友達の少ない僕が幼馴染達のお手伝いを頑張る事になった(凍結) 作:なんちゃって提督
まぁそれはそうとして物語、進みます
と、いうわけでファーストライブです
それではどうぞ!
穂乃果ちゃん達のファーストライブの日はすぐにやって来た。結局、作曲は真姫がやってくれたらしく、その話を真姫にしたところ「私は作曲なんかしてない!」って言い張られた。あのテンパってる感じは私がやりましたって言ってるようなものだったけど、本人は頑として認めようとはしなかった
ちなみにこの日が来るまでにグループ名まで決まっていた。何でも、困った穂乃果ちゃんが設置した意見箱に『u’s』と書かれた紙が入っていて、全員が気に入ったのでそれに決定したらしい
『u’s』というのは『ミューズ』と読み、どこぞの会社が発売している薬用石鹸ではなく、神話に登場する九人の女神の名前からとったのではないかとの事だった。誰が考えてくれたのかは分からないけど良い名前だと思う
僕は穂乃果ちゃん達に「絶対見に来てね!」と言われて放課後になって音乃木坂学院まで来たのは良かったんだけどーー
「よく考えなくても部外者の僕が女子校になんか入れるわけないじゃないか……」
がっくりと肩を落として穂乃果ちゃんに電話をかけてみる。忙しいかなと思ったけど、僕の予想に反して数回の呼び出し音の後に応答があった
「あ、もしもし穂乃果ちゃん? 今少しだけ大丈夫かな」
『うん、大丈夫だけどどうかした?』
完全な部外者の男である僕が音乃木坂に入る事ができないと説明したら穂乃果ちゃんは『ちょっと待ってて!』と言い残して誰かと話を始めたらしい。らしいっていうのは電話越しなので穂乃果ちゃんの声が遠くなった事しか分からないからだ
『お待たせー!』
少し待っていたら穂乃果ちゃんの声が戻ってきた
『今からそっちにことりちゃんが行ってくれるから入校許可証ってやつを受け取って。それではるちゃんも入って来れるようになるから』
「え、南さんが?」
『うん! ことりちゃんのお母さんはこの学校の理事長でね、頼んだらオッケーしてもらえたの!』
それは初耳だった。まさか南さんがこの学校の理事長の娘さんだなんて……園田さんもそうだけど穂乃果ちゃんの友達かなりスペック高くないですか?
「林堂く~ん!!」
名前を呼ばれた方向に顔を向けると南さんがこちらに走って来ていた。かなり急いで来てくれたのか、肩で息をしている。というか早すぎじゃないですか? 穂乃果ちゃんから南さんが来るって聞いたのついさっきなんですが
「はぁはぁ……はい、これが入校許可証。首からかけてくれればいいから」
「あ、ありがとうございます」
僕はペコリと一礼する。そんな僕に南さんはやはり素敵な笑顔で返してくれる。やはり優しい人なんだな、と改めて思う
挨拶もそこそこに南さんに案内される形で歩く。他の生徒から奇異の視線が凄く気になった。女子校の中に男が紛れ込んでいたらそりゃ気になると思うけど、その視線がくすぐったくて何だか落ち着かない
「あはは、ごめんね。きっと男の子がいるのが不思議なんだよ。みんな悪気はないから気にしないでくれると嬉しいな」
「あ、いや、分かってます。大丈夫ですよ」
良かった、と言って南さんは僕より二歩分ほど前を歩く
「私達のステージは講堂でやるんだけど始まるまでまだ時間があるの。それでこれからライブの最終チェックとか色々やらなきゃいけないんだけど……」
「僕も手伝います。人手、多い方が良いですよね」
「ありがとう。でもその前に私のお母さんに挨拶に行ってもらえるかな。少し話があるって言ってたから」
話、か。何だろう
「ここが理事長室」
何の話をされるんだろう、なんて考えている間に理事長室の前に到着した。他の教室の扉と比べると少し豪華だと感じる扉だった
南さんが小さく数回ノックすると中から返事が聞こえた。優しそうな声だ、という印象を受ける
理事長室に入ると、女の人が笑顔で迎えてくれた。この人が南さんのお母さんか
…かなり若い、と思う。南さんのお姉さんと言われても納得できる、と言っても過言ではない
「失礼します。お母さん、林堂くんを連れてきたよ」
「ご苦労様。さ、貴女はライブの準備をしてきなさい。大事なライブの前だっていうのに余計な手間を取らせちゃってごめんなさいね」
