死なない少年と壊す少女【完結】   作:写楽―しゃらく―

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お待たせしました。第八話となります。

いやぁ、つくづく思いました。

自分に戦闘シーンは書けねぇ。

下手くそでこなくそな文章ですが、こんな自慰小説でよければどうぞ。


【第八話】誰が為に

「フランが……拐、われた……!?」

 

 

どこからか僕の所在を突き止めたのか知らないが、レミリアさんがやって来てそう僕に告げた。

 

 

「ええ。人里の、人間の手によってね」

 

 

淡々と述べるレミリアさんを余所に、僕の心はかなり揺れ動いていた。

なぜ?どうして!?

なんでフランが拐われなくちゃならない!?

 

そんなこと、分かりきっている。

原因は僕だ。

フランは、僕を誘きだす為に人間によって捕らわれた。

 

なら――それなら、僕がすることは一つだ。

 

 

「行くのかしら?貴方が」

「…………」

 

 

踵を返そうと体を僅かに揺らした僕に、残酷なまでに冷静なレミリアさんの言葉が胸に突き刺さった。

それも分かっている。

一年もの間、手前の勝手な都合でフランを一人ぽっちにして、一体どの面下げて会えと、レミリアさんは暗に責めているのだ。

 

 

「別に貴方の人生よ。貴方がどうしようと、それは貴方の勝手。勝手な都合で、勝手な思想。私がどうこう言うつもりなんてないわ」

 

 

でもね、と、レミリアさんは僕に止めを刺さんと、更に告げた。

 

 

「フランの人生もまた、あの子の物よ。長い間閉じ込めてきた私が言うのもなんだけど、それでも、貴方ごときがあの子の人生を変えようとするのなら、一言だけ言うわ。

 

――身の程を知れ。人間」

 

 

ザクリ、と、僕の心に何かが刺さる音がする。

実際には音など鳴ってはいないのだけど、それでも、僕の何かが壊れた気がした。

 

 

「身の程を知って、身の有り様を知りなさい。人間程度の弱い存在が、あの子を救えると?いつか必ず死に行く貴方が、あの子の側に居続けると?

 

――笑わせるな糞餓鬼。

 

貴方が今まで誰からも疎まれ、苛まれ、虐げられてきたことは知っているし、でも、それでも、貴方は人間であることにしがみついた、ただの幼い哀れな愚か者よ。

人であることを捨てられず、人であることを望んで、人であることを求めた人間が、化け物たる象徴である吸血鬼を救う?ハッ!馬鹿馬鹿しいにも程がある」

 

 

責める。責める。レミリアさんの言葉と言う刃が、僕の心を責め立て突き刺し、壊していく。

 

 

「もし、それでも貴方がまだフランを助けたいと思うのなら、ここで誓いなさい。

――ヒトであることを捨てる――と」

「………………」

 

 

言葉が出ない。

圧倒的なまでのレミリアさんの圧に圧され、僕は身動きが取れなくなってしまった。

だけど――

 

 

「……分かりました」

 

 

だけど、口は動いてくれた。

その一言は、恐らくは僕を完全に『殺す』一言。

人であることを捨てられず、人であることにしがみつき、人であることが恋しく、人であることに憧れた、僕の最後の心の砦を、粉々までに『破壊』し尽くす、悪魔の契約。

だけど、何を迷うことがある。

レミリアさんは、僕がフランを救えると思うのかと言ったけれど、それは酷い間違いで見当違いもいいとこだ。

 

 

既に救われたのは、僕の方なのだから。

 

 

だから、迷う必要なんて微塵もなく、躊躇う必要なんて全くない。

僕を救ってくれた彼女を救う為に、僕が人であることが邪魔であるならば、僕は喜んで『人』を捨てよう。

 

 

「……心は、決まったかしら」

 

 

レミリアさんは先程までの圧を納め、柔らかく微笑みながら僕に訪ねた。

 

 

「はい。フランを助けに行きます」

「そ。……行く前に、一つだけいいかしら?」

 

 

妖艶な笑みを浮かべ、レミリアさんは僕に接見して、その小さな指を僕の唇に当てながら聞いた。

 

 

「それは、誰の都合かしら?」

 

 

分かりきっている答えに、レミリアさんは心から待ち望んだように訊ねる。

そんなもの――決まっている。

 

