聖剣使いの禁呪詠唱の二次創作物です。
内容は諸葉vsエドワードです。
原作進行度などは無視で、
書きたいように書いた感じです。
一時間半クオリティなのでガバガバですが御容赦を……。

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白黒の結末―騎士の決闘―

 かつて行われた一戦がある。

 灰村諸葉という少年と、Sランク保有《救世主》サー・エドワード・ランパードが衝突した一戦だ。

 戦いは灰村諸葉の放った禁呪――第十三階梯闇術《摩訶鉢特摩地獄(コキュートス)》により、彼の勝利で幕を閉じ、負けを認めたエドワードは灰村諸葉をSランクに推薦する事になった。

 

 名実共に、灰村諸葉がSランクとして認められた一戦である。

 

 だが、白騎士は終わっていなかった。

 一戦。たったの一戦。それだけで終われる筈がない。負けは認めた。しかしそれは『永劫の敗北』ではない。

 Sランクなどどうでもいい。

 これは男と男の戦い。

 

 白騎士エドワードは、七頭会議において、こう宣言した。

 

『モロハ・ハイムラ、僕は君に挑戦状を叩きつけよう。再び僕と戦え。あと日より更に苛烈で鮮烈で、熱く燃え尽きるような戦いをしようじゃないか』

 

 ☆ ★ ☆

 

 それはきっと運命だったのです。

 前世から――いえ、それより遥か前より決まっていた男達の宿命。

 切ることは出来ない。

 斬り結び、果てて終わる悲しき業。

 それが今、幕を開けるのです。

 

 ☆ ★ ☆

 

 土地の死んだ山の頂上。

 かつて禁呪により凍りつき、完全に殺された死闘の戦場。

 そこには二人の男が居た。

 灰村諸葉。

 サー・エドワード・ランパード。

 二人は冷めた眼差しで、しかし熱く滾った瞳で睨み合っていた。

 

「……エドワード、もう一度聞くぞ」

 

「あぁ、構わないよ」

 

「俺に決闘を挑むのか?」

 

 諸葉はかつてエドワードに言われた

言葉を、エドワード自身に返す。

 それが皮肉であると判っていて尚、エドワードは怪しく笑う。

 

「挑ませてもらうよ、ジャック――いいや……我がライバル、モロハ」

 

 チャキッ……と、エドワードが認識票を握りしめた。

 ……止めても無意味か。

 吐き捨てた諸葉も認識票に手をかけ、同時に引き千切った。

 

 諸葉は一振りの剣を。

「――《聖剣サラティガ》」

 

 エドワードは白き鎧と槍盾一対の装備を纏う。

「――《銀嶺アーガステン》」

 

 二様の固有秘宝が顕現し、空間がピリピリと振動する。

 エドワードが背負った槍を抜き、畳まれた槍が天を穿つ。

 

「今回は始めから本気だ。君も手加減など一切しなくていい」

 

「そのつもりだ」

 

「そうじゃない――殺すつもりで来い」

 

 諸葉は目を疑った。

 エドワードの纏うプラーナには、明確な殺気が宿っていたのだ。

 

「……判った」

 

 避けようがないだろう。

 峰打ちなどと考えていては、こちらが殺される。それほどにエドワードは強い事を諸葉は知っている。

 ゆえに、諸葉も覚悟を決めた。

 

「何方が死んでも、」

「恨みっこ無しだろ?」

 

 瞬間、諸葉は地を駆けた。

 光技《神足通》で肉薄し、銀の大盾にサラティガを振りかざす。

 当然、容易く弾かれる。アーガステンの防御力は凄まじく、かつては兜を僅かに傷付けたのみだった。

 しかし、諸葉は当時から格段に強く成長している。

 サラティガも、覚醒を経て、真の聖剣として顕現しているのだ。

 

「次はその盾を砕くぞ!」

 

《神足通》の奥義の一つ、貪狼。全力全速の爆発的なスピードをもちて、分身かと見紛う程の連撃を放つ。

 あらゆる方向から攻撃を受けるエドワードのアーガステンは、しかし砕かれる事はない。

 成長しているのは、エドワードとて例外ではなかった。むしろ、成長しているからこその再戦。

 兜の中で口角を上げたエドワードは、僅かな隙をついて槍で諸葉の体を薙ぎ払った。

 

「ぐぅう……! ……綴る!」

 

 諸葉は数十メートルと吹き飛ばされつつ、スペリングを行う。

 

『冥界に煉獄あり 地上に燎原あり

 炎は平等なりて善悪混沌一切合財を焼尽し 浄化しむる激しき慈悲なり

 全ての者よ 死して髑髏と還るべし

 神は人を見捨て給うたのだ

 退廃の世は終わりぬ

 喇叭は吹き鳴らされよ 審判の時来たれ』

 

 火の第五階梯闇術《黒縄地獄(ブラックゲヘナ)》をサラティガに纏わせ、聖剣は漆黒の炎剣と化した。

 源祖の技、光技太極。太白と黒縄地獄を同時にサラティガに発動し、凶悪な破壊力を孕んだその名前は、

 

「《天をも焦がす降魔の剣(クリカラ)》ァァア!!」

 

 態勢を一転させた諸葉は、普段は好まない《神足通》破軍を使用してエドワードとの距離を詰め、降魔の聖剣がアーガステンの槍と衝突した。

 

「それは見飽きたよモロハァ!」

 

