死なない少年と壊す少女【完結】   作:写楽―しゃらく―

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痒い!
体が痒いぜ!

今回、ヤバイくらい甘ったるいです。

相変わらすの二時間クォリティの駆け足文章ですが、どうぞ!!


【第四話】Re:birthday

「背ぇ伸びたねー」

「そうかな?」

 

 

灰色の空に包まれたある日に、唐突にフランが言った。

確かに、出会った頃は僕の方が少し背は低いくらいだったけれど、今ではフランより少しだけ、本のちょっと高い。

目線はいつしかフランのおでこぐらいにまで達していた。

 

 

「そう言えば」

 

 

フランが唇に指を当てて、小首を傾げながら聞いてきた。

 

 

「あなたって、今幾つなの?」

「え?」

 

 

フランの質問に、僕は少しだけ戸惑った。

あれ?そう言えば僕、今幾つだっけ?

多分まだ十代前半くらいだけど、もうずっと一人で生きてきたし、家を出たときの年齢も覚えてない。

と言うか、僕は物心ついたときには既に『あの人たち』から『殺されて』いたので、そういったものを数えるほどの余裕なんてなかったし。

 

 

「自分の歳、分からないの?」

 

 

僕より少し背が低くなったフランが、少し俯きかけて考えていた僕の顔を覗き込むようにして訊ねた。

 

 

「うん。僕って今幾つなんだろう?」

「そっかー……」

 

 

僕がそう言うと、フランは少し残念そうな顔をして唇を尖らせた。

 

 

「ところで、どうしていきなり僕の歳を聞いたの?」

「え?えーっとね、それは――」

 

 

モジモジと両手を前に合わせて、恥ずかしそうに顔を赤らめて、フランは言った。

 

 

「あなたのお誕生日会がしたいなー、って思って」

 

 

 

 

 

本当はただの思い付きだった。

 

――彼の誕生会がしたい!

 

ふとした気持ちで思い付いて、しかし彼に訊ねてみたところ、彼は自分の誕生日を知らなかった。

それどころか、今の年齢も覚えてなかった。

うーん、困った。

誕生日を開くどころじゃなくなったかも――?

いや、逆に考えてみよう、

簡単なことだ。私と彼が初めて出会った日を決めたようにすればいいんだ。

 

 

「じゃあさじゃあさ!今日をあなたのお誕生日にしようよ!」

「今日を?」

 

 

私が突拍子もない提案をするのはいつものことだけど、今日の彼はいつもより一層怪訝な表情をしていた。

 

 

「そう!それでねそれでね!私とあなたの誕生日の丁度真ん中の日も一緒に祝おうよ!『真ん中バースデー』ってやつ!」

「真ん中バースデー?」

 

 

私はざっくり説明する。

真ん中バースデーとは、二人の誕生日の丁度真ん中の日に誕生会を開くというものだ。以前パチェが持っていた漫画に書かれてたのを、私は提案したのだ。

 

 

「えーっとね、私の誕生日は〇月×日でしょー?今日があなたの誕生日だからー」

 

 

手持ちの手帳型カレンダーを折り畳み、つんつんと指を同時に動かして二人の誕生日の中日を探す。

 

 

「あっ」

「えっ?なになに?」

 

 

私と彼の誕生日の中日は、なんと言うことだろう。

聖なる夜――

 

 

 

「十二月二十四日……クリスマスイブだ!すごいすごーい!!」

 

 

悪魔であるはずの私がなんと、聖なる夜に誕生会を開くという、なんとも不思議な偶然もあるものだと、私は呆然とする彼を置いて一人ではしゃいでいた。

 

 

 

 

「咲夜!彼のお誕生日会やるから準備して!お願い!」

 

 

突然やってきてそんなことを申されたのは、我が主の妹様であるフランドール様でした。

 

 

「はぁ。お誕生日会ですか。それにしても随分突然ですわね」

「そうよ!ついさっき決まったんだから!」

 

 

なんとまぁ突拍子が無さすぎる妹様です。

 

 

「ね、咲夜?お願い」

 

 

そう言って両手を会わせてメイドに頭を下げて上目遣いをする妹様。

本当に可愛らしいお姿で、思わず瀟洒が溢れ出そうになります。

 

 

「フランドール様。従者に頭を下げる必要はありません。貴女様はただ命じて下されば、不肖この私、十六夜咲夜が完璧で瀟洒なバースデーパーティーを開催いたしましょう」

「ホント!?ありがとう咲夜!大好き!」

 

 

そう言ってガバッとフランドール様に抱きつかれました。

あぁ、このまま死んでもいいでしょうか……。いえ!駄目です!

