友達の少ない僕が幼馴染達のお手伝いを頑張る事になった(凍結) 作:なんちゃって提督
それではどうぞ
僕は今日も今日とて早起きをして穂乃果ちゃん達の朝練を見守っている。見守っていると聞くとこの場に僕は必要ないじゃないかと思うかもしれないが、実は少し前から園田さんと二人で練習メニューを考えており、れっきとした仕事があるのだ
「三人共お疲れ様です」
そう言って三人にそれぞれタオルと飲み物を手渡す。うん、この辺がマネージャーっぽくなってきたような気がする
「ありがとうございます」
「林堂くんありがと~」
「はるちゃんってば気が利くなー」
各々が僕の行動に対してコメントをしながら休憩に入る
「ちゃんと軽く柔軟をして身体をほぐしておいてくださいね。特に穂乃果ちゃん」
「ううっ! 分かってるよー…」
ストレッチを済ませれば今日の朝練は終わりだ
「はるちゃん押してー」
「はいはい」
地面にぺったりと座っている穂乃果ちゃんの背中に手を当てて軽く押す。あまりやりすぎると逆効果だから気をつけながら力を込める。少し離れた所で園田さんと南さんもストレッチを始めていた
「痛くない?」
「大丈夫だよ」
最初に比べたらだいぶ柔らかくなってきたかな。穂乃果ちゃん、すっごい身体固かったんだよね
「ねー、はるちゃん」
「ん?」
「今日の放課後、うちで海未ちゃんとことりちゃんと三人で話し合いするんだけどはるちゃんも来ない?」
「話し合いって何の?」
「作曲とか作詞とか衣装とか……色々!」
なるほど、活動するにあたって山積みになっている問題を解決する為の話し合いか。行ってももちろん良いんだけど僕に何ができるだろうか
「僕に手伝える事なんてあるかな?」
「三人より四人の方が良いアイディアが出るに決まってるよ! だからお願い!」
そこまで頼まれて断ったら男じゃないだろう。決して見上げながらそう言ってきた穂乃果ちゃんが可愛かったからではない。断じてない
「あ、でも園田さんと南さんはいいの? 僕が一緒にいても」
「昨日話したら大丈夫だって!」
早い。昨日の時点で僕の予定は決まっていたということか。穂乃果ちゃんの行動力は本当に驚かされる
「放課後も練習してるんだよね。何時に穂乃果ちゃんの家に行けばいいのか後から連絡してくれる?」
「うん、分かった!」
そう言って穂乃果ちゃんは満面の笑みを作った。やっぱり昔から笑顔が似合う人だよな。眩しい笑顔って言うのはこういうものなんだと思う
「あ、今日行くついでにと言ったらあれだけど、また穂乃果ちゃんの家のお饅頭を買おうかな。母さんが喜ぶし」
「ほんと? 買っていってくれたらお母さんもお父さんも喜ぶなー。それから今日は家に雪穂もいるはずだから挨拶してあげてよ。きっと喜ぶから」
「雪穂ちゃんか。前にお饅頭買いに行った時はいなかったんだよね」
「そうそう。その話をお母さんが雪穂にしたらすっごく悔しそうにしてたんだよ?」
「悔しそう? どうしてだろ」
「そりゃあ、雪穂も久しぶりにはるちゃんに会いたかったからに決まってるじゃん!」
その話が本当だったら素直に嬉しいと思った。ちなみに雪穂ちゃんというのは穂乃果ちゃんの妹だ。あの子ともよく遊んだりしたんだよね。懐かしいや、元気かな
そんな話を穂乃果ちゃんとしていると、少し離れた場所にいる二人が
「……今更かもしれませんが林堂くんと穂乃果は随分と仲が良いみたいですね」
「そうだね。見てて羨ましいくらいだよ~」
「彼と穂乃果は結局どういう関係なのでしょうか……幼馴染というのは分かりましたが」
「あれ~? ひょっとして海未ちゃん、嫉妬してる?」
「なっ!? ど、どうしてそういう話になるのですかことり!」
「海未ちゃんの気持ちは分かるよ。だって穂乃果ちゃんってば林堂くんが来てから凄く楽しそうだもんね」
「わ、私は別にそんなつもりじゃ」
「今日聞いてみない? 林堂くんに穂乃果ちゃんの事をどう思ってるのか」
「ええっ!? こ、ことり破廉恥です!///」
なんて会話が行われていた事を僕達は知らないのだった
ーーーー
朝練を終え、穂乃果ちゃん達と別れて自分の学校に向かった。これから学校だっていうのが少しだけ憂鬱だったりするけど、頑張らないと