 アーガステンの槍が輝きを増し、降魔の聖剣を押し返す。

 諸葉はぐらりと態勢を崩され、そこへ大盾によるプッシングが襲いかかるが、《剛力通》で高めた蹴りで大盾の威力を軽減。弾かれるように後退し、降魔の恩恵を失った聖剣サラティガを大きく一振りした。

 

「凄いな、エドワード」

 

「この程度防げないようじゃ、不死身は名乗れないからね」

 

「なら、これはどうだ?」

 

 諸葉はサラティガを天へ掲げ、一気に綴りあげる。

 

『冥界に煉獄あり 地上に燎原あり

 炎は平等なりて善悪混沌一切合財を焼尽し 浄化しむる激しき慈悲なり

 全ての者よ 死して髑髏と還るべし

 之は果たして此岸なるや 彼岸なるや

 焦土と化した故郷の なお荒涼たるこの皮肉よ

 見渡す限りの果てなき絶望』

 

 サラティガに青白い炎が纏い、眩いエネルギーが刃となって、顕現したのは超巨大な蒼炎の大聖剣。

 

「防いでみろよ――ヴリトラァァア!!!」

 

 振り下ろされた蒼炎の大聖剣。計測不可能なほど膨大なエネルギーの塊が迫り、しかしエドワードは笑った。

 盾では無く、アーガステンの槍を構え、

 

「《銀嶺なる神の槍(ゴッド・アーガステン)》ェェェエエエン!!」

 

 槍に集約される膨大なプラーナ。

 螢惑。根源たる象、不死身の白騎士が振るう煌めく弩級の神槍が顕現し、

 

 ――大聖剣と神槍が邂逅した。

 

 それは前世か、そのまた前世か。

 地上と天上を巡った戦争にてぶつかった最強の二騎士。

 それが此処に、蘇ったのだ。

 

 視界を、目を焼き尽くすようなエネルギーが空間を歪ませ、二人の騎士を中心に大爆発を起こした。

 山一つの消滅。それはひとえに、彼らの無意識の操作によって留められた最小限の被害だった。

 

「…………エド、ワードッ!」

 

「……モロハァッ!」

 

 聖剣サラティガは折れ、銀嶺アーガステンは砕け、それでも立ち上がった二人の男はボロボロの体で駆け出した。

 あるのは、拳のみ。

 もはや《剛力通》を発動させられる余裕すらない男達は、己の拳のみを信じて互いを殴りあった。

 

「てめぇ、倒れよォ!」

 

「君こそッ!」

 

 酷く滑稽な光景だった。

 満身創痍の男達がただ殴りあう。

 ただそれだけの、喧嘩。

 どれほど殴られても、何方も膝をつくことはない。

 殴られたらすぐに殴り返す。

 それだけの単純な戦い。

 

「モロハ……僕は君に負けたあの時から、研鑽を続けてきたんだッ!」

 

「そうかよォ!」

 

「不死身の白騎士が……敗北で終わるわけにはいかないんだ!」

 

「剣聖だって、敗北は許されねぇんだよッ!」

 

 諸葉の放った拳がエドワードの顎を直撃し、エドワードの脳が揺れる。だが地を踏みしめて、鎧を失った白騎士は想いを込めた拳を繰り出した。

 諸葉の鼻頭を捉え、折れた鼻から血を流す諸葉も、絶対に倒れない。

 

「なぁ、エドワード」

 

「なんだッ!」

 

「俺たちの因縁って、俺たちを引き合わせた宿命って、馬鹿らしいよな」

 

「あぁ、馬鹿らしいさ! だからこそ、僕は馬鹿みたいに君を想い続けられるんだ! ただひたすらに、勝利を!」

 

「……俺もだよ、エドワード。悪いが今回も、俺は負けねぇ! 昔の『俺たち』のどっちが勝ったなんて知らねえけどな、俺は負けねえぞ……」

 

「僕もだッ!」

 

 二人は最後の拳を握りしめて、

 図らずも、声を合わせた。

 

「「今の『俺たち』は、此処に生きて戦ってんだッ!」」

 

 鈍い音が響き渡った。

 そして、

 

 最後に立っていたのは――。

 

 ☆ ★ ☆

 

 槍の白騎士は冷徹に告げた。

 

「お前に何が守れる。僕は全てを守るぞ、このアーガステンと共に」

 

 剣聖も冷徹に、しかしこみ上げる笑いを抑えきれないと言った様子で、

 

「俺はお前すら守ってみせるよ。この剣聖の名にかけてな」

 

「俺を守る? 沸いたか剣聖。俺はお前を倒して、地上と天上の平和をこの手に掴んでみせる」

 

「悪いな白騎士。俺にとって、平和には誰も欠けちゃならねぇ。だからお前を守って、全て守り通す」

 

 神の落とした槍は。

 子が生み出した剣は。

 

「僕は」

「俺は」

 

「「生きて平和を成し遂げるッ!」」

 

 互いの想いを、

 互いの生き様を、

 互いの心ををただ一途に、

 

 ――それでも叶えられなかった願いを、遥か先へと託した。

 

 ☆ ★ ☆

 

「悪いな、エドワード。俺には、お前を殺せないよ。俺は、俺から奪っていくやつを許さねえ。それが例え自分自身だとしても、許さない。だから俺は、俺からエドワードを奪わせねえよ」

 

「……ふん、ややこしい事を……」

 

「いいだろ、別に。これが『俺』の生き様なんだよ。また、やろうぜ」

 

「…………あぁ、当然だ」

 

 

 

 


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