死なない少年と壊す少女【完結】   作:写楽―しゃらく―

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二時間クォリティ。


ほのぼのです。

誰がなんと言おうとほのぼのなんです。

そして亀投稿と言ったな。すまんありゃ嘘だった。

いや多分嘘じゃないけど。
まぁそんな感じで気紛れ更新になります。

では第三話。どうぞ。


【第三話】些細な出来事と大きな変化

『些細な出来事と大きな変化』

 

 

「うーん……」

「フラン、どうしたの?」

「んー?」

 

 

さっきから、何かうんうんと唸っているフランに、僕は読んでいた本を置いて話しかけた。

この本はフランの勉強道具で、書かれているのは外の世界では著名な文学小説だ。

紅魔館の図書館の主のパチュリーさんが、フランの為に用意した物らしいけど、僕も読んでいいと言われたので、こうして文字の勉強に励んでいる。

 

あ、因みに僕の識字は普通だ。難しい漢字とかは読めないけど、辞書を引くぐらいなら出来るので、分からない漢字があったらその都度辞書を引いている。

 

 

「私と貴方って、もう出会ってどれくらい経ったかな?」

「え?あー、そう言えば、どれくらいだろう」

 

 

随分長いこと一緒に居るような気がするけれど、でも実際には多分まだ一年くらいしか経っていないと思う。

 

 

「まだ一年くらいじゃないかな?」

「そだっけ?うーん……」

 

 

簡単に納得した割に、再び思考の海へと潜るフラン。

 

 

「思い出せないなら、出会った日の事を思い出そうよ」

「え?」

「その日に何があったのかを思い出せば、出会った日にちも分かるんじゃないかな?」

 

 

僕の提案に、フランはパァッと表情を明るくして笑う。うん、かわいい。

 

 

「そうだね!えっとー、あれは確か良く晴れた日で――」

 

 

 

 

私は森を歩いていた。

時刻は昼である。

その日は確か、私はお姉さまと結構な大喧嘩をしたのだった。

 

 

「どうしてお外に出ちゃいけないの!!?私だってお外で遊びたい!!」

「外は危ないのよ。貴女にとってとても危険なの。だからダメよ」

 

 

幾ら言っても、幾ら怒鳴ってもこればかり。取り付く島もないお姉さまに、私は更に怒鳴る。

 

 

「もういいっ!!お姉さまの分からず屋!」

「フラン!貴女、姉に対してその口の聞き方は――」

「ふんだ!お姉さまなんて、どうせすぐカリスマブレイクして『うー☆』とか『ぎゃおー。食べちゃうぞー』とか言っちゃう癖に!!」

「待って!?何の話!?」

 

 

捲し立てる私に、割りと傷付いた表情をするお姉さま。

ふ、ふんだ!知らないもん!

あっかんべー!と、私はお姉さまに向かって舌を出してその場を後にした。

 

 

私は自前の日傘を手に持って、更にお姉さま秘蔵のゆーぶいかっと出来る日焼け止めクリームを肌に塗ってから外に出た。

 

 

「じゃあね美鈴!お外で遊んでくる!」

「はい、いってらっしゃ――って!妹様!?だ、ダメですよ!!お外は危険が危ないのです!!」

「じゃあねー!!」

 

 

混乱している美鈴を余所に、私は直ぐ様吸血鬼の脚力を以て地面を思い切り蹴り込んで跳躍した。

 

直ぐに紅魔館は小さくなり、そして私の眼下に広がる森。

その中心に難なく着地して、私は一人ごちる。

 

 

「んー……!」

 

 

と、大きく伸びをして私は辺りを見回す。

森が広がっていた。

当然か、森の中に着地したのだし。

私は特に何をするでもなく、辺りの散策を始めた。

 

私の見たことがない景色ばかりで、心が踊った。

木々も、草花も、虫や鳥たちも、動物たちもそのすべてが、私にとっては絵本の中の住人であり、すべてが新鮮だった。

 

――楽しい!

 

踊る心を余所に、次々に変化していく森の中で、私は一つの『物』を見つけた。

不格好な掘っ建て小屋みたいな、というかもう倉庫とか薪割り小屋とか言った方が適切ではないかと思えるような粗雑な小屋を見つけた。

 

 

「なんだろ?」

 

 

あらゆる物が珍しく感じていた私にとって、それも同様に珍しい物で、わくわくした。

 

 

「ごめんくださーい!誰かいるー?」

 

 

大きな声で挨拶をしたけれど、でも返事はない。留守中だろうか?

