死なない少年と壊す少女【完結】   作:写楽―しゃらく―

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ちょっとエグいです。
ブラウザバックをオススメします。
『構わん。やれ』
と言う方だけ心せよ。
そして第二話目にして展開早すぎ。
ハハッ,ワロス。


【第二話】バイ・バイ

「よく来てくれたわね」

 

僕の前で偉そうに椅子に座ってそう言うのは、フランドールのおねえさん、レミリアさんだ。

何故だか僕は彼女に嫌われているような気がする。何故だろう?

 

 

「無駄な御託も、無為な挨拶も無しよ。貴方に聞きたい事があるの」

「何ですか?僕が答えられる範囲なら答えますけど」

 

 

別に隠していることはないし、聞かれて困ることもないので、僕はそう告げる。

レミリアさんは、深呼吸するようにして肩を大きく揺らして、そして目を見開いて言った。

 

 

「貴方、何者?」

「はい?」

 

 

突然のよく分からない質問に、僕は困惑してしまう。何を聞かれるのかは分からなかったけれど、その質問は予想どころか思考の端にもなかった。

 

 

「貴方は――何度もフランに殺されている。そうよね?」

「そうですね。僕はフランドールに何度も殺されています」

 

 

それがどうしたと言うのだろう。たかが何百回くらい『しか』殺されてないのに。

 

 

「そこが気になるのよ。貴方の『それ』は、貴方の持つ能力なのかしら?」

「能力?」

 

 

なんだろう、それ。聞いたこともないや。

 

 

「貴方……能力を知らないの?」

「知らないです」

 

 

そう言うと、レミリアさんは僕にその『能力』とやらを説明してくれた。

ざっくり言うと、特別な素質を持った人が生まれながらにして持ち合わせている『特別な力』なのだとか。

レミリアさんの場合だと、『運命を操る程度の能力』。

咲夜さんの場合だと、『時を操る程度の能力』を持っているそうだ。

 

 

「へぇー」

「へぇー、って、貴方、自分の能力が分からないの?」

「分からないです」

 

 

僕にはそう言った特別な力とかはない。レミリアさんのようなものも、咲夜さんみたいなものも、とんと覚えがない。

 

 

「うーん……」

 

 

分からないと言い張る僕に、レミリアさんは唸り声を上げる。

 

 

「それじゃあ、貴方の今までを教えて頂戴?今まで生きてきて何があったのか、何をしたのか、何をされたのか。その全てを」

「いいですよ。えーっと」

 

 

そう言って僕は話始めた。

 

 

__________________________

 

 

一番最初に思い出すことは、僕の背中に真っ赤に焼けた炭を押し付けるおとうさんのことだ。

ジュウッ――!と言う肉を焼く音と共に、背中に激痛が走って泣き叫ぶ。

泣き叫ぶ僕に、おとうさんは更に炭を足す。

二個、四個、八個、十六個――その炭が僕の全身を覆い尽くす時になって、そこで漸く僕は気絶『できた』。

目を覚ますと、おとうさんが怯えるような表情で僕に言った。

 

『この、化け物め!!』

 

その日は外で寝た。

 

 

 

次に思い出すのは、僕の爪先を大きな槌で叩き潰すおかあさんのことだ。

足を何かで固定させて、動けなくなった僕の足の指を一本ずつ、大きな槌を降り下ろしてくだいていく。

泣き叫ぶ僕に、おかあさんはもっと怒って、足の指が終わると次は手の指をくだいていった。

手の指が全部くだけると、次は脛、膝、腰っていう感じに、どんどん上に上っていって、最後には僕の頭を叩き潰した。そこで漸く僕は『気絶』することができた。

目を覚ますと、おかあさんが怯えるような目で僕を見て言った。

 

『化け物!気持ち悪い!!』

 

その日は外で寝た。

 

 

 

次に思い出すのは、どこからか僕の話を聞き付けた大人の人に縄で括られて馬で引き摺られたことだ。

すごい速さで走る馬に引き摺られて、ガリガリと僕の肌が削げていく激痛で泣き叫ぶ。

僕の叫び声を聞くと、馬を繰っていた人は道の角で思いっきり大降りに曲がった。

すると僕の体が宙に浮いて、角の民家に腰から叩きつけられて腰がくだけた。

そこで漸く僕は『気絶』することができた。

僕が目を覚ますと、僕を引き摺った人が、信じられない物を見たように言った。

 