朝練に顔を出すようになってから必然的に僕が教室に入るのはクラスメイトの中でも遅い方になったのだけど
「あれ? 東島くん」
「おっす」
廊下でばったりと東島くんと鉢合わせた。彼は学校に着いてからどこかに行っていたのではなく、今まさに登校してきたかのように肩に学生鞄を担いでいる
「お前、最近来んの遅いけど何してんだよ? 寝坊か?」
「寝坊じゃないよ。ちょっと朝から用事があって」
話をしながら教室に向かって歩く
「そう言う東島くんこそ今日は遅かったね」
「ああ。俺は今日から朝練に参加することにしたんだ。つっても今日は人数が少ないから軽くダッシュしてからシューティングしかしてねぇけど」
「へー、随分と熱心だね」
「ああ、高校でもバズケやるからには勝ちたいからな」
朝からダッシュを自主的にやるなんて東島くんはひょっとしてバスケットめちゃくちゃ上手いのかな。見た目で言えばかなり上手そうだけども
「それで林堂は結局どこに入部するんだよ」
「僕は、帰宅部だよ」
「そんな部活存在しねぇよ」
「だってどこにも入部するつもりないし……」
「おいおい、部活に入った方が高校生活楽しくなるとか思わねーのか?」
「勉強もしなきゃいけないし……それにちょっとボランティアみたいな事やってるから」
「ボランティアってゴミ拾いとか?」
「そういうのじゃなくて、えっと……」
どうしよ、まさか友達がスクールアイドルをやってるからその手伝いをしているなんて言いづらい
「いや、ゴミ拾いとかだね。うん、そうだよ」
「お前嘘下手すぎるだろ……」
東島くんは呆れたように息を吐いて
「ま、言いたくないってんならそれでもいいけどよ。困ったことがあったらすぐに言えよな」
東島くん……なんて良い人なんだろう。最初怖いとか思ってごめんなさい。人は見かけによらないっていうのは本当だね
「ありがとう。困った事があったら頼りにさせてもらうね」
「おう」
今度バスケ部にレモンのはちみつ漬けとかを差し入れにいってあげようと思った朝の出来事だった
――――
放課後になり、穂乃果ちゃんたちが練習をしている間暇だった僕は飼育係に任命された特権(?)として動物達と戯れたり本を読んだりして時間を潰していた
そして穂乃果ちゃんから『練習が終わったからウチに来て』と連絡が来たのは太陽が沈み始める時間になってからだった。こんな時間まで練習しているだなんて少し感心してしまう
若干名残惜しく思いながらも動物達に別れを告げ、穂乃果ちゃんの家である穂むらへと向かう。今更の説明になるかもしれないが、穂乃果ちゃんの家は和菓子屋さんを営んでいるのだ
僕の通っている音乃宮から穂むらまでは少しだけ遠い。今度から自転車を使って移動時間を短縮した方が良さそうだ
「ん? あれって……」
穂むらの近くまで来ると、入り口の前に人が立っているのが見えた
「こんにちは園田さん」
「あ、こんにちは林堂くん」
僕が軽く頭を下げて挨拶すると、園田さんは素敵な微笑みと共に返してくれた。最初に会った時から考えると信じられないくらい打ち解けてくれていると思う
「園田さんは今来たんですか?」
「弓道部の練習が少し長引いてしまったので穂乃果とことりには先に帰っていてもらったんです」
なるほど、そういうことか。前に穂乃果ちゃんから園田さんは弓道部と掛け持ちであると聞いたのを思い出した僕は納得して頷いた
「それはお疲れさまです。とりあえず僕達も入りましょうか。穂乃果ちゃんと南さんも待っているでしょうし」
「そうですね。あの二人とはいえ、待たせるのはあまり良くないですから」
ガラッと入口のドアを開けると、穂乃果ちゃんのお母さんがお饅頭のようなものを口に運んでいる場面に遭遇してしまった。今は勤務中ではないのだろうか
「あら、海未ちゃんに悠くんじゃない。いらっしゃい」
口に入っていたお饅頭を飲み込んでニッコリと笑いながら挨拶をしてくれた。こういうマイペースっぽい所は穂乃果ちゃんとかなり似ていると思う
「ことりちゃんも穂乃果も待ってるわよ。ほら、上がって上がって!」
「お邪魔します。二人とも穂乃果ちゃんの部屋ですか?」
「そうよー。あ、二人ともお饅頭食べる?」
「いいんですか? いただきまーー」
