麗なんだから。君の家には負けるけどね」
「なにそれ嫌味?まぁ、いいわ。そのうち気が向いたら行ってあげる。それより……」
真姫は僕の首元に視線を落として
「それ、まだ着けててくれたんだ」
真姫の視線の先にあるのは指輪。チェーンによって首からぶら下がっているせいでペンダントの様になっているもので
小学校六年の僕の誕生日に真姫がプレゼントしてくれたものだ
「うん、僕の宝物だからね。ちょっとボロボロになっちゃったけど……」
大切に扱っているつもりだが時間の経過と共にどうしても傷やら汚れやらがついてしまう。定期的に拭いたりしているのだけど
「そんなに大切にしてくれてるんだ」
「物は大切に扱う主義なんです」
恥ずかしくなった僕は真姫から視線を外してリングを指で弄りながら答えた
「……そっか」
真姫は素っ気なく言って踵を返す。やば、気持ち悪いって思われたかもしれない。でも本当に大切にしてるんだから、仕方ないよね?
「それじゃあまたね」
今度こそ真姫と別れる。僕は手を振ったが、軽く目に入れただけで振り返してはくれなかった。高校生になってますます可愛くなったのは良いけど素っ気なくなったな……ちょ、ちょっと寂しいなんて思ってないんだからね
ちなみにだが僕は最近になってこの辺りに引っ越してきたばかりだ
そうは言っても小学校まではこの辺りに住んでいたので地理はそれなりに理解している。随分変わったような気がするが、もちろん変わっていない部分もあると思う
そういった風景を懐かしみながらも僕は明日からの高校生活を考えると憂鬱になるのだった
友達、できるかなぁ……
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