友達の少ない僕が幼馴染達のお手伝いを頑張る事になった(凍結) 作:なんちゃって提督
それではどうぞ
新学期が始まって数日が経ったがーー
相変わらずぼっちの僕です
いやね? 少しずつだけど喋るようにはなってきてるんだよ? 勘違いしないでね? ただ一緒に遊んだりする友達がいないっていうだけだからね?
運動が苦手な僕は体育系の部活に入ったらついていけなくて速攻で辞める自信があるし、かといって手先が器用なわけでもないので文化系の部活にも入りづらい
そうこう考えている間に部活に入る機会を逃して現在に至るのです、はい。ヘタレでごめんなさい。僕は他人と喋るのが怖いんですよ。慣れればかなり平気なんだけどなぁ。一般的には誰でもそうだと思う、そんなツッコミはいらないです。僕も分かっていますからね
授業が全て終わり、みんなが楽しそうにこの後の予定を組み立てているのをどこか遠くに聞きながら僕は帰る支度を始めた
さて、この後どうしようか
家に帰ってしたい事があるわけでもないし、散策の続きとかいいかも。まだ家の周りと学校の周りとかしか歩いていないし
(秋葉原とか見に行ってみるのも楽しそう。僕が前に住んでいた時よりもお店がかなり増えてるみたいだしね)
思い立ったが吉日、ということで今日の方針は決定した。一人でアキバ探索である
寂しくなんてないもん と自分に言い聞かせながら僕は学校を後にした
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無事に秋葉原に到着した僕は、立ち並ぶビルの群れに圧倒されていた
「ふぁー…凄いなぁ」
思わず独り言が零れてしまうほどの都会感。僕が以前ここに住んでいた時よりもかなり近代的な街並みになっているのは間違いない
放課後とはいえ平日にも関わらずかなりの人が闊歩している
「ん? なんだろ……」
人々が口々に何かを言い合いながら一か所に集まっていく。なんとなく気になった僕もそちらの方へと足を向ける
「よ、っと……」
凄い人だかりだったけど、揉みくちゃにされているうちにいつの間にか一番前へと出ることができた
揉みくちゃにされたせいで多少崩れた制服を整えてから顔を上げると、そこにいたのは三人の女の子
「ーーッ」
輝きを感じた
具体的に何かとは言えないけど彼女達から僕は何かを感じ取った
中央にいるおでこを出している女の子が何かを言っている気がするが、それはあまり耳に入ってきてはくれなかった
彼女達がステージの上に立ち、始まった歌とダンス
それは僕の素人目からすれば、プロの動きと遜色ないもので
僕はそれら全てに魅了されていた、と言っても過言ではないだろう
それほどまでに僕はこの瞬間、彼女達に見惚れていた
不意に
センターで踊る例のおでこを出している女の子と目が合った……気がした。これだけの人数だ。きっと僕ではない誰か、もしくは人ではなく僕がいる方向を見ただけなのかもしれない
「あ……」
パチン と
擬音がつきそうなくらい綺麗に彼女はウインクをした
それはきっと彼女とってファンサービスにしかすぎない
その程度のもの
だけど僕には分かる。極限に集中しなければならないステージの上でさりげなく他の事に意識を向けて難なくこなしてしまう事の難しさを
「――突然ごめんなさい! だけどこんなに沢山の人が集まってくれてとても嬉しいです!」
その言葉に現実に引き戻されると彼女達のステージは終わっていた。観衆からは三人に対して惜しみない拍手と歓声が送られている
三人はそれに笑顔で応えながらお辞儀をした
「みなさん、今日は本当にありがとうございましたー! これからも私達『A-RISE』をよろしくお願いします!」
最期にそう結んで彼女達はステージを降りた。それに合わせて集まっていた観衆も少しずつ散っていく。僕は集まっていた観衆の中で最後までその場に残っていた
賑やかな音楽も、騒がしい観衆もいなくなった街の一角で、ふと思った
「……帰ったら久しぶりにヴァイオリン、弾こうかな」
腕はかなり鈍っているだろうけど、別に他人に聞かせるわけでもないから適当に誤魔化せればいいだろう。問題はそれに僕が納得できるかどうかになりそうだ
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先程のライブはどうやらゲリラ的なものだったらしく、その場に居合わせることができた僕はかなりラッキーだ。今日はついてるかもしれない
家に帰ってヴァイオリンをちょっと弾いたら宿題と予習をやって 「……てください」 って、ん?