「ううん。我儘言ったのは私なんだから気にしないで。それじゃあ林堂くん、また後でね」
手を振って南さんは出て行った。一礼して応えた僕も皆の手伝いに行きたいとは思っているのだけど、先程からニコニコと素晴らしい笑顔を浮かべている南さんのお母さんが少しだけ怖い
「さて、と。林堂悠くん、でいいのかしら?」
「は、はい」
名前を呼ばれただけなのに背筋が伸びる。き、緊張してきた……
「単刀直入に聞くのだけれど……」
南さんのお母さんは笑顔を引っ込め、真剣な目で僕を見た。僕は思わず息を吞む
「貴方、ことりの彼氏さんなの?」
「うえぇぇ!?」
予想の斜め上の質問に素っ頓狂な声を上げてしまう。え、誰かに似てるって? 気のせいだよ気のせい
「あら? そんなに驚くって事は図星なのかしら」
「ち、違います!///」
僕は慌てて否定した。僕ごときが南さんの彼氏だなんてそんな恐れ多い話はない。全力で頭を横に振って否定する
そんな僕の様子を見て南さんのお母さんはおかしそうに笑っていた
「ふふっ、冗談よ。ことり達に頼まれてあの子達のお手伝いをしてくれているんでしょう?」
じょ、冗談だったのか……いや、普通に冗談だったんだろうけど親御さんから「娘の恋人なのか」と聞かれるなんて心臓に悪い事この上ない
「急にスクールアイドル始めるなんて言い出したからびっくりしたのだけど、ことりも楽しそうだからついつい応援したくなっちゃうのよね」
「は、はぁ……」
嬉しそうに話す顔はまさに母親の顔と言っていいものだったが
「それで、林堂くんはあの子達がスクールアイドルを突然始めた理由は知っているかしら」
不意に切り替わったその顔は南さんの母親としての顔ではなく、この音乃木坂学院の理事長という立場にある人間のものだった
「は、はい。この学校の廃校を食い止める為、ですよね」
「そう。もう聞いている通り、この音乃木坂学院は現在、廃校の危機にあります」
生徒数の減少の為に廃校の危機にある音乃木坂を救う為、穂乃果ちゃん達はスクールアイドルを始めたのは聞いていた
「ことり達がこの学校の為、そしてことりに関しては恐らく私の為にもスクールアイドルの活動を通じてこの学校の廃校を阻止しようと動いてくれているのがとても嬉しく思います。ですが……」
「正直な話、あの子達がどんなに頑張っても廃校の決定が覆るのは難しいと私は思います」
南さんのお母さんは僕の目を真っ直ぐ見つめて言い放つ
「スクールアイドル人気に乗っかり、この学校の知名度を上げようというのは分かります。しかし同時にあの子達は厳しい競争に勝たなければならないというのも理解しています。普通に考えれば誰に聞いても無駄な事だと笑われて終わるでしょう」
それは僕も心のどこかで思っていた事だった。いかに穂乃果ちゃん達が頑張ったとして結果がついてくる保証なんてどこにもない。それどころか南理事長の言う通り、誰かに笑われ、誹謗中傷されてしまう可能性の方が高い
「それが分かっていながら貴方はどうしてあの子達に協力しているのですか?」
どうして、か
「友人だからでしょうか。それとも本当にあの子達の誰かに好意を寄せているからでしょうか」
僕は少しだけ理由を考える
「よかったらその理由を教えてくれませんか?」
南理事長の真っ直ぐな視線
普段の僕ならとてもじゃないが耐えられずにすぐに逸らしてしまうだろう
だけど今だけは、目を逸らすわけにはいかなかった
「僕は、その……先程も言った通り、あの三人の誰かの恋人でもなければ、それどころか穂乃果ちゃん以外の二人とは最近知り合ったばかりで親しい友達とは決して言えないかもしれません」
これは本当の話で、未だに園田さんや南さんとはどうしてもぎこちない会話になってしまう事がある
「だけど、僕はあの三人に感じたんです。えっと、上手く言葉にはできないんですけど……言葉にするとしたら、輝き、かな」
心の中で自分の言葉を反芻する。うん、あの三人を表すならこの言葉がふさわしいと思う
「まだ始めたばかりなので決して三人のパフォーマンスは素晴らしいとは言えないかもしれません。それでもあの三人には他のスクールアイドルには感じない輝きがあるんです」