 

「僕の為だ」

 

 

 

 

 

暗い――

何も見えない闇の中、私は目を覚ました。

いや、目を覚ましても闇の中だったから、恐らくは私には目隠しがされているのだろう。

腕は後ろ手に縛られ、足はそこいらの柱に括り付けられているらしい。

 

 

「――んっ」

 

 

体を縛る縄も、腕を絡める綱も、私ならば簡単に引きちぎれるであろうはずの物なのに、なぜか力が入らない。

 

 

「それ、動けないでしょ?」

 

 

暗闇でもがく私に、とてもよく聞き慣れた、若い女の声が届いた。

 

「私特製の封印術を施した陰陽符。効果は紫で実践済みのお墨付きよ」

「……霊夢?」

 

 

信じたくはなかった。信じられるはずがなかった。

でも、残酷にもその声の主は私に突きつけるように言った。

 

 

「正解。さすが吸血鬼。聴力は天狗以上ね」

 

 

目が見えないから、その表情を窺うことは叶わなかったけれど、霊夢は笑っていた。

 

 

「どうして……、どうして霊夢が、こんな……」

 

 

戸惑い、目隠しの下から溢れる涙を止めようともせず、私は霊夢に訊ねた。

それを聞いて、霊夢は小さくため息を吐いて答えた。

 

 

「んなもん、あんたが一番よぉーっく分かってるでしょう?」

 

 

吐き捨てるように、霊夢は言った。

私が一番知っていること……。答えは言わずもがな、彼のことだ。

霊夢は彼を探していたのだ。

どうするために?

――分かってる。

何をするために?

――分かってる。

彼を殺すために?

――そんなこと、分かりきっている。

だからこそ、信じられなかった。

 

 

「どうしっ、どうしてっ!?なんで彼を殺そうとするの!?霊夢!」

 

 

嗚咽が混じる私の、懇願にも似た質問に、霊夢はこと感情を交えず、極めて事務的なまでの口調で答えた。

 

 

「彼が人里に仇なす者だから。理由なんてそんなもんよ。まぁ人里の連中に一年くらい頼まれ続けてきたってのもあるけど」

 

 

淡々と答える霊夢は、かつて紅魔館に押し入った時のような、普段のぐーたらな彼女ではなく、『博麗の巫女』としての口調で私に告げた。

 

 

 

「ま、安心していいわよ?彼が大人しく殺されてくれるってんなら、あんただけは助かるし」

「…………」

「別に私はあんたが嫌いな訳じゃないし、死にたくないなら――」

「……クスクス」

 

 

突然、不気味に笑い出す私を見て、霊夢は話していた口を止める。

 

 

「あはははははははは!アハハハハハハハハハハ!あはははははははは!アハハハハハハハハハハ!あはははははははは!アハハハハハハハハハハ!あはははははははは!アハハハハハハハハハハ!あはははははははは!アハハハハハハハハハハ!あはははははははは!アハハハハハハハハハハ!あはははははははは!」

「…………」

「フフフ……、霊夢は本当に馬鹿なのね……クスクス」

「は?」

 

 

突如として私から発せられる発言に、霊夢は少しだけ怪訝そうな声を出した。

 

 

「死にたくないなら?彼を殺す?見当違いもいいとこね!たかがその程度の覚悟で、私は彼を想っていたと、本気で思っているの?」

「……死ぬのが怖くないの?」

 

 

霊夢はただ静かに、訊ねた。

 

 

「怖いわ。すっごく怖い。死ぬのは本当に怖いし、死にたくないわ。でもね――」

 

 

私は目隠しをされているが、霊夢を睨む。

心の中で、キッと視線を向ける。

 

 

「彼を犠牲にしてまで、私は生きてなんかいたくない」

「…………そう」

 

 

残念そうな霊夢の声が、私の耳に届いた。

 

 

「……だったら、彼が来たとき、お望み通りにしてあげる」

 

 

何の感情も読み取れない霊夢の言葉が、暗闇の中に響いた。

 

 

 

 

『お、おい……あれ』

 

 

人里の入り口を警備していた人間が、突如現れた人影に気づく。

静かに、そして悠然とした歩調で歩みを此方に向けるその人影を見て、人間たちは恐れ戦く。

 