「結構です。ダイエット中なので」
ばっさりと園田さんが誘いを断った。というよりもダイエット……? 僕は園田さんをじっと見てから
「……余計なお世話かもしれませんけど必要あります?」
「必要なんです!」
見た目的には園田さんはダイエットする必要はないように思えるが、女の子には色々あるんだろう。よく分からない世界だ、と思う
「そう、残念ね。悠くんは?」
「あ、僕も結構です。その代わりに帰りにいくつかお饅頭を買っていきますから」
「あらわざわざ買ってくれるの?」
「母さんも食べるのでさすがにもらっていくわけにはいかないですし」
「まどかさんもたまには顔を出してくれればいいのに……あの人は相変わらず忙しいの?」
「最近は家にいる事が多いですよ。たまに助っ人を頼まれるとか言ってどこかに行ってますけど」
僕の母はああ見えて昔は凄腕のトレーダーで株やら投資やらでとんでもなく稼いでいたらしい。今はあんないい加減な人なのに、人は見かけによらないものだ。ちなみに穂乃果ちゃんのお母さんは僕の母さんの高校の時の後輩らしい。今でも付き合いがあることからかなり仲が良い事が分かる
「ああ、海未ちゃんごめんね? つい話し込んじゃって! ささ、入って」
すっかり空気にしてしまっていた園田さんに声をかけると穂乃果ちゃんのお母さんは僕達を二人が待っている部屋へと行くように促した
店の奥に案内され居住スペースとなっている場所から階段を上がり、穂乃果ちゃんの部屋へと向かう。部屋の場所は昔と変わっていないなら覚えてはいるが、もしも変わっていたら困るので僕は勝手知ったる足取りの園田さんの後ろをついていった
部屋の前まで辿り着き、園田さんがその扉を開け放った。そこにはもちろん南さんと穂乃果ちゃんがいたわけだがーー
「あ、海未ちゃんにはるちゃんお疲れ様―! ささ、座って座って」
「穂乃果ちゃん……南さんまで……」
「? どうしたの林堂くん、何かあった?」
「どうしたっていうか……そのお饅頭」
「あ、これウチの『ほむまん』ね! 今から二人の分も取ってくるからーー」
いやいや穂乃果ちゃん、僕が言いたいのはそういうことじゃなくてだね
「……二人とも、ダイエットはどうしたんですか」
僕の代わりに園田さんが二人に尋ねた。その声のトーンが低かったので少し怖いです
「「あ」」
二人は顔を見合わせて今気づいた、といった顔をしている。やはり園田さんだけではなくこの二人もダイエットしようという話の流れだったらしい
二人は「あははは…」と申し訳なさそうに笑っている。穂乃果ちゃんは知ってたけど南さんも意外と天然っぽい部分があるのかもしれない
「まぁ無理なダイエットは体に良くないって言いますし少しくらいは大丈夫だと思いますよ」
そもそも三人共太っているわけではないのだから気にする必要はないだろうに。もちろんお菓子の食べ過ぎはよくないと思うけどね
「そうかな? そうだよね! それじゃあ今から二人の分もーー」
「駄目です」
園田さんがバッサリと僕の言葉を切り捨てた
「穂乃果はただでさえ間食が多いのですから意識して抑えるようにしてください。林堂くんが甘やかしてくれるからってそれに甘んじていてはいけません」
「うぅ~…分かってるよー」
園田さんは鬼教官。こういった人物もグループには必要だろう。特にこのメンバーだったら尚更園田さんのこういった役割が必須と言えるだろう
「そ、それじゃ林堂くんと海未ちゃんが来たことだし始めよっか。決めなきゃいけない事が沢山あるんだし」
「そうですね。まずは何から話しましょうか」
「やっぱり作曲だよ。作曲できそうな子も見つかってるわけだからさー」
作曲できそうな子? そんな子が音乃木坂にいるんだ。ゼロから作曲するのは言わずもがなかなり難しい。穂乃果ちゃんが言うその子にはかなりの音楽の才能があるのだろう
「その子に頼んでみるのですか? しかしそう簡単に引き受けてもらえるとは……」
「うん。前に頼んだら断られちゃったんだ」
やっぱりね。別の当てなんてそうそう見つからないだろう。どうしようかな……ダメ元で真姫に頼んでみようかな
「そうだ。はるちゃん作曲とかできないの?」
「え」
な、なんで僕?