『化け物だ!人の皮を被った化け物だ!!』

 

その日は人里で寝られなかったので、近くの森で眠った。

 

 

 

次に思い出すのは――

 

__________________________

 

 

「次に思い出すのは――」

「もういい!やめなさい!」

 

 

僕のことを聞きたいと言っていたレミリアさんが、顔を真っ青にさせて涙目を浮かべ、僕に向かって怒鳴った。

 

 

「でも――」

「それ以上口を開くな!」

 

 

溢れる涙を拭おうともせず、レミリアさんは僕に向かって更に怒鳴る。

 

 

「もういいから……。分かったから……」

 

 

最初は強かった口調がどんどん萎んでいき、終には掠れそうな声で囁くように言った。

 

 

「どうしたんですか?なにか、僕、悪いことでも――」

「何でもないの。貴方は悪くないわ」

 

 

僕に非がないと、レミリアさんは言った。

でも、それじゃあどうしてレミリアさんは怒っているの?

 

 

「怒ってなんかないわ。少し、貴方の『運命』を見たから――っ!?」

 

 

そう言ったレミリアさんは、突然口許を押さえて踞る。

その瞬間、咲夜さんがやって来て、レミリアさんを連れ出して行った。

一人その場に残された僕は、ただただ虚空を眺めるだけだった。

 

 

 

 

「大丈夫ですか?お嬢様」

「えぇ、大丈夫よ……」

 

 

レミリアは咲夜に抱かれて自室のベッドに横たわっていた。

かなり気分が悪い。死にそうなほどに体が重い。

 

 

「一体、何を見たのですか?」

「……あの子の、運命を、ね」

 

 

ベッドの天涯を眺めて、レミリアは話始めた。

 

「壮絶……いえ。凄絶、凄惨としか言いようがない人生と、それを受け続けてきた運命……。死ぬほどの苦しみ、痛みを与えられても『死ねない』運命を見たわ。……あれを見れば、不老不死を望む権力者たちはみんな諦めるわね」

「…………」

「生まれてからずっと……、ずっと虐げられて生きるって、どれほど辛いものなのかしら……」

 

 

レミリアの弱々しい言葉に、咲夜は言葉が出なかった。

己が主、吸血鬼レミリア・スカーレット。

 

夜を歩く化け物をして、ここまで言わせるあの少年の『過去』――いやその『人生』は、一体どれほどの物だったのか。

 

きっと、レミリアは語らないだろう。

 

強靭な精神力を持つ彼女ですら、あの少年のこれまでの運命を見ただけであれほどまでに取り乱してしまったのだ。

人間である自分や、レミリアに遠く及ばない美鈴などが知れば、それこそ心を壊しかねない。

 

レミリアとは、そう言う者だ。

 

だからこそ、レミリアは彼を哀れとは思わない。

 

むしろ哀れなのは、彼を取り巻いていた『周り』だ。

 

ただ、『死なない』。

 

それだけで人は、あそこまで同じ人間に対して残酷になれるのだ。

 

醜く、愚かで、矮小な心を持った弱い生き物に、レミリアは激しい嫌悪感を抱いた。

 

 

「本当……、最悪よ……」

 

 

呟くレミリアは、そのまま眠りに就いた。

 

 

 

 

「今日はなにしてあそぶ?」

「うーん。フランドールのやりたいことでいいよ」

「もうっ!毎日そればっかり!たまには貴方も考えてよ!」

 

 

ぷんぷんと腰に手を当てて怒るフランドール。子供っぽい。

 

 

「それじゃあ、今日は人生ゲームをしようか」

「あー、いつだかにパチェがくれたあのボードゲーム?」

 

 

そうそうと僕が首肯すると、フランドールは少しだけ不満そうな顔をする。

 

 

「あれ、何が楽しいのかわかんない」

「そんなことはないんじゃないかな?外の世界で流行ってたんだからそれなりに楽しいんじゃないかな」

 

そんな感じで、僕らは人生ゲームを始めた。

 

 

 

 

私は彼が好きだった。

 

彼はいつも私に優しいし、何をしても怒らない。

 

私が彼を『壊しちゃって』も、彼は何も言わずに平気な顔をしてくれる。

 

だから好き。

 

私が初めて『壊せない』物が、私には何よりもうれしかった。

 

初めて彼と会ったのは、もうどれ程前だろう。

 

言うほど昔ではないと思う。多分、まだ一年も経っていないはず。

 