 

『ば、化け物が来やがった……!』

 

 

僕は彼らの前に相対して、その言葉を聞いていた。

化け物、か。

 

 

「化け物で結構。怪物で上等。一つだけお願いがあります」

『な、ん、』

 

 

声にならない人間は、僕を見て更に体を縮込ませる。

 

 

「退いてください」

 

 

僕のその瞳は、さてはて彼らにはどう写るのか。

彼らは即座にその場から押し退いて、僕が通るだけの道を空けてくれた。

 

 

「ありがとうございます。もういいですよ」

『へ?ぐぁっ……』

 

 

僕の労いの言葉を聞いた人たちがみな、その場に崩れるようにして倒れ伏す。

死んではいない。気絶しただけ。

僕から発せられる圧倒的な負の感情をぶつけられて、彼らは気を失ったのだ。

僕はそれを一瞥もせず、そのまま通りを歩いていく。

戒厳令でも敷かれたのか、人里には人っ子一人居なかった。

居るのは自警団の人たちだけだけど、その人たちも僕を見るとその様相に圧されてその場に崩れる。

暫く歩いていくと、人里の中心の広場に辿り着いた。

そこには――

 

 

「フラン!!」

 

 

広場の中央に椅子で縛られたフランの姿がそこにあった。

 

 

「――ッ!……来て、くれたの?」

「当たり前だ!!」

 

 

弱々しい声で、囁くように言うフランに、僕は大声で怒鳴るように返すと、フランは小刻みにフルフルと肩を震わせる。

泣いているのか、目隠しをしているからこちらからは分からない。

 

 

「……まぁまぁ、見せつけてくれちゃって。お熱いこと」

 

 

と、その場にもう一人、現れる。

最強の人間にして幻想郷のバランサー。

今代博麗の巫女である、博麗霊夢がその姿を現した。

 

 

「霊夢さん……!」

「あらあら。どうしたのその顔は。まるで仇を見るような目ね」

 

 

クスクスと口に手を当てて、霊夢さんは挑発的に笑った。

 

 

「どうして霊夢さんがこんなことを!?」

「なんで?どうして?分からない?」

 

 

分かるわけがない。霊夢さんは以前に僕に確かに言った。

 

 

『別にあんたが人殺ししてようが、私には関係がないし興味もない』

 

 

霊夢さんは確かにそう言った。なのにどうして?

 

 

「まぁ、根負けした、ってだけ言っておこうかしら。あれだけ頭を下げられたら、動かないわけにはいかないし」

 

 

ガリガリと頭を掻いて、心底詰まらなさそうに霊夢さんは語る。

 

 

「だからまぁ、あんたには悪いけど、潔く『退治』されちゃって頂戴な」

 

 

言いながら、僕にお祓い棒を突きつける霊夢さんの顔は、本気のそれだった。

僕は、彼女と戦うしかない。

『だが』それがどうした。

さっきレミリアさんに誓ったじゃないか。

僕は『ヒトであることを捨てる』と。

ならば、覚悟などする必要もない。

覚悟は、既に出来ている。

 

 

「あら。漸く本気になったみたいね」

「はい。貴女を倒して、僕はフランを助ける。そして今後、人里の人間たちの追及にも真っ正面から立ち向かう」

 

 

もう逃げない、と僕が最後に言うと、霊夢さんは心底嬉しそうな笑みを浮かべて笑った。

 

 

 

「それじゃあ!精々足掻いて見なさい!人間!!」

 

 

 

 

 

霊夢さんの攻撃は、なんと言うか、凄かった。

歴戦の博麗の巫女は、僕が想像していたよりもかなり苛烈で、熾烈で、鮮烈だった。

大なり小なりの様々な弾幕を放ったかと思えば、次の瞬間には僕の背後を取ってお祓い棒で攻撃し、僕が振り替えれば既に距離を取る。

戦い慣れていると言う言葉では言い尽くせない、類い希なる格闘センスが全面に押し出されていた。

かく言う僕は、弾幕一つ放つことも出来ないド素人であり、霊夢さんの弾幕を辛うじて避けるのが精一杯な上、空も飛べないから近付いて来たところを狙うしかない。

傷は直ぐに回復するとはいえ、それでも痛みは頭を蝕み、僕の心をガリガリと削っていく。

 

 

「ホラホラァ!!どうしたの!?それで本気のつもり!?」

 

 

縦横無尽に飛び回りながら、霊夢さんは僕を煽る。

 

 

「れっ、霊夢さん……っ!ちょっとは手加減とかは……」

「はッ!なに言っちゃってんのよ!手加減も手心もお情けも、残念ながら私の辞書にはないわ!!」

 

 

……いや、それくらいあってもいいじゃないか。人として。

人であることを捨てた僕が、人として、なんて言うのも甚だおかしいが、しかし霊夢さんの発言も人間としてどうよ?