そう思って裏手に周り、もう一度表に戻る。

 

 

「……人が住んでるのかな?」

 

 

人が住んだ形跡とかは、私には分からない。だからもう強行することにした。

 

 

「おじゃましまーす!!」

 

 

私はそう言って扉を開けて中に勝手に入っていった。

 

 

 

 

「重い……」

 

 

生活に必要な薪や食料などを森で採取した僕は、帰路に付いていた。

背中には僕の腕くらいの太さの薪が数十本と、腰から下げた袋には山菜や食べられる茸、果物などが入っている。

これだけあれば今週は大丈夫かな、と思って、僕の今の住み処にたどり着いた。

森の中の中心から少し東に行ったところにある、僕の家。

お世辞にも外観は良いとは言えないけど、人一人が住むには丁度いい大きさの家だ。

 

僕は背負っていた薪を一旦戸口と脇に置いて、中に入った。

誰も居ないのに半ば習慣化してしまった帰宅の挨拶をしながら。

 

 

「ただいまー……っと」

「おかえりー?」

 

 

返事があった。あれ?

僕の家に、金色に輝く髪に真っ白な肌の、真っ赤な服を着た女の子が、囲炉裏の前の座布団に鎮座していた。

 

 

「あれ?」

「ん?」

「えっ」

「えっ」

 

 

疑問がお互いに次々と口を付いて、思考が固まる。

えーっと。

 

 

「あ、初めまして」

「初めましてー」

 

 

取り合えず、挨拶をした。何故かそうした方がいいと思ったから。

すると相手も元気な挨拶をしてくれたので、なんかほっとした。

 

 

「えーっと……。君は誰?僕の家で何をしているの?」

 

 

僕は腰から下げた袋を土間に置いて、居間に上がりながら聞いた。

 

 

「私はフランドール・スカーレット。湖の畔に建つ屋敷に住んでいる吸血鬼。よろしくね!」

「ああ、あの屋敷の」

 

 

確か、紅魔館、だったっけ?聞き及んではいる。吸血鬼という、妖怪の中でも強い力を持った種族が支配している館らしいけど、目の前の少女がそんな大層な者には見えなかった。

 

 

「紅魔館の主は私じゃなくてお姉さまだよ?私はお姉さまの妹なの!」

「あ、そうなんだ」

 

 

それは初耳だ。覚えておこう。

 

 

「で、君は僕の家で何をしているの?」

「えーっとねー。お散歩してたらこのお家があったから入ったの!誰も居なかったから廃屋かと思ったけど」

 

 

廃屋とは酷いことを言う。ちゃんと人は住んでますよ?

 

 

「ねーねー」

「何?」

 

 

僕は彼女――フランドールの正面に座って、話しかける彼女に応える。

 

 

「あなたは誰?」

「僕?僕は――」

 

 

こうして、僕とフランドールは特に感慨も深くなく出会ったのだった。

 

 

 

 

 

「思い出した?」

「思い出したっていうかー、別に忘れてたことじゃなかったわ」

 

 

二人でお互いにあーだったこーだったと話していく内に話しは弾んでいた。

フランは退屈してはいないようだったけど、でも当初の目的である『出会った日時』を思い出すには至っていなかったようだ。

 

 

「あの後確か――」

 

 

 

 

 

「――って言うんだ。よろしく」

「よろしくー」

 

 

お互いに名乗りあった私たちは、そのままお話をしていた。

どうして此処に住んでいるのか、私がどうしてお散歩をしていたのか、と、話題には尽きなかった。

楽しい時間だった。

 

楽しくて楽しくて――初めて自分で、自分の意思で出会った人間とのお話は、凄く楽しかった。

でも、楽しい時間は直ぐに過ぎちゃう。

私は『壊す』ことしか出来なかったから。

 

 

「ねぇ」

「ん?」

 

 

私は楽しかった時間を惜しむように、彼に聞いたのだった。

 

 

「あなたは、『壊れ』ちゃうのかしら?」

 

 

瞬間、目の前に座っていた彼の体が、なんの拍子もなく弾け飛んだ。

それこそ、そこまで広い部屋でもなかったから、部屋の中には一瞬で『彼』だった欠片が広がって撒き散らされていた。

 

 

「やっぱり、『壊れちゃった』かぁ」

 

 

私は特に感慨もなく、それをただじっと見つめていた。

いつまでもそうしていてもしょうがないと、座布団から立ち上がり外に出ようとした時、違和感を覚えた。

 

――気配……?