どこかから小さな声がする。どこだろう? 周辺をきょろきょろと見回すとガラの悪い高校生か大学生くらいの四人組の男が二人の女の子を取り囲んでいた。きっと質の悪いナンパかカツアゲだろう
道行く人もきっと気づいてはいると思うが面倒に巻き込まれるのを嫌ってか、誰も女の子達を助けに行こうとはしない。明らかに二人は嫌がっているのにも関わらず、だ
人は事件や事故といったものを目撃した際、自分以外にも沢山の人間がその現場を見ていた場合は「きっと誰かがやるだろう」と勝手に結論付けて極力関わるのを避けようとするという。特にこの時間帯は学生が多いのでどうしてもそうなってしまうのだろう
かく言う僕もその中の一人。もしもあの間に入って男達とケンカにでもなれば、ものの数秒でボコボコのサンドバックにされてしまうのは目に見えている。よくいる物語の主人公みたいに「ケンカめっちゃつえー!」みたいなのは僕には当てはまらない。下手をしたら中学生や女の子にまで負けるんじゃないかっていうレベルで貧弱だ
(とりあえず僕にできるのは警察を呼ぶ事だけだ……ごめんね)
名前も知らない女の子達に心の中で謝罪を入れながらポケットから携帯を取り出して警察に助けを求める事にした
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花陽side
今日は学校が終わってから私のお友達の星空凛ちゃんと一緒にお買い物をするために秋葉原に来た。凛ちゃんと一緒にお洋服を見たり、私が好きなアイドルのグッズを見るのに付き合ってもらったりとかなり楽しかった
そしてそろそろ帰るという流れになった所で、怖い男の人に声をかけられた。最初は無視して逃げるつもりだったんだけど、逃げようとしたら同じように怖い男の人が三人やって来て私達を逃がさないように取り囲んだ
逃げ場がなくなって凛ちゃんは私を庇うように前に出て男の人達と言い合いをしているけど、私達を逃がしてくれるつもりはなさそうだ
私は情けないけど、凛ちゃんの後ろから前に出る事はできなかった。だって、本当に怖かったから
私が盾にしてしまっている凛ちゃんの身体も小刻みに震えていた。きっと怖いのを我慢して私を庇ってくれている
なんとかしなくちゃーー
そればかりが頭の中をぐるぐると回り、良い解決策は全く思い浮かんでこない
すると凛ちゃんが意を決したように自身の拳を握り締めたのが分かった
そして息を大きく吸い込んで
「きゃあーーむぐっ!?」
「おおっと、助けを呼ばれたら面倒だからなぁ。少しの間大人しくしてもらうぜ。そっちの大人しいキミは大丈夫だと思うけど一応、な?」
叫ぼうとした凛ちゃんの口に手を当てて強引に黙らせる
「り、凛ちゃん!」
「むぐ、もがぁ、むぐーっ!!」
押さえつけられてるのにも関わらず、凛ちゃんはなんとかその拘束から逃れようと身をよじるが男の人の力の方が当然ながら強いのでそれは叶わない
「おい、暴れんなって……ちっ、しょうがねぇ」
「手荒な真似すると後がめんどいからやめとけよなー」
「わあってる。少し黙らせるだけだ。お前らはそっちの奴押さえとけよ」
「おっけー」
「ひっ!?」
会話が終わると凛ちゃんを押さえている方とは逆の腕を高く振り上げる。そしてそれをそのまま凛ちゃんの頭上に向けて振り下ろした
「凛ちゃん!!」
私は思わず大きな声で叫んでいた。その後にようやく拘束から逃れようと努力したがもう遅い
振り下ろされた拳はそのまま凛ちゃんに
「――あ?」
当たらなかった
いきなり走ってきた誰かが、振り下ろされた腕を掴んで止めたからだ
その人は俯き気味のまま、怪訝そうに見ている男の人に向かって言い放つ
「お、女の子に暴力は、流石にいけないと思うんです……だ、だから落ち着いて、ね?」
これが私と凛ちゃんと、助けてくれた男の子――林堂悠くんの初めての出会いだった
――――
やってしまったーー
僕が男の腕を掴んで最初に思ったのはまずそれだった。本当は警察を呼んでこの場から立ち去るつもりだったけど、女の子が殴られそうになっているのを見て思わず飛び出してしまったのだ
「あ? おいおい誰だよにーちゃん。この子達の友達? もしかしてどっちかの彼氏だったり?」
そんなわけない。この女の子二人とは喋った事も会った事もない。本当に今日、というか今偶然居合わせただけ
「だんまりじゃ何も分かんないんだけど。おにーさんは気長い方じゃないんだけどなー」
明らかに怒気を含んだ声に僕は慌てて掴んでいた腕を離す。それを合図にするかのように他の三人の男も僕を取り囲む
ああ、下手をすると本当に現世とサヨナラしそうな状況です……僕も何か凄い戦闘術習っておけばこの場も難なく乗り越えられただろうに