「だってはるちゃんってヴァイオリンすっごく上手だったじゃん! だから作曲とかできるかなーって思って……どうかな?」
そうか、穂乃果ちゃんは知らないんだっけ
「あー…実はヴァイオリン小学校卒業と同時に辞めちゃったんだ」
「えー!?」
僕のカミングアウトに穂乃果ちゃんは目を真ん丸にして驚いている。それに対して僕は苦笑しか返す事ができない
「林堂くんヴァイオリン弾けるんだー」
「はい。ちょっとかじってたくらいなんで大した事ないですけど……」
「でもはるちゃんってば昔ヴァイオリンのコンクールで色んな賞もらってたじゃん。結構凄いやつ。お母さん達が喋ってたの穂乃果覚えてるよ」
「よくそんな昔の事覚えてるね」
確かに穂乃果ちゃんの言う通り、何回もコンクールで色々な賞を受賞した事があるが、逆に言えばその程度でしかない。僕に作曲までこなせるような才能があったのならばきっとヴァイオリンを今でも続けていただろう
僕に、才能なんてなかったんだから
「と、とにかく、僕に作曲なんて無理だよ……」
ネガティブな発想に囚われそうになったが、慌てて頭の中から追い出した。やっぱり、今でもちょっとトラウマになってるんだよね……ヴァイオリン。独りで弾く分には好きなんだけどさ
「そっかー…残念。やっぱり西木野さんにもう一回頼むしかないかなぁ」
ん? 西木野さんだって?
「穂乃果、あんまりしつこくするとその人の迷惑になってしまうのではないですか?」
「そうかもしれないけど私は西木野さんと一緒にスクールアイドルがやりたいの!」
「ふふ♪ 穂乃果ちゃんはその人の事気に入ってるんだねぇ」
「うん! なんとなくだけど西木野さんは私達にとって絶対に必要な人だと思うの。だから一緒にやりたい! それにあの子ピアノがとっても上手なんだー、皆も一回聞いてみて欲しいな♪ 絶対感動しちゃうから!」
穂乃果ちゃんが言う『西木野さん』っていうのは確実に真姫の事だ。そういえば真姫が穂乃果ちゃんにしつこく誘いを受けているって言ってたし、ちょっと考えてみれば分かりそうな事だった
僕は真姫と友達だと言いだそうと思ったけどやめておいた。真姫はこの三人に直接誘ってもらわなければ意味がない気がしたからだ。穂乃果ちゃんのこの勢いなら僕が何も言わなくても真姫の事を誘い続けるだろうし心配いらないだろう
「それじゃ作曲の事はひとまず置いていて、次は作詞だね」
「ふふーん。それについては実はもう当てがあるんだもんね。ねーことりちゃん!」
「そうだね穂乃果ちゃん♪」
二人はそう言うと顔を見合わせてからある一点に視線を集中させた
「ど、どうしてこっちを見るのですか二人とも」
そう、二人の視線は園田さんに集まっていた。話についていけない僕は見守る事しかできない
「だってー、海未ちゃんって中学校の時にポエムとか書いてたじゃん。穂乃果にも見せてくれたんだから覚えてるよ」
瞬間
「嫌です!」
いきなり大声を出したので少しだけ驚いた
「昔の話じゃないですか! 今思い出したら顔から火が出るほど恥ずかしいんですよ!?」
俗に言う黒歴史って奴ですね。中二病的なあれですか。「俺の第三の目がーー」みたいな恥ずかしいポエムを園田さんがノートに綴っていただなんて想像しづらいな
「でも私はすっごく良くできてたと思うんだけどなー」
「ことりも変な事言わないでください!」
味方がいないと悟った園田さんは縋るような目で僕の方を見てきた。普段強気な海未さんのそういった視線はギャップがあってかなり良かったが、今はそれについて触れるべきではない。確実に園田さんが怒る
「ぼ、僕も見てみたいかなー、なんて。園田さんのポエム」
縋るようだった園田さんの瞳が絶望に染まる。そんなに嫌なんですか
「裏切り者……」
「そ、そんなこと言われても……」
瞳を絶望に染めたまま、園田さんは僕を睨み付けてくる。その目、やめてください。怖すぎます。僕のノミの心臓にこれ以上の負荷をかけないでいただきたい
「と、とにかく私は嫌ですから!!」
そう捨て台詞を吐いて園田さんは全速力で部屋を飛び出していった
「あ、逃げた!ことりちゃん、はるちゃん、捕まえるよ!」
「ぼ、僕も!?」
「当たり前じゃん! 海未ちゃん待てーっ!」
穂乃果ちゃんは真っ先に飛び出していった。それを見送る僕と南さんは顔を見合わせて苦笑いする事しかできない
「私達もいこっか?」
「そうですね……」
結局、この後嫌がる園田さんを捕獲することに成功し、全員で根気よく説得し続けたおかげか根負けした園田さんが渋々作詞の件について了承してくれた
「その代わり、林堂くんにも手伝ってもらいますから」
「え、なんでーー」
「て・つ・だ・っ・て・く・れ・ま・す・よ・ね?」
「……はい」
この日、 僕のマネージャーとしての仕事がまた一つ増えたのだった
主人公の過去編を書けるのはいつになるのだろうか。
とにかく、読んでくださってありがとうございます。よろしかったら感想、評価、お気に入り登録をお願いします。いずれも作者のやる気に繋がります!