なのに、彼と一緒に居る時間が楽しくて、楽しくて、今まですかすかだった私の一日が、急に長く感じるようになった。

 

彼と居るのは心地いい。

 

彼とあそぶのは楽しい。

 

彼が『壊れない』のがうれしい。

 

なのに。なのに。

 

何故だろう。

 

私は彼を『壊したい』と思ったことは一度もない。

 

なのに、何故だろう。

 

何故私は彼をいつも『壊して』しまうのだろう。

 

楽しくなって、興奮して、心が踊ってしまった時にはいつも、『壊れた』彼を見下ろしている。

 

何故だか、その瞬間だけは、『楽しくない』。

 

それまでの楽しさが、一気に冷めてしまう。

 

それでも、彼が再び私に話しかけてくれると、それだけで私はその事を一瞬忘れてしまう。

 

こわい。

こわい。

こわい。

 

いつか、彼も他の物と同じように『壊れて』なくなってしまうのではないかと考えると、凄くこわい。

 

我慢しようと心をすぼめ、『壊さない』ように心掛けても、私の心は彼を『壊し』たがる。

 

いやだ。

いやだ。

いやだいやだいやだ。

うしないたくない。なくしたくない。

もう、『壊したくない』。

 

だって、私は彼の事が、大好きなのだから。

 

 

 

 

その日は珍しく、僕はフランドールに『殺されなかった』。

楽しくなかったのかと聞くと、フランドールは首を横に振る。

 

 

「我慢したの」

「なにを?」

「『壊す』のを」

 

 

どうしてそんなことするのだろう?僕には分からなかった。

 

 

「ゲームは楽しかったわ。……ううん。貴方と一緒なら多分、私は何でも楽しいと思う」

「そうなの?」

「うん。でも――」

 

そう言って、フランドールは僕の顔をじっと見つめる。

真っ赤に染まった二つの瞳が僕を見据えて離さない。

 

 

「――貴方とお話しできない時間は、楽しくない」

「?」

 

 

どういうことだろう?僕らはいつも一緒に居るとき、大体常にどちらかがずっと話をしている。話していない時間は、僕の記憶の中にはない。

 

 

「『壊れた』貴方と居るときは、私は一人ぽっちになるの。それがイヤ」

 

 

どうやらフランドールは、僕が『気絶』している間に一人ぽっちになってしまうのがイヤらしい。

僕にはその間の記憶とかはないから、フランドールがその時にどんな表情をしているのか分からない。

 

 

「ねぇ」

「ん?」

 

 

考え込む僕に、フランドールが話しかける。その表情はどこか怯えにも似た感情を孕んでいた。

 

 

「貴方は『壊れない』よね?」

「…………」

 

 

フランドールの言葉に、僕は答えることが出来なかった。

 

僕はどうやっても壊れないし、死なない。

 

生まれたときからそうだから、多分これからもそうなのだろう。

 

僕は『死にたい』。

 

『死ねない』僕を唯一『壊せる』かもしれないのは、今僕と向かい合っているこの少女だけだ。

 

だから僕は彼女と友達になったのだ。

 

彼女に『殺して』もらうために。

彼女が『壊して』くれることを祈って。

 

 

「私、貴方と離れたくない。いつまでもずっと一緒に居たい」

「…………」

「でも、貴方が『壊れて』いる間、私は一人ぽっちになっちゃうの。もし貴方が本当に『壊れて』居なくなったりしたらきっと、ずっと一人ぽっちになっちゃう」

 

 

だから、と。フランドールは泣きそうな表情で震えながら言った。

 

 

「だから、我慢するの。『壊す』ことを。貴方を『壊したい』と思う事を我慢したいの」

 

 

出来るかな、という言葉はとても小さく、だけど僕の耳にしっかりと届いていた。

 

 

―あぁ、そうか。

 

 

僕はその時理解した。

 

 

―この子じゃ、僕は『殺せない』。

 

 

「大丈夫だよ、フランドール」

「……え?」

 

 

僕の声に、フランドールは耳を傾けた。

 

 

「フランドールが望むなら、大丈夫だよ。きっと」

「……うん」

 

 

俯きかけていたフランドールの表情に、僅かに笑みが浮かんだ瞬間を、僕はただ、黙って見ていた。

 

 

 

 

 

「『死なない程度の能力』……いえ、『殺されない程度の能力』……かしらね。あの子の能力」

 

 