フランドール様のご要望は、彼の方のお誕生日会。これを遂行せずに死ぬわけには参りません。

抱きつくフランドール様の感触を名残惜しみながら、私はフランドール様を引き離します。

 

 

「では、フランドール様。本日午後七時よりパーティーを開催いたしますので、それまでお待ち下さい」

「分かった!ありがとう咲夜!」

 

 

そう言って私の顔を手で自分の顔の近くまで寄せると、フランドール様は私の頬にキスをしてくださりました。

「よろしくねー!」と言って立ち去るフランドール様を見送って、私は一人佇んでいました。

 

 

「あ、咲夜さーん!あのですね――って、キャアアアアアアア!?咲夜さんが!咲夜さんが血塗れにいいいいいいいいいい!?」

 

 

取り乱す美鈴に介抱された私は、漸くパーティーの準備を始めるのでした。

 

 

 

 

 

「はいっ!お姉さま!」

「あら?なにこれ?」

 

 

突然私の自室にやって来たフランは、私に一枚の便箋を手渡して来た。

 

 

「今日彼のお誕生日会をすることになったの!お姉さまも招待してあげる!」

「あら。それは光栄ね」

 

 

私はそう言ってフランから便箋を受けとる。

中を開くと、可愛らしいメモ帳のような紙切れに、これまた丸っこい可愛らしい字で『本日午後七時より 紅魔館食堂にてバースデーパーティー開催!遅れないように!』と書かれていた。

 

 

「それじゃ、お姉さま!よろしくねー!」

「はいはい」

 

 

そう言って元気に部屋を飛び出していったフランを見送り、私は一人でその便箋を眺めていた。

 

 

「どうやら私の懸念は杞憂だったようね……。あんなに楽しそうなあの子を見るのはいつ以来かしら」

 

 

そう言って私は咲夜を呼ぶ。

音もなく現れた咲夜は、何故かどこかフラフラしているように見えたけど気のせいだろう。

 

 

「お呼びでしょうか、お嬢様」

「今日のパーティーに着る服を用意して頂戴。華やかなパーティーだから明るめのドレスを。フランにも着替えをさせてね」

「畏まりました」

 

 

一礼して再び音もなく姿を消した従者の服には、少し血の臭いが付いていたような気がした。

 

 

 

 

 

「誕生会?」

「うんっ!パチェと小悪魔も来てほしいんだー!」

 

 

突然図書館にやって来て便箋を手渡してきたフランの表情は、以前とは比べようにもないほどに明るく爛漫で、年相応の子供らしさが窺えた。

 

 

「分かったわ。あの子の記念日ですものね。精一杯お祝いしなくちゃ」

「わーい!ありがとうパチェ!」

 

 

両手を挙げて喜ぶフラン。こうしていると、吸血鬼だと言うことを忘れてしまいそう。

 

 

「ところでフラン」

「なぁに?パチェ」

「プレゼントは、用意したのかしら?」

「あっ」

 

 

やっぱり。

 

 

「ど、どうしようパチェ!プレゼント……用意してない!」

「落ち着きなさい、フラン。そもそも今日突然開くことになった誕生会にプレゼントを用意している方が異常よ」

 

 

しかし、こうして誰かの為に焦っているフランを見るのは初めてで、なんだか微笑ましい思いでいっぱいだ。

仕方ない。ここは紅魔館の頭脳として知恵を貸してやろうかしら。

 

 

「フラン。プレゼントを渡すいい方法があるのだけれど」

「ホント!?教えて!」

「えぇ、教えるわ。小悪魔。ちょっとこっち来て」

「はいはーい」

 

 

 

 

 

 

午後七時を回り、紅魔館の住人全員が僕の為に食堂に集まってくれた。

 

 

「えー、それではこれより!彼のお誕生日会を始めまーす!」

 

 

元気良くフランが開会の挨拶をすると、皆が手に持っていたクラッカーの紐を引く。

 

パンパンパパパン!!

 

食堂に盛大な破裂音と火薬の臭いが立ち込めると、紅魔館の人たちが一斉に言った。

 

 

「「「ハッピーバースデー!!」」」

 

 

そうして僕の為に開かれた誕生会が始まった。

 

 

 

 

各種様々な料理に舌鼓を打ちつつ、僕は輪の中心にいた。

話す内容は当たり障りのないものだけど、皆真面目に聞いたり、時には茶化したりと、お酒の力からかそれぞれが思い思いにはしゃいでいた。

僕も初めてお酒を飲んだけど、悪くない。

特にこのワインとか言うやつは結構美味しい。

しかしやはり、とりわけ注目すべきはその料理の数々だ。

様々な和洋折衷の料理が所狭しと並んでいた。

これを全て一人で作った咲夜さんは本当に凄い人だと思う。

 

 

「はーい!それではみんなちゅうもーく!!」

 

 

と、僕が料理を堪能していると、ダイニングテーブルの上座の方から小悪魔さんの声が聞こえてきた。

 

 

「えー、これより!フランドール様からプレゼント贈呈式を執り行いたいと思いまーす!では主役の方!此方へどうぞ!!」

 