しかし、手加減してはくれないと言うことは、常に全力と言うことで、つまりこれは霊夢さんにとっての持久戦となる。

いくら殺しても死なない僕に対して、常時全力で挑むと言うことは、そういうことだ。

必ず隙が出来るときが来る。僕がそう考えてた時だった。

 

 

 

「ふっ!!」

「――ヅゥッ!?」

 

 

メキィッ!!と、僕の右腕から嫌な音と共に激痛が走る。

霊夢さんが弾幕を放ちつつ接近して、空を飛んで勢いを付けた蹴りを叩き込んで来たのだ。

 

 

「……ぐっ、うぅ!!」

 

 

あまりの威力に体が吹き飛ばされそうになるのを、なんとか両足で踏ん張ることで耐えた僕は、そのまま霊夢さんの足を砕けた右手で掴む。

 

 

「!!?」

「ぅぅうあああああああ!!」

 

 

グォン!と、霊夢さんの足を掴んでそのまま地面へと叩き付ける。

ドゴンっ!!と言う地面が陥没する音が響いた。

 

 

「――ッかっハ!?」

 

 

地面に叩き付けられたことで霊夢さんは肺から空気を吐き出して悶えていた。

すかさず僕はそのまま霊夢さんに飛び掛かる。

 

 

「るぁぁぁぁああああああああああ!!」

「――っ!」

 

 

大きく振りかぶった右足を、思いきりその体の中心目掛けて叩き込むが、霊夢さんは間一髪でそれを横に転がって避けた。

 

 

「チィッ!」

「く……、ケホッ、コホッ……。やるわね、意外と」

「お褒めに預かり光栄ですね」

「つれないわね。ま、それもこれまでだけど――」

 

 

と、霊夢さんが再び僕に向かって弾幕を展開するためのお札を取り出した時だった。

 

 

『オイコラ化け物ぉ!』

 

 

広場の中央から、怒号が響いてきた。

僕がその方へと顔を向けると、そこには――

 

 

「――ッ!?フラン!!」

 

 

そこには、フランに向かって小刀を突き立てる男がいた。

 

 

『ハハッ!今更気付いても遅ぇんだよ化け物!!テメぇに俺らと同じ気持ちを味合わせてやる!!』

 

 

男はそう言って、フランに向かって小刀を振り上げた。

 

 

「――ッ!やめなさい!!」

 

 

それを見て、僕と霊夢さんはそちらへと、まさに弾けるように飛んだ。

 

しかし、霊夢さんとの戦いに巻き込まないようにと、わざと離れて戦っていた僕らには、その距離は、余りにも遠く――

 

 

『ウラァッ!!』

 

 

無情にも、その凶刃はフランへと向かって邁進していた。

 

 

「フランドォォォォォォォォォォル!!!!」

 

 

僕のその声を聞いて、目隠しで見えないはずのフランは、全てを悟ったかのように、ニコッと笑って、まるで何時ものように笑って、優しく、そして言った。

 

 

「……バイバイ。大好きだよ」

 

 

ドスッ――

 

 

この世界の全てを作った神様が本当に居たとしたら

 

もしその神様に会えるのだとしたら

 

僕はそいつを、絶対に許さないと、心から誓った。

 




如何でしたでしょうか?

いやぁ霊夢さんは強敵ですね。
この作品での霊夢さんは廿代(にじゅうだい)も半ばに差し掛かっているので、少し口調やらが大人のイメージで書きました。

なぜ霊夢さんと戦うことになったかは次回書きたいと思います。

それでは残り二話。無惨に凄惨にハッピーエンド目指して頑張ります。

それでは、また。
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