 

一応、種族的には吸血鬼である私も、そこらの人間に比べれば感覚は鋭い。

なので、部屋の中に現れた一つの気配に、直ぐに気がついた。

 

 

「あれ?あなた……」

「どうかした?」

 

 

そこには、先程までのように変わらず座布団に鎮座している彼の姿があった。

私は少し混乱してしまった。

混乱して、再び能力を使う。

『ありとあらゆる物を破壊する程度の能力』……。

実に下らなくて、真に不必要なこな能力は、例えそれが何であっても、必ず破壊する。

バァン!と、再びなにかが弾ける音と共に、彼が消失する。

しかし、今度は先程とは違い、彼は一瞬で元の姿に戻っていた。

目を離した訳ではなく、本当に『瞬く間に』。

 

 

「あなた……」

「ん?どうかした?」

 

 

何事もなかったかのように振る舞う彼に、私は少し考えた後、直ぐにうれしくなった。

 

 

「すごいすごい!!あなた、私の能力でも『壊せない』のね!!」

 

 

 

 

 

突然意識が途切れた。

昔から知っている――経験則で知り尽くしているその感覚は、僕にとっては馴染み深いもので、僕が『気絶』する時のものだ。

でも、今回のように、僕が意識するより前に『勝手に』途切れたことは、一度たりともない。

どういうことなのだろう?

 

 

「すごいすごい!!あなた、私の能力でも『壊せない』のね!!」

 

 

目の前できゃっきゃとはしゃぐ一人の少女――確か、フランドール、だったっけ?

フランドールは両手を合わせて楽しそうにクルクルと、まるで踊るかのようにはしゃいでいた。

僕の体を『壊しながら』。

さっきまでは一撃で終わったから、僕の意識もその都度なくなったわけだけど、今度は違った。

腕や足、腹や背中などが次々と弾けて飛んでいく。

 

 

「フランドール、少し落ち着いて」

 

 

僕は特に『何も思わず』はしゃぐフランドールを宥める。

 

 

「落ち着いてなんかいられないわ!すごいすごい!!」

 

 

キュッと彼女は右手を握る。それと同時に僕の肩が弾けて消える。

暫くはその繰返し。

壊す部分がなくなると僕は『気絶』して元に戻る。

そしてまたフランドールが『壊す』。

元に戻る。

壊す。

元に戻る。

また壊す。

 

時間を忘れるほどに繰返し、そして漸く落ち着いたのか、フランドールは息を切らしてぺたりとその場に座り込んでしまった。

 

 

「ど、どうしたの?どこか痛いの?」

 

 

心配する僕を余所に、フランドールは笑顔を浮かべていた。

 

 

「た、楽しくって、疲れちゃった……」

 

 

えへへ、と、とても可愛らしく頭を掻く姿は実に子供らしい。

しかし、しおらしさの中に爛々と輝く真っ赤な瞳に、僕は魅せられてしまった。

 

――この子なら――

 

 

「ねぇ、フランドール」

「なぁに?」

 

 

フランドールは小首を傾げ、僕を見つめる。

吸血鬼の特性なのだろうか、惹き込まれるような深い深い瞳に見つめられ、僕は少しどぎまぎしてしまった。

 

 

「また、遊びにおいでよ」

「いいの?」

「うん。僕も基本的にこの家にいるし、フランドールさえ良ければまた遊ぼう」

「ホント!?うれしい!!」

 

 

フランドールはそう言うと、ガバッと僕に抱きついて力のまま抱き締める。

バキバキと身体中の骨が折れた感覚の後、まるで菜種が絞られるように、僕は抱き締め殺された。

 

 

薄れ行く意識の中、僕は思ったのだ。

 

――この子なら、僕を殺してくれるかも――

 

 

 

 

 

「うー……」

 

 

フランは何か嫌な事を思い出したのか、眉をひそめて俯いてしまった。

 

 

「どうしたの?フラン」

「初めて会った時にあなたにしたこと思い出しちゃった……」

 

 

しゅんと落ち込むフランに呼応するように、彼女の七色の宝石が付いた羽も一緒に垂れる。

 

 

「気にしないでいいよ、フラン」

「……うー……。どうしてあなたはそんなに優しいのー?」

 

 

癇癪するように頬を膨らませるフランは、なるほど、初めて出会った時と全く変わらない。

 

 

「それよりさ、ほら。思い出した?」

「うーん。ダメ、思い出せないー……」

 

 

暗い顔をしていたフランだったが、しかし次の瞬間、パァッと明るい表情を浮かべていた。

 

 

「そうだ!これからあなたのお家に行っても良い!?」

「僕の家に?どうしてまたいきなり」

「なにか思い出すかもしれないじゃない!ほら!はやくはやく!」

 

 

思い立ったら吉日を体現するように、フランは僕の腕を掴んで紅魔館を飛び出した。

 

 

 

 

「あれ?」

 

 

僕の家に辿り着いた時、フランは少し困惑していた。

 

 

「前とお家が違う……?」

 

 

そう。以前フランがここにやって来た時は、小さい掘っ建て小屋のような家だったのだが、あれから何度が人や妖怪の襲撃に遭った僕の家は改装に改装を重ね、今では二階もついた普通の掘っ建て小屋になっていた。