図書館で古くからの友人と共に紅茶を傾けながら、私は自分の中の考察を述べた。

 

 

「かなり強力な能力ね、それ」

 

 

本から目を離さずに私の考察を聞いていた友人―パチュリーは静かに応える。

 

 

「たとえどのような状況、方法であれ、『他者の意思、あるいは悪意、殺意が介在した場合による死を拒絶する』って所かしら?」

「恐らくね。フランドールはあの少年のことを、別に殺したくて殺している訳ではないようだし」

「だとすると、本当に悲しい能力ね」

 

 

紅魔館が頭脳であるパチュリーは、読んでいた本をテーブルに置いて少し冷めてしまった紅茶の入ったティーカップに手を付けながら言った。

 

 

「死にたくても死ねず、しかし周囲からはたとい殺されようとも死ねず……そうしていくうちに、彼は自分の『心』を棄てたのでしょうね」

「心を?」

「『心』を鈍くすれば、痛みを感じるという『感情』も、傷つけられる『痛み』にも気付かなくて済むじゃない」

 

 

あっさりと言うパチェだけど、でも、それはどれ程辛く、悲しい人生なのだろうと、私は思った。

 

 

「少なくとも、レミィ。あの子は妹様をどうこうしようとか言う気持ちは全くないように思えるけど」

「それは私もそう思うわ。でもねパチェ」

 

 

紅茶を飲んでいた手を止めて、パチェに私は自分の考えを告げた。

 

 

「もし彼がフランドールをどうこうしようとする気がなくとも、彼がフランドールに『どうにかされることを望んでいた』としたら……それはとても残酷なことだとは思わない?」

 

 

☆オワリ?

 

 

「バイバイ!また明日!」

「また明日」

 

 

楽しい時間はあっという間で、僕は紅魔館を後にした。

 

 

今日、僕とフランドールは二つ約束をした。

 

一つは、フランドールは今日以降、僕を『壊さない』こと。

一つは、僕は絶対に『壊されない』こと。

 

その二つの約束を思い返し、僕は一人ため息を吐く。

 

 

「やっぱり、ダメだったかぁ」

 

 

死にたいのに、死ねない。

殺してほしいのに、死にきれない。

僕はいつになったら、この詰まらない人生から抜け出せるのだろう。

 

 

「………………………………あれ?」

 

 

今、僕はどうして、『詰まらない』と言ったのだろう?

 

確かに僕の人生は、とても色褪せていて、詰まらない。

 

でも、フランドールと出会ってからは、楽しいと思えることもあった。

 

それは事実で、嘘偽りない僕の気持ちだ。

 

 

「…………どうしてだろう」

 

 

楽しいはずなのに、何故だろう。

 

答えは分からない。分からないけど、何となく分かる。

 

フランドールが、僕のことを『好きだ』と言ってくれたからだ。

 

生まれて初めて、他人から『好きだ』と言われた。

 

『好き』という感情がどう言うものなのかは分からないけど、でも、少なくとも『あの人たち』が僕に抱いていたような感情とは、決して違う。

 

そして。生まれて初めての『好き』を貰って、僕の心に生まれた感情に気付いた。

 

 

「……そっか」

 

 

これが『楽しい』か。

これが『嬉しい』か。

これが『優しい』か。

僕が体験したことのない感情が、僕の心に生まれ初めていることに気付いたとき。

 

 

「よぉ」

 

 

ふと声をかけられた。

 

 

「……何ですか?」

 

――色褪せる――

 

 

僕は声をかけた人に、人たちに聞いたけれど、僕はその目を知っていた。

『あの人たち』と同じ目だった。

 

 

「聞いたぜ。お前――『化け物』なんだってなぁ!」

 

 

――煩わしい――

 

――煩わしい煩わしい――

 

――煩わしい煩わしい煩わしい煩わしい煩わしい――

 

声が、僕の耳に届いた。

 

それと同時に、僕の意識は途切れたのだった。

 

 

☆オワリ

 

 

約束をした。

もう僕は誰にも『殺させない』。

喩え、何を犠牲にしようとも。

 

 

 

取り合えず、まずは『フラン』って呼ぶようにしようかなぁ。

 

 

 

 

 




如何でしたでしょうか?
正直、文才の無さに涙が出ます。
まぁ小学生の読書感想文を眺める程度の気持ちで見てもらえれば幸いかと。

主人公の少年についてですが、名前は決めてありますが、本編中で明言されることはありません。
あしからず。
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