いやいや駄目だ。僕は真姫に「モヤシ」って言われるくらいに情けない男だった。どうあがいても絶望です、本当にありがとうございました
僕がこれから自分の身に降りかかるであろう災厄に思考を放棄しかけていると、黄色というかオレンジというか、といった色のショートカットが良く似合う女の子(この状況でここまで観察できた僕を褒めて欲しい)に目線だけで「逃げて」と伝える
アイコンタクトなんてもちろんしたことないが、状況が状況だけにすぐに相手に伝わったようだ。人間死ぬ気になれば割と何でもできるっぽい
「で、でも……」
小さくそんな事を言っているような気がしたが、僕としては早いとこ安全な場所へと行ってできれば警察とかに助けを求めてくれると助かるかなー、なんて思ってたりする。僕一人でこんなイカツイおにーさん四人を相手にするのは無理です。例え一人でも死ぬ
「あ、テメー!!」
女の子は散々迷っていたようだが意思を固めたように走り出し、僕の後方にいたもう一人の女の子の腕を引っ張ってこの場から離脱した
「まぁ、もういいよ。逃げられたなら仕方ねえ。アイツらの代わりにコイツでストレス発散するとしようぜ」
標的を彼女達から僕へと完全に移行した男達はその包囲網を少しずつ狭めてくる
確実に、嬲っている。楽しんでいる
その事に怒りを覚えても僕にはどうする事もできない。今できるのはこれから降り注ぐであろう暴力の嵐に耐えるだけだ
「さぁ、覚悟できてんだろうなぁ?」
「ひっ」
口から小さく情けない声が零れるがすぐに閉じ、ぎゅっと奥歯に力を入れて身構える
そこからはとにかく痛かった
男の拳、足、肘、膝、などあらゆる暴力が襲い掛かってきた
「あっ、ぐぅ……」
ものの数分で僕は悲鳴も上げられないほど痛めつけられた
全身が痛い……今日はついてるかと思ったけど厄日だったか油断したよ。意識、手放したら楽なんじゃないかな、うんそうしよう
「コイツ、弱くね?」
「殴ってるこっちの心が痛むくらいに弱いな」
「まぁ、そろそろ財布の中身でも頂いて今日はパーッと……って、ん?」
そう言って男は僕の首の辺りをゴソゴソと漁りはじめる。あれ、何してるんだよ、僕の財布はそんなとこに入ってないよ。はっ、もしかしてこの人そっちの気が……やめてください僕はノンケですよ
「コイツの首にかかってたんだけど、これ結構高そうじゃね?」
「ッ!?」
まさか、『あれ』を盗られた!?
混濁としていた意識を覚醒させ、慌てて首元を確認すると、まだチェーンは首にかかったままだった
「それって指輪?」
「ああ、チェーンで首からぶら下げられるようにしてるみたいだ。少し古そうだけど……まぁ、売ったら遊ぶ金の足しにはなんだろ」
「……離してください」
「ああ?」
痛む身体に鞭を打ってネックレスを掴んでいる男の腕を鷲掴みにする
「その手を離してください、言ってるんですよ……ッ!」
「こ、コイツなんだよ急に……」
「財布でも何でもくれてやるからそれだけは渡せないって言ってるんだ!」
急に大声を出したので男達が驚いたように僕を見る。とんでもない事を勢いで口走ってしまったのは分かっているが、止められない
痛みのせいで乱れた息を整えながら精一杯睨み付ける
これだけは、渡せないんだ。財布なんかよりも大切で。下手をしたら命より大切な、僕のーー
「おい、そこで何をやってる!!」
「なッ!?」
「やべっ、警察かよ!」
「ちっ、とにかく逃げんぞ!!」
「こら!! 待ちなさい! 止まれ!!」
二人の警察官が逃げた男を追っていき、別の警察官が僕の傍に近寄ってきた。僕の惨状を見て顔をしかめて
「これは、酷いな……すみませんが、すぐに救急車を呼ぶので少しの間待っていてください」
「ははっ……ありがと、うございます」
警察が来てくれたということで緊張の糸がぶっつりと切れた僕はその場にへたり込んでしまった。あの子達、ちゃんと警察を呼んでくれたんだ。おかげで本当に助かったよ
だけど来てくれたのが思ったより早かったような? たまたま近くを巡回してたとかかな。だったら今日の僕は色々な意味でついていたのかもしれない
救急車のサイレンの音がどんどん近づいてきたかと思うと、あっという間に担架に乗せられて救急車の中に運び込まれた。これから警察や母さんに事情が説明するのが面倒だなぁ、なんて考えているうちに救急車は発進した……救急車は色々思い出しちゃうから嫌いなんだけどなぁ
余計な事を色々考えているせいで僕は気づかない
「……ふぅ。良かったわ」
事の一部始終を見ていた人影が存在していたことに
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