これはお手伝いを始めてから勉強も兼ねて沢山のスクールアイドルのMVやPVを見たりして感じたことだった。穂乃果ちゃん達には他のスクールアイドルにはない『何か』があった
「正直、最初は穂乃果ちゃんに頼まれたから何となく引き受けただけでしたけど……今は僕が少しでもあの人達の力になってあげられたらと思ってお手伝いしています」
「なるほど。だけどさっきも言ったけど、廃校を阻止できる保証はないのよ?」
「できます」
即答した事に南理事長は驚いていたが、僕自身も勝手に出た言葉に内心驚いていた。だけどこれは僕の本心で間違いない
「穂乃果ちゃん達は必ずやり遂げます。僕はそう信じています」
「そう……だけど、貴方まで心無い人に嘲笑われるかもしれない」
「そうかもしれません。だけど、僕はあの三人の味方です。どこの誰に何を言われようと笑われようとずっと、僕だけはあの三人のファンであり続けます」
南理事長の瞳を真っ直ぐ見つめ返す。勢いのまま喋ってしまったが嘘は吐いていない。厳しい道なのは重々承知の上だけど、穂乃果ちゃん達なら必ずできると信じているのだから
僕の選択はこれで間違っていないと断言できる
「……ふふっ」
それっきりしばらく無言の時間が続いたが、不意に南理事長が笑い出した。呆気に取られている僕に気づいたようで
「ああ、ごめんなさい。まさかそこまで言ってくれるとは思っていなかったものだから…ふふ♪ 流石はまどかさんの息子さんといった所かしら」
「え?」
僕は耳を疑った。理事長は母さんの事を知っている?
「まどかさんは私の高校時代の先輩でね、生徒会長だったあの人にとてもお世話になったの。今でもたまに相談に乗ったりしてもらっているのよ」
「生徒会長!?」
「あら、聞いていないの? あの人はいつも学年主席ですっごい人気者だったんだから。私達後輩からすれば憧れの的だったのよ」
「学年主席!?」
二人が知り合いだったことにも驚かされたけど、あのいい加減な人が学年主席の上に生徒会長を務めていた方が僕にとって驚きだった。しかも後輩達から憧れの的…どうやら僕の母上は本当に血が繋がっているのかと疑いたくなるぐらいのハイスペックレディらしい
「ことり達のお手伝いをしてくれているのはまどかさんから聞いていたから知っていたの。あの子達にこの学校の命運の全てを任せているわけではないけど、希望の一つなのには変わりない…だからお手伝いをしてくれる貴方の覚悟も聞いておきたかった。ごめんなさいね、試すような真似をしてしまって」
「あ、いえ、それは大丈夫です……けど、偉そうな事を言っておきながら僕に手伝える事なんて知れてますし……せめて今日は精一杯応援するつもりです」
「ありがとう。それだけでも充分よ。ところで」
理事長は笑顔の種類を変えた。所謂、悪戯っぽい笑顔に
「悠くんみたいな人だと本当にことりを充分に任せられると思うんだけど……どうかしら?」
その言葉の意味を理解するのに僕の頭は数秒ほどの時間を要した
そして爆弾を投下されたのだと知った
ちなみにからかわれているのは重々承知だ。理事長は心底楽しそうに笑っているのだから本気で言っていないことぐらい僕にだって分かるが
「ねぇ、どうかしら」
「~ッ/// お話は終わりましたよね!? し、失礼しましたー!!///」
そういう冗談に慣れていない僕は思わず理事長室を逃げるように飛び出してしまった。というよりも冗談でも自分の娘をもらってくれだなんて言うだろうか普通。しかも今日初めて会った得体の知れない男に
「あながち冗談でもないのだけれど……それより性格はあんまりお母さんに似てないのね。からかい甲斐がありそうだわ♪」
なんて理事長が僕が部屋を飛び出した後に呟いていたことを当然知らない
「はぁ、全く……あれ?」
夢中で走り続け、顔の熱さが引いた頃にふと気づく
「ここ、どこだろう……?」
初めて訪れた女子校で絶体絶命の予感がした
書き始めたらファーストライブ編に入っていたんだ。何が起きたのか分からないとは思うが(ry
初めて感想を頂きましてとても感激しております…嬉しいものですね。ありがとうございます!
更新は気まぐれとなってしまいますが今後も応援の方よろしくお願いします!
…お盆休みなんてなかった。いいね?