 

 

「居間は変わってないよ」

「そうなの?ならいいわ」

 

 

そう言うとフランは戸口をがらりと開けて中に入っていった。

 

 

「ホントに変わってないねー」

「それほどでも」

 

 

フランが以前来たときと変わらず、居間の中心には囲炉裏があり、それを囲むように座布団が置いてある。

フランはその内の一つに座った。

 

 

「はい、お茶」

「ありがとー」

 

 

二つの湯飲みにお茶を淹れ、僕らは人心地付ける。

 

 

「なんか、懐かしいなー」

 

 

フランはどこかしみじみとした表情で、居間を見渡す。

特に何の変鉄もない、普通の居間なのだが、フランは本当に懐かしそうに眺めていた。

 

 

「ねぇ、ここに住んでどのくらいになるの?」

「え?うーん、多分二・三年くらいかなぁ」

 

 

本当はもっと前から住んでいるのだけど、別に言うこともないだろう。

フランはへぇーと言って直ぐに他の話題に移った。

 

 

 

 

その日から、僕とフランドールは良く遊ぶようになった。

 

 

「ねぇねぇ!今度は私の家に来ない?」

 

 

ある日のこと。何時ものように二人で遊んでいたら、フランドールがそう言い出した。

 

 

「紅魔館に?」

「うんっ!」

 

 

そう言えば、遊ぶときはいつもいつも僕の家か、僕の家の近くの森でばかりだった。

たまには他の所に出向くのもいいかもしれない。

 

「それじゃ、おじゃましようかな」

「わーい!」

 

 

そう言って僕らは紅魔館へと向かった。

 

 

 

真っ赤に染まった、見たこともないような外観をした大きなお屋敷に、僕は圧倒されていた。

 

 

「でっか……」

「あ!美鈴ー!」

 

 

圧倒される僕を余所に、フランドールは門の前に立っていた女性に声をかける。

赤い髪に緑色の帽子を被り、同じく緑色の服を着た背の高い女の人だった。

 

 

「妹様!お帰りなさいませ」

 

 

フランドールに恭しく一礼したあと、女の人は僕を俯瞰する。

 

 

「妹様。こちらは?」

「私の友達!これから家で遊ぶの!」

「そうですか。紅魔館の門番をしています、紅美鈴と言います。以後、お見知り置きを」

「あ、ご丁寧にどうも、僕は――」

 

 

挨拶をしてくれたので、僕もそれに倣う。

挨拶し終えて門を潜ると、目の前に別の女性が現れた。

 

 

「ようこそお越し下さいました。私、紅魔館のメイド長を勤めさせていただいております、十六夜咲夜と申します」

「あ、どうも」

「それでは、どうぞこちらに」

 

次々に人が現れては挨拶をされるので、既に僕の記憶容量は限界に近かった。

 

 

「こっちこっち!はやくはやく!」

 

 

フランドールは僕の腕を掴んで自室へと連れていった。

 

その後、二人で遊んでいる所にフランドールのおねえさんがやって来て顔を青くしていたりしたけれど、特にこれと言ったことはなかった。

 

 

 

 

「ねぇねぇ」

「どうしたの?フラン」

 

 

僕が初めて紅魔館を訪れた時の事を思い出していると、フランが話しかけてきた。

 

 

「記念日作ろうよ!」

「記念日?何の?」

 

 

突然突拍子のないことを言い出すフランに、僕は首を傾げる。

 

 

「私とあなたが初めて会った記念日だよ!」

 

 

フランは両手を大きく広げ、楽しそうに笑いながら言った。

 

 

「あれ?初めて会った日時思い出したの?」

「それは思い出せないけど!思い出せないなら今日を記念日にすればいいじゃない!」

 

 

フランはそう言って、右肩から下げた小さなポーチから手帳を取り出した。恐らくカレンダーだろう。

 

 

「今日はー7月のー4日!7月4日が私たちの記念日!はい決まり!」

 

 

手帳の中の一日に大きな赤丸を付けて、フランは楽しそうに笑った。

 

記念日かー。話には聞いたことあるけど、今までそう言うことには無縁だったから、少しだけうれしかった。

 

 

「それじゃ――二人の出会いに!」

 

 

フランはそう言うと、場違いな安物の湯飲みを目の前に掲げる。

僕もそれに倣い、そして続く。

 

 

「二人の出会いに」

 

 

――乾杯!

 

コンッ、という場違いな湯飲みを合わせる音を聞いて、二人して大笑いしたのだった。

 

 




如何でしたでしょうか?

ほのぼのですねー(棒)
過去の回想的な感じにしたのですが、楽しんでいただけたら幸いです。

次からは少し本編時間が進みます。
……ハズです。多分。きっと。

ではではノシ
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