 

呼ばれたので僕は小悪魔さんの方へと足を運ぶ。

するとダイニングの照明が消え、パッと僕を照らすライトだけが灯った。

 

 

「えー、それでは!ご唱和ください!フランドールさまぁーーーー!!」

「「「フランドールさまぁーーーー!!」」」

 

 

フランの名前を皆が呼ぶと、僕の目の前に、それはそれは胸元や背中が大きく開いた露出の大きな真っ赤なドレスに身を包んだフランが立っていた。

頭には何故かリボンを付けている。首輪も忘れてはいけない。

 

 

「え、えっとね?プ、プレゼントはこの私わた――

「フランドォォォォォォォォォォル!!!!」

 

そう言って叫んだのはフランのおねえさん、レミリアさんだった。

 

 

「えっ!?フラン!?何してるの貴女!なんでそんな破廉恥な格好しているの貴女!?」

「だ、だって……オトコノコはオンナノコの体が大好きだから、それをプレゼントしたら喜ぶだろう、って……」

「誰だそんな事教えた奴は!!」

「パチェと小悪魔」

「パチェェェェェェェェェェェ!!小悪魔ぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

名を呼ばれた二人はお互いに顔を見合せ、同時に「てへぺろ!」と言って舌を出してウインクをした。

その二人に突撃しようとレミリアさんが走り出したのだが、しかしたどり着く前に二人はパチュリーさんが作った魔方陣の中へと吸い込まれてこの場から退場してしまった。

 

その後はレミリアさんが逃げた二人を追いかけるという鬼ごっこが開催された。

 

 

☆メーリンェ…

 

 

「星……綺麗だなぁ……」

 

 

少し肌寒くなってきた空の下、一人門の前で佇む美鈴は呟いた。

 

 

☆オワリ

 

 

その日の帰路はフランドールが着いてきた。

女の子を一人で夜遅くに歩かせるのは気が咎めたけど、彼女は吸血鬼だから別に心配はないだろう。

 

 

「楽しかったね!」

「うん。本当に楽しかった」

 

 

寒空の中、二人で静かに森を歩く。

会話はポツポツで、特に弾むことはなかったけれど、でも、妙に心地いい時間だった。

 

 

「またやろうね」

「次は真ん中バースデーだね」

 

 

僕がそう言うと、フランはクスッと笑って「そうだね」と笑顔を見せる。

とても悪魔と言われるようなものではないその表情を、僕が独り占めしていた。

 

 

「それじゃ、送ってくれてありがとう、フラン」

「うん。バイバイ」

 

 

そう言って僕は家の戸口を開けて、

 

 

「待って!」

 

 

と、フランに呼び止められる。

 

 

「どうかした?フラン」

「まだ、プレゼント渡してなかったよね」

 

 

なんだ、そんなことか。

 

 

「大丈夫だよ。今日はすごく楽しかった。僕の人生の中でも最高の一日になったよ」

「ホントに?よかった」

 

 

ホッと胸を撫で下ろすフランは、スゥーと息を吸って深呼吸をした。

 

 

「ね。目、瞑ってくれる?」

「え?いいけど……」

 

 

言われるがまま、僕は目を瞑る。

そのまま僕の頭が誰かの――フランの両手に挟まれるように包まれて、次の瞬間。

 

――チュッ

 

唇に、柔らかい感触を覚えた。

吸い込まれるようなその感触に、僕の呼吸が完全に停止した。

寒さも忘れ、逆に体は中心から熱くなってくる。

 

 

「……もう、いいよ」

「…………ぁ」

 

 

目を開けてフランを見る。

暗闇に包まれた森の中でその表情を窺うことは叶わない。

だけど、フランはどこか恥ずかしそうにしていた。

見えずとも分かる。

僕だってそうだから。

 

 

「えへへ……。プレゼント」

「あ、ありがとう……」

「…………」

「…………」

 

 

暫くの間、互いに沈黙が訪れる。

先程とは違い、今度は少しどこかぎこちない。

 

 

「い、一応言っておくけど……は、初めて、だったり……」

「う、うん。わかってる……」

 

 

お互いの気まずさに耐えきれなくなったのか、フランが踵を返して空へと浮かんだ。

 

 

「それじゃあ!また明日!」

「あ、ああ!また明日!」

 

 

そうしてフランは飛んでいった。

唇をなぞると、まださっきの感触が残っていて、体が熱い。

 

 

「僕も――大好きだよ、フラン」

 

 

僕の初めての誕生会は、多分、一生忘れられない大切な思い出になった。

 

 

 




如何でしたでしょうか?
痒くなりましたか?
お体は痒くはありませんか?
僕は痒いです。
顔から火が出そうになりました。

まぁ次も甘いと思うンですけど。


真ん中バースデーネタ知ってる人は居ますかね?
あれいいですよね、さなちゃん可愛い。

それではまた。
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